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『Ryuichi Sakamoto: Diaries』特別先⾏試写会舞台挨拶 @うめきた公園 ノースパーク VS.


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【⽇ 時】2025年9⽉19⽇(⾦)19:30の回上映後

【場所】VS. (⼤阪府⼤阪市北区⼤深町6番86号 グラングリーン⼤阪 うめきた公園 ノースパーク VS.)

【登壇者】⽥中泯(ダンサー・俳優)、進⾏:加美幸伸( FM COCOLO DJ )



Ryuichi Sakamoto_ Diaries-9.19-240-1.JPG11 月28日(金)からの全国公開に先立ち、9月19日(金)に本作で朗読を務めた田中泯登壇の舞台挨拶付特別先行試写会が行われた。会場は現在、坂本龍一の大阪で初となる大規模企画展「sakamotocommon OSAKA 1970/2025/大阪/坂本龍一」を開催中のVS.(グラングリーン大阪うめきた公園ノースパーク VS.)。特別な空間で行われた先行試写会に、本作で朗読を務めた田中泯が登壇。親交の深かった坂本龍一への思いや、ドキュメンタリー映画『Ryuichi Sakamoto: Diaries』の朗読をする経緯について語った。


上映後の余韻に包まれるなか登壇した田中泯(以下、田中)は、大きな拍手で迎えられるも「色々思い出しちゃってちょっと言葉が出ないですね。さっきまで裏(楽屋)では笑って話してたのに、変だな。」と素直な気持ちを吐露した。

坂本龍一(以下、坂本)が田中の公演を観にくるなどかねてより親交もあり、一緒にお酒を飲むと必ず気がつけば朝になってるような関係だったと話す。 MC・加美から改めて坂本龍一の魅力を尋ねられると、 「コンプレックスというわけじゃないが、ずっと感じ続けているのは、僕が”言葉”にして出してない事を(坂本は)どんどんどんどんやってきたわけです。それは森林保全や原発問題だったり様々ですが、ある時、『泯さん、このままいくと人類みんなおかしくなっちゃいますね』って言うんです。僕が口に出さないでいることをポッと口に出してくる。僕はダンスをやっていたから“言葉”を信じなくなっていたんです。自分の中で“言葉”を培養して純粋に使えているのか。それが人間だから、人生だから、世間だから…とか、皆さんも小さな時から散々(大人から)理屈っぽいこと言われたでしょう?」と“言葉”がもつ常識の違和感を観客に問いかけた。


Ryuichi Sakamoto_ Diaries-9.19-500-1.jpg「彼の好奇心を動かしていたのは“人間”そのものなんだと思う。音楽を考え続ける、音楽というものに触れ続けることが “人間”に対する好奇心と同じだったんじゃないか」と語り、「“踊り”を考えることが僕にとっては“人間”であることを考えることなんです。それはちっとも難しいことではなく、当たり前のことだと思っています。僕はずっと“言葉”を喋れなかった人間で、はじめて映画に出て人前でセリフをしゃべったもの50代ですよ。」と、2人がもつ好奇心が似ていると続けた。


Ryuichi Sakamoto_ Diaries-9.19-240-3.JPG“言葉”と距離をとってきたという田中が、本作で朗読を務めるにあたりどう挑んだかを聞かれると、「“言葉”をしゃべる常識というのを、むしろ疑ってみようと。なるべく”感情”と”言葉”の距離を取っていられるようにしてしゃべろうとか、思い出せばいっぱいあるんだろうけど、…必死でしたね。」と、坂本と親交の深かった田中だからこその当時の想いを振り返り、「彼が残した手書きの日記から携帯のメモ書き、鉛筆の走り書きのようなものまで、日記とはいいながらきっとものすごい不定多数の人間に向かって言葉を吐いてると思います。つぶやいてないんですね。つぶやいているかのように見せて、おそらく(彼は)読まれることを知っている。……当たってないかもしれないけど(笑)。彼の口からでる“言葉”は基本的に(目の前の)相手だけじゃない。そこに一人しか居ないけど大勢の人がそこに居る、というのが彼の思想だと思います。」と語った。


