モテ男を地でいく竹野内豊『ニシノユキヒコの恋と冒険』舞台挨拶
(2014年2月4日(火)TOHOシネマズ梅田にて)
ゲスト:竹野内豊(43歳)、井口奈己監督(46歳)
(2013年 日本 2時間02分)
監督:井口奈己
出演:竹野内豊、尾野真千子、成海璃子、木村文乃、本田翼、麻生久美子、阿川佐和子
2014年2月8日(土)~TOHOシネマズ系にて全国ロードショー
公式サイト⇒http://nishinoyukihiko.com/
(C)2014「ニシノユキヒコの恋と冒険」製作委員会
~日本で「ニシノユキヒコ」を演じられるのは竹野内豊だけ!~
女にめっぽうモテるが、なぜかいつも女の方から去っていき、結婚できないさみしい男・ニシノユキヒコ。多くの女性を手玉にとるようなそんなずるくて下品な男ではない。なぜか女性の心が読めちゃって、女性の欲望に応えてしまう優し過ぎるお方だ。かといって過去の恋を引きずるようなことはしない。そんなニシノユキヒコが突然の事故で死んでしまった。葬儀に集まった女性たちとの恋愛模様を回想するかたちで物語が綴られていく。
白のボルサリーノ・ハットが似合う日本人男性なんてそうはいない。井口監督も最初フランス人かイタリア人しかイメージできなかったという。長身で細マッチョのボディに、穏やかでどこか飄々とした雰囲気の竹野内豊。まさに「ニシノユキヒコ」のイメージにピッタリ! 彼をイメージして書かれた脚本によって、誰からも愛されるが孤独な男の切なさがにじむ新たなラブストーリーが生まれた。
★竹野内豊&井口奈己監督による舞台挨拶
(最初のご挨拶)(敬称略)
竹野内:今日は2月4日、ニシの日に「ニシノ」西へ参りました。(笑)本日はお出で下さいまして、本当にありがとうございます。どうぞ最後まで楽しんで下さい。
井口監督:初めまして、本日はこんなに沢山の方に来て頂いてビビッております。友達も来てくれています。楽しんで頂けたら、是非お友達やご家族などにオススメ下さい。よろしくお願いいたします。
――― 最初オファーがあった時の感想は?
竹野内:『人のセックスを笑うな』を見て、直感的にいいなと感じ、好きな作品でした。まさか井口監督からオファーが来るとは思わなかったので、嬉しかったです。
――― 井口監督は最初から竹野内豊さんにと思っておられたのですか?
井口監督:5年前から企画していたのですが、このイメージに合う俳優さんというと外国の人の名前しか出てこなかったのです。フランス人とかイタリア人とかね。でも、スタッフが「ここにいた!竹野内さんがいるじゃない!」と。そこからは竹野内さんをイメージしながら脚本をふくらませていきました。
――― 7人の女性に囲まれて、現場でも女子率が高かったのでは?
竹野内:ニシノと同じ疑似体験ができました。とても穏やかな現場でした。
――― 長回しの撮影については?
竹野内:監督は自由にやらせてくださいますが、何でもOKを出す訳ではなく、予定調和にならないようナマのギリギリのところをアドリブ的なところも求められたりしました。試写を見て、ちょっと恥ずかしいところもありました。尾野真千子さんも、試写見る前からポッポッとしておられました。
(ここで、竹野内さんから井口監督に、長回しする理由について質問が出る)
井口監督:予定していたものが終わっても、演技が素晴らしい場合は、カットかけないよう我慢しています。
竹野内:一所懸命やって楽しかったが、役者同士しか分からない空気感があって、「カットが遅いな~どうしたらいいんだろう?」とちょっとドキドキしました。
井口監督:尾野さんの耳がか~っと赤くなってきたのが見えたので、二人のリズムが上がってきたなと思い、そのまま見ていました。
――― それ以外のアドリブは?
