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一緒にいたい人を見つけたくなる大人のラブストーリー 『がじまる食堂の恋』大谷健太郎監督、波瑠インタビュー

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一緒にいたい人を見つけたくなる大人のラブストーリー
『がじまる食堂の恋』大谷健太郎監督、波瑠インタビュー
 

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『がじまる食堂の恋』(2014年 日本 1時間38分)
監督:大谷健太郎
出演:波瑠、小柳友、竹富聖花、桜田通、パッション屋良、ダンディ坂野、肥後克広他
9月20日(土)~シネマート新宿、第七藝術劇場、109シネマズHAT神戸、T・ジョイ京都他全国ロードショー
公式サイト⇒http://gajimaru-shokudo.com/
(C) 2014名護まち活性計画有限責任事業組合
 

~「あなたの恋人になりましょうか」

      ガジュマルの木が見守る恋~

 
水平線が広がる真っ青な海、全てを包み込んでくれるような大きなガジュマルの木。沖縄ならではの風景を観ていると、何とも言えない伸びやかな気分になれる。沖縄県名護市を舞台に、祖母が遺したがじまる食堂を一人で切り盛りする主人公みずほと、みずほの前に次々と現れる“気になる存在”との大人の恋模様を爽やかに描いたラブストーリー、『がじまる食堂の恋』。
 

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映画単独初主演の波瑠が、恋に不器用だが頑張り屋のみずほを自然体で演じ、恋に悩む大人女子の気持ちを細やかに表現。みずほの前に突然現れる旅行者・隼人(小柳友)、東京から帰省した元カレ翔太(桜田通)、翔太の絵のモデルに志願した莉子(竹富聖花)と、それぞれが秘密を抱えた4人が複雑に絡み合っていく。がじまる食堂の常連客役でパッション屋良、ダンディ坂野、肥後克広らが登場し、みずほの日常を賑やかに彩る他、本州の桜よりも色鮮やかなカンヒザクラが美しい名護城公園でのさくら祭りなど、名護らしい風景が映し出されているのも見どころだ。
 
本作の大谷健太郎監督と、主演を務める波瑠に、全編ロケで撮影された『がじまる食堂の恋』の見どころや、オリジナル脚本に込めた想い、撮影秘話についてお話を伺った。
 

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―――本作はオリジナル脚本ですが、監督のアイデアはどの程度反映されているのでしょうか。
大谷健太郎監督(以下監督):私の監督作品としては、本作でちょうど11本目になります。今まで10本撮ったので、この1本はご褒美のような気持ちで、好きなことをやらせていただけると思いました。名護の町おこしの映画を作ってほしいという依頼ではなく、20~40代ぐらいの旅行好きな女性が、この映画を観て「名護の町に行ってみたい!」と思えるようなお話を考えるとラブストーリーしかありません。自分の原点に戻って、久しぶりに撮りたいものを作ってみようと思ったのです。
 
 
―――原点回帰のラブストーリーということですが、特にどういう点をポイントにしたのですか?
監督:沖縄を舞台にするというのはどういうことなのかと考えました。女性を主人公にし、女性がヒロインに思いを重ねられるような女性目線を大事にし、脚本の永田優子さんが女性の気持ちを見事に描いてくださいました。『とらばいゆ』(02)のような四角関係で、恋愛会話劇のスタイルをとっていますが、『とらばいゆ』では都会に住んでいる男女を描いていました。女性は気が強くバリバリ仕事もしていて、恋愛に対してもアグレッシブ。一方、男性は僕の分身みたいに情けない男が登場する話でした。
 
今回は名護で生きている女性が、おばあちゃんから受け継いだ食堂を細々と一人で切り盛りし、肥後さんたちが演じる常連客を相手に日々平穏に暮らしています。そこに、非日常的に旅行者の男性が現れ、元カレが島に帰ってくるし、謎の美女が現れるしと、どんどん巻き込まれていくわけです。そういう中で自分の生き方や女である自分の恋心にもう一度目覚めていきます。観客も少しずつヒロインに気持ちを重ね合わせながら、最終的に運命の人に辿り着くというのが大人のラブストーリーとしていいのではないかと思いました。それが今までとは違う部分ですね。
 
 
―――波瑠さん演じるみずほが何度も語りかけるガジュマルの木が、作品で重要な役割を果たしていましたね。
監督:名護の大通りにある「ガジュマルの木」は樹齢が300年ぐらいあり、町の人も木に向かって拝んだり、お供えものを置いたりするような木で、都会では考えられないようなパワーを感じました。その感じを取り入れたかったし、ガジュマルの木の下でキスシーンを入れたかったのです。永田さんと、ガジュマルの木で語る台詞を考えたり、冒頭のシーンからラストシーンにうまく繋がっていくように作っていったところが一番のこだわりですね。
波瑠:ガジュマルの木の迫力は凄かったです。見たこともない木の形をしていて、根も伸びているし、枝もこんがらがるような形で圧倒されました。
 
