
歌舞伎町を舞台に、擬人化焼肉漫画「ミート・イズ・マイン」をこよなく愛するも自分のことは好きになれない27歳の主人公の新たな世界との出会いを描いた金原ひとみの原作小説を松居大悟監督(『くれなずめ』『ちょっと思い出しただけ』)が映画化した『ミーツ・ザ・ワールド』が、10月24日よりTジョイ梅田、なんばパークスシネマ、kino cinema 神戸国際、Tジョイ京都ほか全国ロードショーされる。
それに先立ち、10月4日にTジョイ梅田で開催された先行上映で公開記念舞台挨拶が行われ、松居大悟監督と主人公の由嘉里を演じた杉咲花、既婚者でナンバーワンホストのアサヒを演じた板垣李光人が上映前に登壇した。後半は10月2日に誕生日を迎えた杉咲へ、サプライズでバースデーケーキが贈られる場面もあった。映画への想いがつたわる舞台挨拶の模様をご紹介したい。
(最初のご挨拶)
杉咲:大好きな大阪に、また映画を届けられて嬉しいです。
板垣:東京では完成披露イベントをしましたが、大阪のみなさまに一足早く作品をお届けてできて嬉しいです。
松居監督:大阪に関係のある由嘉里とアサヒと共に、公開前に舞台挨拶できることを嬉しく思います。
■手に取るように熱量が伝わった原作(杉咲) 金原さん原作の作品に参加できるのが嬉しかった(板垣)
―――本作への主演が決まった時の気持ちは?
杉咲:オファーをいただいて初めて原作を読みましたが、手に取るように(主人公の)熱量が伝わり、由嘉里という役を演じられることが純粋にすごく楽しみな気持ちになりました。
板垣:金原ひとみさんは2年ぐらい前に番組でお会いしてお話しましたが、とてもチャーミングで素敵な方だったので、今回役者として金原さん原作の作品に参加できるのが嬉しかったです。この現実のようにいいことばかりではないけれど、みんなが見て(同じ感覚で)ハッピーエンド(を感じる)というよりは、登場人物だけのハッピーエンドという雰囲気が素敵でした。
―――松居監督は、お二人を起用したポイントは?
松居監督:3年前にプロデューサーから原作を渡されて読んだとき、勝手に杉咲さんを由嘉里に当てはめて読んでいました。10年ぐらい前から、いつか一緒に映画をやりたいと言っていたのが、それが今回ではないかと思ったんです。ライを演じた南琴奈さんはオーディションで決まり、あとはアサヒを誰に演じてもらうか。そこで、みんなが気になっていた板垣李光人さんがここに入ってくれたら、ワクワクするなと。現場では褒められなかったけど、(板垣さんの演技は)素晴らしかった。念願が叶ったという感じです。
■歌舞伎町での撮影は「場所に嘘がないように」(松居監督)
―――杉咲さんと板垣さんの柔らかな空気感が素敵だが、撮影ではどうでしたか?
杉咲:撮影中より終わった方が話しをしているかもしれません。
松居監督:今回は歌舞伎町という場所で撮影しましたが、場所に嘘がないようにとライのマンションもあえて歌舞伎町で探しましたし、路地裏もちゃんと歌舞伎町で撮影しました。繁華街で通行人を止めながら撮影し、結構バタバタしていたんです。
杉咲:撮影時間がナイターシフトで、夕方からはじまって朝終わるという完全に昼夜逆転していました。(夜の撮影が多かったので)いけないことをしているような感じがあったかもしれません。
板垣:(夜の撮影で)あまり頭が働いていなかったかもしれません。撮影と撮影の間の記憶が抜け落ちてあまり覚えていないです。
■俳優たちが細やかな努力をし、映画に寄り添おうとしてくれた(松居監督)
―――それぞれの役をかなりリアルに演じたのではないですか?
