体のキレも健在!『太秦ライムライト』主演の福本清三さん舞台挨拶
(2014年6月9日(月)梅田ブルク7にて)
(2014年 日本 1時間44分)
監督:落合賢 脚本:大野裕之
出演:福本清三、山本千尋、本田博太郎、合田雅吏、峰蘭太郎、栗塚旭、萬田久子、小林稔侍、松方弘樹
2014年6月14日(土)~MOVIX京都、T・ジョイ京都、TOHOシネマズ二条、梅田ブルク7、なんばパークスシネマ、神戸国際松竹、関西先行公開 (7月12日(土)~新宿バルト9 ほか全国ロードショー)
公式サイト⇒ http://uzumasa-movie.com/
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トム・クルーズ主演の『ラストサムライ』(2003年)に寡黙な侍として出演し、一躍脚光を浴びた福本清三さん。斬られ役一筋の福本さんが初主演の映画『太秦ライムライト』がこのほど完成し、公開を目前に控えた9日、大阪の梅田ブルク7で特別試写会が行われた。福本さんは紋付羽織袴で登壇され、会場はあたたかい拍手に包まれた。謙虚なお人柄は変わらず、緊張した面持ちながらも、殺陣の仕草となると、一転して鮮やかな身のこなしを披露され、会場を沸かせた。客席からの質疑応答では、テレビの時代劇の再放送で福本さんを観ているという応援の言葉や、若い女性からの質問も相次ぎ、なごやかな雰囲気の中で舞台挨拶が行われ、福本さんの、脇役ながら、斬られ役として一つのことを極めてきた生き様、映画への真摯な思い、誠意が伝わるひとときとなった。
―――最初に一言、挨拶をお願いします。
私みたいな斬られ役が大役をいただき、自分でどうしていいかさっぱりわからず、監督以下スタッフ、出演者の皆様方に助けていただき、松方弘樹さん、萬田久子さんとまわりを固めていただき、なんとかやらせていただいたというのが本音のところです。皆さんのおかげで映画にしていただいたと思っています。
―――初主演を務めて、どうでしたか?
僕はずっと斬られ役できましたので、まさか斬られ役が主役をいただくなんて夢にも思いませんでしたし、こんなことがあっていいのかと毎日が夢うつつです。このお話を聞いた時から受けていいのか迷ったりもしたのですが、たくさんの方に「やりなさい」と後押ししていただきました。斬られ役として、ずっと、こんな感じ(斬られる仕草)でしたが、今日は、こんなところにこうして挨拶で舞台に立つという全く初めての経験で、心臓がバクバクして、今も何をしゃべっていいのやらという感じです(笑)。
―――昨日の日曜日、京都の二条城でイベントが行われ、舞台挨拶で、松方弘樹さんが、福本さんは普段からあまりしゃべらないけれど、セリフがあったらもっとしゃべれないから、今回、セリフが多かったので、監督に言って、けずってもらったというお話を披露されましたね。
僕はセリフも言えん男ですから、「あいつ、セリフが多かったらあかん」と脚本家に言っていただいて、少なくしていただいたというのが現実です。立ち回りならできるんですが、セリフになったら全く、というようなもので、皆さまにご迷惑をかけ、監督には申し訳なく思っています。人生50年ずっと斬られ役をやってきて、今回の映画が、最初で最後の死に土産(笑)と思っています。
―――昨日は、二条城の二の丸御殿台所という、重要文化財で一般公開されていないところに、機材やスクリーンを持ち込んで、初めて映画の上映が行われましたが、どうでしたか?
二条城は、撮影でよく庭とか使わせていただきましたが、重文の建物はなかなか貸していただけないところを、市長さんがこれからは「映画の市」ということで、撮影にも使ってくださいと言われていました。これからも神社、仏閣で撮影させていただけるのではないかと思っています。
―――京都の神社とかで、福本さんの立ち回りを、観客の皆さんがご覧になれる機会があるかもしれませんね?
