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「友達」という言葉が背負わされている純粋性、優しさを大切にできる映画にしたかった。 『友罪』瀬々敬久監督インタビュー

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「友達」という言葉が背負わされている純粋性、優しさを大切にできる映画にしたかった。
『友罪』瀬々敬久監督インタビュー
 
17年前に許されない罪を犯した鈴木(瑛太)と、癒えることのない傷を抱えた元ジャーナリストの男益田(生田斗真)。二人の男の出会いから、止まっていた時計が動き出す…。瀬々敬久監督(『64−ロクヨン−』、『ヘヴンズ ストーリー』)の最新作『友罪』が5月25日(金)から全国ロードショーされる。ミステリー界の旗手、薬丸岳のベストセラー小説を映画化した本作では、生田斗真と瑛太のW主演に加え、佐藤浩市が息子が起した罪によって家族を’’解散’’したタクシー運転手を、富田靖子が過去に少年院に勤め、唯一鈴木の過去を知る女性、を演じる他、夏帆が元AV女優役で瀬々監督作品に初参加している。様々な過去を抱えた登場人物が、過去とどう折り合いをつけ、未来を描いていくのか。元犯罪者と真の「友達」になれるのか。様々な問いとその答えを映画の中で見つけていく。そんな醍醐味が感じられる作品だ。
 
脚本も手がけた瀬々敬久監督に、原作で感銘を受けた点や、本作に反映させた日ごろの問題意識について、お話を伺った。
 

 
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■原作者薬丸岳さんに感じた、こだわりの強さと優しさ。

――――犯罪者に復讐する物語はよくありますが、社会復帰した元犯罪者と、かつては追う立場だった元ジャーナリストとの友情がテーマとなる物語は珍しくもあり、とても奥深かったです。薬丸岳さんの原作を読まれた時、どの部分に特に魅力を感じたのですか? 
瀬々監督:薬丸さんが、ずっと少年犯罪をテーマに書き続けてきたという部分で、作家としてのこだわりの強さを感じました。また、ジャンルは違えど、同じ作り手として尊敬の念を抱きました。犯罪を基にした作品は興味がありますが、原作者の態度に大きく触れたのは初めてに近い体験で、とても印象的でした。実際、薬丸さんにお会いすると、とても優しい方ですし、「友罪」というタイトルもすごく優しい。シビアな内容の物語ですが、友情という純粋さが出てくる映画になればという気持ちで、作りはじめました。
 
 
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■未来へ向かうベクトルと、過去に向かうベクトルが、それぞれ映画の中で進んでいく。

――――モチーフになった事件をあまり想起させず、元犯罪者のその後の人生を描く未来志向の映画になっていますが、脚本を書くにあたって重視したことは?
瀬々監督:事件そのものは取り返しがつきません。事件を起こした本人でさえ、どうしたらいいか分からないのです。そのようなことが起こった時、その後を描いていく上で、事件そのものがどうだったかも大切ですが、それから未来に向かっての比重が大きくなるのだと思います。一方で、過去もこの映画の中でとても重要な物語です。鈴木は自分の起こした事件がどうだったのか。死んだ少年への思いをどう償いとすればいいのかを、益田と出会って発見していきます。益田自身も、事件に対する気持ちを整理していく訳です。また、益田と鈴木以外に、心に傷を持っている人たちが登場します。彼らにもそれぞれ過去に事件があり、それに対して今贖罪的なことをしています。例えば佐藤浩市さんが演じる山内は、息子が交通事故で何人もの児童を死傷させてしまった。その謝罪を実行するために、自らも家族を解散してしまいます。でも本当に謝罪ができているのか。そして息子たちと本心で付き合うことができているのか。山内は、この映画の時間を通す中で、最後に息子との会話や本当の謝罪がどういうことかを発見していくのだと思います。そういう意味では未来へ向かうベクトルと、過去に向かうベクトルが、それぞれ映画の中で進んでいく話ですね。
 
 
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■現実は一つの出来事に対してあまり深く考えない不思議な情報社会。そこから一つ一つの事件に関わり、重く感じなければならない立場の人を作り出す。

――――山内は、事故を起こした息子に「犯罪者が幸せになってはいけない。子供も産んではいけない」と言い放ちます。犯罪者に関わる人たちにも様々な影を落とす様子が印象的でした。
瀬々監督:ここで描かれているのは、どれも極端な例です。僕達は、毎日様々な殺人事件や天災にニュースとして接しています。しかもそれは次から次へと新しい情報に更新されていくので、一つの出来事に対してあまり深く考えないのが、普通の生活でしょう。それが幸せなのかもしれませんが、実際に僕達と関係がないように見えるところで、事件は起こっています。僕たちはそういう希薄で不安定な情報社会で生きているなと思う訳です。だったら、もし一つ一つの事件に深く関わり、重く感じなければならない登場人物たちだったらどうなるだろう。そのような考えから作っている部分はありますね。
 
