(2021年3月13日(土) シネ・リーブル梅田シネマ4にて)
ゲスト:柳楽優弥(主演)、KENTARO(監督)
自堕落な生活を送っていた青年が、
モンゴルの大草原を旅しながら成長していくロードムービー
『誰も知らない』以来の即興的演技に、手応えを感じる柳楽優弥
年々目覚ましい活躍をみせる柳楽優弥・主演、モンゴルのスーパースター、アムラ・バルジンヤム共演、そして俳優でもあるKENTARO監督の初長編作品となる映画『ターコイズの空の下で』は、モンゴルを舞台にした日本・モンゴル・フランスの合作映画である。2月26日から東京をはじめ全国順次公開されているが、関西では3月12日(金)に公開初日を迎え、13日(土)にシネ・リーブル梅田にて、柳楽優弥とKENTORO監督による舞台挨拶が行われた。
緊急事態宣言下の東京の映画館と違って、満席となった客席を見てお二人とも嬉しそう。ドイツのマンハイム・ハイデルベルク国際映画祭では、「FIPRESCI(国際映画批評家連盟賞)」と、“型破りかつ表現力に優れた作品”に贈られる「才能賞」の二冠に輝いている。その映画祭での熱気を思い出したのか、モンゴルでの撮影秘話やお互いの意外な得意技を披露し合ったり、柳楽優弥は監督に促されてタップダンスを踊って見せたりと、思わぬ特典満載の楽しい舞台挨拶となった。
【STORY】
大企業の経営者を祖父に持つタケシ(柳楽優弥)は、祖父の三郎(麿赤児)からモンゴルへ人探しに行くように言われ、アムラ(アムラ・バルジンヤム)というちょっと得体の知れないガイドと共にモンゴルへ行く。東京で自堕落な日々を送っていたタケシにとって、携帯も通じない、言葉も分からない、迷子になって狼に遭遇するなど、カルチャーショックと共に死ぬほどの思いをしながら、物質的なものではなく精神的な豊かさの中で成長を遂げていく。
タケシの旅には、祖父の若き日の悔恨の想いが込められていた。第二次世界大戦後に捕虜としてモンゴルで強制労働に就かされていた祖父は、モンゴルの女性との間に娘を儲けていたのだが、帰国後行方知れずとなっていた。タケシにとって祖父の娘を探す旅は、祖父が辿った道を追体験する旅と重なり、雄大な大自然の中で暮らすモンゴルの人々の大らかさや逞しさに触れながら、人間として大きく成長していくのである。
(以下は舞台挨拶の模様です。)
――柳楽さんは、3か国の合作映画に参加されて、こうして公開されたお気持ちは?
柳楽:僕にとって初めての合作映画で、スタッフさんやら5か国語ぐらいの言葉飛び交っている現場でした。こうして皆さんに観てもらえて本当に嬉しいです。物質的な豊かさではなく精神的な豊かさで成長していくタケシを観て、楽しんで頂けたら嬉しいです。
――KENTARO監督は、初めての長編作品ということですが、『ターコイズの空の下で』というタイトルに込めた想いは?
K監督:モンゴルの詩人が「Oyuu」という言葉を使っておりまして、「ターコイズ」という意味なんですが、とても美しい言葉だなと思ったんです。
――現地でそのターコイズの空をご覧になった訳ですが、如何でしたか?
柳楽:とても綺麗でした。
K監督:私が住んできた町というのは、東京もそうですが、海抜40m位しかないような所ばかりで、モンゴルは標高が高くて、ウランバートルでも1400m近くあるんですよ。さらに田舎へ行って撮影した所は2600~3000m位の所で、空気も薄くて雲がすぐそこにあって、星が近くてとても綺麗に見えました。プラネタリウムではない、本物の美しさがありました。
――ゲルでの生活がひと月近くあったようですが、一番印象に残っていることは?
柳楽:アムラに教えてもらって、プレイリードッグを解体して焼いて食べました。僕も馬には乗れますし、アムラも200頭位の馬を持っているような人なんですが、監督の乗馬テクニックにはびっくりしました。ヒューっと急停止する時などプロ級のテクニックなんですよ。監督から乗馬の指導もしてもらいました。監督は、『タクシー』や『ラッシュアワー』にも出演されている俳優としての面もあるし、監督業も大学で学んでおられていて、いろんな知識もあるし、大好きです!
K監督:僕も大好きです。柳楽君を、“作った役”ではなく、一番ピュアな状態で見せられてとても嬉しかったです。演技は作って一方的に見せるものではなく、役者と役者との間にできたエネルギーで創り上げるものだと思います。この映画の評価はこれからですが、柳楽君と一緒に映画製作の体験できてとても嬉しいです。
――主人公のタケシは忘れられない経験をして成長する訳ですが、柳楽さんにとって忘れられない経験とは?
