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『ニューヨーク・オールド・アパートメント』マーク・ウィルキンス監督インタビュー

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大都会ニューヨークの片隅で懸命に生きる移民家族に訪れた

悲劇と成長を優しいまなざしで描いたヒューマンドラマ。


NYOA-pos.jpg安定した生活を求めて祖国ペルーからアメリカへ渡り、ニューヨークで不法移民として暮らすデュラン一家。母ラファエラはウェイトレスの仕事をしながら2人の息子を1人で育て、息子たちも配達員として家計を支えている。街から疎外された自分を“透明人間”だと憂う息子たちは、謎めいた美女クリスティンと出会い恋に落ちる。一方、ラファエラは白人男性からの誘いに乗って飲食店を開業するが……。


2人の息子役にはオーディションで選ばれたペルー出身の双子アドリアーノ&マルチェロ・デュランが抜てきされ、「悲しみのミルク」のマガリ・ソリエルが母ラファエラを演じた。短編「ボン・ボヤージュ」が第89回アカデミー賞短編映画賞にノミネートされたマーク・ウィルキンス監督が、オランダの作家アーノン・グランバーグの小説「De heilige Antonio」を原作に長編初メガホンをとった。


下記にマーク・ウィルキンス監督のインタビューをご紹介します。
 



希望は私たちを無防備で愚かにし、私たちの最大の欠陥になり得ると同時に、人間の最大の美徳の一つでもあります。『ニューヨーク・オールド・アパートメント』は、希望の表と裏を両方描いています。より良い生活を願う。受け入れられることを願う。愛されることを願う。あるいは、初めて性体験をして、性愛の神秘を体験する。


NYOA-500-1.jpg前作の短編『BON VOYAGE』は、ヨットで休暇中に沈没する難民船に遭遇するという物語でした。つまり、「特権」と生き残ろうとする人間の「意志」の対峙です。長編デビュー作においては、移民をただ「見る」だけでなく、内側から「観察」するようにして描く作品にしたいと思っていました。


ニューヨークに引っ越してから数年後、私はアーノン・グランバーグの小説『THE SAINT OF THE IMPOSSIBLE』を発見しました。ウィット、ユーモア、詩的な美しさに満ちたこの移民の物語に、私が「アメリカン・ドリームの首都」に感じ続けてきた疑問が集約されていると感じました。


NYOA-500-2.jpg本作は甘美な物語です。純朴そのもののティーンエイジャーの双子「ポールとティト」ミステリアスなクロアチア人女性「クリスティン」、兄弟の母親「ラファエラ」スイス人の恋人「エヴァルト」。これらの登場人物たちは、私自身が「見知らぬ人」「部外者」として扱われた体験に由来する拒絶の感情や、住んでいる場所に属せていなく「愛され、受け入れられたい」と切望した、かつての体験による産物です。

 
ポールとティトの中には、私自身と弟のルカが投影されています。ポールとティトと同じように、私たちはすべてを一緒に経験しました。母親の新しい恋人について、歓迎されていないと感じていた新しいコミュニティについて、そして十代の頃に気になっていた女の子について、考えや感情を交換しました。

 
NYOA-500-3.jpg素晴らしい国際的なスタッフとキャストとともに、私たちは責任の所在を問いかけたり、いたずらに哀れみを誘発するだけではない「移民の物語」を制作することに挑戦しました。主人公たちの等身大な姿を描くことで、実存を保証されたいという私たちの普遍的な欲求を深掘りしました。あなたが、不法滞在しているペルー人の自転車配達人であろうと、自暴自棄なクロアチア人の恋人であろうと、孤独なスイスの大衆小説家であろうと、人々は「自分の人生」を受け入れられながら生きたいという願望に突き動かされているという点では、同じなのです。

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私たちはにぎやかなニューヨークの路上で『ニューヨーク・オールド・アパートメント』を撮影しました。道路を封鎖して撮影するのではなく、町が私たちの映画の中に入り込んでくるのをそのまま撮影しました。俳優とスタッフにとって、主要な撮影場所であるマンハッタンとブロンクスの忙しない雑踏の予測不能な動きに対処するのは大きな挑戦でした。ポールとティトがニューヨークで「透明」であると感じたのと同じように、私たち撮影クルーも町に紛れるように努めました。ニューヨークという都市が、本作の 6 番目の主人公、あるいは敵対者であるということです。


NYOA-500-7.jpgポールとティトを演じたアドリアーノとマルチェロに最大の賛辞を送りたいと思います。二人とも本作が演技デビューです。ペルーのキャスティング・ディレクター、ホルヘ・ビジャフェルテはあらゆる手段を講じて、ペルー全土でポールとティトを演じられる若い俳優を探しました。アンデス山脈の高地・クスコで、彼はアドリアーノとマルチェロを発見しました。私が初めて彼らに会ったとき、二人まだ16歳でした。彼らはギターを弾き、英語を話しましたが、これまで映画界に足を踏み入れたことも、自分たちの街を離れたこともありませんでした。しかし、彼らの演技の才能は素晴らしく、詩的なカリスマ性がポールとティトに非常に近かったので、彼らに「ニューヨークに来て一緒に撮影しないか」と頼むに至ったのです。
 


【マーク・ウィルキンス監督の略歴】

受賞歴のある短編映画やテレビCMを長年監督し、本作が長編映画デビュー作となる。前作の短編映画『BON VOYAGE』は、地中海における深刻な移民問題に焦点を当てたストーリーで、世界中の70の映画祭で上映され、第89回アカデミー賞の最終選考に残り、スイス映画賞など46の賞を受賞した。

『HOTEL PENNSYLVANIA』(原題)は 2012年 栄誉あるクレルモン・フェラン映画祭(フランス)でプレミア上映された。『ニューヨーク・オールド・アパートメント』と同様に、アメリカン・ドリームとその夢追い人を観察する作風の作品だ。

マルクはスイスで生まれたが5歳のときに両親とギリシャ・クレタ島に渡り、コミューンで暮らす。その後、母親とその新しい恋人に付いていきドイツに渡り、フライブルクで教育を受ける。早々に学校を辞め、独学で映画製作の技術を身につけ、ヨーロッパ中で10本以上の長編映画製作に携わり、さまざまなポジションを経験する。

ニューヨークに8年間住んだ後、現在はウクライナ・キーウ在住。
 


監督:マーク・ウィルキンス
製作:ジョエル・ジェント
原作:アーノン・グランバーグ「De heilige Antonio」
脚本:ラ二=レイン・フェルタム
撮影:ブラク・トゥラン
編集:ジャン・アルデレッグ
音楽:バルツ・バッハマン ブレント・アーノルド
出演:マルチェロ・デュラン、アドリアーノ・デュラン、マガリ・ソリエル、タラ・サラー、サイモン・ケザー
2020年製作/97分/PG12/スイス
原題:The Saint of the Impossible
配給:百道浜ピクチャーズ
©2020 - Dschoint Ventschr Filmproduktion / SRF Schweizer Radio und Fernsehen / blue
公式サイト:https://m-pictures.net/noa/

2024年1月12日(金)~シネマカリテ新宿、シネ・リーブル梅田、アップリンク京都、シネ・リーブル神戸、2月16日(金)~シネマート心斎橋 他全国順次公開


(オフィシャル・レポートより)

 

 

 
 
 
 

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