 

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―――波瑠さんは映画単独初主演ですが、主演が決まったときの気持ちや、撮影に臨むときの心境はいかがでしたか?
波瑠:主演をいただいたからといって、特別に意識はしませんでした。TVドラマで一度お仕事したことがある大谷監督ですし、自分がこの現場を引っ張っていかなければというようなプレッシャーは全然感じなかったです。自分のやるべきことを一生懸命やっているうちに、逆に周りの方にサポートしていただいた感じでした。沖縄で2週間撮影できたことが、本当に嬉しかったです。
監督:女性が主人公のラブストーリーですから、女性に人気がある女優でなければ、なかなか観ていただけないですね。波瑠さんは幅広い層から人気がある女優なので、この人に託せば大丈夫だと思いました。以前一緒に仕事をした安心感があることに加え、映画初主演でご一緒できるのも魅力的でした。
 
 
―――波瑠さんから見て、みずほはどのようなキャラクターと捉えていますか。
波瑠:食堂を一人で切り盛りしており、非常にしっかりした女性です。でも恋愛のこととなると、途端に流されやすくなってしまったり、過去のある出来事のために恋愛に対して少し臆病になっている部分があります。恋愛の面だけ不器用になるのはとてもかわいいなと思いました。他の3人のキャラクターが濃かったので、みずほというキャラクターの表現の仕方は色々考えました。
 
 

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―――小柳友さんや桜田通さんといった男性キャストの起用の決め手は何ですか?
監督:女性に人気があることですね。僕の周りの女性は皆小柳さんを是非キャスティングしてほしいという声がありましたし、桜田さんも女性ファンが多い方です。これから日本映画を背負っていく若い俳優さんと一緒に仕事をするのが好きなのでしょうね。『NANA』(05)のときもオーディションで松山ケンイチさんと出会いましたから。
 
 
―――今回の撮影を通じて、お気に入りの場所や食べ物はありましたか?
波瑠:どこでも海があり、海や海沿いの道はきれいですね。東京では見られないです。今回は食堂の話なので、フードコーディネーターの宮城都志子先生(地元の栄養士として40年以上活躍、『沖縄発 パパッとご飯 しっかりご飯』著者)が撮影で使うご飯を出してくださったのですが、撮影スタッフにもお昼ごはんとしてヨモギ入り雑炊(ジューシー)を振る舞ってくださいました。初めての味でしたが、よもぎの香りがやさしくて、好きになりました。
監督:名護にはオリオンビールの工場があるので、工場から出来立てのビールが卸されていて、名護で飲むビールが格別に美味しいです。空港で飲んだり、本土で飲むのとはまた違います。ビール好きなら、ぜひ名護に来て飲んでいただきたいです。
 
 

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―――名護での撮影を経て、ご自身に変化はありましたか?

波瑠:普段は自分の家が好きで、地方で泊まることはあまり好きではないのですが、初めて名護に来てから毎日天気も良く、すぐに「名護、いいな」と思い、帰りたくなくなりました。帰ってからもしばらくは現実に戻れなかったですね。キャストやスタッフの皆さんと一緒にご飯を食べたりと、みんなで行動する生活に慣れてしまったので、夢から無理矢理起こされたみたいで、東京に帰ってしばらくは辛かったです。
監督:ある寿司屋でスタッフジャンパーを来たまま夕ご飯を食べていたとき、お店のご主人に声をかけていただき、ご主人の三線と奥様の踊りで私も一緒に踊りました。沖縄でしか起こらないと思っていたことを本当に体験でき、地元の皆さんにかわいがっていただきました。僕自身もまだ名護に心が置きっぱなしになっていますね。居心地がいいですし、時間の流れ方が違います。
 
 
―――最後に作品の見所を教えてください。
監督:名護は桜が日本で一番最初に咲く場所で、本作では名護の春の風景を収めています。春の沖縄を見るのは貴重なのではないでしょうか。都会で暮らしていては絶対に味わうことができないゆったりした時間や名護の人たちの暮らしを感じられますし、自然に飛び込んでいったからこそ、都会では起こり得ないようなどこか夢のようでかつ、リアルな大人の切ないラブストーリーができました。名護に足を運んでいただければ、きっと名護の皆さんが暖かく受け入れてくれると思います。映画に登場したガジュマルの木を見つけてもらえば、運命の人が手を握ってくれるかもしれませんよ。女子旅にうってつけの映画だと思います。
波瑠:名護のみなさんの協力があり、名護だから完成した映画です。とても感謝しています。その名護の気持ちいい空気の中で、私たちが演じた些細な気持ちの揺れ動きに目を向けていただき、「あのときの台詞がよかったね」という女の子同士の会話をしてもらえると嬉しいですね。
 
(江口由美)
 

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