生きたかったおっさん幽霊と死に損なった男のバディムービー!?
死にたい!と思ったけど死ねなかった男が、おっさんの幽霊に憑りつかれて死ぬほど大変な目に遭う――逆転の発想で人生を再起動させてくれる〈激励ムービー〉というか、死者の遺恨から知る「生きていればこその幸せ」もあるもんだと実感させてくれる映画『死に損なった男』が2月21日(金)から全国で公開される。公開に先立ち、大阪のT・ジョイ梅田にて特別上映会が開催され、主演の水川かたまり(空気階段)が舞台挨拶に登壇した。
幽霊に翻弄される関谷一平を等身大で演じた〈空気階段〉の水川かたまり。お笑い芸人としてバラエティなどでも活躍中だが、映画初主演の硬さを感じさせない親しみやすさで共感を呼んでいる。初主演に臨んだ想いや撮影秘話など屈託なく語って、劇場を笑いで湧かせてくれた。
詳細は以下の通りです。
■日時:2025 年1 月28 日(火) 18:00~18:30
■場所:T・ジョイ梅田
■登壇者:水川かたまり
――初めての映画主演ということですが、最初それを聞いた時のお気持ちは?
水川:僕ともぐらとマネージャーの3人で共有しているグーグルカレンダーのアプリに先々のスケジュールに、「かたまり主演映画撮影(仮)」と書いてあって、「嘘だろっ?ドッキリだろっ?きっとこの日は大人にゲラゲラ笑われてしょんぼりして家に帰るんだろうな」と思ってました(笑)。
――直接聞く前にスケジュール表で知ったんですか?
水川:はいそうです。台本渡されて読んだらとても面白かったんです。ドッキリで騙すためにこんな面白い台本は書かないだろうと、「あれ?マジなのかな?」とそこで初めて信じ始めました。
それから衣装合わせに行った時、喜屋武豊さんとご一緒したんです。あの方は普段ゴールデンボンバーのメンバーとして化粧して活動されてますので、「あれ?本物の喜屋武さんかな?」と検索写真と見比べながら、「本物だー!」と。それでもまだ疑いは払拭できなくて、撮影初日に現場へ行ったら、結構の数の大人やちゃんとスーツ着た大人がいっぱい居て、本当に主演なんや~!とやっと確信できた次第です。
――その瞬間まで偽物だと疑ってたんですか?
水川:はい疑ってました。監督のこともニセモノだと思ってました(笑)。
――それでもセリフはちゃんと覚えて行ったんですよね?
水川:はい、覚えて行きました。もし本物だったら怒られると思って――(笑)。
――もぐらさんの反応はどうでした?
水川:ポスターが発表されて、それを見てストーリーや役柄について勝手に考察してきて、すごく迷惑でした(笑)。
――どんな考察でした?
水川:「お前に幽霊が憑りつくんだよな?でもお前は死なねぇんだよな?」などと、的を得つつ的外れな考察でした(笑)。もぐらは完成版をまだ観てないので、映画館の人に「もぐらを入れないでほしい」とお願いしようと思ってます。とても不愉快な考察をされたので…(笑)。
――「幽霊に憑りつかれて、殺しを依頼される」という奇抜なストーリーですが、ここが面白い!と思った点と、演じる上で難しかった点は?
水川:難しいところは、涙を流すシーンです。やったことないんで、そこは手腕が問われるところだなと思いました。それから、死に損なった男が自分より先に死んだおじさんに憑りつかれて殺しを強要されるなんて、想像もつかない面白い展開です。もし自分の子供がこの脚本を書いたのであれば、頭をなでてやりたい、「でかした!」ってね(笑)。
水川:台本読んだ時点で、「神経質でナイーブな人間なんだろうな」と近しい感じがしました。それと、僕は普段から瞬きが多いんですが、映画の中でも沢山瞬きしてます。それが気になる方もおられるかもしれませんので、今の内に慣れて頂けたらいいなと思います。
違う点は、僕も絶望したり、スベって「いい加減にしろよ!」と落ち込んだりすることは多々ありますが、さすがに死のうと思うことはないです。
僕はスベった後によくサウナへ行って心を整えるんですけど、収録中ひどくスベった時には諦めて早々とサウナのことを考えたりしてます(笑)。
――役作りのために気を付けたことは?
水川:4~5年前から頭髪が禿げたり生えたりを繰り返してまして…治療もしてるんですが、撮影の時には丁度“禿げ期”だったんですよ(笑)。「おじさんの幽霊に憑りつかれた上に頭が禿げ散らかしてたらひどいことになるぞ」とメイクさんが禿げをカバーする努力をして下さいました。役作りはメイクさんがやってくれました(笑)。
――完成作品を観た時のお気持ちは?
水川:率直に、自分が映っているのに違和感があって、気恥ずかしくて、集中して観れなかったです。変な妄想が働いちゃって、最初観た時には全然面白くなかったですね(笑)。でも、後日冷静な状態で観たらとても面白かったです。
――現場の雰囲気は?
