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樹木希林は「怪物」。名演技を河瀬監督、永瀬正敏が絶賛 『あん』舞台挨拶@梅田ブルク7

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樹木希林は「怪物」。名演技を河瀬監督、永瀬正敏が絶賛『あん』舞台挨拶@梅田ブルク7(2015.6.6)
登壇者:河瀨直美監督、樹木希林、永瀬正敏、兼松若人、ドリアン助川 
 
第68回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門オープニング作品として大好評を博し、日本では5月30日(土)から全国公開されている河瀨直美監督最新作の『あん』。映画のヒットを記念して、関西出身の河瀬監督をはじめ、主演の樹木希林、永瀬正敏、大阪出身の兼松若人、そして原作者のドリアン助川が梅田ブルク7での上映後舞台挨拶に登壇し、映画の余韻に浸った満席の観客から、温かい拍手が送られた。
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冒頭、「映画の中の千太郎たちの眼差しが皆さんに届いたであろうことを祈っています」(河瀬監督)、「物語を書きだしてから、今日まで20年かかりました。感無量です」(ドリアン助川)と感動的な挨拶が行われる中、映画さながらの「どら春」で働く割烹着姿で登場した樹木希林は「全生園から来ました徳江です」と挨拶し、一気に場を和ませた。

 
撮影中心に残るエピソードを聞かれた河瀬監督は、桜や秋の紅葉、月など人間ではないものも味方をしてくれ、「映画の神様が降りてきて、撮らせてくれたような作品」と表現する一方、役者たちの演技に対しては「俳優が演技として刻むのではなく、(役を)生きてくれた」と称えた。
 

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また、「どら春」にお客がこなくなり、徳江が去らなければならないシーンでは、徳江がさらりと出ていくテイク1を撮った後、樹木に「徳江さんは今日で最後かもしれないですよ」と話をし、二度と来れないかもしれない時にどう表現すればいいのかを考えてもらったのだとか。「テイク2で、希林さんは(去る前に)割烹着をゆっくりと丁寧にたたんだのです。(永瀬正敏演じる)千太郎の演技も相まって、本当に凄かった」と河瀬監督が絶賛すると、永瀬正敏も「凄かった。怪物です」と、現場での感動がよみがえった様子だった。また、登場シーンは少ないながらも関西弁で鮮烈な印象を残した兼松若人は、共演者の内田伽羅から本気で嫌われていたエピソードを河瀬監督から暴露され、「本番中に『もっと言って!』と横から監督が入ってきてビックリした」と逆暴露する一幕もあった。
 

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一方樹木が、一度は出版社に断られながらも、ポプラ社での出版を経て、今や10万部を突破するまでになった原作本の力を称えると、ドリアン助川は「徳江は聞こえない言葉を聞き、見えないものを見る人。希林さん以外にありえなかったし、見事に演じていただきました」と返し、原作の『あん』がフランス語、ドイツ語、韓国語、台湾語で出版されること、映画『あん』が40か国での上映が決定したことを報告。観客から大きな拍手が送られた。
 
 
また、樹木は「カンヌに行くときの(河瀬監督の)勢いがすごい。カンヌに行った結果、バイヤーたちがいて、(作品が)世界に飛び立てる。河瀬さんの押しの凄さのおかげです」とカンヌ映画祭での感想を述べながら、最後には「いいところだけ真似ましょう」と希林節で会場を沸かせた。
 
 
最後に「関西にやっと帰ってくることができたなと思っています。日本でいいものをと、一生懸命作り続けてきました。みなさんの大切な人に手渡しで伝えていただきたいです」と満席の観客を前に、撮影中キャストやスタッフと様々な差別についてディスカッションをしたエピソードも明かしながら挨拶した河瀬監督。退場時には、客席から花束を手に駆け出してきたファンと交流する場も見られ、映画同様、感動的な舞台挨拶となった。
(江口由美)
 

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<ストーリー>
訳あってどら焼き屋「どら春」の雇われ店長となった千太郎(永瀬正敏)は、桜の咲く季節に徳江(樹木希林)という女性から店で働くことを懇願される。最初は断っていた千太郎だが、徳江が持参した粒あんの味に惹かれ、徳江を採用。どら春は徳江の粒あんのおかげで大繁盛する。シングルマザーに放ったらかしにされる日々で、高校受験も諦めていた中学生のワカナ(内田伽羅)も、毎日店に訪れるうちに徳江と親しくなっていく。だが、徳江にまつわる心ない噂が広がり、千太郎も次第に窮地に追い込まれていくのだった。
 

<作品情報>
『あん』
(2015年 日本・フランス・ドイツ 1時間53分)
監督・脚本:河瀨直美 
原作:ドリアン助川『あん』ポプラ社刊
出演:樹木希林、永瀬正敏、内田伽羅、市原悦子、水野美紀、大賀、兼松若人、浅田美代子他
主題歌: 秦基博
2015年5月30日(土)~新宿武蔵野館、Tジョイ 梅田ブルク、シネマート心斎橋、OSシネマズ神戸ハーバーランド、イオンシネマ京都桂川他全国公開
※第68回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門オープニング作品
公式サイト⇒http://an-movie.com/
(C) 2015 映画『あん』製作委員会 / COMME DES CINEMAS / TWENTY TWENTY VISION / ZDF-ARTE
 
 
 
 

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