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宮沢りえ、「はっぴ姿には自信がある」余命2ヶ月の肝っ玉母ちゃんに。『湯を沸かすほどの熱い愛』先行上映会舞台挨拶

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宮沢りえ、「はっぴ姿には自信がある」余命2ヶ月の肝っ玉母ちゃんを熱演。
『湯を沸かすほどの熱い愛』先行上映会舞台挨拶
登壇者:中野量太監督、宮沢りえ(16.10.6 梅田ブルク7)
 
日本映画界にまた頼もしい才能が誕生した。前作『チチを撮りに』(12)が海外の映画祭でも高く評価された京都出身の中野量太監督。10月29日(土)に全国公開される最新作『湯を沸かすほどの熱い愛』で『紙の月』(14)の宮沢りえとタッグを組み、見事商業映画デビューを果たす。
 
 
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宮沢が演じるのは、余命2ヶ月の宣告を受けた幸野双葉。夫、一浩(オダギリジョー)が1年前に家を出た後、家業だった銭湯、幸の湯は休業状態。娘の安澄(杉咲花)が学校で問題を抱えているのを励ましながらつつましく暮らしていたが、残りわずかの人生で出来ることを考えた末、夫の所在を突き止めてその愛人の子ども共々連れ戻し、幸の湯を再開させることを決意する。いじめに遭っていた安澄に闘う勇気を与える双葉。だが死ぬまでに安澄に伝えなければならないことは、それだけではなかった…。
 
中野監督によるオリジナル脚本は、家族の物語に一筋縄ではいかない展開を盛り込み、命が限られた人間の葛藤や、過去の過ちに対する自責の念、弱い自分を克服しようと奮闘する姿を各キャラクターに託している。スクリーンから思わぬパワーが伝わってくる、まさに“湯を沸かすほどの熱い愛”に包まれた作品だ。
 
一般公開を前に10月6日(木)梅田ブルク7にて行われた先行上映会では、中野量太監督と、主演の宮沢りえが上映前の舞台挨拶で登壇。故郷への凱旋試写会となった中野監督と、中野監督の脚本に惚れ込んだという宮沢りえの同い年コンビが、作品への愛や、アツかった撮影現場を振り返るトークを繰り広げた。その模様をご紹介したい。
 

(最初のご挨拶) 

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宮沢:みなさん、暑い中お越しいただいておおきにです。この作品は同い年の中野量太監督と撮りました。同世代で、こんなに素晴らしい脚本を書く監督がいることを知ることができたのは、私の宝です。そしてこの物語の中で思いを交わしあった共演者のみんな、スタッフをすごく誇りに思いますし、そこで交わした思いは未だに私の中で熱を帯びている気がします。どうぞ、楽しんでください。 
 
中野監督:脚本、監督をしました中野量太です。僕は京都出身なので、こうして関西で試写会を開くことができ、とてもうれしいです。しかも理恵さんを連れて帰ってくることができました。映画のことを少しお話すると、面白い脚本を書けば映画が撮れるのではないかという気持ちで、全くのゼロベースで脚本を書きました。この話で一番重要な母親役を誰がやるかという時に、宮沢さんが脚本を読んでくれ、新人監督のしかもオリジナル脚本に出演すると言ってくれたのです。理恵さんが出演を快諾してくれたおかげで、この映画は一気に動き出しました。その後は、自分の思いを全部込めて、込めて映画を作り、いつの間にか理恵さんとこの場にいた感じです。(宮沢が「イエイ~」とハイタッチ)。楽しんでもらえればと思います。 
 

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―――なかなか日本映画でオリジナル脚本の作品は少ないですが、最初に読んだときの感想は? 
宮沢:大体作品をオファーされると、最初に自分が演じることを重ねながら脚本を読むのですが、この本は読み進めるうちに、どんどん双葉という役に自分の思いが入っていきました。タイトルにも含まれていますが、本当に衝撃的なラストシーンを読んだときには、心にも体にも鳥肌が立ちましたし、なかなかこんな作品に出会えないぞという気持ちがありました。 
 
ただ余命を宣告された女性の役なので、悲劇的に作ることもできれば、ドライに作ることもでき、そこは監督にお会いしてみないと分からない。私はあまりウェットな悲劇のヒロインにはなりたくなかったので、その気持ちが監督と共有できれば、ぜひ演じたいと思いました。監督と初めてお会いして、その気持ちが共有できたので、その場でOKしました。 
 
