制作年・国 | 2013年 日本 |
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上映時間 | 2時間11分 |
原作 | 中山七里『さよならドビュッシー』(宝島社文庫) |
監督 | 監督・脚本:利重剛 |
出演 | 橋本愛,清塚信也,ミッキー・カーチス,吉沢悠,柳憂怜,相築あきこ,山本剛史,熊谷真実 |
公開日、上映劇場 | 2013年1月26日(土)~新宿ピカデリー、大阪ステーションシティシネマ、なんばパークスシネマ、MOVIX京都、神戸国際松竹、他全国ロードショー |
~大切な人への一途な思いが生み出す旋律~
香月遥と片桐ルシアは,双子のようで,実は従妹同士だ。ルシアは,幼いころ両親を亡くし,遥と一緒に育てられた。だが,火災のため,一人が亡くなり,もう一人が九死に一生を得る。大火傷を負い,皮膚を移植され,顔も復元される。そして,亡くなった従妹との約束を果たすため,厳しいリハビリに耐える。ルシアは,火災の直前に自らはピアノを諦め,夢を遥に託していた。自分のためにドビュッシーの「月の光」を弾いて欲しい,と。
少女漫画のようなオープニングだ。その後も橋本愛が表現する主人公の感情を丁寧にフィルムに写し取っていく。原作はミステリー小説で,階段の滑り止めや松葉杖への細工など,主人公の身に危険が及ぶカットが挟まれる。だが,監督は,そんな背景には興味を示さず,主人公が「月の光」を弾くことができるかという点に的を絞って,成功している。彼女は,長時間連続して指を動かせず,練習でピアノを弾ける時間を伸ばそうとしていた。
ピアニストの清塚信也がピアノの指導をする岬洋介に扮している。彼は,どうしても弾きたい曲があるという主人公の思いに応えようとする。どんなに正確でミスがなくても感動できない演奏が山ほどある中で,彼女なら演奏者と聴衆が一体になるような奇跡的な感動を生み出せると信じていた。一方,彼女にとって,岬は奇跡を呼び込む王子様のような存在だ。大きな秘密を抱えながら,2人の夢を実現するため,彼を信じて懸命に努力する。
橋本愛の表情には愁いの影がある。それは自分だけが生き残ったことへの罪悪感だけではなかった。フォトスタンドには遥の顔が映り,目の前にルシアが現れ,火事の記憶が甦る。コンクールの予選をやり遂げた後の寂寥感がいい。クライマックスの本選で立ち上がってピアノと格闘する姿には聴衆と観客が一体となって感動が生まれる。ルシアがその名のとおり優しい光で世の中を包み込む。これまでになく橋本愛の魅力に満ちた作品である。
(河田 充規)
公式サイト⇒ http://good-bye-debussy.com/
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