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『ndjc:若手映画作家育成プロジェクト2015』で選ばれた4人の監督インタビュー

VIPO2016main-550.jpg『ndjc:若手映画作家育成プロジェクト2015』で選ばれた4人の監督インタビュー

★4作品の公開は、3月19日(土)~25日(金) 大阪・シネリーブル梅田にて 
★公式サイト⇒ http://www.vipo-ndjc.jp/


次世代を担う長編映画監督の発掘と育成を目的とした『ndjc:若手映画作家育成プロジェクト』は、文化庁からNPO法人 映像産業振興機構(略称:VIPO)が委託を受けて2006年からスタートした。例年何度かのチャレンジでようやく採用されるケースが多い中、2015年は4人全員が初めてのチャレンジで合格。最終課題である35ミリフィルムによる短編映画(約30分)を完成させ、3月に東京と大阪で一般公開されることになった。現代社会の家族の在り様や人と人との繋がり方など情緒豊かな作品が出揃い、その貴重なチャンスに恵まれた若き4人の監督たちに、熱い想いを語ってもらった。


VIPO2016-di-500.jpg上の写真左から、
★作品:『罪とバス』 監督:藤井 悠輔(ふじい ゆうすけ)
★作品:『父の結婚』   監督:ふくだ ももこ
作品:『はなくじらちち』  監督:堀江 貴大(ほりえ たかひろ)
★作品:『壊れ始めてる、ヘイヘイヘイ』    監督:佐藤 快磨(さとう たくま)



Q:35ミリフィルムでの撮影は初めて?
佐藤:初めて。もっと制限があるかと思ったら意外と多めに用意してもらえて、撮影中はデジタルと変わらずに何も気にせずに撮らせてもらった。ハイスピードのシーンでは回転がとても速くなって、壊れるのでは?とちょっと焦った(笑)。

堀江:初めて。ある部分をハイスピードにしようとしたら、「必要ないよね」と言われた。撮影中はフィルムという感覚はなく、ラッシュの段階でようやくその実感が持てた。緊張することもなかった。

ふくだ:初めて。学生の時に16ミリで撮ったことがあった。35ミリには憧れていたのでこのプロジェクトはいいなと思い、幸せに思った。

藤井:初めて。普段、フィルムの区別がつかなかったが、今回DCPとフィルムの試写を見て全然違うなと感動した。編集はデジタルでした。

 

Q:脚本について?
VIPO2016-fujii-240-1.jpg藤井:ずっと男の話を撮ってきて、兄弟を主人公にしたバディものの物語にしようと思った。テーマとしては、赤塚不二夫の「これでいいのだ!」という言葉が好きで、全ての出来事の存在を肯定するような意味ですが、それを映画を通して感じてもらえればと思った。

ふくだ:明るい映画を撮ろうと思った。ちょっと変な家族の、結婚をテーマにすれば明るくなれるかなと。父親の結婚式のために帰省して、父親の女装を知り動揺するけど、家族がひとつにまとまるという話を思いついた。

堀江:大阪市西成区のコインロッカーを利用する人々を捉えたドキュメンタリーを見て、それがとても面白くて、そこに登場する父親を主人公にして描きたいと思った。ある男が娘と久しぶりに再会するけど、ワケアリで全く感動的ではない。それに女子プロレスに興味があったので、女子プロレスラーの娘と父親が再会したらどうなるだろうと思ったのがキッカケ。

佐藤:人を好きになって世界が変わる瞬間、一緒にいて楽しい時間、それが壊れても繋がろうとする男を描きたかった。
 

Q:キャスティングについては?
藤井:まず希望を出して、俳優さんたちのスケジュールとギャラが合えばOKという感じだった。

VIPO2016-fukuda-240-1.jpgふくだ:希望していたのは板尾さんだけ。主人公の女性は何人か候補を挙げていたが、プロデューサーの意向でソニンさんに決まり、さらに山中崇さんを連れて来られ、結果的にはいい作用になったと思う。ソニンさんに決まってから主人公の年齢も少し上げた。メイクの楽しさを忘れてしまったので、メイクに目覚めた時の楽しさを思い出す
 

Q:この文科省のプロジェクトの魅力は?
藤井:フィルムで撮れることと、資金援助を受けられること。文科省の援助ですが、あまり気負うこともなければ、ハートフルな作品にしようと特には思わなかった。「絡みのシーン」についても、事前に相談したらOKと言われた。

