10年の時を経て、この冬、いよいよ沈黙を開く―――。
海外映画祭で話題沸騰、衝撃の事件の“その後”を描いた物語
『Black Box Diaries』
1館からのスタート、いよいよ全国
“劇場で共有する体験”と
「傍観せず、行動を選んでくれた
“アクティブ・バイスタンダー”の存在」の重要性を語る
■日程:2026年1月9日(金)18:00~18:30*上映後
■場所:T・ジョイ梅田(大阪市北区梅田1丁目12−6 E-MAビル 7F) シアター3
■登壇:伊藤詩織(敬称略)
~自らの尊厳を取り戻し、正義を糾すために闘った日々~
ジャーナリストの伊藤詩織氏の監督作品『Black Box Diaris』(ブラック・ボックス・ダイアリーズ)は、自身が被害者となったレイプ事件(2015.4.13)の真相と、告訴後の状況や最高裁まで闘った顛末を、非情な現実と闘い、ジャーナリストとしての立場や被害者としての葛藤に苦悩しながら耐え抜いた日々を捉えたドキュメンタリー映画である。
昨年の第97回アカデミー賞で長編ドキュメンタリー映画賞にノミネートされ世界各国の映画祭で話題となり、日本の性犯罪に対する認識の甘さや刑法の不備について警鐘を鳴らす問題作でもある。伊藤詩織氏に何が起きたのか、正義の盾であるはずの司法はどう動いたのか、日本のマスコミは何を問題視して何を伝え、何を伝えなかったのか――ぜひその目で確かめてほしい。
本作は、事件から10年以上経った昨年の12月12日にようやく〈T・ジョイ PRINCE 品川〉1館だけの公開となったが、話題沸騰につき年始から全国の映画館で順次公開されることとなった。ここ大阪の〈T・ジョイ梅田〉でも1月9日から公開されており、その初日舞台挨拶に伊藤詩織氏が登壇。「どの国のどんな会場へ行っても共感してくれる人は多かった。日本公開に際して様々な問題を抱えていたが、こうして拡大上映されることになりとても感動している」と、新たな境地に立てた喜びを素直に語った。
加害者は当時TBS・ワシントン支局長で安倍首相の伝記作家でもあった山口敬之。(2016年6月9日には『総理』を刊行)総理大臣という太いパイプを持つ加害者は、若干25歳という駆け出しのジャーナリストが太刀打ちできる相手ではない。警察でも証拠不十分を指摘され半ば門前払い。不起訴相当で立件すらされなかった。だがしかし、伊藤氏は司法が動かなければマスコミに訴えようと記者会見を開く。衝撃的な事件内容に注目を集めるも、マスコミによる検証どころか、敢えて顔出し実名で会見した伊藤氏に対し誹謗中傷が押し寄せる。(2019年公開の劇映画『新聞記者』でも取り上げられている。)
★初の長編映画が全国へ広がる手応えを実感
舞台挨拶に登壇した伊藤監督が観客に来場目的を問うと、殆どが社会的問題として興味を持って観に来ているという。こうした意識高い観客を前に質疑応答が始まった。
★映画製作の動機は?
――伊藤監督自身の経験を監督の視点で撮るにあたり、どのようにして気持ちを整理したのか?
映画にまとめるまで時間はかかりましたが、元々ドキュメンタリーを作る仕事をしていたので、膨大な映像記録は残しておりました。
できれば人前で事件について話したくなかったので、警察がすんなりと捜査を進めてくれたら良かったのですが、加害者が不起訴処分となったり、逮捕を止めた当時の中村格刑事部長などに直接話を聴けなかったり、どうしても個人の力では限界があったので、他のメディアの力を借りようと記者会見を開いたのです。ところが、私の言葉の一部を捉えて編集されてしまって、「Mee Too運動」が始まる半年前でしたが、「被害を受けたのになぜ人前で語るのか」という点にフォーカスが当たってしまいました。どうしても自分の言葉で伝えたくて、そこで映像でまとめられないかと思うようになったのです。
それまでに「Black Box」という本を発行する機会はありましたが、2017年の裁判が始まる前でもあり、自分が当事者として感情をどのように入れたらいいのか迷う処が多々あって、できるだけジャーナリストとして距離を置いて書きました。ですが、当事者として何が伝えられるのか、自分でも向き合えなかった葛藤や周りへの影響や友人が感じたことなどを、観る人が一緒に体験することで想像力を広げられるような映画を作れたらと思いました。
★入れたくなかったシーンは?
