
写真左から秋山純監督、伊原六花、松谷鷹也、鈴木京香、前田拳太郎
阪神タイガースの若きホープとして将来を嘱望されながら、21歳で脳腫瘍を発症し、闘病生活を経て2023年に28歳の若さで死去した元阪神タイガース選手、横田慎太郎さんの半生を描いた映画『栄光のバックホーム』が11月28日(金)より全国で絶賛上映中だ。
横田さんが在籍していた阪神タイガースの地元、大阪のTOHOシネマズ梅田スクリーン1で上映後に開催された公開記念舞台挨拶では、秋山純監督と横田慎太郎役の松谷鷹也、慎太郎の母、横田まなみ役の鈴木京香、親友の先輩選手、阪神タイガース北條史也役の前田拳太郎、幼馴染の恋人、小笠原千沙役の伊原六花が登壇した。秋山監督は映画の中で使われた横田選手のユニフォームを手に、松谷鷹也は横田慎太郎さんから譲り受けたグローブを抱えて登壇。最後の挨拶では松谷がゆっくりと間合いを取り、一筋の涙を流しながら満席の観客に万感の想いを伝えた舞台挨拶となった。その模様をご紹介したい。
■横田慎太郎さんが生きた証をなんとか伝えたいと思った(秋山監督)
―――阪神タイガースのお膝元での舞台挨拶の感想や公開後に届いている反響は?
松谷:初日を迎えた昨日はたくさんの方から連絡をいただき、「1日1日大切に生きようと思った」「慎太郎さんの生きた証を残してくれてありがとう」とコメントを寄せてくださり、泣いていました。今日、大阪でみなさんに観ていただき、嬉しい気持ちでいっぱいです。
鈴木:今朝、秋山監督が慎太郎さんをホスピスで見守り続けた看護師さんからいただいたメールの文面をプリントして見せてくれたのですが、「映画の途中から、慎太郎さんの周りで一生懸命彼を支えている家族と同じ気配がしました」という文面がありました。それがとても嬉しかったですし、慎太郎さんの周りで本当にたくさんの方が見守り、病気と闘っている間もたくさんの方に愛されていた慎太郎さんのことを、しっかりと自分の気持ちで実感することができたこともとても嬉しかったです。今日お越しの皆さんの中にはユニフォーム姿の方もいらっしゃるし、鼻をすすっている方もいらっしゃり、皆さん本当に慎太郎さんのことが好きなのだと思います。わたしも慎太郎さんの大ファンになりました。
前田:この作品に携わってはじめて横田選手のことを知り、僕が仕事をしていて辛い時、苦しい時でも目標をもち、背中を押してもらえました。今までこんな素敵な選手がいたことを知らなかった自分がすごく悔しいですし、僕が背中を押してもらえたように、横田選手を知らない人に届けていきたいです。たくさんの人の背中を押すことができる作品だと思いますので、みなさんも一緒にたくさんの人に横田選手のことを届けていきましょう。
伊原:昨日から公開が始まり、横田さんやご家族の生き様がすでに届いていると感じるメッセージをたくさんいただきました。数日前、大阪で別件のイベントを行ったときに、来てくださった方のほとんどが「映画を観に行きます」とおっしゃっておられ、こんなに愛されている方、愛されている球団の作品に参加させていただけることに対し、改めて胸がジンとしました。
秋山監督:今日は本当にありがとうございます。4年半前から企画が進んでおり、横田慎太郎さんが生きた証をなんとか伝えたいと思って作っていましたが、気が付けば僕らスタッフ、キャストみんなが横田慎太郎さんに呼ばれて、また1日1日大切に生きるということを教えてもらい、宝物をもらいながら日々を過ごさせていただきました。こんなに幸せなことはありません。地元大阪の前で、横田さんを演じる松谷鷹也さんは新人なのですが、野球に本気で向き合い、一切真似はしていない。一生懸命野球に向き合うことが、横田さんにできるたった一つのことだと思いましたし、そこに(鈴木)京香さんや、マエケン(前田拳太郎)、(伊原)六花さんとこんなに素敵なみなさんがきっと横田さんに呼ばれて集まり、こうしてこの日を迎えられたことが嬉しいです。今日は本当に横田さんに「ありがとう」と言いたいです。