ふくだ:35ミリフィルムで撮れることと、自分が書いたオリジナル脚本で撮れることが大きな魅力だった。自主制作で撮ったことがなく、制約されるのを心配していたが、資金援助された上に自由に撮らせてもらえるなんてとてもありがたいと思った。今回15人の候補者の中には助監督経験のある先輩も含まれていたが、年齢も経験も関係なく、みな同じ土台に立って選んでもらえることも大きな魅力だった。

VIPO2016-horie-240-1.jpg堀江:プロデューサーと知り合えることが魅力。大学院で映画を撮っていたので、プロダクションやプロデューサーと連携しながら映画製作することに憧れていた。どのような仕事をするのかとても興味があった。ハートフルなストーリーは文化庁向きかなと勝手な思い込みをしていた(笑)。

佐藤:PFFのスカラシップを期待していたらダメだったので、どうしよと思っていた時に、松永大司監督(2010年VIPOで『おとこのこ』を制作)の『トイレのピエタ』を観て、こんなデビューができたらいいなと思って応募した。
 

Q:配属されたプロダクションとの相性について?
藤井:男二人の映画だし、決闘シーンもあるので東映さんだろうなと思っていた。'60年代、'70年代の『仁義なき戦い』や『トラック野郎』シリーズが好きで、あのようなバディものを撮りたいなと思っていた。

chichi-240-2.jpgふくだ:今後の繋がりを考えればアスミックがいいな、と思っていた(笑)。ブースターと言われて最初戸惑ったが、とてもいい作品を製作しているプロダクションだとわかって安心した。プロデューサーはフリーの福島氏。『るろうに剣心』や『予告犯』など大作を手掛けている敏腕プロデューサーだったことに驚いた。クマみたいないかつい感じだが、破格のキャストやスタッフを揃えて下さったり、激励して下さったり、本当に感謝している。

堀江:僕は東宝と聞いて父が喜ぶと思った。父の風あたりが良くなるかなと。岐阜出身なので、岐阜のTOHOシネマズでも上映されるような映画を作りたいと思った。プロデューサーと考えや趣味が一致したので、その出会いに感謝した。奨学金の借金が沢山あるので、東宝作品のような商業映画を手掛けてみたいと思う(笑)。

ふくだ:漫画原作の映画を撮りたい。少女漫画の女の子の心理は女性の方がよくわかると思うので、是非やってみたい!

VIPO2016-satou-240-1.jpg佐藤:名作と言われる映画は見ていないが、『ピンポン』や『ジョゼと虎と魚たち』が大好きだったので、アスミックエースの名は知っていた。そうなればいいなと思ってたらアスミックエースに決まったので嬉しかった。撮影中同じ服ばかり着ていたら、プロデューサーが服を買って下さった。


Q:演出の仕方について?
藤井:人それぞれ違ったアプローチをした。阿部進之介さんには細かい気持ちを説明し、渡辺大さんは思いの他やんちゃで自由な人だったのでほったらかしでも大丈夫。中川可菜さんは演技経験がそんなになかったので、動きから表情までかなり細かい演出が必要だった。河井青菜さんと深水元基さんは関西人ではないので、関西弁を気にしていた。深水さんは落ち込むとそれが表情に出てしまうので、その都度フォローが必要だった。

ふくだ:あまり現場で役者と話したくない。カメラの前に座って「スタート」の掛け声で役者が出してくる演技を選択する立場でいたいと思って臨んだ。ソニンさんだけ演技経験が少なかったのがそれが難しかったけど、一緒に悩んで進めて行った。レストランで目むいて「おめでとう!」と言っているシーンがラストカットだった。

hanakujira-240-1.jpg堀江:現場ではなるべく俳優の横に居続けたい。俳優と一緒に演技するように、どんな気持ちでいるのか、どう変化するのかと常に感じていたい。今回3人の物語と決まっていたので、3人のそれぞれの演出プランは最初からできていた。哲治は喜劇的に見られる、はなは立ち居振る舞いで存在感を出す、鯨は二人を繋げる存在なのでとにかく行ったり来たりする動きのあるテンションの高い役という風に、つかみとして明確なキャラクター像を意識していた。

