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本木雅弘って、面倒くさい男!?『永い言い訳』大阪舞台挨拶

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本木雅弘って、「面倒くさい」男!?『永い言い訳』大阪舞台挨拶
登壇者:西川美和監督、本木雅弘
(16.10.5 TOHOシネマズ梅田別館アネックス)

 

~本木雅弘は、撮影後も自分の演技を監督に確認したがる「面倒くさい」男!?~

『ゆれる』(06)、『ディア・ドクター』(09)、『夢売るふたり』(12)とコンスタントにオリジナル脚本による優れた人間観察の作品を作り続けてきた西川美和監督。『おくりびと』以来7年ぶりの主演となる本木雅弘と初めてタッグを組んだ4年ぶりの最新作『永い言い訳』が10月14日からTOHOシネマズ梅田ほかで全国公開される。
 
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歪んだ自意識を持つ売れっ子小説家、衣笠幸夫(本木雅弘)が妻の事故死から再生するまでを、同じく事故で妻を失った正反対の性格の陽一(竹原ピストル)やその家族とのふれあいを絡めながら描写。スーパー16ミリで撮影された映像の豊かなニュアンスや、被害者同士がいつしか疑似家族のようになる関係性など、喪失感と共に、それでも生きていく人々を丁寧に綴ったヒューマンドラマだ。
 
TOHOシネマズ梅田別館アネックスで10月5日(火)に行われた先行試写会では、上映前に西川美和監督と主演の本木雅弘が登壇し、大ヒット祈願の舞台挨拶が行われた。
 

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主人公幸夫のキャラクターにちなんで今も引きずっているコンプレックスを聞かれた本木は、「数え切れないほどある。スポットライトを浴びているのに責められている気分だし、自信があるのかないのか自分でも所在がわからない。簡単に言えば自意識過剰。あまのじゃくのところも(幸夫に)似ている」。ただ、いざ演じるとなると「自然のままでというものではない。今まではコスチュームに助けられていたが、今回はお尻を見せる無防備さで、どれだけカメラの前でカメラを意識せずにいられるか努力した」と自らをさらけ出す新しいチャレンジに挑んだことを明かした。
 
一方、本木を起用した感想について西川監督は「タイトル通り、”言い訳の多い”方だった(笑)。二枚目だけどどこかコミカル。近年の役は近よりがたい雰囲気のものが多かったが、この撮影では色々な欠点を余すところなくさらけ出してくれ、人との垣根がない方だった。人として親近感を覚えた」。そんな本木の言い訳とは「いまだに『あのシーンはどこが悪かった?』、『本当はどう思っているの?』と聞いてくる。面倒くさいでしょ?」と西川監督が暴露し、会場は大爆笑。
 
 

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主人公の名前を往年の広島カープの名選手で鉄人の異名を持つ衣笠祥雄(きぬがささちお)と同姓同名にしていることについて、カープファンでも有名な西川監督は、「大きすぎる名前を背負った男という設定で、自分が生まれもったものを背負っていくことができない、いつまでも幼稚な男を描きたかった」とその意図を明かした。また共演した陽一役の竹原ピストルについて、本木は「この共演で初めて出会ったが、自分がしばらく出会うことのなかった魂の純粋さを持った人」と絶賛。「自分とは対比のある竹原さんと出会うことで、映画の中で幸夫を重ねることができた。今は僕の方が竹原さんに熱を上げていて、明日は竹原さんがライブをしている名古屋で舞台挨拶があるので、ライブに行ける!」と追っかけファンのように目を輝かせて語ると、西川監督も「お互いの持っていないものに対し、やわらかにリスペクトし合う関係」と映画にとてもいい効果を与えたことを付け加えた。
 

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本作は一年をかけて撮影されたが、季節の移り変わりをカメラに収めるだけでなく、関係者同士の絆が濃くなり、特に陽一の子ども、真平役の藤田健心君や、灯役の白鳥玉季ちゃんの一年間の成長ぶりは素晴らしかったと2人揃って絶賛。役柄では子どもがいない男を演じた本木が待ち時間に子役たちの遊び相手となって現場の雰囲気を作ったり、撮影終了後も竹原が「お父ちゃん」と呼ばれたエピソードを披露し、映画でも垣間見える疑似家族のような温かい関係は、撮影中の現場の雰囲気がそのまま映し出されたものであることを、西川監督がしみじみと語った。
 
最後の挨拶では、
「他のエンターテイメント映画と比べると、劇的な展開があるわけでもないけれど、その中に時間の積み重ねからしか分からないものを感じてもらえれば」(本木)
「耳よりの情報があります。4年ぶりの新作なので、何もかも丁寧に作りました。劇場で販売するパンフレットも特別寄稿で内田也哉子や小説家の長嶋有さんからの特別寄稿や、幸夫に扮した本木さんが撮影後幸夫に関して語るDVD、劇中のアニメ『ちゃぷちゃぷローリー』のシナリオ完全版もつけて1000円で販売しているので、是非もう一度公開後に劇場で鑑賞し、パンフを買って帰って幾通りにも楽しんでください。今日はありがとうございました」(西川監督)と熱弁を振るった。
 
7年ぶりの主演、しかも自らの欠点をさらけ出しての演技を全編に渡ってみせた本木雅弘はいつになく緊張の面持ちも見せながら、「(映画を見て)悪かったら、どこが悪かったとしっかり伝えて」と、本作にとことん向き合っていることを感じさせる舞台挨拶だった。西川監督も、観客の反応が楽しみで仕方がない様子。「大阪のお客さんは上映後のトークショーでも、まずは何も考えていなくても我先に手を上げ、一発ボケて場を和ませてくれる。本作でもまたQ&Aの機会をぜひ設けてほしい」と語ってくれた。観た後からじわじわとカウンターパンチのように効いてくる作品。鑑賞後は、誰かと家族や大事な人について語りたくなることだろう。
(文:江口由美 写真:河田真喜子)
 

<作品情報>

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『永い言い訳』
(2016年 日本 2時間4分)
脚本・監督:西川美和 
原作:西川美和『永い言い訳』 (文藝春秋社)
出演:本木雅弘、竹原ピストル、藤田健心、白鳥玉季、池松壮亮、黒木華、山田真歩、深津絵里他
2016年10月14日(金)~TOHOシネマズ新宿、TOHOシネマズ梅田、TOHOシネマズなんば、TOHOシネマズ二条、OSシネマズミント神戸他全国ロードショー
公式サイト⇒http://nagai-iiwake.com/
(C) 2016「永い言い訳」製作委員会
 
 

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