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家族のために捨て身で挑む!破格スケールの大阪映画『西成ゴローの四億円-死闘篇-』上西雄大(監督・脚本・主演)、木下ほうか(出演)、加藤雅也(出演)インタビュー

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 2020年よりロングラン上映を記録した『ひとくず』、赤井英和とタッグを組んだ『ねばぎば 新世界』の上西雄大監督が、黒社会に手を染めながら娘のために奮闘する壮大な二部作『西成ゴローの四億円』『西成ゴローの四億円-死闘篇-』を完成させた。2021年10月に開催された京都国際映画祭でワールドプレミア上映された同作が、いよいよ2022年1月28日(『西成ゴローの四億円』)と2月4日(『西成ゴローの四億円-死闘篇-』)より関西で先行公開される。
 記憶を失い、刑期を終えた今は西成の日雇い労働者の土師晤郎(上西雄大)、人呼んで「人殺しのゴロー」が、自分が政府の諜報機関員であったこと、難病の娘の手術代を工面するため妻が苦境に陥っていることを知り、治療に必要な4億円を稼ごうと闇社会で奮闘する人情あり、アクションありのクライムエンターテインメント。後篇となる『西成ゴローの四億円-死闘篇-』では、新型ウイルスを題材に、石橋蓮司、奥田瑛二、木下ほうかが演じる各組織のフィクサーたちが大きく動き出し、数々の死闘が繰り広げられる。『ひとくず』を彷彿とさせる親子愛は健在、さらに毎作パワーアップしている徳竹未夏、古川藍が今回は姉妹役を演じ、アクションに恋にと奮闘する様子も見どころだ。そして、一番の見せ場と言える加藤雅也が演じるアサシンヘッド、ゴルゴダとゴローの死闘は、アクションだけでなく、関西弁のボケ・ツッコミ対決も存分に楽しめる。色とりどりな西成の住人たちが、上西作品ならではの味わい深さを醸し出している。
 本作の監督・脚本・主演を務める上西雄大さん、出演の木下ほうかさん、加藤雅也さんにお話を伺った。
 

 
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――――今回、西成を舞台にした意図は?
上西:前作の『ねばぎば新世界』は実在する新世界をモチーフにしていますが、『西成ゴロー〜』の舞台となった西成は、『バッドマン』シリーズで言えばゴッサムシティのようなものです。ただ西成というキーワードは関西人にとってある種のイメージがあるので、その傍に生きる人間を描き、そこで生きるヒーローを描いています。
 
加藤:実に面白い街だし、あり得ないことがあり得ると思わせる街というのは、それだけで映画なんだよね。
 
 

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■上西組初参加の加藤雅也が語る上西監督の才能と、日本映画界の問題点

――――木下さんは『ひとくず』の時、まだ映画監督としては無名だった上西さんの脚本を読んで出演を快諾し、木下さんが出演されていることがその後映画を広めて行く際にも大きな力になったと思います。あっという間に、本作のようなビックバジェットのエンターテイメント大作を手がけられるようになりましたね。
木下:当時は、こんな大作を撮ることになるとは思わなかったです。僕自身は見ず知らずの若い監督の卒業制作に出演することもあるし、中には撮影したけれどお蔵入りになってしまう作品もたくさんある。そんな中の一つぐらいと思っていました。初めて夜中のファミレスで上西さんに出演を打診された時は、本当に映画ができたらいいなという感覚でした。
 