中野監督:代官山のツタヤでしたね。めちゃくちゃうれしかったし、何か強い縁があり、絶対この役は宮沢さんがやってくれると思っていましたから。でも、半分はダメかもと思っていましたよ。 
 
宮沢:そんな弱気な感じは全くなかったですよ!最初からかなり強気で・・・。 
 
中野監督:会って断られるほど辛いことはないですから。必死で思いを伝えました。そのときに宮沢さんが「双葉役は聖母になったら絶対にダメだよ。普通にそこら辺にいるお母ちゃんが余命2ヶ月で下した決断は、自分のことより家族をなんとかしたいという思いだよね」とおっしゃって。正にその部分を共有できたのが、とても良かったです。 
 
 
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―――宮沢さんが演じる双葉は、肝っ玉母ちゃん役でしたね。 
宮沢:幸の湯という銭湯の話ですが、はっぴを着ました。かなりはっぴ姿には自信があります。この物語の中で双葉を生きていたときには「これほどはっぴが似合う女はいないぞ」と鏡を見ながら思っていました。 
 
―――銭湯の掃除をするシーンもありましたが、実際に練習したそうですね。 
中野監督:一度は経験してほしかったので、ロケで使わせていただいた銭湯で練習しました。 
宮沢:カネヨンというパウダー状の洗剤を使って、その銭湯の方が「こうやってやるのよ!」と熱心に指導してくださり、すごく楽しかったです。 
 
 
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―――幸野家は父や娘のいる家族ですが、家族間の撮影中の感じはどうでしたか? 
宮沢:娘役の杉咲花ちゃんとは撮影に入る前に連絡先を交換しあい、撮影当日まで毎日作品とは関係のないことを交換しあっていました。そこでは敬語もやめて、お母ちゃんと呼んでもらうようにしたので、撮影に入る頃には密度の深い関係が出来ていて、親子役をするのにいいエネルギーになりました。 
 
夫役のオダギリジョーさんは、私がいつか共演してみたい俳優さんでしたし、脚本を読む力がとてもある方でした。役者は格好良く見られたいと、一瞬でも思ってしまうものですが、この物語の中のオダギリさんはダメ男です。そこに徹していて、最後はとても素敵になりますし、そのバランス感覚に感動しました。 
 
 
―――俳優は絶対格好いいシーンをやりたいものですが、オダギリさんとはどんなやりとりをしたのですか?
中野監督:オダギリさんに会ったその日から、「今回格好良かったら負けですからね」と言ったのですが、実際はやはり格好良くて。これが格好良く見えなくなるのは難しいなと思ったのですが、一歩間違えばただのダメ男をちゃんと憎めないダメ男に演じてくださったのは、オダギリさんの力です。
 
 
―――それでは、最後のご挨拶をお願いします。
中野監督:どんな作品か、まずは観てください。自信があります。宮沢りえさんも、とてもとてもいい演技をしてくれました。脚本を書いても、自分の想像を超える芝居はなかなかなくて、自分の頭の中で想像している方が面白いのですが、今回の映画は見事に僕の想像を超える芝居をしてくれるメンバーが集まり、何度も僕は現場でアツくなって、たまらない思いをしました。その思いがこの映画の中に映っていると思います。ぜひ、楽しんでください。
宮沢:この撮影で命に限りがあるということを覚悟した双葉という役を演じ、命があって、呼吸ができて、日常があるということは決して当たり前ではなく、奇跡の積み重ねです。そう思うと人と会ったり、暮らしたりすることがとても大事なことに思えました。そういうことがこの映画から滲んでほしいし、観て下さった方が、自分の持っている日常や愛する人や大切な人を、心から「大切」と思えるようなきっかけになればいいなと思います。どうぞ、楽しんでください。
 
(文:江口由美 写真:河田真喜子)
 

<作品情報>
『湯を沸かすほどの熱い愛』
(2016年 日本 2時間5分)
脚本・監督:中野量太
出演:宮沢りえ、杉咲花、篠原ゆき子、駿河太郎、伊東蒼、松坂桃李、オダギリジョー
2016年10月29日(土)~新宿バルト9、梅田ブルク7、他全国ロードショー
公式サイト⇒ http://atsui-ai.com/
(C) 2016「湯を沸かすほどの熱い愛」製作委員会