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亡き篠田昇キャメラマンに捧げる『花とアリス殺人事件』岩井俊二監督舞台挨拶

hanatoalice-di-1.jpg亡き篠田昇キャメラマンに捧げる『花とアリス殺人事件』岩井俊二監督舞台挨拶

2015年2月21日(土)梅田ブルク7にて

・(2015年 日本 1時間40分)
・原作・脚本・音楽・監督:岩井俊二
・声の出演:蒼井優/鈴木杏/勝地涼/黒木華/木村多江/平泉成/相田翔子/鈴木蘭々/郭智博/キムラ緑子
・制作:ロックウェルアイズ/スティーブンスティーブン
・(C)花とアリス殺人事件製作委員会 
・特別協賛:ネスレ日本 配給:ティ・ジョイ  
・公式サイト⇒ http://hana-alice.jp/

2015年2月20日(金)~梅田ブルク7、T・ジョイ京都、109シネマズHAT神戸、ほか全国ロードショー


  

~花とアリスが主人公だと、物語は止めどなく生まれてくる~

 

hanatoalice-1.jpg11年前の『花とアリス』以来、プロデュース作品はあったがあまり監督作品を生み出してこなかった岩井俊二監督が、『花とアリス』の前日譚となる二人の出逢いの物語を、初の長編アニメーションで映画化した。『Love Letter』『スワロウテイル』『リリィ・シュシュのすべて』と思春期の繊細な心情の変化を瑞々しい映像で捉えた作品は、“岩井俊二ワールド”と称され、撮影はすべて篠田昇キャメラマンによるものだった。その篠田キャメラマンが『花とアリス』が公開された2004年に亡くなられ、その後実写映画はカナダ製作の『ヴァンパイア』だけとなっている。


hanatoalice-di-2.jpg世界でも評価の高い岩井俊二監督は、日本のみならず世界中のファンが彼の新作を待ち望んでいた。2004年当時闘病中の篠田キャメラマンに読んでもらおうと徹夜で執筆していたが、書き上げたその朝、篠田キャメラマンは帰らぬ人となった。届かなかったシナリオだったが、作品の中には彼を思わせる病気の老人が登場する。アリスと他愛ない会話をしながら過ごすひと時が、黒澤明監督の『生きる』の一場面と重なり、切ない想いが胸に迫る。
 

長い時を経て、今回自ら脚本・監督・音楽を務めて作り上げた『花とアリス殺人事件』。舞台挨拶に登壇した岩井俊二監督には、「完成してやっと篠田キャメラマンに捧げることができました」とその胸の内を明かした。


また、実写版で主演を務めた花(鈴木杏)とアリス(蒼井優)も本作をきっかけに女優として大躍進を遂げているが、さすがに11年経って前日譚となる中学生を演じるには無理がある。主演の二人をはじめ、当時同じ役の俳優たちが今回のアニメーションでは声優を務めているのも大きな魅力。懐かしい声から11年前のあの感動が甦るようだ。「続編を作ってほしい」という蒼井優の言葉に応えるように岩井監督は、「花とアリスが主人公だと、物語は止めどなく生まれてくる」と語る。
 



公開2日目の梅田ブルク7、この日集まった観客の殆どが実写版『花とアリス』を見ているという。新作を待ちかねたファンを前に登壇した岩井俊二監督は、下記のように語った。

hanatoalice-2.jpg――― 初の長編アニメーションは如何でしたか?
初めての体験で試行錯誤することばかりでしたが、実写とは違う感覚でとても新鮮でした。細かいところでいろんな問題が発生するのがアニメの恐ろしい処で、なかなか苦しめられました。毎日一コマずついじり倒しているような状況でして、後で全体を見て「こんな話だったんだ~」と久しぶりに物語に触れた気がしました。実写だとそんな細かくチェックすることはないので、今回のように一コマずつ作り上げていく作業は、作り手としては快感でしたね。

――― 11年前、実写版『花とアリス』が公開された時には今回の脚本は作られていたんですね?
はい、完成後にプランはあって書いていたんですが、製作に至るまでいろいろあって時間がかかりました。

――― ずっと岩井監督作の撮影監督だった篠田昇さんが亡くなられて、そのシナリオを篠田さんに捧げられたというエピソードがありますが?
この本を書いている時に篠田さんは闘病中だったんです。何とか篠田さんに届けたいと思って徹夜で書いていたんですが、やっと書き上げた朝に「篠田さんが亡くなられた」と連絡がありました。本作の中に渡辺という老人が登場しますが、篠田さんのつもりで書きました。彼に捧げるというより、闘病している篠田さんを書いている自分に、作家の業(ごう)を感じました。10年経ってこのような形で完成したので、結果的には彼に捧げられたかなと思っています。

――― 出演された蒼井優さんも同じようなことを仰ってましたが?
二人に久しぶりに会ったのも篠田さんのお葬式の時でして、二人は号泣していました。篠田さんは撮影中はムードメーカーのような“いいおじさん”だったので、二人ともとても懐いていましたので、残念で仕方なかったですね。

hanatoalice-3.jpg――― 実写版と同じメンバーが声優を務めていますが、収録の様子は?
皆さんとは久しぶりにお会いしたのですが、そんな長い時間ではなく1週間ぶりの再会のようなとても近しい感覚でしたね。これが現場の不思議なところだなと。意外と懐かしい感じではなかったですね。皆さんさっとその役に入るという感じでした。平泉成さんは、アリスの父親役ですが、アリスのファザコンのシンボルみたいな存在なので、渡辺老人の声も平泉さんでなくてはと思ったんです。それで、後日「実はもう一つ役をお願いしたいのですが」と。これはアニメだからできることです。

――― シナリオを書く時に、どうやって14歳の心情になれるのですか?
当時を思い出したりもしますが、あの年齢ぐらいになる大人とあまり変わらなくなるので、敢えて大人がやっていることを子供たちにやらせると、行動と結果がまた違ったものになったり、ちぐはぐにズレてしまったりするところを楽しみながら書きました。

――― 男性より女性キャラクターにした方がやりやすいですか?
そうですね、自分の中で距離を置けるので書きやすいです。男性を主人公にすると自分と直結してしまい、業のようなものが出て、大体変質者か殺人者になることが多いですね(笑)。

――― 少女を主人公にすると、ピュアなものになれるんですね?
そうです。

――― 蒼井優さんが、是非続編もやりたいと仰ってましたが?
「花とアリス」は腐れ縁の悪友みたいな話なので、ストーリーは止めどなく出てきてしまいます。続編を作る機会があれば楽しいだろうなと思いますけどね。

――― 最後に。
長い時間が掛かった新作ですが、製作だけで1年半かかり死ぬような思いをしました。とても可愛らしい映画なので、皆さんの中でいい思い出になって、お友達にも勧めて頂ければいいなと思います。どうかよろしくお願いいたします。

(河田 真喜子)