――――加藤さんは『ひとくず』や上西さんが映画を撮られていることを以前からご存知だったのですか?
加藤:主演作『影に抱かれて眠れ』に上西さんも出演されていて、僕に「映画を作ったんですけど、観てくれませんか」とDVDを渡してくれたのですぐに拝見しました。『息もできない』のような、本当に釜山で育った人がそこで作った釜山の映画という匂いがあり、すごく面白いと伝え、当時はまだ監督として無名だったけれど、僕は「絶対に面白いからやりな!」と、応援コメントを書いたりもしました。上西さんは最初からすごい才能だと思っていたし、誰でも最初は小規模の作品から始まりますが、ハリウッドなどでは才能が認められるとすぐにビックバジェットの映画を撮れる。『西成ゴロー〜』のような作品を撮ったことへの驚きがあるということは、日本の現状がそうはなっていないからで、僕にとってはナンセンスですね。日本映画は300万円で撮った映画が素晴らしいから、次は倍の600万円で作ってみろという発想だから発展せず、ダメになってしまう。全ては因果応報です。本当なら次は1億円、その次は10億円出さないと。上西さんはまだまだ伸びる余地はあると思うので、あとは製作費をどう調達するかですね。
 

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■関西弁をしゃべる加藤のカッコよさから生まれた、ゴローとゴルゴダの名シーン

――――加藤さん演じるゴルゴダは、ゴローの敵ではあるけれど、二人のやりとりや対決を見ていると、どこか通じ合うところも感じられ、男子高校生のケンカみたいな愛らしさも感じられました。あのアクションやセリフの応酬はどのように作り上げていったのですか?
上西:加藤さんとは、フジテレビの終戦ドラマでご一緒させていただいたのが最初でしたが、こんなにカッコいい人間がいるんだと感動しました。お話をさせてもらうと、関西弁をしゃべる加藤さんがまたカッコよくって、ゴローとも渡り合えると思ったので、脚本も加藤さんは当て書きにして、関西弁でやり合えるようにしました。映画では描いていませんが、ゴルゴダは戦場で育ち、子どもの頃から機関銃を持っていたところを百鬼万里生(なきりまりお)に拾われてアサシンヘッドになったという生い立ちを設定し、ジュリアーノ・ジェンマのくだりではそのイメージを受け渡し、共有し合いました。
 
加藤:「知らんけど」の応酬は、上西さんが言っているのに被せてみたら、それでGOサインが出ましたし、最後ももう少しカッコよくしたいねと試行錯誤したんです。単に殺すとかやっつけるというのではない、殺し屋同士しかわからない世界観を出したくて、ジュリアーノ・ジェンマがなぜか出てきて打ち合う。生まれる場所が違っていたら逆の立場になっていたかもしれないし、友達になっていたかもしれない。そういう感覚が出せればいいなと思いましたね。

 

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■名ラスボスを演じた木下ほうか、「純粋な関西のノリを作品に残せた」

――――今回は奥田瑛二さんや石橋蓮司さんなど、錚々たる俳優が個性的なラスボスを演じる中、木下さんが演じる秘密結社テンキングスの百鬼万里生は異彩を放っていましたね。超高速瞬きなど、不気味さと可笑しさが表裏一体でした。
木下:最初はこんなでっかい帽子を被って大丈夫かなと、抵抗がありましたね。馴染むまでに少し時間がかかりましたが、映画館で観るともっと帽子のツバが大きくてもよかったと思います。僕たちの主観で見ているものはアテにならないですね。杖もカッコつけ過ぎじゃないかとか。「杖、持つ?」と思いましたね。
 
上西:死闘篇に来ていただいたラスボスの皆さんは、衣装が被らないように、それぞれに合わせた印象深いものにしようと、すごくこだわりました。ゴルゴダの紫のロングコートもオーダー品ですし、百鬼万里生もずっとスーツ姿です。逆に石橋蓮司さんは、ずっとヤクザの衣装ですね。
 
木下:このキャストの中だとよほど頑張らなければ印象が薄れてしまう。とはいえ、我々は見せかけだけ作り込んでもバレるのです。発する言葉が重要ですから、今回、それはうまくいったこともありますね。関西弁の微妙なリズムで脅してみたり、関西人しかやり合えないパチパチ瞬き合戦とか、純粋な関西のノリを作品に残せたことがうれしいです。ただ、それが観客に伝わるかどうかは別ですが。東京の先行公開では何も聞こえてこなかったな…。
 