水川:現場のキャスト・スタッフを含め、どう考えても僕が一番映画の経験値が低い訳ですから、社会科見学に訪れている感じでした。現場では知らない用語が飛び交ってまして、例えばカメラさんが「パンケーキ持って来て!」と言うんですよ。「お腹空いてるんかな?」と思ったら、カメラの下に敷く台のことだったんです(笑)。他にもいろいろ教えて頂いて本当に助かりました。
――幽霊役の正名僕蔵(まさなぼくぞう)さんとは初共演だそうですが、何かアドバイスをもらったりしましたか?
水川:セリフの量が膨大だったので、初日にセリフの覚え方を質問しました。「役者さんの多くが、自分以外の人のセリフを録音して、それを聞きながら自分のパートを練習している」と教えて下さいまして、それを実践したらよく覚えられました。
正名さんとは撮影中ずっと一緒でして、好きな映画の話や、丁度ウチの奥さんが妊娠中だったので家族の話や…、それと男も引くような下ネタの話なども(笑)。
――それだけ仲良くなれたんですね?
水川:はい、正名さんが居なかったら、僕途中でトンでたと思います(笑)。
――芸人さんとの共演もありましたが、芸人同士だからこそやりにくかったことは?
水川:現場で芸人は僕ひとりでとても寂しかったんですが、久しぶりに芸人さんと一緒だと、「アメリカで日本人に会ったみたいな」(笑)、心細かった時にホッとするような感じでした。でも、普段劇場で会ってる方と撮影現場で会うと、「こいつ俳優ぶってるな」なんて思われるのが恥ずかしくて、なんか無理にふざけてました(笑)。
――水川さんが劇中のおっさん幽霊みたいになったら、誰に憑りついて、何を依頼したいですか?
水川:僕はサッカー選手のイニエスタが大好きなんですが、イニエスタの奥さんに憑りついて、イニエスタのユニフォームを2~3枚持ってきてもらう。
――なんか、それ直接言ってももらえそうですけど、「ちょうだい!」って…。
水川:そうですね(笑)。
――大阪にはよくお仕事で来られると思うんですが、合間の時間の使い方は?
水川:ヒルトンホテルの散髪屋さんやサウナ行ったり、なんば花月近くの天政の肉うどんとかやくご飯のセットや一芳亭の中華や松屋へも食べに行きます。
――大阪の芸人さんと同じですね。
水川:はい、よくお会いしますよ。
――最近、「水川かたまりさんみたいな髪型にして」という方が増えているとか?
水川:そんなことはないでしょっ!(笑)
――今だから言える撮影中の裏話は?
水川:撮影の終盤、その日は終日の撮影で疲労困憊していて、夜にファンの方に「何してるんですか?」と声を掛けられて、つい「映画の撮影してるんですよ」と言っちゃったんです。「やばっ!情報漏洩してしまった!」と後悔したのですが、この日まであの方はそれを口外せずにいてくださって、感謝です!
――本作の注目ポイントは?
ポスターのビジュアルや予告映像を見てホラー映画かなと思われたり、お笑いの世界が舞台になっているけどコメディ映画でもない。ジャンルとしては分かりづらい作品ですが、いろんな角度から楽しめる作品です。観終わった後に、しんどいことや生き辛いことなどを抱えていても、ふっと肩の力が抜けるような、「明日もうちょっと頑張ってみようかな」と気持ちが楽になるような映画になっていると思います。是非ともネタバレしないようなコメントで広めてください。よろしくお願いします。
【STORY】
憧れの構成作家となり頼られる存在になっているように見える関谷一平(水川かたまり)だったが、度重なるクレームやプレッシャーに疲弊し、生きる虚しさを感じてフラっと電車に飛び込もうとする。ところが、隣の駅で起きた人身事故のせいで電車が来ない。死に損なった関谷は自分より先に自死した男に興味を持ち葬儀に行ってみると、なんと一平の前におっさんの幽霊(正名僕蔵)が現れ、「ある男を殺してほしい!完遂するまで一生憑りついてやる!」と脅迫されてしまう。
鬱々とした日々から一変、自分に憑りついた幽霊を振り払おうと必死の行動をとる関谷。そして、死に損なって初めて知る生きている実感と歓び。スクリューボール・コメディのような予測不能な展開に終始魅入ってしまうが、主人公がお笑いの構成作家とはいえ常識的な「普通の人」が通底にあって共感する部分も多い。生前国語教師だったというおっさん幽霊との共同作業に刺激を受け次第に生きる活力が湧いてくる主人公。笑いの中にホッと穏やかな安らぎを感じさせる、そんな作品となっている。
・出演:水川かたまり(空気階段)、正名僕蔵、
唐田えりか、喜矢武豊(ゴールデンボンバー)、
堀未央奈、森岡龍、別府貴之(マルセイユ)、
津田康平(マルセイユ)、山井祥子(エレガント人生)
・監督・脚本:田中征爾(『メランコリック』)
・コント監修:板倉俊之 音楽:Moshimoss
・撮影:ふじもと光明(JSC)
・2024年 日本 1時間49分
・公式サイト:https://shinizokomovie.com/
・製作幹事・配給:クロックワークス 製作プロダクション:ダブ
・©2024 映画「死に損なった男」製作委員会
2025年2月21日(金)~T・ジョイ梅田、なんばパークスシネマ、T・ジョイ京都、MOVIX京都、109シネマズHAT神戸、MOVIXあまがさき 他全国公開
(河田 真喜子)