■聖地に足を踏み入れさせていただき、この映画で野球ファンになった(鈴木)
―――聖地、甲子園球場でのロケについて
秋山監督:甲子園の近くに住んでいましたので、子どもの頃から野球を見に来ていましたし、熱闘甲子園で取材もさせていただき、タイガースの野球も観戦していました。聖地に足を踏み入れることはすごいことなのですが、ロケの日は台風が東と西の両方から来ており、大雨の予報だったんです。でもシーズン中で(撮影日は)その日しかなかった。そこで奇跡が起きて…。
松谷:雨予報で最初は曇っていたのですが、慎太郎さんのグローブを持って、ベンチから階段を上がっていったら、さーっと雲が広がって太陽が顔を出し、青空が広がったんです!
前田:ポスターの写真は甲子園で撮ったリアルな青空なんですよ。グラウンドに入った瞬間、青空になったので、横田選手の想いが伝わったのかなと思いますね。
鈴木:わたしは息子の慎太郎にボールを渡しに行きましたし、そこで川藤幸三さんや平田勝男二軍監督にもお会いしました。聖地に足を踏み入れさせていただき、この映画を通して野球ファンになりました。
伊原:父親が阪神ファンで、わたしが子どもの頃、ちょうど星野監督時代のファン感謝デーで甲子園に行き、風船を飛ばした光景が心に残っています。この役が決まり、父親が一番喜んでいました。

■慎太郎さんが命をかけて最後の最後まで伝えたかった「1日1日大切に生きること」を持ち続けることが一番の恩返し(松谷)
―――最後のご挨拶
秋山監督:この映画を作っているときに横田慎太郎さんが劇場で見ると言ってくれた。その約束は叶わなかったけれど、こんなたくさんの人に届いていることをきっと見てくれていると思います。最後に幻冬舎社長が作ってくれたコピー「すべての横田慎太郎に捧ぐ」のように、辛いことがあるとき、この映画が前を向くきっかけになれたらと思いますし、観ている人全てが横田慎太郎だと思います。ありがとうございました。
松谷:僕も初日初回でこの映画を観ましたが、観た方は慎太郎さんに会いたくなると思います。慎太郎さんはこの世を旅立ってしまったけれど、命をかけて最後の最後まで伝えたかった「1日1日大切に生きること。目標を持つこと」をまだ生きている僕たちがしっかりと受け取り、そういう気持ちを持ち続けることが一番の恩返しです。そして(慎太郎さんのことを)忘れないことだと思っています。みなさんもこの映画を通して、何か感じ取ってもらえたことがあれば、明日から実践してもらえたら嬉しいです。
鈴木:わたしも本当に慎太郎さんに会ってみたくなりました。この映画を通して慎太郎さんのことを初めて知った方もいらっしゃると思いますし、一人でも多くの方に慎太郎さんのことを知っていただきたいです。みんなで慎太郎さんのことを応援します。
(江口由美)

<ストーリー>
2013年のドラフト会議で阪神タイガースに2位指名された横田慎太郎、18歳。甲子園出場は逃したが、その野球センスがスカウトの目に留まり、大抜擢された期待の新人だ。持ち前の負けん気と誰からも愛される人間性で、厳しいプロの世界でも立派に成長を遂げていく慎太郎。2016年の開幕戦では一軍のスタメン選手に選ばれ、見事に初ヒットを放つ。順風満帆な野球人生が待っていると思われたその矢先、慎太郎の体に異変が起こる。ボールが二重に見えるのだ。医師による診断結果は、21歳の若者には残酷すぎるものだった。脳腫瘍―。その日から、慎太郎の過酷な病との闘いの日々が始まる。ただ、彼は孤独ではなかった。母のまなみさんをはじめとする家族、恩師やチームメイトたち、慎太郎を愛してやまない人々の懸命な支えが彼の心を奮い立たせる。そして、2019年9月26日、引退試合で慎太郎が見せた“奇跡のバックホーム”は人々を驚かせ、感動を呼んだ。しかし、本当の奇跡のドラマは、その後にも続いていたのだった…。
<作品情報>
『栄光のバックホーム』幻冬舎フィルム 第一回作品
企画・監督・プロデュース:秋山 純
原作:「奇跡のバックホーム」横田慎太郎(幻冬舎文庫)
「栄光のバックホーム」中井由梨子(幻冬舎文庫)
脚本:中井由梨子
出演:松谷鷹也 鈴木京香 前田拳太郎 伊原六花・山崎紘菜 草川拓弥
萩原聖人 上地雄輔 古田新太 加藤雅也 小澤征悦
嘉島 陸 小貫莉奈 長内映里香 長江健次 ふとがね金太
平泉 成 田中 健 佐藤浩市 大森南朋 柄本 明 / 高橋克典
主題歌:「栄光の架橋」ゆず(SENHA)
©2025「栄光のバックホーム」製作委員会


