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人生百年時代、「映画を観て、おしゃべりするのはすごくいい」 『お終活 再春!人生ラプソディ』主演、高畑淳子さんインタビュー

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人生百年時代に人生を謳歌するための新しい「お終活」を提唱し、シニア世代に笑顔と勇気を与えた『お終活 熟春!人生、百年時代の過ごし方』(21)がパワーアップ!青春ならぬ「再春」をテーマに大原家の新たな家族模様を描く『お終活 再春!人生ラプソディ』が、5月31日より絶賛公開中だ。
前作から1年後を舞台に、ひょんなことから、若い頃に思い描いていた夢である「シャンソン歌手」への一歩を踏み出しはじめる主人公、大原千賀子を演じた高畑淳子さんに、今までのキャリアについて、また誰かと語りたくなる本作についてお話をうかがった。
 

 
――――前作の『お終活 熟春!人生、百年時代の過ごし方』はコロナ禍で公開され、舞台挨拶もできなかったそうですが、反響を呼び、続編では主演で再びスクリーンに戻ってこられました。まず今のお気持ちをお聞かせください。
高畑:主演とクレジットされていますが、本作は青春群像劇の逆の、中高年群像劇ですし、今回は藤原紀香さんも友情出演してくださいました。紀香さんは1作目を劇場でご覧になり、あまりに面白かったので、2回目はお父様を誘って一緒にご覧になったと教えていただきました。2作目でオファーがまさか来るとは思わず、すぐに出演を決めてくださったそうです。また、わたしは石橋蓮司さんの大ファンなので、最初にご一緒したときは感動しましたし、本当にいいお芝居をされるんですよ。営業畑で、ああいう仕事の仕方をされていたのがありありと想像できる真一の友人を演じておられます。本当に豪華なキャストの皆さんと一緒に演じさせていただきました。
 
 
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■何を演じても「よくなかった」劇団駆け出し時代と転機

――――高畑さんは、キャリア初期は舞台がメインだったのですか?
高畑:21歳で劇団青年座に入りましたが、力が強かったのでずっとスタッフだったんです。ロクロク(6尺×6尺)という畳2枚分の大きな平台があったのですが、当時は「ロクロクを持てる女優が入ってきたぞ」と重宝がられました。大ヒット映画『飢餓海峡』の原作者としても知られる水上勉さんの「ブンナよ、木からおりてこい」という輪廻転生の作品の舞台が大ヒットしたのですが、人間ではなくカエルやトンボの役だったんですよ。わたしが深窓の令嬢を演じても全然よくない。浮世絵のモデルになる女を演じようにも、水泳をやっていたので肩幅は張っているし、背が高いので和装のかつらをつけると、さらに背が高くなり、何をやってもよくなかったんです。
 
――――そんなご苦労があったとは。意外でした。
高畑:「顔立ちもそこそこ整っているのに、何か足りないのよね」と言われ、30歳で地元香川に帰ろうと思っていたときに二人芝居のイタリア女性役を演じたんです。それが前の年に、小川眞由美さんと橋爪功さんが演じ、大ヒット作「セームタイム・ネクストイヤー」でした。今は消防法により立ち見は禁止されていますが、当時は本多劇場で客席350席では足りず、300人の立ち見客が入ったこともあったんです。SNSがまだない時代ですが、評判が評判を呼び、お客さんが押し寄せた。そこでわたしも自分がイタリア系の雰囲気を持っているということに気づいたのです。わたしの母も見合い話を決めてくれていたのですが、「もう1年待ってみようか」と。わたしも本当に演じるのが楽しかったので、もう少しやらせてと言っているうちに、東京がバブルになって劇場が林立し、あちらこちらでプロデュース公演が上演されたので、外部出演で呼ばれ、1年で12〜13本ぐらい出演しました。そこでようやく俳優としてのキャリアが実質的にスタートしましたね。
 
――――演劇のキャリアを重ねていく中、テレビのご出演には少し時間がかかったと?
高畑:テレビでみなさんに認知していただくきっかけになったのは「仮面ライダーBLACK RX」(1988~1989)の諜報参謀・マリバロン役です。悪役で口から火を噴くんですよ。役者で生きていくのは難しいなと思いました(笑)。30歳を過ぎて、はじめて「3年B組金八先生」(第4シリーズ 1995)に呼んでいただいたのですが、その後「淳子さんは普段は面白いのに、演技になると生真面目になるね」と指摘されたことがあり、ちょうど「白い巨塔」(2003〜2004)に出演したころに、バラエティーに出演しはじめ、そこからテレビ出演も増えていきました。
 
 
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■大ヒット作「セームタイム・ネクストイヤー」で演じた女性の年齢ごとの生き様

――――どの役でも全力投球されていますが、役作りの源は?
高畑:30歳でこれが最後の演劇生活と思って挑んだ「セームタイム・ネクストイヤー」は、どんなことがあっても年に一度しか会わないふたりの6つの場面から構成される演劇です。23歳からはじまり、すでに家庭があるのにジョージに電話してしまう28歳、ジョージとの逢瀬の間に出産してしまう33歳…と、53歳までの6場面を演じたことで、演技のベースができたのかもしれません。男性はずっと公認会計士のままですが、女性は若い頃に出産したため学校に行けなかったのですが、ジョージに出会ったことで知識欲に芽生え、30歳ぐらいから大学に通い出し、その後会社を経営するまで成長していきます。まるで6人の女性を演じているような気持ちになる演劇で、こう変えたら少し違うキャラクターに見えるかなという演技のエッセンスを覚えたのかもしれません。
 