heyhey-240-1.jpg佐藤:撮影前に、太賀さんには夜遅くまで話す機会を作ってもらったり、岸井ゆきのさんには3回位来てもらったりして人物像について話し合った。岸井さんとは2回目の時、マコト像が180度違うことが分かって僕が狼狽したこともあった。その分確固たる木吉とマコト像を持って撮影に臨んだが、悩んだり揺れたりする内に二人を多面的に見られるようになり、より魅力的なふり幅のある人物像になった。それは、太賀さんと岸井さんにそういう機会を作って頂いたお陰だと思う。演出というより、現場では太賀さんとは木吉のことについて、岸井さんとはマコトについてだけ話し合った。


Q:30分という凝縮した時間については?(25~30分)
堀江:はなとちちは過去の家族の物語を、はなとくじらは未来の家族を感じ取ってもらえたら嬉しい。丁度それを30分にまとめられたと思う。

ふくだ:私にとっては30分という短編は名刺代わりになっている。本当は人物をもっと掘り下げて描きたいので長尺を撮りたい。

tsumibus-240-1.jpg藤井:30分という尺にするためには登場人物を少なくする方がいいだろうが、やりたいことを映像化するためにはあの人数で撮るしかなかった。自分としては満足している。

佐藤:僕は、二人が出逢ってから別れるまで構造的にシンプルに描きたかった。この二人の家族構成とか背景を撮るべきだったかもしれないが、シンプルにした方が返ってそれまでの二人の生き様を想像できるかなと考えた。

 



★『罪とバス』
tsumibus-pos.jpg出演:阿部進之介、渡辺大、中川可菜、笛木優子、河井青菜、深水元基

妻に離婚を言い渡された弟のヨシオが実家の中古車業を継いでいる兄ゴローの元に戻ってくる。未練たらたらのヨシオは酔っては泣き崩れる始末。ゴローは幼なじみの尚美に消えた恋人の捜索を頼まれる。尚美の娘は高校でイジメに遭っているがそれを誰にも言えずにいる。尚美の恋人が見つかったのも束の間、尚美は娘をゴローに預けたまま恋人とトンヅラ!!  しかもゴローを目の仇にする男の会社の大金を持ち逃げしてしまい…何も悪くないゴローはすべての責任を背負わされる。かつてゴローとヨシオが子供の頃、家族でドライブに出掛けた幸せな思い出がいっぱい詰まったミニバスに、不幸を背負った者たちと一緒に乗ってドライブへと出発する。面白いタイトルにしては、理不尽な暴力シーンが重く、不幸な人々の顛末となっているのが気になった。


監督:藤井 悠輔(ふじい ゆうすけ)プロフィール
VIPO2016-fujii-240-2.jpg1980年京都府生まれ。大阪芸術大学映像学科卒業後、商業映画の制作に携わり、現在はCM制作会社に勤務する。その傍ら自主映画を制作し、「COIN LAUNDRY」(2013)、「はちきれそうだ」(2014)が、ショートショートフィルムフェスティバル&アジアや福岡インディペンデント映画祭、したまちコメディ映画祭、アシアナ国際短編映画祭、ジャパンフィルムフェスティバルなど国内外の多数の映画祭で上映される。

 



★『父の結婚』
chichi-pos.jpg出演:ソニン、板尾創路、山中 崇、襄ジョンミョン、山田キヌヲ

メイクアーティストの青子は、客からも恋人からも「心がない」と言われ自信を失いかけていた。メイクの楽しさを忘れてしまった青子は、その人に合ったメイクを考えることもできずいつもワンパターン。東京で傷付き、帰省してみたら今度は父親が女装して、さらに再婚相手は男だと知りショックを受ける。そんな中、亡き母親との思い出や、メイクをしてあげて喜ぶ再婚相手の幼い娘の笑顔を見て、メイクの楽しさが甦る。そうして彼女自身も周りの人を思いやる気持ちを取り戻し、反感を抱いていた父親にも理解を示していく。父親に花嫁のメイクする青子の柔らかな表情から彼女の成長を感じ取れるが、父親が女装するキッカケはわかるが、それがなぜ男との結婚に繋がるのかの疑問は残る。女装趣味とゲイとは違うから。面白い題材だが、笑うに笑えない無理があるようだ。


監督:ふくだ ももこ プロフィール
VIPO2016-fukuda-240-2.jpg1991年大阪府生まれ。日本映画学校で映画を学ぶ。監督、脚本を務めた卒業制作「グッバイ・マーザー」(2013)がゆうばり国際映画祭2014、第六回下北沢映画祭、湖畔の映画祭に入選。CM制作会社を退社後、フリーランスに。2015年、内田英治監督のオムニバス映画「家族ごっこ」(2015)の一篇「貧乳クラブ」の脚本を執筆し、劇場公開される。目標は、カンヌ国際映画祭でパルムドールを獲ること!