――450時間もの映像を編集しているが、監督として入れるかどうか迷ったシーンは?
映画を撮るぞ~!といって始めたものではなく、7~8年間に撮り溜めた映像を編集したものです。2017年の記者会見後、私を看かねたプロデューサーのハナ・アクヴィリンさんが声を掛けてくれて、ロンドンで暮らせるようにしてくださいました。そこから私に寄り添うように東京でも一緒に暮らして、ハナさんに撮られているという感じはなく、監督として立ち回れることもなく、ひたすら日々一喜一憂する姿を記録していたという感じです。
さすがに450時間もの映像を編集する時にはかなりの試行錯誤がありました。最初はジャーナリストとして、監督として、当事者としての立場を分けることができなくて迷いました。
入れたくないシーンは2つあって、1つは捜査官Aからの電話のシーン、もう1つは自死を試みてしまったシーンです。
特に、家族にビデオレターとして残したものと、その後病院で目覚めた時に携帯で撮ったシーンは、自分でも忘れていたのですが、編集の山崎エマさんが私の携帯の映像をチェックしていて見つけてくれたものです。特に母には見せたくなかったですね。病院で目覚めてすぐに撮った映像は記憶になく、自分でも怖いくらいです。それだけ、生きて伝えたかったのかな、と今では思えます。
それからもう1つは、捜査官Aからの電話のシーンです。電話を切って10分位は何も言えずにボーっとしてました。最初は最悪な対応の捜査官だったのですが、次第に捜査を進めてくれて、私にとってはヒーローみたいな人です。警察の中でも板挟みになって困っておられたようで、突然異動になったのも何かしらの力学が働いていたようです。そうした複雑な捜査の実状を織り込むためにも必要なシーンだったと思います。
膨大な量の映像を編集してくださった山崎エマさんにひたすら感謝しております。
Active Bystander(行動する傍観者)へのエール!
――最後のご挨拶。
この映画ではいろんな方にお世話になりました。本の出版は私と編集者の方と並走作業なのですが、映画では沢山の方に支えて頂きました。傍観して通り過ぎることもできたでしょうが、それを敢えて証言してくださって、Active Bystander(行動する傍観者)に心から感謝しております。今日ここに足を運んでくださった皆さんもActive Bystander(行動する傍観者)だと思います。この映画を観た後に、性暴力だけでなく、日常の中にある不条理や違和感など、誰もがそれぞれの“ブラックボックス”を抱えている。この映画をきっかけに、身の回りで感じていることを一言でも声に出したり、誰かと共有したりする機会が増えてほしいと思っています。本日はどうもありがとうございました。
舞台挨拶の後、来場者との握手会が設けられ、映画を観た感想や感動を直接伊藤監督に伝えることができた。伊藤監督も観客のナマの声を聴くことができて嬉しそうだった。
『Black Box Diaries』
(2024年 イギリス・アメリカ・日本合作 上映時間:1時間44分)
監督:伊藤詩織
プロデューサー:エリック・ニアリ、ハナ・アクヴィリン、伊藤詩織
企画:河村光庸
エグゼクティブ・プロデューサー:四宮隆史、村松秀信、ロビーナ・リッチティエッロ、ジョシ ュ・ピーターズ、ニナ・L・ディアズ、ライザ・バーネット・フェターマン
共同プロデューサー:行実良、長井龍
編集:山崎エマ
撮影:ハナ・アクヴィリン、岡村裕太、伊藤詩織、大塚雄一郎
音楽:マーク・デグリ・アントニ
製作:Hanashi Films、Cineric Creative、スターサンズ
配給:スターサンズ、東映エージエンシー 協力:日活
©Star Sands , Cineric Creative , Hanashi Films
公式サイト:https://bbd-movie.jp/
公式X: https://x.com/bbd_movie
2025年12月12日(金)~T・ジョイ PRINCE 品川、
2026年1月9日(金)~T・ジョイ梅田、アップリンク京都、kino cinema神戸国際、
1月23日(金)~kino cinema心斎橋、
2月20日(金)~宝塚シネ・ピピア 他全国順次拡大公開!
(河田 真喜子)


