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「舞台が日本、演じるのは日本人、脚本に韓国映画の要素と混ざることで、日韓合作の良さが出ている」『風の色』主演古川雄輝さんインタビュー

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「舞台が日本、演じるのは日本人、脚本に韓国映画の要素と混ざることで、日韓合作の良さが出ている」『風の色』主演古川雄輝さんインタビュー

『猟奇的な彼女』、『僕の彼女を紹介します』で知られるラブストーリーの名匠クァク・ジェヨン監督。主演に古川雄輝(ドラマ『イタズラなKiss〜Love in TOKYO』、『ライチ☆光クラブ』、『太陽』)を迎えた日韓合作の最新作『風の色』が1月26日(金)より大阪ステーションシティシネマ、TOHOシネマズ 西宮OS、TOHOシネマズ 二条他にて全国ロードショーされる。

東京と流氷の北海道・知床を舞台に展開する物語で、古川雄輝が天才マジシャン隆と記憶を失くした隆に瓜二つの青年、涼の一人二役を熱演。約1万人のオーディションから選ばれた注目の新星、藤井武美も、涼の前から消えた恋人ゆりと、北海道で涼が出会ったゆりと瓜二つの女性、あやの一人二役を演じている。流氷の幻想的な風景や、一瞬で人やモノが消えるマジックの独特な世界を交えながら展開する壮大なラブストーリー。ミステリアスだが遊び心も忘れない。クァク監督自身が「自分史上、最高のラブストーリー」と称した自信作だ。


本作の主演、古川雄輝さんに、クァク・ジェヨン監督の撮影現場エピソードや、日韓合作作品ならではの特徴、魅力についてお話を伺った。


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■日本映画では珍しい設定の日韓合作映画。クァク監督は毎日ご飯を誘ってくれた。


―――クァク・ジェヨン監督作品で主演をオファーされた時の心境は?
古川:以前からクァク監督の『猟奇的な彼女』を見ていましたし、合作映画にも出演させていただいていたので、クァク監督の日韓合作作品で主演ができるのは、とてもうれしかったですね。

―――シナリオを読んだ時の感想は?
古川:一人二役は初めてでしたし、マジックもやったことがなかったので、どうなるのかなとは思いました。この作品は自然の景色が素晴らしいのも見どころの一つですが、想像しながら読みつつも、実際にやってみなければ分からないという部分が大きかったですね。

―――クァク監督とは初めて一緒に仕事をされたと思いますが、どのような印象を持ちましたか?
古川:役者に対して愛情を持っていらっしゃる方です。監督が毎日「一緒にご飯を食べよう」と誘って下さるなんて普通ないことですし、クァク監督は写真を撮るのが趣味なのですが、撮影後に写真を撮って送ってくれたりもします。富川国際ファンタスティック映画祭に参加したときも一緒にご飯を食べ、この作品ができたことを嬉しそうに微笑みながら話してくださった時は、愛情を感じましたね。
それと同時に、監督というお仕事ではよくあることなのですが、作品に入ると真剣だからこそ別人のように厳しくなる時もありました。

―――クァク監督も「自分史上、最高のラブストーリー」と気に入っておられるとのことですが、古川さんからみた『風の色』の魅力とは?
古川:SF感ですね。特に日本映画では、なかなかない設定だと思います。ドッベルゲンガーが登場しますし、一人二役を主演二人がやっているのも珍しい。日本が舞台で日本人が演じていながらも、脚本に韓国映画の要素が入っているというように混ざったことで、日韓合作の良さが出ているのではないかと思います。

 

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■日本映画と韓国映画、両方の感覚の真ん中を狙う作業を積み重ねて。

 

