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『愛されなくても別に』完成披露舞台挨拶@丸の内ピカデリー@


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aisarenakutemobetuni-pos.jpg「響け!ユーフォニアム」で知られる武田綾乃の同名小説が原作の映画『愛されなくても別に』が、日本最年少でカンヌ国際映画祭への出品を果たした井樫彩監督の最新作が、2025年7月4日(金)公開となる。毒親、虐待、性暴力など家族間で生じる問題から社会のひずみに切り込みつつ、その世界をサバイブする女性たちの清々しさと、「不幸中毒」からの脱却までを鮮やかに描いた本作。

浪費家の母親に依存される主人公・宮田陽彩(みやた・ひいろ)役南沙良、過酷な家庭で育つ過去を持ち、陽彩と徐々に心を通わせていく江永雅(えなが・みやび)役馬場ふみかが演じた。


公開に先駆けて本日6月8日(日)に南沙良、馬場ふみか、井樫彩監督が登壇する完成披露舞台挨拶を行った。イベントでは、アクティングコーチの指導のもとで行ったレッスンについてや撮影中の印象的なエピソードを語った。そして6月に誕生日を迎える南と馬場に向けて、井樫監督からサプライズで花束が贈られる一幕もあり、会場は温かい拍手に包まれた。
 


◆日程:2025年6月8日(日)

◆会場:丸の内ピカデリー2(東京都千代田区有楽町2-5-1 有楽町マリオン9F)

◆登壇者:南沙良、馬場ふみか、井樫彩監督(計3名)


<以下、レポート全文>

映画上映後、満員の観客の前に立った登壇者たちには大きな拍手が送られた。この日初めて一般に向けての上映であり、SNSでは「2人が共に過ごす日常がとても愛おしかった」「日々感じている不安やしんどさが、少し晴れた気がします」といった高評価の声が次々と寄せられていた。


劇中で南が演じる陽彩、そして馬場が演じた雅ともども、親子関係に何らかの事情を抱えたキャラクターだったが、この役を演じるにあたり、「監督とも、現場でそれほど話すことはなかった」というふたりだが、「でも井樫監督が、クランクインする前に(キャラクターの背景などが詳しく記された)資料のようなものをつくっていただいて。それがお芝居に役に立ちましたね」と南が語ると、馬場も「そこには小学何年生の夏休みに家族と出かけたとか。学生時代、クラスの中でどういう存在だったとか。そういうことが書かれていたんです」と補足する。


aisarenakutemobetuni-bu-南沙良様.JPG南と馬場のふたりは、本作のクランクイン前にはアクティングコーチのもとに通い、レッスンを受けたという。その時のことを馬場は「その際に、本編では描かれていなかった母親とのシーンを実際にレッスンでやらせていただいて。それ自体は、(劇中で)陽彩(ひいろ)に話している内容のことだったんですけど、クランクインの前にそれを一度(芝居で)やっていたことで、そのシーンを演じることに対してもそうですし、雅(みやび)という人物を理解するという点でも役に立った」と述懐。その意図について井樫監督も「彼女たちにとって、役をやる上で手助けになることは何だろうと思って。シーンに描かれてないこととか、そういうことが本編に影響するんじゃないかなと思い、やってもらったという感じですね」と明かす。


そうやってあらためて演技について学ぶというのも、ふたりにとって非常に刺激的だったようで、南が「今までお芝居について学ぶ機会があまりなかったので。これまでワークショップに行ったことはあったんですけど、座学で学ぶという機会が本当になかった。だからすごく新鮮でしたし、勉強になりました」と語ると、馬場も「台本をいただいてから、カメラの前に立つまでに、どういう順番で、どういう風に役をつくって準備していくか、ということを、机と椅子に座って話を聞いて勉強したんですけど、今まで本当にこういう機会がなくて。現場でなんとかするという感じだったので、これからお芝居を続けていくにあたっても、すごく助けになるなと」と晴れやかな顔を見せた。


aisarenakutemobetuni-bu-馬場ふみか様.JPG実際に原作を読んでみた時のことを南が「3人が抱えているものは決して明るいものではないけど、でも悲観的じゃないというか。わたしは原作でも、わりとずっとトゲのある悪口が出てくるんですけど、それを読んでほほえましい気持ちにもなりましたし、それがちゃんと一歩前に進む物語になっていて。すてきだなと思いました」と振り返ると、馬場も「わたしもすごくグッサリときたシーンがあって。陽彩が、雅のことを人間扱いしてくれるのが好きだというところなんですが、(それまで雅は)他人からも自分からも女扱いされてきたということもあって。もちろんそれは駄目なことではないんですけど、それが苦しいなと思ってグッサリときた。そういえば自分でもそういう風に考えた瞬間があったなと思い出しました」と語った。


また南は印象的なシーンとして、池に浮かぶ場面を挙げた。「私、水がそもそも苦手なんです。浸かるのが怖くて。気持ちの面でもそうだし、物理的にもすごく大変でした」と当時を振り返る。撮影時にはなかなか水に浮かぶことができず、監督が横で背中を支えてくれたといい、井樫監督は「外から偉そうに見ているだけじゃダメだなと思って」と語り、現場で監督自ら直接体を張って撮影していたことを語った。一方、馬場が挙げたのは自転車の二人乗りシーン。「結構な山道で、カーブの多い下り坂。南さんを後ろに乗せて、前には軽トラに乗ったカメラがいて、その距離を保ちながら安全に運転して、なおかつセリフも言わなきゃいけない。やることが多すぎて、かなり大変でした」と撮影時の苦労を語った。