――――ひとりの人間だけど、年代ごとにまるでキャラクターが違うかのように演じたというのは、実際にわたしたちが無意識にやっていることなのかもしれませんね。
高畑:わたしは常日頃から五芒星のように役を演じていきたいと思っています。優しいお母さんを演じたら、次は結婚せずに仕事に打ち込んでいる検事官を演じるとか、今度はアル中のお母さんなど、そういう役の選び方をしたいと。そうでなければ、どうしても優しいお母さんの役ばかりになってしまうんですね。わたし自身も多重人格の部分があるので、自分の知らない面をいつも見ていたいという部分はあるかもしれません。
 
――――高畑さんの俳優としての突き抜けぶりが素晴らしく、そこに魅力を感じている女性ファンも多いと思います。
高畑:何かに近づきたいという気持ちがすごく強いですね。稽古場で、何かに近づくためにトライしたいことは、何も恥ずかしくないと思っているし、逆に中途半端に近づけないまま舞台に立つことが一番恥ずかしい気がします。
 
――――この作品は人生百年時代の生き方がテーマですが、心身健康でいつづけるために、どんなことに取り組まれていますか?
高畑:健康オタクだった母も90代の今、施設からしょっちゅう連絡が入る状態で、ああはなりたくはないと思う一方、誰もが通る道であると思うと、これからどうしようかと考えたりもします。実は映画を観た後におしゃべりをするというのは、ものすごくいいんですよ。しゃべるという行為がまず非常にいいし、自分の考え方と違う人がこんなにいるんだということを学習するのに最適だと思います。今の戦争もそうですが、自分と同じ考えの人だと思っていると悲劇が起きるわけで、他者を理解する上でも本当にオススメしたいです。
 
 
 
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■歌っていたシャンソンが役に繋がって

――――高畑さんはもともとシャンソンを歌っておられたそうですが、千賀子がシャンソン歌手を目指すという設定はそこから生まれた、いわゆるあて書きなのかと想像していました。
高畑:わたしがシャンソンを歌い始めたのは、宮本亜門さんの「Into the Woods」にパン屋の女房役で出演していたときに、シンデレラの王子様役で出演され、わたしとキスシーンもあった劇団四季の藤本隆宏さんがきっかけだったのかもしれません(笑)。それが楽しい思い出になり、藤本さんがパリ祭の司会をなさっていると知るや、「それなら出演します!」と手を挙げたんです。そのパリ祭は多分野の方が出演されるチャリティーコンサートだったので、歌が上手くなくてもいいと言われ、そこへの出演がシャンソンデビューになりました。翌年からは本当のパリ祭に出演し始めたのですが、もう緊張してしまって…。実際、プロの方も緊張されるような舞台なのですが、その中で戸川昌子さんの歌が一番好きでした。歌に芯があるんです。お芝居もそうかもしれないと、すごく学ぶことが多かったですね。
 香月監督は、わたしが出演したパリ祭に来てくださり、それなりにシャンソンを歌っている姿を見て、シャンソン歌手を目指しながらも志半ばで家庭に入ってしまったというプロットを考えられたのではと思いました。ですから、収録のときも、上手に歌うのではなく、そうではなかった人がもう一度お稽古をして、人前で歌えるところまで漕ぎ着けたという歌でいいんだとか、やってみたかったことが実現したという歓びを表現できればという気持ちで挑みました。
 
 

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■世の夫を体現した真一役の橋爪功

――――夫婦のコミュニケーション問題を実にリアルに演じておられるのが、夫、真一役の橋爪功さんです。もしあの真一が高畑さんの家に夫としていたらどう思われますか?
高畑:早いうちに教育しておけばよかったと思うでしょうね(笑)。橋爪さんはNGが出ても「いいんだよー、どうやってもいいんだよー」といなすのですが、前作の金婚式のラストシーンで、夫婦の若い頃の思い出ムービーが流れたとき、横でだだ泣きしているんですよ。本当に可愛らしくて、全てをかっさらっていく素晴らしい俳優です。世のご主人は大概あんな風ではないかと思いますので、ぜひ、ご主人を映画に引っ張ってきて、「あなたはこれよ!」と。ご夫婦でも観ていただきたいし、親子でも観ていただきたい。家に篭っているお友達がいたら、ちょっと出かけないと声かけをしたり、ぜひお誘い合わせの上、劇場にお越しください!
(江口由美)
 

 
<作品情報>
『お終活 再春!人生ラプソディ』(2024年 日本 118分)
脚本・監督:香月秀之
出演 : 高畑淳子 剛力彩芽 松下由樹 水野勝 西村まさ彦 石橋蓮司  
藤吉久美子 増子倭文江 LiLiCo 窪塚俊介 勝俣州和 橋本マナミ
藤原紀香(友情出演) 大村崑 凰稀かなめ 長塚京三 橋爪功
2024年5月31日(金)より全国ロードショー
公式サイト→https://oshu-katsu.com/2/
©2024「お終活 再春!」製作委員会  
 

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