―――古川さんが演じる涼や隆は、多くは語らないけれど、印象的な言葉を残します。クァク監督が書いたシナリオを日本語にする際に、古川さんが何かアドバイスされたのですか?
古川:この作品の特徴は日本の文化と韓国の文化が混ざっている部分で、脚本はクァク監督が書き、韓国の方が日本語に訳しているので、日本人の細かいニュアンスが掴めていない箇所もありました。日本人の感覚ではこう表現すると僕から提案し、監督と細かい台詞回しを議論しましたね。例えば「ちきしょう」というセリフがあった時、日本ではもうそんなことを言わないけれど、韓国にそういう表現があったのをそのまま訳されていたのです。文化の違いなので、こちらから「『ちきしょう』の代わりに、『クソッ』なら言います。ただ日本の映画なら表現か、もしくはオフ台詞にしますよ」と提案すると、監督は「『ちきしょう』を台詞で言ってほしい」。韓国映画では、その言葉を台詞にすることで成立するので、監督の判断に従って、作品中では「ちきしょう」と台詞で言っています。日本映画と韓国映画、両方の感覚の真ん中を狙えるように、かなり脚本の僕の台詞に関しては提案をさせていただきました。日本人的感覚と韓国人感覚が混ざった映画という点では、全体的には邦画というより洋画寄りの雰囲気になっているのが、この作品の一番の特徴ですね。

 

kazenoiro-550.png ■監督の頭の中に全てがある。対応力や応用力が問われる現場。


―――ご自身の台詞については、かなり監督と議論を重ねたとのことですが、演技面でクァク監督からどんな指導がありましたか?
古川:基本的にこういう風に演じてと指導する演出方法ではありません。こうやってくださいと指示が来て、すぐに本番が始まるという現場でした。例えば泣くシーンではなかったけれど、「ここは泣いた方がいいから、本番で泣いてください」という感じでシナリオに書かれていないこともその場の指示でどんどんと加わっていきました。監督の頭の中に全てがあった。逆に言えば、助監督に次に何をするのか聞いても、分からないと言われる。こんな現場は初めてでした。ただ、撮影が終わってから、その日撮った全ての映像に音を入れて監督が見せてくれ、「流氷がとてもきれいだ」とか、皆がまた明日頑張ろうと思えるような撮り方をされていましたね。事前情報がない中で撮影するので、対応力や応用力が問われる現場でした。監督の意思が非常に強く反映されている映画ですから、いかに指示に従うか。監督のやりたいことの中には、かなり遊びも詰まっていますし。

―――遊びが詰まっているといえば、全体的にシリアスかつミステリアスに進行する物語が、ガラッと変わるシーンがあります。涼とあやが、映画『レオン』のレオンとマチルダに変装していましたね。
古川:信号を渡るシーンでわざと4人歩かせて、ビートルズの「アビー・ロード」風にするような遊びも入れていますね。後は、急に主人公がカメラに向き合う仕掛けも入れています。普通の映画なら、急にカメラを見る行為はしませんから、かなり独特の演出でしょう。あや役の藤井さんも「カメラを見ていいんですか?」と驚いていましたから。
マチルダのシーンは少し分かりにくかったかもしれませんが、元々3時間あったものを2時間にしているので、相当カットしている部分があるのです。マジックも最初から最後まで通しでやっていますが、映画ではかなり編集されています。マチルダのシーンも、床屋に行って、「この髪型にしたい」とあやが『レオン』のポスターを指さすというフリがあったのですが、色々な事情があり、実際にはクァク監督の『更年期的な彼女』のポスターで(笑)。

 

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■かなり鍛え上げられた。リハーサルなしの本番一発撮り、スタントなしの水中シーン。


―――編集でかなりカットされたというマジックシーンですが、テーブルマジックから舞台でのマジック、大掛かりな脱出マジックと様々なマジックを披露していますが、かなり練習したのですか?
古川:事前にたくさんマジックの練習をするのかと思っていましたが、実際には本番の20分前ぐらいから練習しました。普通はカット割りをするのですが、クァク監督はマジックを見るお客さんの反応も撮りたいと、リハーサルなしの本番一発撮りをやっていましたね。かなり鍛え上げられる現場ではありました。

