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目標体重100キロ!松山ケンイチ、命がけの役作りを語る。 『聖の青春』舞台挨拶

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目標体重100キロ!松山ケンイチ、命がけの役作りを語る。
『聖の青春』舞台挨拶
登壇者:松山ケンイチ、森義隆監督、森信雄師匠(16.11.8 なんばパークスシネマ)
 
弱冠29歳の若さで亡くなった伝説の棋士、村山聖。病魔と闘いながら、将棋に命を捧げた村山の生涯を描いた大崎善生のノンフィクションを、『宇宙兄弟』などの森義隆が映画化した。村山聖役には自ら名乗りを上げた松山ケンイチが、外見、内面の両面から人物像に肉薄し、命を削って将棋に打ち込む姿を熱演。村山の最大のライバルである羽生善治は東出昌大が扮し、手に汗握る対局シーンをはじめ、尊敬しあう二人の関係を見事に甦らせた。村山の師匠であり、病魔に侵された村山を支え続けた森信雄師匠をリリー・フランキーが演じ、その包容力で村山ら若き棋士、そして映画を支えている。
 
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一般公開を前に11月8日(火)なんばパークスシネマで行われた先行上映会では、主演の松山ケンイチと森義隆監督が登壇。大阪・福島の将棋会館や、村山が住んでいた前田アパートでロケも行い、ゆかりの地での凱旋試写会に満席の客席から熱い拍手が送られた。スペシャルゲストも登壇し、在りし日の村山聖さんそのままの松山ケンイチ版「村山聖」を絶賛した、話は尽きない舞台挨拶の模様をご紹介したい。
 

satoshi-bu-240-1.jpg(最初のご挨拶)

松山:みなさん、こんにちは。村山聖役をやらせていただきました松山ケンイチです。今日はお越しいただき、ありがとうございます。関西の将棋会館や、前田アパート周辺でも撮影させていただき、ある意味地元で試写会ができたことをうれしく思っています。短い時間ですが、よろしくお願いいたします。

森監督:『聖の青春』の監督を務めさせていただいた森です。満席の中、ロケをした大阪で初めて観ていただけるのは、緊張もありますがすごくうれしい思いです。今日はよろしくお願いします。
 
―――松山さんご自身から村山聖役に名乗りを上げたそうですが?
松山:村山聖さんのことを知ったのは、僕が29歳の時でした。本棚を整理していたら、奥から『聖の青春』が出てきて読んだのがきっかけで、村山さんの生き方、命に対しての向き合い方に僕自身胸に突き刺さるものがあったのです。人生は人それぞれに向き合うテーマでもあるので、色々な人に村山さんの生き方を知ってほしい。そこから何か受け止れるものがあるので、ぜひやりたいと思っていました。
 
―――ポスターに写っている主人公が、松山ケンイチさんですよね?
松山:サモ・ハン・キンポーではないですね(笑)。今年の1~2月に撮影していたのですが、当時はいていた下着のパンツを僕はいまだに履いているのですが、(当時のサイズに伸びてしまい)パンツが元のサイズに戻っていないんです。だから、ズボンを履くと逆にずり上がって、ずっと食い込んでいるという・・・ネタバレでした。
森監督:そんなシーン、撮ってないですよ(笑)
 

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―――撮影中の松山さんの様子は?
森監督:企画から8年の歳月がかかった映画ですが、(村山聖役は)本当に難しい、命をかけないと演じられない役であり、自ら手をあげてくれた松山君を除いて選択肢はありませんでした。8年というのは、松山君が29歳になるのを映画が待っていた。それに僕自身も29歳のとき原作に出会いましたから、同じ時に、同じものが刺さり、そこに松山さんと向き合った時間でした。スタートからそうでしたから、僕ももちろん太ることを提案しようと思っていましたが、(松山君にとっては)そんなことは当たり前で、勝手に目標体重をきめていました、100キロと。それだけの意気込みで来ていたので、僕の現場での仕事は村山が命を燃やし続けるのですが、順撮りしながら、最後まで 燃やし続けるように見守ること。松山君が命を燃やす姿を見るのが幸せでした。
 
―――撮影を順撮りにした理由は?
森監督:村山さんは時間が限られた中で生きていた人。松山君自身も刻々と迫りくる時間の中で一つ一つ感じた意味をシーンの中で表現してほしかったのです。順撮りは時間もお金もかかります。でも、僕ギャラ要らないと申し出たぐらい、村山さんが生きた軌跡を撮るために順撮りすることはとても重要でした。松山君自身が、この映画の中を迫ってくる時間の中で生きていたと思います。
 
 
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―――福島(大阪)の将棋会館で撮影されていますね。
松山:朝、将棋会館で取材があり、久しぶりに出入り口からエレベーターに入るのを見るだけでも撮影当時が蘇ります。対局室でプロの方の対局も見学させていただきました。今はただの部屋ですが、その中に刀を持って切りあいをしていたような殺気がみなぎっていたのだなと。僕らはプロ棋士ではないので、醸し出される空気感をどう表現していくかという闘いでもありました。
 
―――息詰まる対局シーンが見事でしたが、撮影は大変でしたか?
松山:この作品に携わる皆に共通することですが、村山さんに惚れ込んでいる。将棋が大好きで、好きという気持ちは何でも越えるんですね。苦しさや楽しさをも越え、どこまでも深くもぐっていける気になるし、これができるなら何もいらないという気持ちにさせてくれたのが、将棋であり、将棋に生きる人たちでもあり、村山聖さんでした。 
 

