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兄弟だから許せない!?性格や容姿が真逆の兄弟姉妹のガチンコバトルをパワフルに描く『犬猿』

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『麦子さんと』『ヒメアノ~ル』の吉田恵輔監督による究極の兄弟姉妹映画『犬猿』が、2月10日(土)からテアトル新宿、テアトル梅田、なんばパークスシネマ、シネ・リーブル神戸、京都シネマ他で全国ロードショーされる。
性格や容姿が真逆の兄弟姉妹のガチンコバトルをパワフルに描く本作。刑務所から出所したばかりの凶暴な兄(新井浩文)と親の借金を返しながら地道に働く真面目な弟(窪田正孝)。容姿は悪いが家業の印刷所を切り盛りするしっかり者の姉(江上敬子)とグラビア系の仕事をしながら、姉の元で働く美人だけど要領が悪い妹(筧美和子)。それぞれの対立だけでなく、兄弟と姉妹が出会うことで起こる化学反応と、お互いの本音が爆発するまでを丁寧に描写。クライマックスの爆発ぶりも必見だ。
 
テンポの良い会話にのせて、兄弟姉妹のあらゆる感情を引っ張り出した本作の吉田恵輔監督に、お話を伺った。
※吉田監督の「吉」は「つちよし」です。
 

 


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■脚本を書く時は、自身の実体験とはかけ離れた設定に

―――兄弟、姉妹ががっぷり四つに組んでの物語は非常に迫力がありました。構想のきっかけは?
兄弟や姉妹の話は前から作りたいと思っていましたが、面白い作品がたくさんあるので、企画としては弱い。でも、兄弟と姉妹が合体したものはないなと思いつくと、プロデューサーの喜びそうな顔が目に浮かんで、お金が集まりそうだぞと(笑)。その方が、話も広がっていいかのではというところからスタートしました。 
 
―――兄弟姉妹の物語で『犬猿』というタイトルは強烈なインパクトですね。

 

最初僕が出したのは別のタイトルだったのですが、こむずかしいフランス映画みたいだと却下されて(笑)。もう少しキャッチ―な、『犬猿の仲』みたいな、いっそのこと『犬猿』でいいんじゃないと。プロデューサーのアイデアですね。
 
―――監督自身の体験も反映されているのですか?
姉がいますが、そんなに話をしなかったので特に反映している訳ではありません。僕の場合、物語の設定は実体験とかけ離れている場合が多いです。例えば初期作品は童貞ものが多いのですが、僕は高校生の時から色々な女の子に声をかける方だった。どちらかと言えば、本作の卓司のような不良文化で育ってきたので、僕にまともな弟がいたら、嫌な思いをしていたでしょう(笑)オタクとかアイドル文化、アニメ、ゲームも大人になってから勉強しました。 
 
―――姉妹の方は、一つ屋根の下で暮らし、住居兼工場という自営の印刷工場で働いている設定が効いています。その狙いは?

 

やっぱり狭い方がイヤじゃないですか?狭くてもクリーンなオフィスならまだしも、狭くて逃げ場がないような空気感や、絵作り的にも印刷工場の雰囲気が合っていました。薬品の臭いが漂いそうな感じですね。ネイルとか美容に構っている必要性がない場所、若い従業員がいない場所なのに、妹の真子はネイルをしている訳です。
 
―――姉の由利亜を演じるお笑いコンビ「ニッチェ」の江上敬子さんは、藤山直美を彷彿とさせる雰囲気がありますが、現場ではいかがでしたか?
実際に藤山直美さんに似ていると言われることもよくあるそうです。彼女は演技のスイッチの入り方に天性の才能を感じますね。
 
 
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■実力派男性陣×フレッシュ女性陣の演出について

―――役作りに関しては、役者に委ねる部分が多かったですか?
特に男性陣は委ねるというより、脚本に書いてあることを読めば自然にできるし、演じたら正解を出してくれる。スタート、カットは言うけれど、何もしないという感じですね。その分、女性陣は頑張って引き上げていきました。大体いつもそうですが、演技初心者を引き上げながら、周りの先輩にフォローしてもらうという組み合わせにしています。男性陣は演技の強度の調整はあっても、NGを出すことはなかったですね。
 
―――後半、病院の屋上で4人が並んで語らっているシーンは、他のシーンとは違う空気感がありました。
あのシーンだけは脚本に台詞がなかった。「和やかにしゃべる4人」とだけ書いて、エチュードにしたんです。立ち位置を変えずに、自由にしゃべっていい。でもそれぞれのキャラクターとして話すことと、2カットで撮ることを伝えました。江上さんはとても勘が良くて、両方の編集点が繋がるように動いてくれ、さすがだなと感心しました。

 

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■欲望のさらけ出し方に同じ匂いを感じるキム・ギドク監督と、影響を受けることができなかった塚本晋也監督

―――ちなみに、好きな映画監督は?
キム・ギドク監督が好きですね。僕の作品は会話がメチャクチャ多いけれど、キム・ギドク監督の作品は一言もしゃべらなかったり。僕と真逆のことをするけれど、欲望のさらけ出し方に、スケベなおじさんの同じ匂いを感じるんですよ。アプローチの違う同種かな。
 
 
―――監督は若い頃、塚本監督の照明部で経験を積まれていますが、塚本監督からは影響をうけたのですか?
影響を受けたかったけれど、受けることができなかった。10年以上照明部をやりましたし、自主映画を作っているときも塚本監督に憧れていたので、塚本監督の作品っぽいものを作りたかったのですが、ニセモノ感がハンパじゃないんです。塚本監督の作品は本物だけが出せる味です。近くで見れば見るほど、「これは、この人にしか出せない」と思ってしまう。憧れと自分に向いているものとは違うので、自分に向いているものをきちんと見て、作るようになりましたね。
 
―――「影響を受けたかったけれど、受けることができなかった」という意味がよく分かりました。
僕はよく変わり者のように言われるのですが、10年以上映画病のような人が目の前にいたので、自分としてはむしろビジネスライクというか、“上手くやっている人”という感覚です。それぐらい、塚本監督は修羅というか、狂気すら感じる方です。最近の容姿は仙人のようになられていますが。
 

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■何かの“欲”を描きたい

―――次はどんな題材を撮りたいですか?
題材というよりは、感情ですね。例えば自己愛とか、自己顕示欲に囚われるとか、“欲”が結構好きなんです。それぞれ皆の中に自己顕示欲は眠っているのに、それがないように装うのが日本人の特徴でしょ?それを謙遜と呼ぶのだけれど、謙遜は、実は白々しい。「若いですよね」と言われて、「いえ、全然~」と返しながら、もっと言ってと思うとか。見た目の若さが自慢だとか、何かの欲望や感情を描いていきたいですね。
 
―――最後に、メッセージをお願いします。
誰に感情移入するのかは、皆さんの生き方によって違ってくると思うので、逆に言えば、どんなメッセージ感じたか見た人には教えてもらいたいですね。
(江口由美)
 
 
 
 

 
<作品情報>
『犬猿』(2017年 日本 1時間43分)
監督・脚本:吉田恵輔
出演:窪田正孝、新井浩文、江上敬子、筧美和子他
2月10日(土)~テアトル新宿、テアトル梅田、なんばパークスシネマ、シネ・リーブル神戸、京都シネマ他全国ロードショー
公式サイト⇒http://kenen-movie.jp/ (C) 2018『犬猿』製作委員会