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『ミモザの島に消えた母』フランソワ・ファヴラ監督、主演ローラン・ラフィット氏インタビュー

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『ミモザの島に消えた母』フランソワ・ファヴラ監督、主演ローラン・ラフィット氏インタビュー
 

~ヒッチコック的要素を織り交ぜ描く、

                                        秘密を抱えた家族の行方~

 
「ミモザの島」と呼ばれ、ツール・ド・フランスのスタート地点にもなった風光明媚なノアール・ムーティエ島を舞台に、フランスからまた一つ家族の秘密を巡るサスペンスヒューマンドラマが誕生した。フランソワ・ファヴラ監督(『彼女の人生の役割』)が、『サラの鍵』の原作者タチアナ・ド・ロネのベストセラー小説を映画化。家族内で話題に出すこともタブーとなっていた亡き母の死の真相を探すうちに、家族の秘密に辿りつく男の葛藤と成長を端正な映像で綴った。
 
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家庭も仕事も上手くいかず、八方ふさがりの主人公アントワーヌを演じるのは、『ムード・インディゴ うたかたの日々』などのローラン・ラフィット。本作では、家族の秘密に向き合う一方、新しい恋人との出会いを経て、自分の殻を破り、再生していく中年男を情感豊かに演じている。妹アガット役には近年活躍が目覚ましいメラニー・ロラン。苦悶する兄に寄り添う一方、父親と兄の不仲に心を痛める複雑な心境を自然体で演じ、重くなりがちな物語に独特のニュアンスを添えている。
 
フランス映画祭2016のゲストとして来日したフランソワ・ファヴラ監督、主演ローラン・ラフィット氏に、家族の秘密をテーマとした本作についてお話を伺った。
 

―――本作を作るにあたっては、監督ご自身が家族の問題を抱えていたことが一つのきっかけになったそうですね。
フランソワ・ファヴラ監督(以下、ファヴラ監督):私の「家族の悩み」は本作のようなものとは全く違いますが、私もアントワーヌのようにカウンセリングに通っていたことがありました。そこで、他の人も両親に話すべきかを悩んだり、口に出せない重苦しい雰囲気をまとっている人が多いことに気付いたのです。その時、タチアナ・ド・ロネさんが書いた原作に出会い、家族の秘密やタブーをテーマにしながらも、ヒッチコック的なスリラーの要素を加えられると考えたのです。
 
―――日本では真実について語ることは非常に難しいですが、本作では家族の秘密をテーマに、真実を探し出すまでが丁寧に描かれています。フランスでは家族で秘密を持つことは比較的少ないように思えますが。
ファヴラ監督:私も主人公、アントワーヌの生き方に賛同しています。特に、家族に関して何か隠されているのではないかと感じる時は、闘ってでも真実を追求すべきだと思います。フランスは自由のイメージがあるため、家族間で言いたいことを言える雰囲気があるように思われるかもしれません。でも、実際は様々な問題を抱え、それを言い出せずにいる点で他の国とは変わらないのです。今回は母の“あること”が家族のタブーでしたが、子どもが性的に虐待されている等のタブーを抱えている家族はフランスでもたくさんあります。19世紀後半にもアントン・チェーホフが小説で書いているように、家族の問題は時代や国に関わらず普遍的です。だから文学や映画でも語られ続けています。もしかしたら時間が経てば経つほど、酷くなっているかもしれません。
 
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―――アントワーヌは母の秘密を知ることができず、気持ちが波立つことの多い役どころですが、どのように役作りをしたのですか?
ローラン・ラフィット(以下ラフィット):(脚本で)シーンの描写が細かく描かれていたので、私はその状況を思い浮かべ、監督のビジョンや脚本が求めることに応じ、自然に、シンプルにそして誠実に演じるだけでした。イライラしている気持ちを表現はしていますが、自分が演じる上で気持ちが乱れることは、役者としてはないですね。 
 
―――ラフィットさんをアントワーヌ役に起用した理由は何ですか?

 

ファヴラ監督:ラフィットさんは、私の長編第一作、『彼女の人生の役割』に脇役で出演してもらいました。今回はシナリオを書いている段階から、アントワーヌ役はラフィットさんに演じてもらいたいと思っていたので、脚本を渡して読んでもらい、快諾してくれました。一緒にスクリプトを読み、ラフィットさんからの提案があれば取り入れ、脚本の構造や会話の内容など一緒に話しながらブラッシュアップさせていきました。
 
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―――アントワーヌが母の死を追求する姿は妹のアガットに影響を与え、一方病院で出会ったアンジェルが心の支えとなっていきます。アガット役のメラニー・ロラン、アンジェル役のオドレイ・ダナと現場でどんな話し合いをしながら芝居を作っていったのですか?
ラフィット:メラニー・ロランさんとは今まですれ違う程度で共演は初めてですが、とても面白い女性です。撮影現場ではいつも一緒に笑っていました。映画では深刻なシーンが多いので、あまり集中しすぎると本番に感情がうまく表現できなくなることがあります。ですから、本番以外はくだらないことを言い合っていることが多かったです。いい演技を引き出すためにも、本番以外はリラックスして笑える関係の方がいいと思っています。
 
―――舞台となったノアール・ムーティエ島の景色が素晴らしいですが、この場所は原作で描かれていた場所でしょうか。もしくは監督ご自身が選んだのでしょうか?
ファヴラ監督:ノアール・ムーティエ島は、原作で登場していた場所です。タチアナ・ド・ロネさん自身も、ヒッチコックの『レベッカ』や『鳥』の原作者デュ・モーリアの大ファンで、パサージュ・デュ・ゴワ(映画で登場する引き潮時に数時間だけ海中から現れる、本土と島をつなぐ海の中道)もヒッチコック的要素が感じられる場所で、本当に素晴らしかったです。
 
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―――原題は『BOOMERANG』(ブーメラン)と、邦題『ミモザの島に消えた母』より抽象的かつ様々な意味が含まれているように感じますが、どのように解釈していますか?
ファヴラ監督:原作者を尊重し、原作のタイトルである『BOOMERANG』(ブーメラン)を映画のタイトルにしています。日本人にとってブーメランといえば、抽象的で分かりにくいかもしれませんが、過去から逃れようとしても、結局ブーメランのように過去が自分のところに戻ってきてしまう。私はそのようなニュアンスが含まれていると思っています。邦題の『ミモザの島に消えた母』はすごく描写的ですね。嫌いではないですよ(笑)。
ラフィット:必ずしもこのタイトルである必要はなかったでしょうが、「自分の過去に起こった事は、結局自分に舞い戻る」と解釈しています。また原作の『BOOMERANG』はベストセラーなので、原作ファンを取り込むという意味もあったのでしょう。
 

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―――最後に、次回作について教えてください。
ファヴラ監督:友情についての映画を撮りたいと考えています。
ラフィット:アルベール・デュポンテル監督最新作“Au revoir là-haut”の撮影を終えたばかりです。第一次世界大戦を舞台にした作品で、日本でも紹介されればうれしいですね。
(江口由美)
 

<作品情報>
『ミモザの島に消えた母』
・原題:BOOMERANG
・2015年 フランス 1時間41分
・監督:フランソワ・ファヴラ
・出演:ローラン・ラフィット、メラニー・ロラン、オドレイ・ダナ他
2016年7月23日(土) ~ヒューマントラスト渋谷、テアトル梅田他全国順次公開
公式サイト⇒ http://mimosa-movie.com/
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