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美しき日本の文化を伝承する松雪泰子主演『古都』、京都プレミアイベントを開催

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美しき日本の文化を伝承する松雪泰子主演『古都』、京都プレミアイベントを開催
(16.11.16 ウェスティン都ホテル京都 葵殿)
登壇者:松雪泰子(主演)、Yuki Saito(監督)、新山詩織(エンディング曲)、小林芙蓉(書道)、松山大耕(禅)、門川大作(京都市長) 
 
文豪川端康成の代表作で、過去に岩下志麻、山口百恵を主演に2度映画化された、京都に生きる生き別れた双子の姉妹を描いた『古都』。原作誕生から50年以上経った現在の京都とパリを舞台に、主人公千重子、苗子の20年後を描く新しい『古都』が生まれた。
 
 
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監督はハリウッドで8年間映画作りを学び、京都ヒストリカ国際映画祭関連企画の京都フィルムメーカーズラボにも参加経験のあるYuki Saito。千重子、苗子を一人二役で演じる松雪泰子、千重子の娘、舞を演じる橋本愛、苗子の娘、結衣を演じる成海瑠子が、伝統を継ぐか、自分の好きな人生を歩むか葛藤する娘と若い頃の自分と重ねる母の姿を小説のように美しく、鮮やかに演じている。京都で暮しているかのようにはんなりと流れる時間を感じる一方、千重子が身に付けている着物や、物語の鍵となり過去の『古都』ともつながる北山杉の帯の美しさや、京都で受け継がれてきた様々な文化の豊かさを体感できる作品だ。
 
 
 
 
 

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作品の舞台となり、全面ロケを敢行した京都で、11月16日にプレミアイベントが行われ、プレスや関係者、一般客の前で、本作にちなんだパフォーマンスや記者会見が行われた。
冒頭に横澤和也さんによる岩笛演奏と共に、本作にも出演され、題字を担当した書道家の小林芙蓉さんによる書パフォーマンスが行われた。舞を踊った後に大筆で、気合いのこもった掛け声と共に全身を使って見事な書が描かれ、池坊専好次期家元による生け花の横に飾られた。映画の世界をそのまま体現した会場に、引き続き主演の松雪泰子さん、Yuki Saito監督、エンディング曲を担当した新山詩織さんがレッドカーペットから登場し、感激の面持ちで挨拶してから記者会見へと移った。
 
 

 

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―――日本文化が色濃く描かれている作品ですが、特にこだわった点は?
Saito監督:まず、全て本物にこだわりました。お茶道具、着物も素晴らしいですが、なぜ本物にこだわったかといえば、そこに宿っている魂、本物だからこそ今まで培ってきたものが備わっているからです。
 
松雪:私は役を通して、この京都で生きることがどういうことなのか、私なりに作品に入る前に様々な稽古を通す中で学びました。できる限り、この土地に存在して生きている女性を自分の感覚と体、表現を通してしっかり体現したいと思い、撮影に臨みました。お茶や着物の所作、着付け、お料理など、肉体を通してしっかりと京都に存在することを丁寧にやりたい。それを体現することで文化を表現したかったのです。 
 

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―――名作『古都』を改めて映画化した意味は? 
Saito監督:偉大な中村登監督や市川昆監督が映画化し、名作として既に存在している映画『古都』ですが、過去あったものやその世界をそのまま焼き増しするのではなく、現代の京都、新しい視点を加えることができれば私でも撮れると思いました。『古都』には、日本人の精神性や、目には見えない宿命が描かれています。 川端香男先生からは「映画と小説は違うから、自由にやりなさい。ただ川端文学にあるように、今の京都をしっかり描く。その精神だけは受け継いでほしい」とおっしゃっていただいたのは、有難かったです。一番気を付けたのは精神性です。登場人物たちが京都やパリで生きることで、ある種の宿命や運命を背負います。私は、運命は変えられるもの、宿命は変えられないものと思っています。その狭間にいる京都の人を描いていきました。
 
