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『心に吹く風』ユン・ソクホ監督、主演真田麻垂美さんインタビュー

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「冬ソナみたい」と言われるより、「日本の映画みたい」と言われる方がうれしい。
『心に吹く風』ユン・ソクホ監督、主演真田麻垂美さんインタビュー
 
北海道・富良野、美瑛を舞台に初恋を忘れられない男女の再会と奇跡の2日間を描いた純愛ラブストーリー『心に吹く風』が、6月17日(土)から新宿武蔵野館、7月8日(土)からテアトル梅田他全国順次公開される。
 
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本作は、『滝を見に行く』(沖田修一監督)、『恋人たち』(橋口亮輔監督)、『東京ウィンドオーケストラ』(坂下雄一郎)に続く松竹ブロードキャスティングオリジナル映画製作プロジェクト第四弾。「冬のソナタ」をはじめとする四季シリーズなど数々の大ヒットテレビドラマを手掛けてきたユン・ソクホ監督の初劇場用映画で、脚本も自らが担当している。主演の主婦、春香役には、俳優ワークショップから選ばれた真田麻垂美(『月とキャベツ』)。本作で16年ぶりの女優業復帰を果たしている。同じく主演のリョウスケ役には、映画やドラマで幅広く活躍している眞島秀和。富良野や美瑛の美しい丘陵地や白樺並木の中で、学生時代のモノクロの思い出と共に、当時の気持ちに戻って心の距離を近づけていく二人の二日間が、ロマンチックに描かれる。自然、とりわけ風を目で、耳で、そして心で感じられる作品だ。
 
本作のユン・ソクホ監督と主演の真田麻垂美さんに、映画ならではの試みや、オーディション秘話、春香の役作りについてお話を伺った。

 


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■「北の国から」がきっかけで富良野へ。「いつかはこの美しい場所を自分の絵の中に収めたい」と思っていた。(ユン監督)

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―――日本で映画を撮るにあたり、なぜ北海道、しかも札幌や函館など一般的に有名な場所ではなく、美瑛や富良野のような場所を舞台にしたのですか?

ユン監督:札幌や函館は都会ですから、ビルが視界を遮り、視野が開けていない印象があります。一方、美瑛や富良野はパッと視界が開けて、自然そのままの姿が生きている場所です。映画で登場する畑や雲の姿、その畑も場所によって新芽が出ていたり、湿って黒っぽい色だったりと表情が違って、パッチワークのようになりとてもキレイですが、それも偶然生まれたものです。また車で移動しているときに眺める空の雲も、毎回変わっていきます。今回の映画の一つのテーマでもある偶然性を、自然の中でたくさん感じられ、それがとても印象的な場所だったので、ここを舞台にしようと決めました。
 
―――ユン監督はドラマでも四季シリーズを手掛け、自然がいつも印象的に使われますが、自然を好きになった原点は何ですか?
ユン監督:私はソウルのど真ん中で生まれ育ちましたが、自然がたくさんある場所でした。実は父がソウル農業大学の教授だったので、大学の中に自宅がありました。牧場やお花畑、森、湖など自然が揃っている特殊な環境で育ったので、大きな影響を受けていると思います。大学の門を出るとソウルの街中なのですが、学校から家に帰ると森でしたから(笑)
 
―――富良野に関心を持たれたのは、ドラマ「北の国から」の影響もあるのでしょうか?
ユン監督:随分前ですが、日本に留学していた先輩から、日本に本当に美しいドラマがあると紹介され、「北の国から」を見たことがありました。その後「冬のソナタ」が日本でも大変愛され、札幌の放送局に招待されて初めて北海道に行ったのです。その時に「北の国から」の話をすると、関係者の方が富良野と美瑛に連れて行ってくださり、倉本先生にもお会いすることができました。またドラマのスタッフも紹介していただき、それからは何度も富良野に足を運ぶようになったのです。いつかはこの美しい場所を自分の絵の中に収めたい。好きなものを誰かと共有したいという気持ちをずっと持っていました。
 

