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生身の人間同士が触れ合う感覚を大事にしたい~『最後の命』柳楽優弥インタビュー

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生身の人間同士が触れ合う感覚を大事にしたい~『最後の命』柳楽優弥インタビュー
 

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『最後の命』(2014年 日本 1時間50分)
監督:松本准平
原作:中村文則『最後の命』講談社文庫刊
出演:柳楽優弥、矢野聖人、比留川游、内田慈、池端レイナ、土師野隆之介、板垣李光人、りりィ、滝藤賢一他
11月8日(土)~新宿バルト9、ヒューマントラストシネマ渋谷、梅田ブルク7、シネマート心斎橋他全国公開
※NY「チェルシー映画祭」最優秀脚本賞を邦画初受賞
公式サイト⇒http://saigonoinochi.com/
(C) 2014 beachwalkers.
 

~生きる理由を探す青年がみつけた光とは?~

 
できるだけ他人と関わらないように静かに生きる青年桂人と、婦女暴行犯として追われていた幼馴染の冴木。幼い頃ある事件を目撃したことがきっかけで、運命を狂わされた二人が再会したとき、桂人の部屋で殺人事件が起きる・・・。
 
芥川賞作家の中村文則の小説『最後の命』を、『まだ、人間』で注目を集めた新鋭、松本准平監督が映画化。主演の桂人にはドラマ『アオイホノオ』他、圧倒的な存在感で観る者を魅了する柳楽優弥、桂人と対峙する冴木に蜷川幸雄の『身毒丸』で主役を演じた矢野聖人、二人の男にかかわる同級生香里に本作で映画デビューを飾った比留川游が扮し、緊迫感のあるドラマを説得力のあるものにしている。特に目線や佇まいで、桂人の抱えている過去や性への葛藤を表現する柳楽優弥の演技に惹きこまれ、まさに桂人と冴木の間に流れる空気を感じることができるだろう。
 
キャンペーンで来阪した主演の柳楽優弥に、桂人の人物像や、本作で表現したかったこと、また俳優人生の中で印象的だった現場についてお話を伺った。
 

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―――最初に脚本を読まれたとき、この作品や桂人、冴木というキャラクターに対してどんなことを感じましたか?
柳楽:まず、現代っぽいなという印象を持ちました。先に原作を読んだのですが、すごくインパクトのある小説で、どういう風に脚本化されるのだろうと思っていました。自殺や死、そして生きるということについて考えさせられる内容で、僕らや、もう少し下の世代に何か響くものがあるのではないかと。実際に脚本を読んだときは、すごく難しいと感じました。現場に入る前に頭に浮かんだのは、ショーン・ペン主演の『ミスティック・リバー』で、監督はそんな感じのことをしたいのではないかとも感じました。
 
 
―――目線や佇まいで、過去に何か重いトラウマを背負っている桂人を表現されていましたが、どういうプロセスで役作りをしていったのですか?
柳楽:桂人は言葉で人を説得するのではなく、自分の言いたいことを割と抱え込んでしまっているタイプです。そういうタイプの人は相手の目を見て話さない印象があるので、監督に目線の提案をしてみたら「いいですね、やってみましょう」とGOサインを出してくれました。目線の表現は意識して取り入れていきましたね。過去のトラウマや葛藤を抱えているような、あまりポップではない役を演じるときは、現場に入る前に少し憂鬱になることがあります。今回は作品のテーマも重いので、「よし、頑張るぞ」と気合を入れて臨みました。「撮影でどれだけ自分が闘えるか」という戦闘モードでしたね。
 
 
―――古書で埋め尽くされていた桂人の部屋も、桂人という人物を読み解くヒントになりますね。
柳楽:すごい本を読むなと思いました。(笑)高校生でドストエフスキーの『罪と罰』を読むような人物ですから。それよりもレベルの高い本が桂人の家には積まれていて、きっと本に救われて選択肢が広がっているような人なのでしょう。
 
 

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―――子どもの頃に同じ事件に巻き込まれた桂人と冴木の間には、二人にしか分からない世界があり、観る方はその世界に引きずり込まれていく感じがしました。柳楽さんは、桂人と冴木の関係をどう捉えて演じたのですか?
柳楽:僕も小学校や中学校のときは、目立つ人や何かに長けている人を羨ましいと思うタイプだったので、桂人にとっての冴木も羨望の眼差しを向ける存在だったのではないでしょうか。監督には冴木が兄で、桂人が弟のような関係だと言われたのですが、時間が経った後に再会すると、冴木の方が追い込まれていた気がします。
 
 