柳楽:沢山ありますが、節目節目で厳しく指導して下さった方々にお会いできたことです。デビュー作『誰も知らない』では是枝裕和監督に、その後の舞台『海辺のカフカ』では蜷川幸雄先生にとても厳しく指導して頂いて、成長にできたかな?と思っています。それから護身術の道場の先生にも厳しく指導されています。
――厳しくされた方がいいんですか?
柳楽:勿論、褒められた方が嬉しいのですが、厳しくされると「燃えてんな!」と熱くなってくるんです(笑)。
――KENTORO監督とはどうでした?
柳楽:厳しいとか怒る訳ではないのですが、目指しているもののハードルが高くて、そういう人と一緒にいると自分も成長できるような気がして、とても楽しかったです。撮影後も電話で相談するぐらい仲良しです。
――KENTARO監督から見て柳楽優弥さんはどんな俳優ですか?
K監督:彼はとてもピュアで素直な人です。それは役者にとってとても大事なことだと思います。それに、彼は今英語を勉強していますので、今後は海外でも活躍する姿を見られると思いますよ。
柳楽:4か国語を喋れる監督は、何語が一番得意なんですか?
K監督:フランス語かな?今は日本語を何とか喋ってるけど、時々変な喋り方をすることがあります(笑)
緊急事態宣言が終わって、こうして大勢の皆さんに映画を観て頂いて本当に嬉しい。客席が空いていると、本当に寂しいですよ。私たちはドイツのマンハイム映画祭にこの映画を出品したのですが、700人位の満員の観客のエネルギーを感じることができました。何かを表現して映画を創るということは、こういうことなんだなと思いました。映画は一人で観るものではなく、エネルギーを感じながら楽しむものだと思います。
――ここで、モンゴルの大スター、アムラさんからスペシャルメッセージを紹介。
アムラ:長い旅の最後に日本の皆様に映画を観て頂いて嬉しいです。
――アムラとの思い出は?
K監督:アムラはあんな低い声をしているので、学生の頃、「容姿的に無理だから役者辞めた方がいい」なんて言われたそうです。
――ええ!? モンゴルのスーパースターなんでしょう?
K監督:でも彼は諦めずに努力して、英語もマスターして、今ではハリウッドでも活躍するモンゴルのトップスターになったんです。街を歩いていても、5分も経たない内呼び止められて、「一緒に写真撮ってくれ」と言われるようです。
柳楽:アムラに「ブラザー」なんて言われちゃって嬉しい!ハリウッドでも活躍している人ですからね。ロケ先でも、アムラが頼みに行くと「OK」ということもあったりして、国民的大スターですよ。
――アムラさんから刺激を受けたこととは?
柳楽:男らしく、優しくて知的な人で、ほんとカッコ良いんです!背中を追い掛けたくなるような人です!
K監督:ここで柳楽君の踊りを見せたい!
柳楽:ええ!? 急に何ですか?
K監督:映画の中の踊りはアドリブで動いてくれたんですが、実は彼はタップダンスが上手いんです。
(と、監督に促されて、戸惑いながらタップを踊る柳楽。)
柳楽:実は、『浅草キッド』という映画の撮影で、只今タップダンスを練習中なんです。
K監督:同じ「タケシ」同士ですので、よろしく!(笑)
柳楽:今日はドイツのマンハイム映画祭での満席を思い出すようで嬉しい気分です。精神的豊かさでタケシが成長する姿を楽しんで下さい。『浅草キッド』のタケシもよろしく!(笑)
K監督:ちょっと変わったファンタジーというか、寓話的な作品ですが、皆さんの感想をお聞きしたいです。SNSなどに投稿して下さいね。よろしくお願いします。
『ターコイズの空の下で』
監督・脚本・プロテューサー:KENTARO
出演:柳楽優弥 アムラ・バルジンヤム 麿赤兒 ツェツゲ・ビャンバ
2020年製作 日本・モンゴル・フランス合作 上映時間:95分
配給:マジックアワー マグネタイズ
公式サイト:http://undertheturquoisesky.com
(C)TURQUOISE SKY FILM PARTNERS / IFI PRODUCTION / KTRFILMS
2021年2月26日(金)~新宿ピカデリー、3月12日(金)~シネ・リーブル梅田、アップリンク京都、MOVIXあまがさき、4月9日(金)~シネ・リーブル神戸 他全国順次公開
(河田 真喜子)