MC・加美が「雲の動きは音のない音楽だ」という、映画にも登場する坂本の日記に書かれた言葉について触れると「僕はダンサーなので、ダンスをしているように見えてくるんです。小さな雲があると、その雲って太陽が出てきたら必ずなくなる。結構な時間がかかるんです。消えるまで見てやろう!って。でも、やっぱり音楽のようにも見えますよね。でもこれって子どもの好奇心ですよ!大人は時計みちゃうから。」と会場を和ませ、子どもらしさを持つ坂本に共感した。


坂本と初めて一緒にお酒を交わしたとき、「この人やっぱり“本当”で生きていきたいんだと思いました。“本当の気持ち”とか、“本当の事”をやりたいとか、“本当の奴”と一緒にいたい、とか。今ってうわべや表面だけの方って結構わかりますよね。わかっていても通り過ぎたり適当に答えているときがありますよね。僕もあります。なぜ、それでやり通しちゃっているんだろうかという疑問を、やっぱり坂本さんって持ってるんですよね。」続けて、「でも本当に、大人の社会ってよく見れば嘘ばっかりじゃないですか。子どもっぽい話をして笑われるかもしれないけれど。・・・でも、笑っていられるかな?(坂本は)ずっと辞めずに、最後の最後まで音楽をやっていたわけですね。伝統芸能もそうなんですけど、ピアノに向かうということはひょっとしたら同じことの繰り返し。でも同じようにしない。繰り返し毎日毎日同じことをやっていたとしても、同じではないんです。これは子どもが同じ遊びを毎日よく飽きもせずやるということと同じことで、子どもにとっては同じじゃないんですよね。同じことやってないんですよ。毎日新しい何かがきっと見つかるんですよ。(それを)大人は同じ事をやっていると決めつけちゃう。」と追及した。


Ryuichi Sakamoto_ Diaries-9.19-240-2.JPG「すごく悲しいけど、坂本さんが支えた身体、引きずっていた身体と全く違うコンディションの中で私たちは生きているが、彼が話した事ややってくれた事に対して、観よう、わかろう、聴こうとしている。それはとても無理なことかもしれないし、失礼なことかもしれない。でも、最後の最後まで彼は見せるわけですよね。これは奇跡に近いです。最後の姿を知らない方のほうが世の中では圧倒的に多いわけですが、(坂本の)亡くなる瞬間までおそらく映像に残っていると思います。とんでもないことだと思いますよ。でも、これは元の元を立たせば、子どものような好奇心を絶対に捨てずに、大事に大事に持ってきたことも証拠だと思います。僕も絶対にそうします。」と語った。


子どもから年配まで色んな方を誘って観に行って欲しいと願う田中は、一足先に映画を観た観客に向けて「皆さん自分の中でこの作品がどういう立ち位置なのかと考えてると思います。絶対に応援してください。
絶対伝えなきゃいけないってことです。ぜひよろしくお願いします。」と強くアピールした。

 


映画『Ryuichi Sakamoto: Diaries』は 11 月28日(金)よりTOHOシネマズ シャンテほか全国公開。

展覧会「sakamotocommon OSAKA 1970/2025/大阪/坂本龍一」は9月27日(土)まで開催。


【Synopsis】
Ryuichi Sakamoto_ Diaries-550.jpg命が尽きるその瞬間まで音楽への情熱を貫き、創作し続けた坂本龍一。本人が綴った「日記」を軸に、遺族全面協力のもと提供された貴重なプライベート映像やポートレート、未発表の音楽を交え、稀代の音楽家の最後の3年半の軌跡を辿る。今なお国も世代も超えて我々の心を掴み続ける坂本龍一は、命の終わりとどう向き合い、何を残そうとしたのか──。誰しもの胸に迫るドキュメンタリー映画が完成した。


坂本龍一

朗読:田中泯
監督:大森健生
製作:有吉伸人 飯田雅裕 鶴丸智康  The Estate of Ryuichi Sakamoto
プロデューサー:佐渡岳利 飯田雅裕
制作プロダクション:NHKエンタープライズ
配給:ハピネットファントム・スタジオ コムデシネマ・ジャポン
2025/日本/ カラー/16:9 /5.1ch/96分/G
© “Ryuichi Sakamoto: Diaries” Film Partners
公式サイト:https://happinet-phantom.com/ryuichisakamoto-diaries

2025年11⽉28⽇(⾦)~TOHOシネマズ シャンテほか全国公開


(オフィシャル・レポートより)

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