―――海に飛び込むシーンや、水中での脱出劇もスタントなしで、大変だったのでは?
古川:海に飛び込むのも自分でやりましたし、水中撮影はやはり相当冷たかったです。浴槽を氷で埋めた下にもぐるシーンも、本当の氷なので滅茶苦茶冷たかったです。危険でしたが、役者としてそこで「できない」と言うのはタブーですから。今から考えれば誰か止めてくれれば良かったのにと思います(笑)。

―――一人二役ですが、涼と隆は真逆というより、どこか親密性を感じます。演じる上で意識したことは?
古川:ドッベルゲンガーなので一人二役といっても、そんなに差を出す役ではないとクァク監督もおっしゃっていました。差は出さないけれど、涼の方が普通の青年っぽい優しい雰囲気があり、隆の方はプロのマジシャンっぽいクールでスマートな雰囲気があることだけを頭に入れました。それさえあれば、後はそれぞれの動きが分かってきますので、難しさを感じることなく演じることができました。

 

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■藤井武美さんはその場の感情に乗り、一つ上まで行ける演技力がある。


―――古川さんと同じく一人二役を演じるゆり、亜矢役の藤井武美さんは、オーディションで抜擢されたヒロイン役は初めての女優さんですが、共演しての感想は?
古川:今まで色々な女優さんとお仕事をさせていただきましたが、その中でもトップクラスに演技が上手な方だと思いました。僕は「こういう役で、今こういうシーンだからこうだ」と考えて演じるのですが、藤井さんはその場の感情に乗ることができる。俳優は皆、やっていくうちに、どこかで考えてセーブするようになる人が多いと思うのですが、藤井さんはセーブせずにもう少し先まで行くんです。例えば泣くシーンがあると、何カットか撮影するので、一度止めてと普通なら器用にやるところを、藤井さんは一つ上まで行く。今回隆が死ぬシーンでは、過呼吸になるぐらい泣いていたのですが、そこまでできる女優さんはいるようで、なかなかいないと思います。僕は一緒にやっていて、ただただ上手いなと思っていました。

―――藤井さんは情感のある演技をされていましたね。
古川:演技が上手いかどうかは、一緒に演じなければ分からない。映像を通してだと、監督が編集するので演技の下手な部分を隠すこともできれば、上手くみせることもできる。だから、映像を通して、演技が上手いかどうかはほとんど判断ができないと思うんですよ。藤井さんは約1万人のオーディションからクァク監督が選んだヒロインですが、選ばれて当然だと思います。

 

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■ネイティブレベルの英語を武器に、今後も海外と関わりのある作品に携わりたい。


―――最後に、古川さんが今後俳優として目指していきたい方向や活躍したいフィールドについて教えてください。
古川:日韓合作の『風の色』もそうですが、今後も海外と関わりのある作品に携わりたいという思いがあります。英語をネイティブレベルで話すことができる俳優は日本では限られますから、その部分を武器にしてやっていきたいですね。30歳を迎え、今後は演じる役が大人の役にシフトしていくと思うので、30代前半に大人の役を経験して、40代、50代へと繋げていきたいです。なりたい俳優としては、頭の回転が速い俳優。その場にあるものや、状況に素早く対応し、お芝居の引き出しが多い俳優に憧れますし、そういう俳優になりたいですね。

(江口由美)


<作品情報>

『風の色』(2017年 日本=韓国 1時間59分)
監督・脚本:クァク・ジェヨン
撮影:イ・ソンジュ、パク・チョンボク
照明:パク・ソンチャン
録音:ハン・チョルヒ
編集:ホン・ジェヒ
ヘアメイク:藤井康弘
スタイリスト:五十嵐堂寿
出演:古川雄輝、藤井武美、石井智也、袴田吉彦、小市慢太郎、中田喜子、竹中直人

1月26日(金)~大阪ステーションシティシネマ、TOHOシネマズ 西宮OS、TOHOシネマズ 二条他全国ロードショー
公式サイト⇒http://kaze-iro.jp/