『ノクターナル・アニマルズ』トークイベント
第89回アカデミー賞®助演男優賞ノミネート(マイケル・シャノン)
第74回ゴールデングローブ賞助演男優賞(アーロン・テイラー=ジョンソン)
第73回ヴェネチア国際映画祭 審査員グランプリ 他多数受賞!!
サイコパス俳優揃い踏み!ありえない程細かいディティール!
トム・フォードが如何に映画を愛しているかわかる!
<開催概要>
日程:10月12日(木)トークイベント20:30~21:00
会場:映画美学校試写室(東京都渋谷区円山町1-5 KINOHAUS B1F)
登壇ゲスト:樋口毅宏氏(作家)、高橋ヨシキ氏(デザイナー・映画ライター)
世界的ファッションデザイナーのトム・フォードが『シングルマン』(09)以来、7年ぶりに監督を務めた最新作『ノクターナル・アニマルズ』が11月3日(金・祝)より、TOHOシネマズ シャンテほか全国公開致します。 公開に先立ち”13日の金曜日”の前夜、10月12日(木)映画美学校試写室(渋谷)にて、試写会上映後に樋口毅宏さん(作家)×高橋ヨシキさん(デザイナー・映画ライター)によるトークイベントが行われました。
主演にエイミー・アダムス(『メッセージ』)、ジェイク・ギレンホール(『ナイトクローラー』)の実力派の2人を迎えた本作は、第73回ヴェネチア国際映画祭で審査員グランプリ受賞をはじめ、脇を固める名優マイケル・シャノンが本年度アカデミー賞で助演男優賞にノミネート、アーロン・テイラー=ジョンソンが第74回ゴールデングローブ賞助演男優賞を受賞するなど、各国の映画祭で受賞を重ね、高い評価を受けています。
日本最速で行われた試写会は、緊張感に満ちていた。上映中張りつめて息を飲んでいた来場者は、エンドクレジット後に唖然茫然とした表情を見せていた。一体、今自分たちは何を見たのだろうか?という空気が漂う中、上映後に行われた作家の樋口毅宏さん、デザイナーで映画ライターの高橋ヨシキさんによるトークイベントでは、この映画が何を示しているのかを分かりやすく解説してくれた。さらに、作家の目線から、樋口さんはこの映画の複雑な構造について『インセプション』『トータルリコール』などを例に挙げて解説。高橋さんも、トム・フォードという人物や彼のこだわりの映像について語った。
★サイコパス感半端ない!最も信頼できる俳優たちの名演は超一級!
イベントに登壇早々、作家の樋口毅宏さんは「みなさんどうでした?一言で伝えにくいもやもやの残る映画でしょう」と、映画を観終わったばかりで茫然とする来場者を気遣い、興奮と緊張の糸がほどけた表情を見回した。
「ジェイク・ギレンホールは最も信頼できる俳優の一人。観て損することはない、元のとれる俳優ですね。その他のキャストも金だけの映画に出ない実力派ばかり揃ったオールキャストだよね!ジェイクなんて『ブロークバック・マウンテン』、『ナイトクローラー』、『ゾディアック』と本当に素晴らしい、トチ狂ってる!」と興奮気味に語る樋口さんに、「マペットに似てますよね。セサミストリートのアーニーとバートの、バートの方。目元が特にね」と高橋ヨシキさん。会場を笑いに誘った。
その他のキャスティングについても樋口さんは「『キックアス』シリーズでひ弱なオタク役を演じて、『ノーウェア・ボーイひとりぼっちのあいつ』ではジョン・レノンを演じるアーロン・テイラー=ジョンソンが、まさかあんな役を演じるなんて!実生活ではいいお父さんのリベラルな良い奴が、ちょー嫌な悪役を見事に演じていますね!」と本作でゴールデングローブ賞を受賞したアーロン・テイラー=ジョンソンを大絶賛!