また過干渉な親から逃れるべく新興宗教にはまっていく大学生の木村水宝石(あくあ)を演じた本田望結と共演について南は、「本田さんとは年齢が近くて。わたしもわりと人見知りな方ですけど、本田さんもけっこう人見知りなんですよ」と明かす。その言葉に「でも2人で結構楽しくしゃべっているなと思っていましたけど」と馬場がかぶせると、南も「実はその時、わたしがハマっているゲームがあって。それなんですか?と聞いてくださって。それはペットを育てるゲームだったんですけど、ふたりで一緒に育てていました」と明かした。


aisarenakutemobetuni-bu-井樫彩監督.JPG今となっては、南も馬場も和気あいあいとした雰囲気で仲良さげであるが、実は最初のうちは、ふたりとも人見知り同士で、なかなか話せなかったという。馬場が「最初はどうやってしゃべろうかなと思っていたんですけど、毎日撮影で一緒にいることが多かったんで。お互いの存在にどんどん慣れていく感じがあって。それが実際の陽彩と雅の関係性にもすごく反映されて、仲良くなってきたなと感じました」と振り返ると、それを補足するように井樫監督も「撮影中、気付いたらふたりが隣同士で座っていて。ただ無言で座っているのがいいなと。別に社交辞令的な会話もないし、ふたりでボソボソしゃべって、お茶を飲んでいるだけ。その空気感がすてきだなと思いました」と述懐。その言葉を聞いた馬場が「でもそうやって休憩中とか、ふたりで待っている時とかに、気付いたら井樫さんがスッと現れて。わたしたちの写真を撮って、そして去っていく、という感じでした」とコメント。その言葉に井樫監督も照れくさそうに、「けっこうその写真が大量にあります」と笑ってみせた。


くしくも6月11日は南の23歳の、そして6月21日は馬場の30歳の誕生日ということで、井樫監督よりサプライズで花束をプレゼントすることになり、これにはすっかり驚いた様子のふたり。そこで1年の抱負を尋ねられた南は「体調を崩さず健康に。去年1年もそうだったんですが、より新しいことにチャレンジしていける1年になったらいいなと思っています」とコメント。そして馬場も「ちょうど30代に入るということで。先輩方からも30代は楽しいぞとすごく言われるので、楽しみにしています。楽しく、健康な日々を営んでいきたいと思っています」と決意を語った。


そんな和気あいあいとした舞台挨拶も終盤。最後のコメントを求められた馬場が「チラシや予告編を見ると、重くて苦しい作品のように感じられるかもしれないですが、実際に観終えた後は、さわやかさだったり、ちょっとした”光”を感じられるような、そんな作品になっているんじゃないかなと思っておりますので。これから皆さまにも公開までたくさんの方に宣伝をしていただいて。いい初日を迎えられるように頑張っていきたいです」とあいさつすると、南も「本当に、生きるということだけですごく難しいことだなと、わたしは日々思っていて。そしてそう思う方もたくさんいらっしゃると思うんです。だからそういう方に届いたらいいなというか、登場人物たちの悩みや勇気、そういったものに寄り添えたらいいのではないかなと思っています。なので、たくさんの方に観ていただけたらいいなと思います」とメッセージ。


そして最後に井樫監督が「毒親というところからの起点の物語ではあるんですが、陽彩と雅というふたりの女性が、自分の人生を力強く歩んでいこうとする物語になりますので、観てくださった方の心に少しでも引っかかるものがあったら本当にうれしいなと思っております。気に入ったら是非口コミをしてくださるとうれしいです」と呼びかけて、この日のイベントを締めくくった。


【Story】

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宮田陽彩(みやた・ひいろ)(19)は、“クソ”のような大学生活を送っていた。
大学に通い、それ以外の時間のほとんどを浪費家の母に変わっての家事とコンビニでのアルバイトに費やし、その中から学費と母と2人暮らしの家計8万を収める日々。遊ぶ時間も、金もない。
何かに期待して生きてきたことがない。親にも、友人にも・・・。
いつものように早朝にバイトを終えた宮田は、母のために朝ご飯を作り、家事をした後に大学に登校していた。そこで大学の同級生であり、バイト先の同僚でもある 江永雅(えなが・みやび)(24)のひょんな噂を耳にする。威圧的な髪色、メイク、ピアス──バイト先ではイヤホンをつけながら接客する、地味な宮田とは正反対の彼女の噂。
「江永さんのお父さんって殺人犯なんだって」
他の誰かと普通の関係を築けないと思っていたふたり。ふたりの出会いが人生を変えていくー。

【クレジット】

出演:南沙良  馬場ふみか 本田望結  基俊介 (IMP.)  伊島空  池津祥子  河井青葉
監督:井樫彩 
原作:武田綾乃『愛されなくても別に』(講談社文庫)
脚本:井樫彩/イ・ナウォン
主題歌:hockrockb「プレゼント交換」(TOY'S FACTORY)
企画・プロデュース:佐藤慎太朗
製作幹事・制作プロダクション:murmur
配給:カルチュア・パブリッシャーズ
Ⓒ武田綾乃/講談社 Ⓒ2025 映画「愛されなくても別に」製作委員会
公式HP:aisare-betsuni.com  
公式X&Instagram:@aisare_betsuni

2025年7月4日(金)~ 新宿ピカデリー、大阪ステーションシティシネマ、なんばパークスシネマ、MOVIX(八尾、堺、京都、あまがさき)、kino cinema神戸国際 ほか全国ロードショー!


(オフィシャル・レポートより)

 
 

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