松雪:川端先生の『古都』は、本当に偉大な作品です。改めて読み返すと、本当に美しく、京都文化の奥深さが、言葉による表現でありながらも絵のように広がります。その精神はかつての古都の時代から生きて、子をはぐくみ背負う宿命、渡す立場の人間でしたので、しっかり引き継いで表現したいという思いで臨みました。 
 
撮影で建物の歴史や存在する家の空気を感じた時に、全身に歴史の重みを感じながら演じることができました。簡単に「継承」などできませんが、どう若い世代に渡していくべきか。伝統の重みは計り知れない大きなものですが、母である役柄を通して、娘になにをどう伝えるか、苦労しながら演じました。若い世代の娘たちに対し、一方的に想いを押しつけるのではなく、同じ時間軸の中で葛藤しながらお互い成長する。どういう風に表現したら一番伝わるのか、皆でセッションをしながら作品を作り、一生忘れられない体験となりました。
 
―――中島みゆきさんの名曲『糸』をカバーした気持ちは? 
新山:学生時代からふとした時に耳にした曲で、年代を問わずにたくさんの人に響く曲です。 今回この映画の中でエンディング曲として歌わせていただきましたが、映画は京都の美しい景色に優しく寄り添えるように歌いました。名曲なので緊張感はありましたが、それも含めて、新山詩織としてこの曲を歌いましたし、観た方に届けばうれしいです。 
 
 
 
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―――日本の美、心を演じられるにあたって具体的にどのような部分を意識したのですか?

 

松雪:実際に伝統的な織物や建造物にふれていく中で、役を演じるにあたり歴史的背景を学び、そこに息づくエネルギーをすごく感じました。学ぶ機会があることは、日本古来の伝統的な美しさをより感じることができますし、この映画がそのきっかけになればいいなと思いながら、撮影しておりました。 準備にあたっては、着付けのお稽古や京言葉を1ヶ月半練習し、できる限り体現できるように準備をして臨みました。 
 
―――具体的に現場ではどのようなセッションをして、より作品を深めていかれたのですか?
Saito監督:1本の作品を撮るのに2年間準備をさせていただいたのは、すごく幸せなことでした。脚本も50稿まで書きましたし、撮影に入るまでに何度もディスカッッションできました。何度もロケハンで回り、全アングルが頭に入っているぐらいの準備をして撮影に臨みましたが、お着物姿の松雪さんが千重子として、町屋やお寺で現れた時、それらがパッと消えてしまう瞬間がありました。やはり松雪さんや橋本さんのお芝居を見せてもらい、現場で起きていることが正解ですから。町屋の撮影では、例えば「小津監督のフレームに自然と収まるようになるな」と学びながら行っていきましたし、娘と母の距離感は実際の現場でのお芝居を見ながら変えていった。そんなセッションでしたね。 
 
 
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―――川端康成の『古都』の原作が書かれたのは約50年前ですが、当時あったもので現代にはなかったものは?また、それに対してどう対処したのですか? 

 

Saito監督:精神は何かという見えないものを探っていくと、「川端先生はなぜ『古都』を書かれたのか」と考えました。50年前の当時、失っていくものを感じて「これは今、書いておかなければいけない」という思いから始まった。そうすれば、50年たち川端先生が見た景色より、失われたものはさらに多くなっています。特にオープニングシーンでは中村登監督の初代『古都』にオマージュを捧げる意味で、格子や鍾馗さん、瓦という京都のディテールから、クレジットとともに京都の街を描こうとしました。でも、絵を引けないのです。クローズアップでディテールは撮れても、引いた映像を撮ると、どうしても隣接するマンションや駐車場が映り込んでしまう。ただ、そこを排除して、昔の姿が残されている所ばかり撮っても、現代版にした意味がなくなる。ですから、引くことにより、マンションや工事中の現場もしっかり押さえることで、今の京都を描きました。2年間取材をする中でも町屋だったところが更地になったのが何軒もあり、現在進行形で起きているので今のうちに描かないと、と強く思いました。この感覚は50年前に川端先生が感じられたものに、少し近いのかもしれません。 
 