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(ここでスペシャルゲストとして、村山聖の師匠であり、献身的に村山さんを支えた森信雄師匠がご登壇、大きな拍手で迎えられた。)

 

森師匠:この映画は村山聖を、松山ケンイチさんが熱演を越えたような、途中で村山君と声をかけそうになったぐらいでした。今日は松山ケンイチでカッコいいですけれど。映画の時は村山聖で、声をかけても村山聖であり、親しくさせていただきました。今日はゆっくり映画を観てください。

 
―――松山さんは、師匠とは何度も会っているのですか?
松山:撮影前には取材で、撮影中も将棋会館の対局シーンでは将棋指導として、とてもたくさんアドバイスをいただきました。最後にお会いしたのは京都で、撮影が終わって全てを出し尽くした後に森師匠に会いたいからと呼び出して。初対局をさせていただきました、麻雀で。村山さんも麻雀をやっていたし、師匠もやっていたので、これはぜったいにやらなければと。結果、師匠にボコボコにされました。
 
―――映画では松山ケンイチさんが骨身を削って演じた村山聖と、師匠がご存じの村山聖さんとはかなり一致していましたか?
森師匠:大阪ロケのとき、間違えて声をかけたくなるぐらいでした。演じているのではなく、村山聖がいて、18年ぶりに彼に会えたような気持ちでした。
 
 
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―――劇中で森師匠役はリリー・フランキーさんが演じています。
森師匠:リリーさんは淡々とされているので、だいぶん皆に「森さんよりカッコいい」と言われました。
森監督:村山さんの人生にとって森師匠は本当に大きな存在。動物のような方であり、愛のかたまりであり、原作の大崎さんは「純真がヘドロをかぶったような人」と上手い表現をしていますが、映画の中では純真の部分を描こう。森師匠のもっている変なものに縛られない自由な生き方の匂いを感じとり、そういう佇まいを持っている人がリリーさんだったのです。 
 
―――森師匠とお話することで、在りし日の村山さんの雰囲気を吸収されたのですか?
松山:実際の村山さんを知っている人に取材することが、スタート地点でした。森師匠やプロ棋士のみなさん、ご両親などにインタビューしましたが、皆言うことが違うんです。すごく多面的で、自分のある面を出す人、出さない人がいる。そして、皆笑って村山さんの話をするので、それだけ愛された人なのだと思いました。
 
―――森師匠から見て、村山さんはどんな弟子でしたか?
森師匠:かわいかったですね。時々憎ったらしいのですが、冷静なところと子どもっぽいところがあり、色々な表情がありました。
松山:森師匠の人柄をみることで村山さんを感じました。血のつながっていない親のような存在です。師匠を通して村山さんを見つけていきました。
 
 
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―――森師匠から見て、将棋のシーンはいかがでしたか?
森師匠:ロケのとき、僕は「もういい」と言ったシーンでも、松山さんは納得せずに、微妙なところを感じてくれ、頑固な部分が垣間見れました。最後はいい駒音がでていました。
松山:将棋は未知の領域です。プロ棋士の美しい指す仕草もそうですし、みなさんは何十年も指し続けていらっしゃいます。撮影では、とにかく頼りになるのは森師匠でしたから、対局のときはずっと師匠の顔を伺っていました。
 
―――羽生さんとの対局シーンは見事でしたね。
松山:棋譜は全部覚えていました。
森監督:2時間半の長まわしで最初から最後まで全部撮りました。本当の瞬間、村山さんが生きた魂の瞬間を少しでも撮りたいと。最後の最後に撮ったシーンですが、松山さんは、そのときは村山聖でした。病でせっぱ詰まったところでの対局シーンを、「用意スタート!」「カット!」の連続では撮れません。そこまで俳優ができるか、博打のような部分がありましたが、松山君も東出君も「やりたい」と言ってくれました。
 

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(最後のご挨拶)
森師匠:村山聖が18年ぶりに帰ってきた映画なので、じっくり見てください。
森監督:将棋の映画ですが、生きるということの映画です。村山さんは限られた時間で命を燃やしましたが、それは僕もみなさんも一緒。無限の時間を生きている訳ではないと僕も村山さんに教わりながらこの映画を作りました。感動とか、泣けたということではない、何か刺さるようなもの、自分の生き方に照らし合わせて見てもらえたら、うれしいです。
松山:役者を15年やらせていただいて、スタート地点に立つまでに、一番役を作る時間がかかりました。役者の自分がそうではない自分を暴力でたたきのめす時間が長かったです。完膚なきまでに叩きのめされた自分がどこかにあり、自分にとってすごく貴重な経験でした。命を燃やすということは手放しでいいことだとはいえない部分があります。ただ自分の意志で、自分の好きなように燃やすことは誰も文句が言えないし、すごく美しいことです。村山さんの中でも、自分に暴力をふるってしまう部分もありますが、公開されてから、役者の自分をまた完膚なきまでに叩きのめしてやろうと思っています。
(江口由美)
 

<作品情報>
『聖の青春』
(2016年 日本 2時間4分)
監督:森義隆
原作:大崎善生『聖の青春』(角川文庫/講談社文庫)
出演:松山ケンイチ 東出昌大 染谷将太 安田顕 柄本時生 北見敏之 筒井道隆 竹下景子 リリー・フランキー
2016年11月19日(土)~大阪ステーションシティシネマ、なんばパークスシネマ他全国ロードショー
公式サイト⇒ http://satoshi-movie.jp/
©2016「聖の青春」製作委員会