アーロンと並び存在感を放つ警察官役を演じたマイケル・シャノンはアカデミー賞助演男優賞にノミネートされた。「彼もまた良い俳優だよね。『レボリューショナリー・ロード/燃え尽きるまで』『THE ICEMAN 氷の処刑人』とかもそうだけど、彼もまたJ・ギレンホールと同じくサイコパスな演技が最高に似合う!今度から何か困ったことがあったら末期がんの警察に何か頼もうと思った」と本作がサイコパス演技の上手い名俳優ぞろいと熱弁を振るった。
★理想を追い求めた女は小説世界に飲み込まれた
本作の主人公スーザン(エイミー・アダムス)は、理想を追い求めた結果、エドワード(ジェイク・ギレンホール)からハットン(アーミー・ハマー)に鞍替えし、金も名誉も手にいれた、アートギャラリーのオーナー。ある日彼女の元に元夫から、クオリティの高い、残忍な内容の小説が届いたところから物語がはじまる。
映画は現在のスーザンと、過去のスーザンとエドワードの出来事、そして小説を読むスーザンの頭の中のイメージが映像化された3部構造から成っている。「さらば雑司ヶ谷」で鮮烈なデビューを果たした樋口さんは「煌びやかな世界に身を置く女性が主人公。だけど夢の中の方がリアルだと感じることがある。そこにさらに元夫からのものすごい内容の小説が届くわけですよね。読み進めていくうちに、今自分が立っている場所は現実か虚構なのかもわからなくなってしまうんですよ」と映画で描かれる主人公の心情の構造を解説。
さらに「こういう不思議な構造は他にもあって、映画だと『インセプション』や『トータルリコール』やウディ・アレンの『カイロの紫のバラ』とか、日本では江戸川乱歩が「うつし世はゆめ夜の夢こそまこと」と言ったこととかもありますね」と、似た構造を持つ映画などを紹介し「『ノクターナル・アニマルズ』が他と違うと思った部分は、小説の中に自分が飲み込まれてゆく、心を奪われていくという部分ですね」と目の前の現実と、心奪われる魅惑的な小説世界のバランスについて解説した。
★ありえない程のディティールと伏線!気づいたらゾワっと鳥肌もの
本作の監督トム・フォードは、世界的に有名なファッションデザイナーであり、自身のブランドの立ち上げと同時に「FADE TO BLACK」という映画の制作会社を立ち上げた。デザイナーであり映画ライターの高橋さんは「世界最高のデザイナーは何をやってもうまい!ファションデザインしても良し、着こなしても良し、映画作っても良しのズルい奴!」と絶賛!
いくつもの伏線が張り巡らされている複雑な構造について問われると「彼は本当に映画が好きなんだと思う。前作の『シングルマン』もそうだけど『ノクターナル・アニマルズ』もかなりディテールにこだわっている部分が多い。ものすごく良く作られている。相当な数の映画を観て、すごく真面目に映画を作る人だと感じましたね。色んな映画を感じる部分はあるけれど、露骨な引用をしていないのも良いですね。デザイナーとしても超一級なだけに、映像へのこだわりはすごいなと感じました」と、監督の映画愛と映像や脚本への強いこだわりについて、監督の言葉を代弁するかのようにきめ細やかに解説した。
また前作との共通点については「『シングルマン』では主人公が生き甲斐をなくしていたけれど、突如目の前にイケメンが表れた時から、映像が色味をもち始めました。それと同じで『ノクターナル・アニマルズ』のスーザンは、生活は色をなくしているけれど、小説を読むとカラフルになる。どちらも生きる実感を帯びるととたんに映像が色鮮やかになるんですよね」と語った。
★この映画を一言で表すと…
樋口さんは「どう表現すればいいのか困りますよね。でもものすごいものを観た感がある映画。あとは、何を着飾っていようが、どんな豪邸に住んでいようか、その物質とお前自身は何も関係ないぞ、と言われているような映画ですね。怒りと復讐を込めた小説とか、どんな本や映画を観るかで自分の価値は決まると思う」。
高橋さんは「この映画は色んな見方を楽しめるオープンエンディングな映画ですよね。解釈は観る人それぞれに委ねられているんですよ。だから人それぞれの感想があって良いと思います。それを踏まえての僕の解釈は、誰もが感じる罪悪感にまつわる映画だと思うんですよね。限りなくエイミー・アダムスの一人相撲に近い。若い時にした後悔を未だに乗り越えられないんですよね。その穴は物質では埋まらない。ぼく個人は罪悪感なんて捨てちまえと思うけど、そう簡単にいくわけじゃないのが辛いねという映画だと思ってます」と締めくくった。
『ノクターナル・アニマルズ』
【STORY】
経済的には恵まれながらも、夫との関係が上手くいかず満たされない日々を過ごすスーザンのもとに20年前に別れた元夫から送られてきた衝撃的な内容の小説が送られてくる。精神的弱さを軽蔑していたはずの元夫の送ってきた小説の中に、それまで触れたことのない非凡な才能を読み取り、再会を望むようになるスーザン。彼はなぜ小説を送ってきたのか。それはまだ残る愛なのか、それとも復讐なのか――。
脚本・監督:トム・フォード
出演:エイミー・アダムス、ジェイク・ギレンホール、マイケル・シャノン、アーロン・テイラー=ジョンソン、アイラ・フィッシャー、アーミー・ハマー、ローラ・リニー、アンドレア・ライズブロー、マイケル・シーン
原作:「ノクターナル・アニマルズ」(オースティン・ライト著/ハヤカワ文庫)
2016/アメリカ/116分/PG-12 /ユニバーサル作品 配給:ビターズ・エンド/パルコ
(C)Universal Pictures
公式サイト⇒ http://www.nocturnalanimals.jp/
2017年11月3日(金・祝)~TOHOシネマズ シャンテ、大阪ステーションシティシネマ、シネマート心斎橋、シネ・リーブル神戸、109シネマズHAT神戸、11月4日(土)~京都シネマ ほか全国ロードショー!
(オフィシャル・レポートより)