井口監督:細かい点はありますが、すごく困っている時は変えますが、調子いい時は「やってやって~」と任せます。
竹野内:演じる前に「どうしようかな?」と考えますが、監督に「目の前の人を感じて下されば、それでいい」と言われ、そうれがどういう意味なのかわからなかったのです。監督はあの時どういう考えだったのですか?
井口監督:竹野内豊さんがいるだけで成立しているので、何もしないでいいんです。
竹野内:それは困ります!(笑)
――― 竹野内さんご自身は「ニシノユキヒコ」をどう思っていたのですか?
竹野内:それが未だによく分からないんです。男性から見るのと女性から見るのとでは違うと思います。男性はついていけず、首をかしげてしまいます。どこかで分かりたくない、でも見習わなきゃというところもあるし……分からなくてもいいのかも、冒険ですから!?(笑)
(最後に)
井口監督:今日は本当にありがとうございました。素敵な竹野内さんをご堪能下さい。
竹野内:本当に、見どころは?と訊かれたら一言では言えません。いろんな魅力が散りばめられて、井口監督でしか表現できない「井口ワールド」をどうぞお楽しみ下さい。
★舞台挨拶に先立ち行われた井口奈己監督の合同記者会見
――― 原作のどこに惹かれたのか?
井口監督:読後感が淡く不思議な感じがして興味を持ったのです。そこで、10の短編をひとつの映画の形にあてはめて構成を考えました。
――― 構想から5年かかった理由は?
井口監督:第1稿はすでにできていたのですが、2012年8月に主役が竹野内豊さんに決まってからこのプロジェクトが具体的に動き出しました。竹野内さんに合せて脚本を書き直すと、登場人物に説得力が出てきて実感がわいてきました。
――― 特に変化した点は?
井口監督:女の子たちとのシーンを回想でひとつひとつ綴るようにしました。竹野内さんの純粋なイメージに合せて、ずるい男にならないように気を付けました。
――― 演技指導は?
井口監督:竹野内さんにはとにかく力を抜いてくれと言いました。他の方々にも、本来持っているポテンシャルを引き出すために、そのままでいいと。キャスティングの時点で、女優が発信しているものをそのまま出してくれればいいので、特別に演技指導する必要はなかったのです。
――― ファッションについては?
井口監督:主人公のスタイルは、日本人のイメージではわいてきませんでした。それでも、5年前からスタイリストさんが練りに練って生み出したスタイルです。
――― 主人公に対するイメージは?
井口監督:周囲の女性たちの欲望の的で、恋愛の殉教者のような存在です。
――― モテ男ぶりを表現するために工夫は?
井口監督:とにかく下品にならないように。引き際が鮮やかな男性という、女性は男性に引かれたらむしろ追い掛けたくなるように。
――― モテ男は却って損?
井口監督:男前過ぎる人は、女性には敬遠されがち。私も苦手です(笑)。
――― 竹野内さんについて?
井口監督:ニシノユキヒコは理解できないと言っていましたが、周りは「まんまや!」と思っていました。ダンディというより、キュート、チャーミング、母性本能をくすぐるような危うい感じ。動物といる時はとても自然な感じで馴染んでいました。特に犬が好きなようです。
――― 阿川佐和子さんの起用は?
井口監督:彼女の役は、綺麗な中年の女性だが、あまり色っぽくない、まるで少女のようなイメージでした。阿川さんは目がキラキラしていました。ハンフリー・ボガードの話は脚本にはなかったのですが、阿川さんが普段話しておられたものをアドリブでお願いしました。
ニシノユキヒコを取り巻く女性たちは多彩だ。会社の女性:尾野真千子といい、人妻:麻生久美子、隣人:木村文乃といった特有の雰囲気を醸し出せる女優陣に加え、阿川佐和子の存在が実に自然で微笑ましい。6月~7月にかけて撮影され、緑が勢いよく映えて、作品に清涼感をプラスしていた。
(河田 真喜子)