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日々葛藤しながら仕事を頑張る全ての人へのエールに。 『にがくてあまい』川口春奈さんインタビュー

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日々葛藤しながら仕事を頑張る全ての人へのエールに。
『にがくてあまい』川口春奈さんインタビュー

~“一物全体”食べ物も、人間もありのままを受け入れるオーガニック・ラブコメディ~

訳あって野菜嫌いのキャリアウーマンが、女が苦手な菜食主義男子と同居を始めたことからはじまる食べ物と愛が詰まったオーガニック・ラブコメディ『にがくてあまい』。人気WEBコメディの原作を映画化したのは、本作が本格的な商業映画デビュー作となる草野翔吾監督だ。『好きっていいなよ。』をはじめ、ドラマに大活躍の川口春奈が仕事と恋、家族の問題で悩みながらも全力でぶつかるヒロイン、マキをイキイキと演じている。相手役となる過去のトラウマを抱えたお料理男子、渚を演じるのは、『パレード』『花芯』の林遣都。「雑な食事をする姿を見るのは耐えられない」と、マキにお弁当を作るだけでなく、完食を要求するドSぶりをみせるかと思えば、真っ直ぐなマキを受け止め、まさに名コンビぶりをみせる。渚の初恋の相手、アラタ(淵上泰史)や学校の後輩(真剣佑)、バーのマスター(SU)と、美形のゲイ男子揃い。人生経験も様々なゲイ男子の含蓄ある言葉にハッとさせられながら、それぞれが自分らしく生きようとしている姿に励まされる作品だ。
 
本作のキャンペーンで来阪した主演川口春奈さんに、マキ役を演じての感想や、本作に込めた思いを伺った。
 

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―――高校生など、学生役が多かった川口さんですが、今回は肉食系キャリアウーマンという今までにない役にチャレンジされています。実際に演じてみての感想は?
川口:演じていて、とても楽しかったです。マキは、まっすぐで、嘘がなくて、物事をはっきりさせたい女性です。大人だけど、悩んだり、行き詰ったりする部分があるし、完璧でもない。それでも一生懸命なのがマキの魅力だし、弱さでもあると思います。どういう風に演じればそんなマキの魅力が伝わるか、観ている方に共感してもらえるか考えながら、演じていました。作品自体もそうですが、マキを演じる際にはメリハリを意識しました。表情もそうですし、全力で笑ったり、泣いたり、怒ったりと感情をぶつけたので、気持ちよかったですね。
 
―――大ヒットしたWebコミックが原作です。川口さんは今までも原作もののヒロインを演じていますが、役作りをするにあたり難しさはありますか?
川口:原作には原作のファンがいらっしゃり、ファンの皆さんが持っているイメージがあると思います。私はそのイメージをいつも覆したい。映画は映画として、全く別の作品として、原作を知っている人にも、知らない人にも受け入れてもらえるようなものを、作っていきたい。原作にはあまりこだわらず、映画オリジナルの良さを出していきたいですね。 
 
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―――ありのままが一つのテーマになっている作品ですが、監督からマキを演じるにあたりどんな演出がありましたか?
川口:きれいに映ろうとは思いませんでした。そもそもそんな役ではありませんから。本当に頑張る人は美しいです。葛藤しながら仕事を頑張る人へのエールでもあるので、とにかく全力でやろうという話をしていました。
 
―――林遣都さん演じる渚は、マキと一見正反対のように見えます。オーガニック料理と男を愛し、過去に家族とのトラウマを抱えている複雑な美系教師役で、マキとの化学反応にドキドキハラハラさせられました。
川口:渚も完璧なキャラクターではありません。色々なトラウマや苦手なものを抱えながら生きているところは、マキと共通しています。不器用だけど、人の痛みが分かるキレイな心を兼ね備えている。だからこそ惹かれ合い、恋愛感情でなくても、最終的には一緒にいると心が落ち着くような関係性に辿りつく。 友情とも恋愛ともまた少し違った関係性ですよね。マキとそのような関係を作っていく渚を、林さんは丁寧に演じて下さったので、私もマキとしてついていけましたし、色々な芝居を引っ張っていってくださいました。
 
