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[大真面目に嘘をつくところに家族の裏の心がある『鈴木家の嘘』舞台挨拶

 

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(2018年11月5日(月)なんばパークスシネマにて)
登壇者:原日出子さん、木竜麻生さん、野尻克己監督(敬称略)



悲しみを乗り越えようとする一所懸命さに可笑しみが滲む感動作


長年引きこもりだった兄が自殺してしまった。そばには左手首に傷を負った母が倒れていた。残された妹と父は、記憶を無くした母のために兄が生きているよう一所懸命に嘘をつく。親戚や友人を巻き込んで兄の生存を装う――ただでさえ自殺されたショックは大きいのに、母親を気遣ってつく嘘にこの上なく優しさを感じさせる。監督デビュー作となる本作は、監督自身が自らの実体験を基に脚本を書いたという。悲劇的な出来事にユーモアをバランスよく練り込んだ、優しい嘘から始まる家族の再生と絆の物語は、新たな家族の物語として広く共感を得ることだろう。


suzukike-550.jpg先ごろ開催された【第31回東京国際映画祭】で、活性化する日本映画の多様性を世界に紹介することが目的の《日本映画スプラッシュ部門》で作品賞を受賞。さらには、妹を演じた木竜麻生は、宝石の原石(ジェムストーン)の様な輝きを放つ若手俳優に贈られる《東京ジェムストーン賞》を受賞している。自殺した兄を加瀬亮、家族をこよなく愛する母を原日出子、息子の足跡を辿ろうとする不器用な父を岸部一徳、母の弟で気のいい叔父を大森南朋、父の妹で唯一常識的な物言いをする痛快な叔母に岸本加代子。巧みな脚本に個性と演技力で惹きつける本作の魅力は、じわじわと心に沁みる新鮮な感動となって心を癒してくれる。


公開を前に開催された上映会の舞台挨拶に、原日出子、木竜麻生、野尻克己監督が登壇。作品にかける思いや撮影中の秘話などについて語ってくれた。

以下に詳細を紹介致します。



suzukike-bu-240-2.jpg――今回の役について?
原:家族の話ですので、どなたにも共感して頂けると思います。台本を読む前に、野尻監督の初監督作の出演オファーということで、デビュー作によんで頂いてとても嬉しかったです。でも、台本を読んで「私で大丈夫かしら?」と心配になりました(笑)。


――ベッドから落ちたりいろいろと体当たりの役でしたね?
野尻:原さんにお願いしたことは、人間としての母親は勿論ですが、根源的な本能を出してほしいことです。ベッドから落ちるということもその一つです。

原:記憶を失う前の緊迫した状態を体が覚えていて、どこかへ行こうとしてベッドから落ちました。


suzukike-bu-240-3.jpg――原さんにこの役をやってほしいと思った理由は?
野尻:原さんの日本のお母さんというイメージを壊したいな思いました。原さんは役の幅が広い方だと思っていたので、心が壊れる瞬間を撮りたいなと思ってお願いしました。


――木竜さんはワークショップがあったとか?
木竜:まず面接を受けて400人の中から6人になって、4日間ワークショップを受けてから役が決まりました。ワークショップでは脚本の中の富美が関わるシーンはすべて監督とお話をしながらやらせて頂きました。


――木竜さんのどんなところに注目したのですか?
野尻:木竜さんの第一印象は、素朴なんですが芯がある女優さんだなと思いました。例えれば、『Wの悲劇』の薬師丸ひろ子さんみたいに、自分をむき出しにしてほしいとね。シリアスなテーマですからしんどいシーンもあるのですが、それを明るくしたかったので、木竜さんの笑うと画面が明るくなるのを活かしたいと思いました。

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――木竜さんは、喪失感やいろんなものを受け止めなくてはならない役ですが?
木竜:映画の中のそれぞれの人がいろんなものを感じながら演じる現場でしたが、原さんをはじめ共演者やスタッフの方に引っ張って助けて頂きました。


――シリアスだけどクスクスっと笑えるシーンが多いですよね?
原:シリアスなんだけど笑える。人って一所懸命やればやるほどおかしい様もありますよね。リアルだからこそ可笑しい、生きていくってそんなもんだと思います。