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■ユン監督は人の気持ちをうまく引き出すマジックをかけられる方。(真田)

―――真田さんは女優復帰作となりましたが、ユン監督との撮影はいかがでしたか?
真田:6年前にアメリカに留学し、その後結婚、出産を経て、ヨガのインストラクターとして活動していました。ユン監督の作品は大好きで、全部見ていたのですが、16年ぶりにワークショップに参加したのは本当に偶然で、とてもありがたい出会いだったと思います。ユン監督は、人の気持ちをうまく引き出すマジックをかけられる方です。眞島さんと私が美瑛に撮影で滞在したのは3週間でしたが、その間は完全にユン監督のマジックの中で生きていた気がします。

 

■長年女優業を離れていたけれど、ユン監督の作品に出会うための準備を長年かけてやっていたのかなと思える。(真田)

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―――家庭がありながら青春時代の恋人と再会し、心が揺らぐという精神面の表現が必要な役どころですが、演じた感想は?
真田:ヨガに絡めてお話すると、ヨガのポーズというのは練習の一部に過ぎないんですね。ヨガは自分が何者なのかと考えていく時間がとても大切で、アメリカでヨガを勉強している時代に、私はずっとそれに取り組んできました。それは、女優として役に自分を近づける行為とリンクするのです。私は長い間、演じることから離れていたけれど、ユン監督の作品に出会うための準備を長年かけてやっていたのかなと、後からそう思えるようになりました。というのも、ワークショップで春香役が私に決まったときも、信じられなくて半信半疑。何もしていなかった私が決まるとは、どういうことなのか。本当にその答えが欲しかった。でもそう簡単に答えなど見つからないので、それならば目の前にあることを一生懸命やろうと決め、撮影に挑みました。撮影を通じて、今の自分が何者なのかを毎回考えながらやっていたことはここに繋がるのだと、今ままでの点が一気に線になって繋がったような不思議な感覚になりました。
 
―――具体的に、どのようにして春香役にアプローチしていったのですか?
真田:春香という人物にどこまで自分を投影できるか、春香の感情に自分の感情がどこまで近づけるか、という作業をしました。そして、本読みやリハーサルの度に、ユン監督と春香についてたくさん話をしました。その中でユン監督から「女優ならば美しくと映りたいと思うかもしれないが、春香は痩せないでほしい。むしろ今より太ってくれてもいい」と言われました。その意味はどういうことなのか、自分なり考えました。春香は、色々なものを諦めてきてはいるけれど、日常を大切に生きる女性だと理解したので、家族のためにきちんと三食を用意し、自分も一緒にしっかり食べるという、春香がやっている生活を続けていたら半年で10キロ増えていました。そう生活することで、少しずつ春香という人物になっていくことができたと思います。
 
―――ワークショップやオーディションを通じて真田さんを春香役に起用した決め手は?
ユン監督:私は外国人監督で、過去の情報もないため、今、目の前にいる真田さんを見て感じるものが全てでした。私は韓国でも新人を多く起用するタイプです。その時大事にするのは自分自身のフィーリングで、理由は分からないけれど、もう一度会いたいとか、魅力を感じて飽きないと感じる人を起用するようにしています。真田さんも自分が惹かれるかどうかを第一に選びました。自分が作品の中でこうしたいと感じることが何より大事なのです。春香は、あまり女優っぽい感じがしてはいけないキャラクターです。私が初めて真田さんに会った時は、本当に主婦の女性でしたが、なぜか分からないけれど惹かれるし、美しさを感じました。今、目に見えない美しさは私が演出家として引き出せばいい。見た目の平凡さは映画の中でリアリティーを担当してくれるだろう。たくさんの方の中で、唯一真田さんは最初のイメージからどんどん新しくいいものが見つかっていく方で、最終的に選ぶとき、何の迷いもなく決めることができました。

 

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■編集でロマンチックな部分がそぎ落とされ、本当に自分の作品かと思うぐらい新鮮。(ユン監督)