立ち回りといっても、僕はもうすぐ72で、「わあっ」と言って死んでるのも限界ですからね(笑)。僕自身はまだ出れると思っているのですが、まわりからは、「年やで」って、そんな声も聞こえます。今の僕としては、立ち回りを若い世代の人たちになんとか伝えていきたいと思っています。時代劇が低迷していて、なかなか若い人が映画の世界に入ってくれない状況ですが、若い人にこの映画を観てもらって、映画に興味を持ってくれる人が出てこれば、というのが一番の思いです。
―――ヒロイン役の山本千尋さんはどうでしたか?
一番助けていただいたのが千尋さんですね(笑)。立ち回りに関していえば、彼女は世界チャンピオンですから、僕が教えるなんてとんでもないくらい上手い人です。だから、今回の映画で彼女が一番苦労したのは、できる人ができない芝居をせなあかん、という点じゃなかったかと思います。映画の中で、僕は教える人ですが、本当は千尋さんに教えてもらう立場で、反対だよねと笑い合っていました。
―――松方弘樹さんに出演していただいて、どうでしたか?
共演なんてとんでもありません(笑)。16歳で会社に入ってから、画面の端っこに出していただき、お父さんの近衛十四郎さんにも斬られ、二代に渡って斬られてますねと大笑いしてました。
僕らは映画の時代から始まって、テレビの時代になり、全盛期には、テレビのチャンネルが全部時代劇をやっていたこともありました。その頃は、毎日、立ち回りばかりで、「銭形平次」で斬られ、「暴れん坊将軍」で斬られ、と毎日、相手を変えて3、4回、後ろから斬られて(笑)というような状況でした。そんなに勢いがあったのが、一気になくなってしまって、最後まで続いたのが「水戸黄門」でしたか。まさかあの「水戸黄門」がなくなるなんて、夢にも思いませんでした。時代劇がないと、斬られ役も仕事がありませんし、ただ増えてくれてないかなというのが僕らの今の願いです。
こんなにたくさんの方に観てもらうのは初めてなので、ぜひ宣伝よろしくお願いします。ヒットすれば、次の作品にもつながります。立ち回りのおもしろさ、下積みをやっている人たちが頑張っている姿とかを感じていただければ、一番うれしいと思います。
―――先日、無声映画の時代劇を観て、NHKのドキュメンタリー番組で、福本さんが、映画とテレビでは斬られ方が違うと言われていたのを思い出しました。斬られ方で、相性のよかった人とわるかった人があれば、教えてください(会場からの質問)。
僕らが入った頃の東映は、斬られ役みたいな専門で立ち回りできる人がたくさんいました。400人位の俳優のうち200人位が男性で、その中に立ち回りができる人が50か60人位いましたので、その中に入り込むのがまず大変でした。あの頃は、皆よくできたんです。というか、できて当たり前の時代でした。僕はペーペーでしたから、どこから這いあがっていこうか、まずは立ち回りを覚えてと、先輩から習いました。僕らが先輩に合わせていただいていた状況なので、今はその恩返しのようで、若い人たちに立ち回りを教えていく立場です。でも、今でももっと上手くなりたいと思います。ただ「わあっ」と言って「わあっ」と死んだふりしているように見えますが、何かしら奥の深いものがあるんです(笑)。
――小さい頃から時代劇が大好きで、殺陣を習いたいと思っていたのですが、何をすれば上手くなれますか?(会場からの質問)
僕は、見て覚えたのが一番大きかったですね。どこかの劇団とかに入って、習うのも一つですが、好きな人は見ただけで上手くなれますし、自分だけでも結構できます。僕も結構自分だけでやってきましたから。見よう見まねで、倒れ方も自分でやってみたりして、いろいろやってきました。テレビの主役の斬り方のかっこよさや、えらい倒れ方しよるなとか、そういうのを見るのが、一番身近でできる方法じゃないかなと思います。
――最後に一言お願いします。
50年やってきて、こんな芝居しかできないのかと自分でも反省ばかりしているんですが、とにかくなんとか形にしていただいて、いろいろな方に観ていただいて、「よかったよ」と一言もらいまして、「ほんまかいな」と思ったり(笑)、それは、僕がよかったんじゃなしに作品自体がよかったというお言葉をいただいて、ほっとしているところです。これからが勝負で、一人でも多くの方に観ていただきたいというのが本音です。このところ、全然寝ていません。こんなことは役者になって初めてです。どうぞよろしくお願いします。
(伊藤 久美子)