――脚本を書く上でバランスを考えたのですか?
野尻:僕は「笑えない映画は好きじゃない」というのが根本にあり、元々喜劇が好きなんです。大真面目に嘘をつくところに家族の裏の心を描いたつもりです。そこをしっかり描けない内に笑いだけをとる気はなかったので、楽しんでもらえる作品になっていると思います。


suzukike-500-4.jpg――岸部一徳さんについて?
野尻:お父さんが風俗店へ行くシーンがあるのですが、風俗が一番似合うのは岸部さんかな?(笑)無口であることもあり、岸部さん以外あり得ないと考えました。


――原さんは岸部さんとの共演は如何でしたか?
原:私は岸部さんの大ファンなんです!何本かご一緒したことはありますが、直接絡むことがないお芝居だったので、一度でいいからちゃんとお芝居をしたい!と思っていたので、お父さん役が岸部さんだと聞いて飛び上がって喜びました。本当に夢が叶ったと思いました。ドキドキしながら現場に行ったら、ナチュラルで優しくて温かくて益々ファンになりました(笑)。


suzukike-500-2.jpg――木竜さんはこのような両親で如何でしたか?
木竜:岸部さんがお父さんで、原さんがお母さんなんて、こんな幸せなことはないですよね。お二人には本当によくして頂きました。食事の時も私を待って下さり一緒にお食事しました。本当の鈴木家の家族のように、ずっと一緒にいるような雰囲気を作って下さいました。


suzukike-bu-240-1.jpg――弟役の大森南朋さんについて?
野尻:ハードな役を演じられることが多い方ですが、実際はふわふわしていて優しい方です。お兄さんの大森立志監督はよく存じ上げているのですが、優しくて人間大好きなタイプです。芸能界を自由に生きておられる方なんで、その浮遊感が出ればいいかなと思いました。

原:「お姉ちゃん」と呼ばれることに何の抵抗もありませんでした(笑)。私の弟にもちょっと甘えん坊な感じが似ていて、優しくてとても自然な感じの方でした。


――妹役の岸本加代子さんについて?
野尻:僕は本編を何度見ても岸本さんのシーンで泣いちゃうんですよね。この家族は一変して非日常に持っていかれるんですが、「それじゃいけないよ」と客観的な立場で物言う人なんです。残された家族は悲しんでいいかどうかも分からない状態なのに、一番悲しんでいる人なんです。熱いキャラで直情的な人。直情的な人って優しい人が多くて、その辺りが表現できればいいかなと思います。


suzukike-500-3.jpg――突然亡くなる息子の加瀬亮さんについて?
原:凄い存在感ですよねぇ。繊細なニュアンスを出せる俳優さんです。役に入っているときはぐ~っと真剣な表情だったのですが、普段は明るくてよく喋る人です。立った姿が家の息子にそっくりで、何の感情移入も要らず、ずっと本当の息子だと思ってやってました。


――木竜さんは凄い役者さんたちと共演したんですね?
木竜:撮影が終わってしばらく経ちましたが、「あれは夢だったのかな?」と思ったりすることがあります。こうした舞台挨拶などで再びお会いすると、「やっぱり好きだな~」と思います。素敵な方々とご一緒できて、とても大事な作品になりました。

原:これからもっと凄い人と仕事するから大丈夫よ。ほんとに楽しみです!
 


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『鈴木家の嘘』

【STORY】
長年引きこもりをしていた兄・浩一(加瀬亮)が部屋で自殺した。その傍には手首に傷を負った母・悠子(原日出子)が倒れていた。母はようやく意識が回復したものの直近の記憶がない。母が再びショックを受けないよう、妹・富美(木竜麻生)と父・幸男(岸部一徳)は叔父(大森南朋)や叔母(岸本加代子)の力を借りて兄が生きているよう嘘をつく。そんな中、兄を自殺に追い込んだと思い込み自責の念に苦しむ富美。父は息子を理解してあげられず後悔して、息子の足跡を探そうとする。バラバラだった家族が兄の死をキッカケに一つになって母を守ろうとするが……。


(2018 年/日本/上映時間:133 分)
・監督・脚本:野尻克己
・出演:岸部一徳、原日出子、木竜麻生、加瀬亮、岸本加世子、大森南朋
・配給:松竹ブロードキャスティング、ビターズ・エンド
公式サイト: http://suzukikenouso.com/
・コピーライト:(C)松竹ブロードキャスティング

2018年東京国際映画祭スプラッシュ部門作品賞、ジェムストーン賞(木竜麻生)


2018年11月16日(金)~なんばパークスシネマ、シネ・リーブル梅田、MOVIX 京都、神戸国際松竹 他にて全国ロードショー!


(写真・記事:河田 真喜子)