 



★作品:『はなくじらちち』
hanakujira-pos.jpg出演:森下能幸、黒川芽以、夙川アトム、水澤紳吾、中村ゆうじ

コインロッカーで荷物を出し入れしているホームレスの哲治の元に、娘のはなと名乗る女子プロレスラーとマネージャーの鯨が訪ねてくる。「哲治ではない、自分には娘などいない」と突っぱねるが、14年前に父親が家族を捨てて蒸発した原因は自分にあるのでは?とずっと重荷に感じていたはなのために、鯨は哲治に執拗に食い下がる。あくまで否定する哲治に悪態をつくはな、その二人の仲を取り持とうとする鯨。父と娘の関係性が絶望的になった時、哲治の頑なな胸の内が明かされる。血の繋がりは打ち消せるものではない。長い間音信不通の父親がみじめな生活をしていれば尚更のこと、娘は複雑な感情がこみ上げてくるだろう。父親も、娘を大事に思ってくれる男がいるとわかれば、それは嬉しいに違いない。幸せな二人を見届けた後では、父親にもそれまでとは違った幸せな生き方ができるだろう。「家族ってめんどくさいけど、愛おしい!」と思える作品。


監督:堀江 貴大(ほりえ たかひろ)プロフィール
VIPO2016-horie-240-2.jpg1988年岐阜県生まれ。東京藝術大学大学院映像研究科映画専攻監督領域修了。大学院在学中に監督した短編映画「まんまのまんま」(2013)が水戸短編映像祭コンペティション部門にノミネート。オムニバス映画「リスナー」(2015)では「電波に生きる」を監督し、2015年春、渋谷ユーロスペースにてレイトショー公開される。修了制作として監督した長編映画「いたくても いたくても」 (2015)TAMA NEW WAVE コンペティションにてグランプリ、男優賞、女優賞を受賞。現在、劇場公開準備中。

 



★作品:『壊れ始めてる、ヘイヘイヘイ』
heyhey-pos.jpg出演:太賀、岸井ゆきの、牧田哲也、中田みのり、ぼくもとさきこ、伊達暁

木吉は、コンビニの店員マコトに絡んでいたクレーマーにいきなりとび蹴りする。それ以来マコトは、木吉がいろんな所でクレーマーたちにとび蹴りするのを見るのが何よりの喜びとなっていった。どこまでいくのだろうという危うさを感じさせつつ、木吉はマコトのためにいつまでも蹴ろうと思っていたが、「また蹴る?」という彼女の言葉に一瞬マを置いてしまった。そんな木吉のためらいを彼女は見逃さず、去って行く。それは、彼の生真面目さを大事にしようとする彼女の優しさからの別れだった。このラストシーンにはホロリとさせられる。太賀(『ほとりの朔子』『マンガ肉と僕』)と岸井ゆきの(『友だちのパパが好き』『ピンクとグレー』)という若手俳優の中でもキラリと存在感を示すフレッシュコンビによる、疾走ラブストーリー。


監督:佐藤 快磨(さとう たくま)プロフィール
VIPO2016-satou-240-2.jpg1989年秋田県生まれ。2012年よりニューシネマワークショップ 映画クリエイターコースを受講、「舞い散る夜」(2012)、「ぶらざぁ」(2013)を監督。その後ニューシネマワークショップ制作部に所属し、初の長編監督作品「ガンバレとかうるせぇ」(2014)が、ぴあフィルムフェスティバル PFFアワード2014で映画ファン賞と観客賞を受賞、第19回釜山国際映画祭のコンペティション部門にノミネートされるなど、国内外の様々な映画祭で高く評価される。

 


(河田 真喜子)