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先の読めないハードボイルド映画『グラスホッパー』瀧本智行監督インタビュー

GH-550.jpg『グラスホッパー』瀧本智行監督インタビュー
2015年10月10日(土)


『グラスホッパー』
・2015年 日本 1時間59分 PG12
・原作:伊坂幸太郎(『グラスホッパー』角川文庫)
・監督:瀧本智行(『樹の海』『脳男』『犯人に告ぐ』)
・出演:生田斗真、浅野忠信、山田涼介、麻生久美子、波 瑠、菜々緒、村上淳、宇崎竜童、吉岡秀隆、石橋蓮司
公開日:2015年11月7日(土)~全国ロードショー
・公式サイト⇒ http://grasshopper-movie.jp/

・コピーライト: (C)2015「グラスホッパー」製作委員会
・配給:KADOKAWA/松竹



~闇組織相手に復讐を誓う草食男、最強を競う殺し屋、意表を突くエンディングに喝采!~

 

【映画】『グラスホッパー』

140万部を突破した伊坂幸太郎のベストセラーを、瀧本智行監督が生田斗真、浅野忠信、麻生久美子ら個性派キャストで映画化した異色のハードボイルド。

GH-240-2.jpg人口過密都市、東京・渋谷の住人たちは密集して育つとグラスホッパー(=トノサマバッタ)のように黒く凶悪になって草食男を襲う。元中学教師・鈴木(生田斗真)は殺された婚約者の復讐を果たすため裏社会に身を投じる。

そんな彼に、2人の殺し屋が関わる。人の心を狂わせる“自殺専門”の殺し屋「鯨」(浅野忠信)、人を殺すことで生を感じる若い殺し屋「蝉」(山田涼介)、そこに、婚約者の恨みを代わって果たしてくれた“押し屋”(吉岡秀隆)も加わり、運命に操られるように、男たちが交錯する…。
 



瀧本智行監督が11月7日からの公開を前にPRのため来阪。伊坂原作のポイント、魅力を聞いてみた。

GH-di-2.jpg―――伊坂幸太郎の小説は読んでましたか?
瀧本監督:何冊か読んでいたけど、これは10年以上前に出たものなので読んでませんでした。伊坂さんの小説は独特のオフビート感がありユーモアもあるので、そこを外すとうまくいかない。僕が伊坂さんの小説を手がけるなんて夢にも思いませんでした。

―――原作者から指名されたそうだが?
瀧本監督:伊坂さんはひねりやユーモアよりも、重量感がほしいという感じでしたね。(従来とは別の監督で)化学反応を期待されたんじゃないですか。

―――作家からの指名は光栄でしょうが、読んでどうでした?
瀧本監督:まず難しいなと思いましたね。三つの視点が複雑に錯綜してるし、強敵だなと。ハードボイルドには(自分は)合うと思っていたけど、そのままやったら誰も見に来ないものになってしまう。なので、緩急つけることに気を付けました。

GH-240-1.jpg―――瀧本監督には珍しい殺伐とした映画だが?
瀧本監督:暴力映画は痛くしないといけないと思っています。映画も漫画も“生々しいものは排除しなさい”という空気になっているが、痛いものは痛い。それをゴマかしているから現実の暴力がより過激になっている。だから、生々しく撮ることを心がけました。子供時代は映画ももっと過激だったと思います。『ランボー』なんか…。今の若いのは“グロい”とか言って避けてしまう。そうなっている現実を見つめないとね。鈴木(生田斗真)の婚約者・百合子(波瑠)のエピソード、ケーキを作ったり、冷凍した料理を温めたりするエピソードを膨らませました。バランスのとり方に気をつけたんで、鈴木に感情移入しやすくなっていると思います。脚本(青島武)も10稿以上、直しました。

―――思い通り撮れましたか?
瀧本監督:監督が満足することは少ないと思うが、ある程度、近づけたと思います。

GH-240-3.jpg―――殺し屋の鯨(浅野忠信)が亡霊に悩まされて、最後に亡霊が父親(宇崎竜童)だったと分かって驚いたが?
瀧本監督:鯨がやった仕事を全部、振り返れないので、最初に殺した一人に絞りました。それが原作にはなかった父親になったのです。

―――『樹の海』で監督デビューして10年。順調なキャリアだが?
瀧本監督:毎回、新人監督の気持ちに近づいています。撮るたびに怖くなっていっているんです。キャリア重ねて、コツみたいなものは掴んでますが、それは便利で悪くはないんだけど、作れば作るほど難しいですね。だから、カメラマンとか、同じ人と続けて撮ったりしませんね。出来るだけ新しい気持ちでやりたいと思って気を付けています。

GH-di-1.jpg―――次にやりたいものとか「これを撮りたい」という夢の映画は?
瀧本監督:次に撮りたい映画はもう書いています。地味だけど、深まっているものにしたい。“グラスホッパー”とは対極的なものにしたいです。

―――夢の映画は?
瀧本監督:夢は“セリフが一切ない映画”です。フランスの“アーティスト”があったし、あれは見事な映画だったけど、過去の一時代に材を取っている。僕が考える“サイレント映画”は今現在の生活を描きながら、見ている者の心に迫る、そんな映画ですね。 

―――改めてハードボイルド映画『グラスホッパー』の見どころを?
瀧本監督:ひと口で言うと、スピード感、疾走感でしょうね。一体どこへ行くんだ?という感覚。伊坂さんはどういう発想からこんなことを考え付くんだ?というとんでもないところを味わってもらいたい。


(安永 五郎)

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