『愛がなんだ』で昨年若い層を中心に圧倒的な支持を得た恋愛映画の名手、今泉力哉監督。その最新作で、人気急上昇中の宮沢氷魚、藤原季節を迎えて描く新たなる愛と決意の物語『his』が、1月24日(金)より全国ロードショーされる。
1月17日、なんばパークスシネマで開催された『his』舞台挨拶付き先行上映会では、上映前、主演の宮沢氷魚、藤原季節が登壇。「みなさんと楽しい時間を共有できれば」と語った宮沢の後で、藤原は北海道出身ながら「まいど!」と見事な関西弁の挨拶を披露し、今にも漫才が始まりそうな勢いを見せた。
ーー 共同生活について?
ロケ地となった白川町の一つのロッジで10日間共同生活したという二人は、「朝から晩まで一緒にいるのに寝るときまで一緒かと最初はすごく嫌だった」(宮沢)そうだが、遅い時間までの撮影の後も、「あと30分話したら寝ようかといって、1時間ぐらい話し込む。毎日そんな感じでした」(藤原)と次第に二人でいることに馴染んできたという。その体験は演技をする上でも大いに役立ったそうで、宮沢は「迅と渚は、最初は何年も会っていないので距離感があった。それが最初の僕と季節君とのリアルな距離感でしたが、順撮りだったので、(共同生活で)僕たちが仲良くなっていくことが役にも反映された」と撮影を振り返った。
一方、ある日突然、白川町で暮らしている迅を、娘を連れて訪れる渚を演じた藤原は「24時間一緒にいたからこそ、氷魚君がいない時間を感じることができました。いなくなって初めて存在の大きさを知ると思ったし、白川町のロケが終わった後、東京ロケは一人で撮影しなければいけなかったので、気持ちが重かったですね」と離れることの寂しさを役に重ねたという。
ーー キャラクターと似ている点は?
寡黙な迅を演じた宮沢は、「迅は僕に似ている。僕は悩み事を自分で解決したい人間で、人に相談したくてもできず、自分で追い詰めてしんどくなってしまうが、迅もそういう瞬間があり、共感できました。僕はクォーターなので、インタースクールにいた頃はオアシスだったけれど、そこから一歩出るとすごく辛く、生まれたアメリカでも日本人は…と言われ、自分の居場所はどこにあるのか悩んだ時期がありました。だから生きづらさってなんだろうと常に考えながら迅を演じていました」と自身の境遇から迅の気持ちを掴んでいったエピソードを明かした。
一方、一見奔放に見える渚を演じた藤原は、「氷魚君はストレートで裏表がなくとてもピュアで、僕は物事をこねくり回して考えてしまうのですごく羨ましく感じるが、渚も迅に対する羨ましさがあるのではないか。一見発言が軽く見えたりする裏にある臆病さや弱さがあり、自分に似ていると感じた」と渚役との共通点を明かした。
ーー お互いについて感じたことは?
「季節君はとにかく熱く、真剣に物事に向き合う男。彼の台本を初めて見た時に、ページがちぎれそうなぐらいボロボロで、書き込みがたくさんしてあって、本当に素敵な役者さんだな思った。役者としてこうありたい」と藤原について語る宮沢。一方藤原は、「宮沢君は内側から発光しているような人」とお互いの魅力を表現した主演の二人。
最後に「愛に溢れていて、答えがない作品。それぞれ考えることは違うと思うし、それがある種の正解で、疑問に思うことを聞いてほしいし、考えるきっかけになってほしいと思います」(宮沢)、「この映画を経て、自分は変わることができたし、自分の気持ちに正直に生きられるようになってきたと思っています。自分の近くにいる人を大切にできるような人間になりたいですし、この映画の登場人物を好きになってほしい。また嫌いだというのも愛情表現です」(藤原)と観客に熱いメッセージを送った。
デビューアルバムが発売されたばかりの注目新人、Sano ibukiによるエンディング曲「マリアロード」が優しく包む、新しい形の愛の物語。自分らしく生きたい全ての人に送りたい作品だ。
(文:江口由美、写真:河田真喜子)