加藤:例えばアメリカで言えば『プリティ・ウーマン』のリチャード・ギアは彼しかできない演技をしているけれど、普通の人を演じているのでアカデミー賞には届かない。普通の人を演じることの難しさがなかなか認知されないんです。ほうかさんが演じた百鬼万里生は他の人には演じられない。よくわからない人物を、ほうかさんが演じて「普通にあるな」と思わせたのが面白いんです。脚本では百鬼万里生が突然ブチ切れて標準語で話すところを、アドリブで関西弁にてまくしたてたのは、名シーンですよ。
 
――――新種のウイルスという設定も登場しますが、コロナと重なるウイルスを映画の中にも入れようとした狙いは?
上西:まさにコロナ禍の真っ只中で脚本を書いていましたが、その当時映画を作っていた人は、世界にコロナがあるのかないのかを選ばざるをえない。全くなくすのも不自然だし、描いても描ききれない。だから国際陰謀論的なコミックの世界を取り入れながら、擬似的に描いています。
 
 
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■関西のリズムがある、関西発信の映画

――――加藤さんは奈良、木下さんは大阪とお二人とも関西出身、特に加藤さんは久しぶりの大阪ロケ作品ですね。
加藤:かつては「ミナミの帝王」など関西発のドラマに呼んでもらいたいと思ったことがありましたが、関西出身というイメージがないせいか、オファーがなかった。それは、僕がデビュー後自ら外国に行ってしまったからで、原因を作ったのは全て自分、因果応報なんです。だから、こうやって関西弁の映画ではなく“関西の映画”に出演できるのはうれしいです。
僕の出演作で『彼女は夢で踊る』は広島、『ココロ、オドル』は沖縄で撮っているのですが、それぞれにその場所の空気感があり、時間の流れなのか何かがやっぱり首都圏で撮るのとは違うんです。それが面白いので、今後も関西のリズムがある、関西発信の映画を作ってほしいし、出演したいですね。
 
木下:僕は大阪出身なので、めちゃくちゃトクしましたね。上京して、標準語の次に多い言語を使う劇が関西弁なんです。Vシネのレギュラーもやらせてもらいましたし、つくづく関西人で良かったと思っています。
 
上西:関西人だからこそ手渡せるニュアンスがあるんですよ。
 
木下:それは関西人の間とノリなんです。これはなかなか(関西人を演じようとする人に)伝えにくい。
 
――――ありがとうございました。最後に、これからご覧になるみなさんに、メッセージをお願いいたします。
上西:ロングラン上映の『ひとくず』からずっと映画を作り続けていますが、『西成ゴロー〜』は監督として作った最新作であり、今の集大成が『西成ゴローの四億円-死闘篇-』です。『西成ゴローの四億円』と2本合わせて、ぜひご覧いただければと願っております。
(江口由美)
 
 

<作品情報>
『西成ゴローの四億円-死闘篇-』(2021年 日本 124分)
監督・脚本・プロデューサー:上西雄大
出演:上西雄大、津田寛治、山崎真実、徳竹未夏、古川藍、笹野高史、木下ほうか、阿部祐二、加藤雅也、松原智恵子、石橋蓮司、奥田瑛二
2022年2月4日(金)よりイオンシネマ シアタス心斎橋、2月5日(土)より第七藝術劇場、2月11日(金・祝)より京都みなみ会館、2月18日(金)よりアップリンク京都他全国順次公開
 
『西成ゴローの四億円』(2021年 日本 104分)
監督・脚本・プロデューサー・編集:上西雄大
出演:上西雄大、津田寛治、山崎真実、徳竹未夏、古川藍、波岡一喜、奥田瑛二
2022年1月28日(金)よりイオンシネマ シアタス心斎橋、京都みなみ会館、1月29日(土)より第七藝術劇場、2月11日(金・祝)よりアップリンク京都他全国順次公開
 
公式サイト →  https://goro-movie.com/
 
(C) 上西雄大
 

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