―――日本の監督は撮れないだろうと思うぐらい、とてもロマンチックな映画ですが、監督はご自身のことをロマンチックと思っていますか?
ユン監督:私が感じる真田さんはとてもロマンチックな女性ですし、私もロマンチックなことは好きです。ただ現実ではそれを表現し続けることはできないので、自分の好きなロマンチックな部分を映画の中で表現しています。
真田:私もすごくロマンチックなことが好きです。リョウスケが足にキスをするとか、実はもっとロマンチックなシーンがあったのですが、眞島さんは「日本人の男性はこんなことはしない」とおっしゃって。私は好きな人ならしたらいいのにと思ったんですけどね(笑)
ユン監督:自らシナリオを書いたので、自分の中では二人の関係ならあり得ると思っていたのですが、意外と眞島さんは恥ずかしがっていました。そこは日本と韓国の感情の違いなのかもしれません。ロマンチックなものをそぎ落とされましたが、実はそれは私がいつも書き慣れている部分なので、ちっとも残念ではなかったです。編集も日本の女性の方でしたが、最終的に仕上がったものは本当に自分の作品なのかと思うぐらい、とても新鮮でした。淡白で、控えめな感じになり、かえって良かったと思っています。「冬ソナみたい」と言われるよりは、「日本の映画みたい」と言われる方がうれしいですね。
 
―――「冬のソナタ」ら一連の四季シリーズとの共通点や、またそれらとの違いは?
ユン監督:共通点は、変わらない愛、初恋の純粋な愛です。愛の美しさは変わらないですから。映画だからできたことは、作家主義を大事にすること。つまり、何かを意識せずに私がやりたいことを、やりたいように表現することだと思います。テレビでできなかったことをやってみようと、ロングショットや、観客とゆったり考える時間を共有するロングテイク(長回し)を取り入れています。メタファーもたくさん使うことができました。テレビでは本当に不特定多数の様々な年齢層の方が見るので、親切な案内が必要です。今回はそんな制約を外して、映画だからできることをやれたと思います。

 

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■人間と自然とのつながり、時間と偶然に対して感じたことを、『心に吹く風』で表現したかった。(ユン監督)

―――ロングショットで美しい風景とその中にいる二人が描かれていましたが、風景に込めた思いとは?
ユン監督:映画の中でキーワードとなるのは、一つは偶然、もう一つは過去と現在の出会いです。それが二人の男女の中で起こる訳ですが、それを自然の中でも見せたいと思いました。ロングショットのシーンが意味するのは、自然と人間を対等な立場に置き、物語を引っ張っていきたかったのです。『心に吹く風』というタイトルも、心は人間の現象、風は自然の現象で、それを一つの言葉とし、人間と自然が繋がっていることを表しました。過去と現在の出会いというのは、時間を表しています。時間は過ぎていくもので、人間は過去に戻ることはできません。ただ自然の中ではそれが可能な時もあります。例えば劇中で倉庫の壁が出てきますが、色あせている壁に雨粒が落ちます。壁は過去のものですが、雨は現在のもので、過去と現在がこの瞬間存在するのです。青池も外側の木は生きていますが、中にある木は全て死んでおり、死んだ木と生きた木が同じ画面の中に収まっています。また、オープニングのロングショットでは、リョウスケが乗る赤い車がずっと道を走っていくのですが、その背景の山々の頂きには過去に降った雪が残っています。その手前には新芽が徐々に芽吹いている緑色の畑があり、自然の中の過去と現在の共存も、一つの画面に収めています。軸として引っ張るのはラブストーリーですが、時間と偶然に対して感じたことを、私はこの作品で表現したかったのです。
 

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<作品情報>
『心に吹く風』(2017年 日本 1時間47分)
監督・脚本:ユン・ソクホ 
出演:眞島秀和、真田麻垂美、長谷川朝晴、菅原大吉、駒井蓮、鈴木仁他 
2017年6月17日(土)~新宿武蔵野館、7月8日(土)~テアトル梅田他全国順次公開
公式サイト⇒http://kokoronifukukaze.com/
(C) 松竹ブロードキャスティング