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この後、「奇跡的に発見した」という、東山魁夷の代表作『北山初雪』からイメージした北山杉柄の対の帯についても話が及んだ。「発見したとき、これは映画の軸に入れなくてはいけないと思った。夏の帯と秋の帯で、千重子と苗子がそれぞれ娘に受け継いでいくものを表現した」とSaito監督が語ると、財団法人川端康成記念会事務局長の水原氏は「それまで注目もされていなかった、あの美しい北山杉の美林を発見したのは川端さん。昭和38年に朝日新聞で連載を始めた『古都』で初めて取り上げ、有名になった。昭和30年代の半ば、京都にビルが建ち始めたときに『山が見えない京都は、京都ではない』と嘆き、激変する京都を描いて欲しいと親交が厚かった画家東山さんに頼んだ」と、物語のイメージを形作る北山杉や、東山魁夷と川端康成の秘話を語られた。
 
 

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「『古都』というタイトルが背負う意味として、京都の人が認めていないものを、世界に持っていけないというポリシーが自分の中にあります。まずは京都の人に観ていただき、まだ小さい産声ですが、その声を大きくしていくことでこの作品が成長していくと思います。京都から全国、そして最終的には日本人の精神が詰まったこの映画を世界に発信していきたいと思っています」(Saito監督)、「深く静かに、丁寧に時間が進む作品。今、映画館に足を運び、自分自身と向き合いながら観ることができる作品は少ないです。『古都』はすごく豊かな時間を過ごしていただける作品になったのではないかと思います。」(松雪)と記者会見を締めくくると、新山詩織さんがエンディング曲、『糸』を生演奏で披露。アコースティックギターを演奏しながら、奏でられる若々しくも少しハスキーな歌声が、聞きなれた名曲に新たな命を吹き込んだ。
 
 
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続いてスペシャルゲストとして登壇した書道家の小林芙蓉さんは、「川端康成の心と精神がとても出ている。美しい映像、テーマは水と祈りではないか」と作品にメッセージを寄せた。また、妙心寺退蔵院副住職の松山大耕さんは、「京都の人だったら躊躇して撮れなかったが、Saito監督は外から京都を見てくれた。京都の気持ちを伝えるのに一番難しいのは、歩き方や襖の開け方、足の運び方など日常の所作。若い世代の人が出演しているので、京都の美しい景色やお道具だけでなく、所作の美しさを少しでも味わっていただきたい」と作品の見どころを語った。
 

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最後に、門川大作京都市長が登壇。「伝えられる日本の伝統、伝えたい日本の心という言葉がぴったりの多くのことを考えさせられる映画。1000年を越えて伝わってきた精神文化、書道、華道、茶道、それらを支える伝統産業。なによりも大事なのは京都に伝わる心を京都市民が暮らしの美学、生き方の哲学として伝えていかなければなりません。この50年で日本中の伝統産業が危機的状況にあり、山林も荒れ、京町屋が毎日のように潰されていますが、我々は行動しなければなりません。何を大切にし、何を伝えていくか。それで豊かに暮らしていける循環が大事です。2年後に京都とパリの友好都市が60周年を迎えるにあたり、このような映画を作っていただき、本当にうれしい。どうぞ、多くの方にご覧いただきたい」と挨拶し、映画『古都』京都プレミアイベントを締めくくった。
映画制作のスタッフ、キャストだけでなく、京都の行政、文化人の方々が全面的に協力し、今後残していきたい精神と美を織物のように織り上げた新生『古都』。京都力、そして双子のようなフランスの古都、パリの魅力と共に、いつの世も変わらぬ母娘の絆が心に残ることだろう。
(江口由美)
 

<作品情報>
『古都』(2016年 日本 1時間57分)
監督:Yuki Saito
原作:川端康成『古都』新潮文庫刊
出演:松雪泰子、橋本愛、成海瑠子、蒼れいな、蒼あんな、葉山奨之、栗塚旭、迫田孝也/伊原剛志、奥田瑛二他
2016年11月26日(土)~京都先行公開、12月3日(土)~全国公開
公式サイト⇒http://koto-movie.jp/
(C) 川端康成記念會/古都プロジェクト