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―――渚が作ったお料理を食べるシーンが度々登場し、マキが口に入れる時は真正面からのアップで、正にこの作品の肝になっています。撮影の時に監督から何かアドバイスや、川口さん自身が意識したことは?
川口:食べるシーンは一番、私の素の表情が出ています。それぐらい、食事が本当に美味しくて、思わず「美味しい!」と言いたくなるぐらいでした。作り込んだ「美味しい」よりも、素直に私が美味しいと感じた方が、観客の皆さんにも伝わるのではないかと思います。見た目だけでなく、お肉を使わない中でアイデアが活かされていて、どれを食べても美味しかった。「感謝!」ですね。日ごろは自分のためだけに時間をかけてお料理をすることがないので、劇中であっても、あれだけ健康的なご飯を毎日作ってくれる人がいるのはとてもいいな。マキが羨ましかったです。
 

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―――途中、マキの方が渚を押し倒して、「私のことを見て!」と訴えるシーンがあります。男性から壁ドンではなく、女性からアグレッシブに訴えるのが新鮮ですね。

川口:不思議なことに、マキはこんなことをしても嫌な女だとは思わない。どちらかといえば、子どものように見えて、「なんで、なんで」と可愛い部分があるような気がします。どれだけ外では取り繕っていても、実は乙女な気持ちが大人の皆さんの中にきっとあると思います。マキの姿を見て「(子どもっぽい部分があるのは)私だけじゃないんだ」と感じてもらえたら、うれしいですね。
 
―――マキと渚が喧嘩するシーンはかなり真に迫っていましたが、演じていて特に印象的だったことは?
川口:感情をぶつけ合うシーンが多かったのですが、カイカンというぐらいに言葉が湧き出てきて、相手にぶつけ、相手から言葉が返ってきたらムカついて…。そういうキャッチボールを(演技で)無理してやっているのではなく、本当に腹が立っていました。今思うと、本当に役を生きていたのかなという気がします。ゴーヤの冷製茶わん蒸しをマキが渚と一緒に作るシーンは、ずっとカメラが回りっぱなしで、監督からは「二人で楽しそうにやって」とだけ言われていました。付き合ってもいない男女が一緒にお料理を作るなんて恥ずかしいし、実際に演じている時も恥ずかしさがあったのですが、その距離感が二人らしくて良かったのかもしれません。
 
―――苦手なものと向き合うことを伝えるシーンもありましたが、川口さんご自身が今向き合っていることは?
川口:私も完璧ではないし、コンプレックスや、なかなか自分を好きになれない面があります。まずは自分を知ることが大事、そこから他人と向き合っていく。でも実際に他人と向き合うのは本当に気力、体力が要ることなので、今は日々小さな悩みと格闘しています。
 
 

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―――タイトルの『にがくてあまい』は、非常に深みのある言葉です。川口さんはどのように解釈していますか? 
川口:意外に深い言葉ですよね。上手くいきそうに思えて途中で狂ってしまい、「自分は運が悪いな」と落ち込むこともありますが、悪いことばかりではなく、良いことも訪れる。マキもなんとか前に進もうと頑張っている一人で、失敗することだってある大人に向けてのメッセージが含まれていると思います。
 
―――最後にメッセージをお願いします。
川口:「一物全体」(食べ物はできるだけ丸ごと食するのが一番いい)等、さりげなく自分たちに当てはめると響く、良い言葉が散りばめられています。年齢も性別も関係なく、自分の今の環境や、苦手なものを登場人物たちに投影して、少しでも勇気づけてもらえればと思います。ラブコメディーですが家族の話でもあるので、身近な人との向き合い方を改めて考えるきっかけになればうれしいです。
(江口 由美)
 

<作品情報>
『にがくてあまい』
(2016年 日本 1時間36分)
監督:草野翔吾
原作:小林ユミヲ「にがくてあまい」マックガーデン
出演:川口春奈、林遣都、淵上泰史、桜田ひより、真剣佑、SU、中野英雄、石野真子他
9月10日(土)~TOHOシネマズ新宿、大阪ステーションシティシネマ、神戸国際松竹、イオンシネマ京都桂川他全国ロードショー
(C) 2016 映画「にがくてあまい」製作委員会 (C) 小林ユミヲ/マッグガーデン