――――鈴木は早い段階から「友達」という言葉を口にしていましたが、瀬々監督は鈴木をどのようなキャラクターと捉えていますか?
瀬々監督:瑛太さんは、皆が理解不能な芝居を敢えてしています。普通の人では理解できないような人間像を目指されていました。一方で映画の中で表立って現れてはいませんが、脚本を作るうえでは、鈴木は生や死を子どもの頃から人一倍考えてしまう人間という設定にしています。どうして人は死ぬのかという不思議さを抱え、命はどういうことなのかと深く考え込み、逆にその謎を解くために人を殺してしまうような少年像を考えていました。
 
――――ファーストシーンはその鈴木と益田の背中が映りますが、それぞれの背中から人物像がふわりと浮かび上がってきました。ハッとさせられるオープニングでしたが、演出の意図は?
瀬々監督:かなり早くからファーストシーンは背中から始めようと決めていました。観客が二人を追いかけるように見せる方がいいと思ったのです。タイトルバックも二人が背中を向けて立っています。それは二人が、観客に面と向かって顔を見せるという存在ではないということでもあります。鈴木は社会の中でひっそりと生きている訳ですし、益田もどこか逃れて生きている訳で、二人の背中から入るというのは、そういう二人の社会の中での立場を象徴しています。
 
 
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■かけがえのない一瞬を生きている時に誰もが感じる愛情、友情が、罪深い世界を救うことができる。

――――生田斗真さんが演じる益田も、最初は鈴木から友達呼ばわりされることに抵抗感を覚えながら、最後には「友達だから死なせたくない」と気持ちが変化していきます。鈴木と呼応しながら、自身のトラウマを乗り越える難しい役でしたが、どのような演出をしたのですか?
瀬々監督:生田さんには、観客と同じ立場に立ってくれとお願いしました。この事件を全て受け止める訳で、鈴木といる時も受け身です。観客と同じ目線の「普通の人」としてこの映画で生きてほしいと言いました。友達という概念で言えば、私のような年になると「彼は友達だ」とはなかなか言えません。中学生や高校生の頃のもので、そういう意味では「友達」というのはとても純粋なものだと思います。原作者、薬丸さんの世界観は少年犯罪があったとしても、その中で彼らの未来に関して優しい目線で見ています。友達だったら救えるのではないかと。情報化社会となり人間同士の関係性が薄れてきた中で、友情や愛情、情けというものが、悲惨な出来事に対して救いを投げかけることができるのではないか。後半、益田と鈴木が公園へ飲みに行くシーンがありますが、本音を語り、とても大切なシーンになっています。そういうかけがえのない一瞬を生きている時に誰もが感じる愛情、友情が、罪深い世界を救うことができる。そういう意味では、友達という言葉が背負わされている純粋性、優しさを大切にできる映画にしたいと思って作っています。
 

■元犯罪者から問いかけられる逆転構造。そこから起こる本心と本心のぶつかり合いは、普通の生活ではなかなか起こりえない。

――――公園のシーンでは、鈴木が「死んで罪を償おうと思うけど、心の底から生きたいと思っている」と告白します。本作のキーワードのようにも見えました。
瀬々監督:台詞もさることながら、瑛太さんの表情と独特の言い方が心に響きますね。原作では居酒屋という設定になってるんですが、元犯罪者である鈴木側から、普通の人である益田側に問いかけがある訳です。「君もどこかで傷ついているんじゃないか」と聞きますよね。元犯罪者から問いかけられる逆転の構造です。必然的に本心と本心のぶつかり合いになっていく。その会話劇が素晴らしいと、原作を読んだ時から思っていました。元犯罪者と、それに関わろうとしている人との間に本音のぶつかり合いが起こる。そういうことはなかなか普通の生活では起こりえないことです。だから、その流れの中で鈴木が言った「心の底から生きたい」という台詞が、胸に響くのだと思います。
 
 
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■『友罪』は、事件のその後を描いていることが興味深い。

――――瀬々監督は、今まで様々な犯罪をテーマに作品を作ってこられましたが、平成を締めくくるタイミングで『友罪』が公開されることに、どのような意義を感じますか?
瀬々監督:神戸連続児童殺傷事件が起きた1990年代(平成初期)は、暗い時代でした。阪神大震災もありましたし、オウム真理教関連の事件が象徴していたと思います。景気も低迷し、皆が精神性のものを追求していく時代でした。2000年代になると、金融的自由主義が発展し、ネットも流行り出し、仮想通貨もそうですが、価値が目に見えなくなる時代、ふわっとした時代になっていきました。ほんの10年前に起きた事件のことも忘れ去ってしまい、奇妙な明るさすら感じます。東日本大震災で絆を再認識することもありましたが、それもまた忘れつつあります。そういう意味で、この映画は事件のその後を描いていることが、興味深い。色々な事件や出来事があり、その後の先には次の未来がある。それが、『友罪』の中から見えてくるはずです。
(江口由美)
 

 
<作品情報>
『友罪』(2018年 日本 2時間9分)
監督・脚本:瀬々敬久
原作:薬丸岳『友罪』集英社文庫刊
出演:生田斗真、瑛太、夏帆、山本美月、富田靖子、佐藤浩市他
2018年5月25日(金)~全国ロードショー
公式サイト⇒http://gaga.ne.jp/yuzai/
(C) 薬丸 岳/集英社 (C) 2018映画「友罪」製作委員会