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「芦生の森に入ったときの感動が作品に影響している」石橋義正監督、山田孝之が10年ぶりのタッグとなる『唄う六人の女』を語る

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『ミロクローゼ』の石橋義正監督が10年ぶりに山田孝之とタッグを組んだ最新作『唄う六人の女』が、10月27日(金)より大阪ステーションシティシネマ、TOHOシネマズなんば、京都シネマ、OSシネマズ神戸ハーバーランド他全国ロードショーされる。


W主演の竹野内豊と山田が、森の中で六人の女性たちに監禁される男を演じる本作。個性豊かな六人の女を演じる水川あさみ、アオイヤマダ、服部樹咲、萩原みのり、桃果、武田玲奈が、森の中でそれぞれの魅力を活かし、ふたりの男と不思議な体験を繰り広げる。京都府南丹市の原生林をはじめ、豊かな自然の森の中で繰り広げられる壮大なミステリーだ。

 本作の石橋義正監督山田孝之さんが語った本作への想いをご紹介したい。

 


■人間の嫌な部分を際立たせる役(山田)

―――10年ぶりに新作を作るに至った経緯は?

石橋監督:前作以降は、舞台や展覧会活動をしていたのですが、5年前から本作のシナリオに着手しました。ある程度それが出来上がった段階で、山田孝之さんに見てもらい、そこから1年ほどかけてシナリオを修正し、撮影に臨んだわけです。


utau6-9.16kakomi-yamadai-240.JPG山田:石橋監督と本当にしばらくぶりにお会いして、新作を山田さんと竹野内さんにお願いしたいとオファーされた数日後に、竹野内さんとバッタリお会いしたんです。もともとご近所に住んでいたのにそれまで全くお会いすることなかったので、これはご縁があるということなのかなと思い、出演を正式に決めました。人間の欲がとても強く出ている役で、欲を追いすぎるとこうなるという象徴にならなければいけなかった。人間の嫌な部分を際立たせ、そこを痛感してもらう必要がありました。


―――山田さんはプロデューサーも担当されていますね。

山田:撮影をしているときは芝居をするだけですが、映画ができあがってから、どんなイベントをやるか、どういう打ち出し方をしているかは、いつも通り監督と話し合いながらやっています。今回はロケ地である京都府南丹市の自然の中で上映しましたし、屋内で上映するときも自然を感じてほしいと思っていたところ、香りを使ってはどうかという提案をいただき、特別イベントとして現在進めているところです。


■山田さんは、オリジナルを作ることが難しい中、実現のため力を貸してくれた(石橋)

―――実際に10年ぶりに映画でタッグを組んでの感想は?

石橋監督:『ミロクローゼ』は全然違うキャラクターを一人三役で演じわけてくださいました。演技だけでなく、多彩なパフォーマンスを要求される中で、殺陣のシーンも僕が思っていたイメージを超える動きをやってくれました。山田さんでなければ絶対に作れない作品でした。今回も、ファンタジーの中でリアリティーを持たせるためには、山田さんの鬼気迫る演技が活きているし、企画段階から本作が実現するように尽力いただいた。普通にタッグを組むという部分だけでなく、オリジナルを作ることが難しい中で、それを実現できるように力を貸してくださっていることに、本当に感謝しているし、山田さんしかできなかったことだと思います。


―――山田さんや竹野内さんへはどんなディレクションをしたのですか?

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石橋監督:山田さんに説明はしましたが、あとは自分で考えて役を作ってくださいました。竹野内さんとは、時間をかけてこの映画のテーマをお話しさせていただく時間を作りました。共感していただいたからこそ、ひとつひとつの萱島の心情や精神的な状態を説明しました。シナリオを読むだけではわからないような、わたしの中で設定している裏テーマやさまざまなレイヤーがあるので、どのレイヤーを伝えると演者にとっていいのかを考えて、竹野内さんに伝えました。撮影中も竹野内さんとやりとりを多く重ねましたね。


―――『唄う六人の女』というタイトルですが、女たちはしゃべらないのが印象的でした。

石橋監督:声を全く発しない方が、逆に強いメッセージになり、伝わるのではないかと思いました。もう一つは本作を音楽劇にしたかったんです。劇伴は40曲ほど作りましたし、夜の儀式のシーンでは、自分で劇伴を作り、編集をしたりと同時進行し、その後プロの方にアレンジしてもらう形をとりました。自分の記憶に残っている映画は音楽が非常に重要なので、今回の作品もそうしたいと思いました。


■最初は昔話みたいな映画にしたかった(石橋)

―――ファンタジーであり、とても寓話的だと思いましたが、何かインスピレーションを受けた昔話などがあれば教えてください。

石橋監督:最初のプランを考えるときに、何か懐かしさがある昔話みたいな映画にしたいというアイデアはありました。「食わず女房」という昔話があるんですよ。よく働く女と結婚したのだけど、全然食べない。おかしいなと思って外出したふりをして天井裏から覗くと、女の頭が割れて、そこが口になってご飯を山盛り食べていた。そんな話なんだけど、見た目とのギャップという意味で、ひょっとしたらこの作品に影響しているかもしれませんね(笑)


utau6-main-550.jpg―――原生林での撮影についてや、それを経てより自然に対してどんな考えを抱くようになったのかを教えてください。

石橋監督:最初、東京でもそれっぽく撮れるのではと思いましたが、実際に芦生の森に入ってみると、そんな撮り方では絶対に伝わらないと感じました。芦生の森に入ったときの感動や、気持ちを伝えて撮影をお願いしたときの感動が、すごく作品に影響しているし、そのことをスタッフと共有しなければいけないと思いました。現在、本作を漫画化していますが、著者にも丸一日芦生の森へ一緒に入ってもらい、いろんなところを回りました。やはり五感で感じないとわからないですから。森は空気がきれいで気持ちいい一方で、何が起こるかわからない緊張感がある。ヒルに噛まれるかもしれないし、そういうことも含めて生き物とともにいるのが森なんです。

 

(江口 由美)


『唄う六人の女』

(2023年 日本 112分)
監督・脚本:石橋義正
出演:竹野内豊、山田孝之、水川あさみ、アオイヤマダ、服部樹咲、萩原みのり、桃果、武田玲奈
制作協力:and pictures
配給:ナカチカピクチャーズ/パルコ
(C) 2023「唄う六人の女」製作委員会
公式サイト:https://www.six-singing-women.jp/

2023年10月27日(金)~全国のTOHOシネマズ系、大阪ステーションシティシネマ、京都シネマ OSシネマズ神戸ハーバーランド  他全国ロードショー

 


 

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