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『ヴィオレット―ある作家の肖像―』主演エマニュエル・ドゥボスインタビュー

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『ヴィオレット―ある作家の肖像―』主演エマニュエル・ドゥボスインタビュー
 

~女性で初めて“性”を赤裸々に語ったフランス作家ヴィオレット、その孤独と葛藤に満ちた半生とは?~

 
フランスを代表する女性作家でありフェミニズム運動家のシモーヌ・ド・ボーヴォワールが、その才能に惚れ込み、世間に認められるまでバックアップを惜しまなかった女性作家がいた。自らの体験を美しい文体で赤裸々に綴り、初めて“性”を語った女性作家として64年の『私生児』で大成功を収めたヴィオレット・リュデュックだ。父親に認知されず、またその容姿から愛する人からも拒まれ、孤独の中で全てを書くことに捧げてきた激動のヴィオレットの半生を、『セラフィーヌの庭』のマルタン・プロヴォ監督が映画化した。
 
 
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マルタン・プロヴォ監督が「最初からヴィオレット役と決めていた」というエマニュエル・ドゥヴォスが、自分の容姿に悩み、母との関係に苦しみながら、ボーヴォワールを慕い、自分の力で生きる道を切り開くヴィオレットを熱演。ヴィオレットの愛には応えられないと断言しながらも、女性の自由な表現を求めて、ヴィオレットの執筆活動を全面的に支援するボーヴォワール役には、『屋根裏部屋のマリアたち』のサンドリーヌ・キベルランが扮し、フランス文学界に革命を起こした二人の友情や愛情を超越した関係が描かれている。40年代から60年代に渡る二人の対照的なファッションや、その変化も見どころだ。
 
6月に開催されたフランス映画祭2015の団長として久々の来日を果たしたエマニュエル・ドゥボスが、タイトなスケジュールの中インタビューに応じ、ヴィオレット・リュデュックを演じたことについて、また自身のキャリアについて語った。
 

 

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―――フランスを代表する女優として活躍されているドゥボスさんですが、女優を目指したきっかけは?
エマニュエル・ドゥボス(以下ドゥボス):もともと役者一家の出身なので、小さい時から舞台に自然に接していましたし、何歳の時に女優になったか分からないぐらい、最初から女優になりたいと思っていた気がします。もしかしたら色々な人の人生を演じることに魅力を感じたのかもしれませんが、一人の人間が役者になりたいと思う動機は、常に謎だと思います。
 
―――ドゥボスさんの女優人生の中で、一番大きな変化が訪れたのはいつですか? 
ドゥボス:私のキャリアは徐々に上っていったので、特別大きな変化はありませんが、ジャック・オーディアール監督の『リード・マイ・リップス』は、私にとって大きなきっかけになりました。この作品で私は賞をいただきましたし、作品も大成功を収めました。ヴィオレットと同じように強烈な役なので、変わるきっかけになったと思います。
 
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―――マルタン・プロヴォ監督からオファーを受けた時、まだ脚本は出来ていなかったそうですが、出演を決めた理由は?
ドゥボス:私が出演作を選ぶ基準は、出来あがった映画を一観客として観てみたいと思うか、役柄が自分にあっているか、シナリオの質や監督の才能などを総合的に判断しています。本作の場合、マルタン・プロヴォ監督の前作『セラフィーヌの庭』が大好きでしたし、プロヴォ監督がそんなに変な作品を作るはずはないと思っていましたから。
 
―――プロヴォ監督は、ヴィオレット役はドゥボスさんしかいないと思っていたそうですが、演じるにあたって二人でどのように役を作り上げていったのですか?
ドゥボス:撮影前に何度も会い、ヴィオレットに対してお互いにどんな印象を抱いているか話をしました。対話を通して、役が出来上がってきた感じです。実際にヴィオレットと知り合いだったというパトリック・モディアーノ氏にも会う機会があったのですが、出来上がった映画を観て、「本物のヴィオレットはもっとひどかった」。とても耐えがたい外見の人だったそうです。私自身、ヴィオレットが書いた全ての本を読みましたし、彼女がシモーヌ・ボーヴォワールに宛てて書いた手紙や、詳しい自伝も読みました。それだけヴィオレットは自己表現をしていた訳ですから、そういうものを読み込むと、彼女のことは大体分かりました。プロヴォ監督の前で演じる上でも、迷いなく演じることができました。
 
 
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―――映画の冒頭に「女性の醜さは罪である・・・」という詩が登場しますが、ドゥボスさんご自身は女性の美について、どのような考えをお持ちですか?
ドゥボス:美に関する感覚はパーソナルなものだと思いますが、役を演じる上で、つけ鼻をし、醜い姿になって感じたことは、「極端に醜いのは本当に重荷だ」ということです。ヴィオレットは自分の鼻が耐えられず、整形手術もしていますが、それでもあまり美しくなれませんでした。逆にそれはキツいことだったと思います。
 
―――ドゥボスさんが演じたヴィオレットは、個性的である一方、少し親しみすら覚えるようなかわいらしさもありました。
ドゥボス:自分と似ている部分を見つけようとはしたものの、一つもなく、探すだけ無駄でした。ただ、あまりひどい所ばかり見せてもいけませんから、私が演じるヴィオレットには少女のようなかわいい面も必要でした。
 
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―――南仏で自分の居場所を見つけ、幸せそうに過ごすところで終わっていきますが、ヴィオレットの人生をどう捉えていますか?
ドゥボス:現実のヴィオレットも『私生児』がフランスでベストセラーになった後、様々な国で翻訳されました。彼女の心の傷の元は、父親に認知されなかったことにありましたが、ようやく世間が自分を認めてくれ、世間の中に自分の居場所が出来たことで、心が穏やかになったのです。また、ヴィオレットはボーヴォワールというメンター(導き役)がいました。二人の関係は特殊な関係で、これに比べられるものは私の中にもありません。その後南仏に家を見つけ、半ば引退生活とはなりましたが、友人を招いたり、人生に欠けていたものをみつけ、心の平穏を得ました。最後はガンで闘病の末亡くなっているので、死ぬ間際は辛かったと思いますが、南仏でようやく自分の居場所を見つけることができたのでしょう。
 
(江口由美)
 

<作品情報>
『ヴィオレット―ある作家の肖像―』
(2013年 フランス 2時間9分)
監督:マルタン・プロヴォ
出演:エマニュエル・ドゥヴォス、サンドリーヌ・キベルラン、オリヴィエ・グルメ
2015年12月19日(土)~岩波ホール、2016年1月9日(土)~シネ・リーブル梅田、京都シネマ、1月16日(土)~神戸アートビレッジセンターほか全国順次ロードショー
公式サイト ⇒ http://www.moviola.jp/violette/
配給:ムヴィオラ 
© TS PRODUCTIONS – 2013