杉咲:原作を読んだ時から由嘉里の個性が爆発していたので、演じきれるかと緊張感が常にありました。なんとか1日1日を乗り越える中、節目となるシーンでライを演じた南琴奈さんがいかに大きな存在となっていたかに気づきましたし、ご一緒させていただいたみなさんとの時間がとても濃かったです。
板垣:最初にアサヒというキャラクターを原作で見たとき、普段のテンションがこんな(静かな)感じなので、とても明るいアサヒを演じることができるかなと思いましたが、現場の空気がアットホームだったので、由嘉里と二人で話すシーンも心の底から楽しめたし、総じてアサヒというキャラクターを楽しく演じられました。
松居監督:杉咲さんは推し活をしている人を取材したり、板垣さんはホストクラブでどういうサービスをしているかを見学したり、南さんもキャバクラに行ってキャバクラ嬢の仕事を見学したりと、みんながこの『ミーツ・ザ・ワールド』の世界に入るために細やかな努力をし、映画に寄り添おうとしてくれ、とても頼りになったし、現場で由嘉里、ライ、アサヒになってくれていた。みんなを撮れて心から幸せでした。

■松居監督の佇まいが大きな演出の一つ(杉咲)
松居監督は全てにおいて嘘偽りがない(板垣)
―――撮影中、どんなところに松居監督らしさを感じましたか?
杉咲:10年前から交流はあったものの、ここまで長い時間ご一緒することはなかったので、シャイだということが日に日にわかってきて、その姿に癒され、心が緩んでいく感覚がありました。監督の佇まいが大きな演出の一つになっていましたね。
板垣:監督はずっと裸足で、それが少年っぽいというか、全てにおいて嘘偽りがないんです。作品、演出、役者にくれるものが何も飾っていないことを足元から感じ、いいなと思いました。
―――最後に一言お願いします。
松居監督:ご来場ありがとうございます。映画をぜひ楽しんでいただけたらうれしいです。嫌だなとか苦しいなと言い切れたらと思うことがあると思うが、この映画がちょっとした支えになればうれしいなと思います。
板垣:この映画は、スクリーンと自分の境界線があいまいになるんです。由嘉里という人物は今の自分とどこか重なる部分があると感じる方もたくさんいらっしゃると思います。皆さん一人一人が『ミーツ・ザ・ワールド』の世界の中に入っていただき、そこでの登場人物たちや自分自身との出会いをぜひ楽しんでいただけたらと思います。本日はありがとうございます。
杉咲:主人公の由嘉里という人物は自分の好きなものや自分の生き方を母親に理解してもらえず、規範的な生き方を求められたり、指摘や抑圧をされ、息苦しさを感じてきた人です。ライと出会ったことでその立場が変わり、今度は(ライに)自分の価値観を押し付けてしまう。人の幸せを願うとはなんだろうと考えさせられました。どれだけ感覚や死生観が噛み合わないふたりでも、惹かれ合い、共同生活をしているところを見ると、分かり合えない人同士でも一緒に生きていくことができるのではないか。そんな祈りのようなものを込めました。この映画の人間賛歌を受け取ってほしいです。
(江口由美)

※杉咲のバースデーを祝って用意された特製ケーキは由嘉里の推しキャラクター付きの『ミーツ・ザ・ワールド』仕様。「みんなで一口ずつ食べたいです。嬉しいです。ありがとうございます」と杉咲から喜びのコメントも。
<作品情報>
『ミーツ・ザ・ワールド』
監督:松居大悟
原作:金原ひとみ『ミーツ・ザ・ワールド』(集英社文庫 刊)
出演:杉咲花、南琴奈、板垣李光人、くるま(令和ロマン)、加藤千尋、和田光沙、安藤裕子、 中山祐一朗、佐藤寛太、渋川清彦、筒井真理子 / 蒼井優
(劇中アニメ「ミート・イズ・マイン」) 声の出演:村瀬歩、坂田将吾、阿座上洋平、田丸篤志
2025年10月24日(金)よりTジョイ梅田、なんばパークスシネマ、kino cinema 神戸国際、Tジョイ京都ほか全国ロードショー
公式サイト→https://mtwmovie.com/