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―――冴木役、矢野聖人さんとの初共演はいかがでしたか?
柳楽:矢野さんは蜷川幸雄さんの舞台『身毒丸』に出演され、舞台慣れされているので、今回も役をかっちり組み立てて臨まれていた印象があります。僕は矢野さん演じる冴木に振り回される普通の青年役なので、矢野さんが現れた途端「冴木だ」と思え、全信頼を寄せて挑めました。とても魅力的な方でしたね。比留川さんもとても素敵な方でした。精神を病んでいく桂人の彼女役ですが、年上ながらとても親しみやすい雰囲気を出してくれ、僕は共演していて落ち着きました。
 
 
―――重いテーマのストーリーですが、最後に光射すイメージを残しますね。
柳楽:キャラクターたちが真っ暗なトンネルで出口を探しながら走っていると、エンディングでCoccoさんの歌が流れ、「出口はここだよ」と光を照らしてくれた気がします。僕はエンディングがCoccoさんの歌だと知らなかったので、初めて聞いた時いい意味で衝撃を受けました。
 
 
―――柳楽さんの目がすべてを物語る力を持っていたと思います。まさに柳楽さんあっての作品なのでは?
柳楽:やはり、監督が僕の目の力に注目してくれたことが大きいです。脚本が難しかったので、撮影前半はこちらから腑に落ちない点を監督に聞きに行くようにしていました。
 
 
―――役の幅も広がりましたね。
柳楽:本当に色々な役のオファーが来るようになりました。次は時代劇がやりたいです。最近は仕掛ける方の役が多いのですが、そちらの方は遊べるし楽しいですね。今回は俳優をはじめた頃に演じていたような、割と受け身の役です。最近の主役はどの作品を見ても受け身芝居が多い気がするので、こういう受け身の役もきちんと演じられるようになりたいです。
 

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―――最初は受け身ですが、最後に一皮むける桂人の成長ぶりは、柳楽さんの繊細かつ大胆な演技でリアリティーがありました。傷つきあいながらもぶつかっていく主人公たちの姿に心揺さぶられます。
柳楽:『アオイホノオ』で昭和時代の芸大生を演じて以来、僕の中で昭和と平成を比べるのがブレイクしているのですが、昭和50年代は相手に対してしっかり伝えるというイメージがあります。平成は相手に対して、インサイドになるのが癖になっているイメージです。桂人はインサイドすぎる存在で、自分の意思はあるのですが、感情の爆発する方向がネガティブになりすぎている気がします。今いろいろな事故や事件が起こっている中で、自死しか選択肢がないと思わないでほしい。そういう光をこの作品から見つけてほしいです。
 
トンネルから見える小さな光や、自分がふと前向きに考えられることというのは、ふとした瞬間に声をかけられた言葉を一生覚えているような、意外と日常の中に溢れているものではないでしょうか。そんな瞬間を捉えられないぐらい鈍感になるのは個人的にはイヤで、「SNSをしすぎて、感じることに鈍感にならないで」と思います。恋愛に対してのドキドキ感や、優しくされてうれしいと思う気持ちなど、生身の人間同士がふれあう感覚を大事にしてほしいですし、「すぐに死に結びつけないで」と言いたいです。
 
 
―――柳楽さんは今年で俳優生活13年目ですが、その中で自分を変えたり、壁を越えさせてくれた作品は?
柳楽:『許されざる者』ですね。共演者の方も大先輩ばかりだし、ほとんどの若手がびっくりするような現場で、そこに参加できたことは非常に光栄でした。李監督は本当に厳しかったですが、いい意味でパンチを喰らい、成長できる現場でした。これからもいい現場に出会いたいです。
 

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―――影響を受けた俳優は?
柳楽:僕が高校生の頃は、ジョニー・デップが大ブレイクしていた時期でした。ジョニー・デップを好きな人ってみんな狂いだしますよね。アーティスティックに反逆する感じで、カリスマ性がすごいですし、僕らの世代だけではなく色々な世代の人が憧れると思います。僕はその頃にジョニー・デップ主演の『ブロウ』を観て、「ロン毛や穴あきジーパンなのに、こんなカッコいい人を見たことない!」とのめり込みました。目指す人がいるということは大事ですね。
 
 
―――最後に、役者という職業をする上で一番大事にしていることは?
柳楽:先輩たちを見ていて思うのですが、役者の方はいい人しかいないですね。柄本明さんは大好きな先輩ですが、出演される舞台にお誘いいただくこともあり、温かいし、色っぽくってカッコいいです。僕も後輩にそういう風に言われるように、頑張りたいです。
(江口由美)