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いつでも人生これから!『くじけないで』"親子"記者会見

kujikenaide-s550.jpgいつでも人生これから!『くじけないで』“親子”記者会見

ゲスト:八千草薫(81歳)、武田鉄矢(64歳)、深川栄洋監督(37歳)
2013年10月11日(金)(ウェスティンホテル大阪にて)

(2013年 日本 2時間8分)
原作:柴田トヨ 「くじけないで」「百歳」(飛鳥新社刊)
監督・脚本: 深川栄洋 『60歳のラブレター』『神様のカルテ』
出演:八千草薫、武田鉄矢、伊藤蘭、檀れい、芦田愛菜、上地雄輔、ピエール瀧、鈴木瑞穂

  

2013年11月16日(土)~全国ロードショー

  

公式サイト⇒ http://kujikenaide.jp
(C)2013「くじけないで」製作委員会

 


 

 

~90歳を過ぎて輝きを増したトヨさんの人生~

 

  

kujikenaide-1.jpg 八千草薫58年ぶりの主演映画『くじけないで』は、90歳を過ぎてから詩を書き始めた柴田トヨさんの物語。激動の時代を生きてきたトヨさんからの慈愛に満ちた言葉の贈り物は、忘れてしまった思い出や、失ってしまった感情を呼び起こし、心に優しさと潤いをもたらしてくれる。

 トヨさんの若い頃を檀れいが、子供の頃を芦田愛菜が演じている。明治、大正、昭和の激動期を生き抜いたひとりの女性の生き様を、八千草薫のたおやかさで穏やかに優しく描いて心に沁みる。定職にも就かず、短気で競馬好きで子供のような性格のトヨさんの一人息子:健一を武田鉄矢が頼りなく演じ笑いを誘う。健一のしっかり者の女房:静子に伊藤欄が扮し、老いたトヨさんと健一を支える。

 

kujikenaide-s2.jpg 11月16日の公開を前に、八千草薫、武田鉄矢、深川栄洋監督の記者会見が大阪市内で行われた。主演映画こそ58年ぶりだが、TVドラマや映画出演は多く、特に近年映画での活躍が目立ってきている八千草薫。80歳を過ぎて、50代後半から100歳近くまでを演じ分けるのは肉体的にもきついものがあったと思うが、それを感じさせない繊細な演技に、改めて大女優のキャリアを感じさせた。そんな立派な母親に付いてきた(?)という感じの武田鉄矢だったが、柴田トヨさんの詩にある「いつでも人生これから!」というメッセージをしっかりと伝えてくれた。また、常に八千草薫を気遣う深川栄洋監督の様子から、まるで三世代親子が会見しているようだった。

 


 

(最初のご挨拶)称略)
 kujikenaide-yachigusa1.jpg八千草:本日はおいでくださりありがとうございます。5月に撮影が終わり何ケ月か経ちましたが、その時の想いがずっと残っています。
武田:久しぶりに取り組んだ映画です。静かな物語が進行する中で自分に演じられるものに挑戦した映画でもあります。八千草さんはファイト満々で、いろんなことを勉強させて頂きました。
深川監督:この映画は詩集が原作になった珍しい映画で、初めてやる作業でしたが、とても楽しかったです。詩から誕生した映画はとても意味深いと思いますので、是非劇場でご確認ください。

――― 柴田トヨを演じるにあたり難しかったところは?
八千草:
最初90歳過ぎた役は無理かなと思いました。でも、トヨさんの詩を繰り返し読んでいる内にやっぱりトヨさんは素敵な方だと思えて、また登場人物すべてが愛情深く、温かくて、今の世の中こんな気持ちになれることは少なくなってきたので、これは出演しなければと思ったのです。自然に年老いて見せることが難しかったですね。息子が詩を書くことを勧めてくれるまでは何もすることがなかったので辛かったのですが、詩を書き始めてからは楽しかったです。私にとっても、とてもありがたい経験でした。

――― 息子の健一役は、母親に心配かけたり、周りに迷惑をかけたりする役でしたが、特に気を付けた部分は?
武田:
健一は庶民的で砂粒みたいな人。その人の手触り、戸惑い、怒り、楽しみと、小さな人が抱く様々なものをどう演じるか……今は大きなことを言うのが流行っているのか、大義を掲げている時代ですが、今日どうやって食べるのか、母親をどうやって喜ばせるのかと、小さなことに悩む人を表現するのが難しかったです。

kujikenaide-fukagawa2.jpg――― 初めて脚本も担当されましたが?
深川監督:
ゼロから書いたのは初めてです。客観性が持てなくなるので止めた方がいいと思ったのですが、この映画の構成が頭にパッと浮かんできたので、これは自分でやるしかないかなと。そのため、スタッフを違う方向へ導いてしまったり、役者さんを苦しめたり、皆さんにご迷惑をかけることになったのですが、どうしても自分の手で作りたかったのです。それが正解かどうかは、これからご覧になる方が決めて下さることでしょう。

――― 様々な映画を撮ってこられて、今までとは違うと感じることは?
深川監督:
自分の知らない世代の映画を作るのは『60歳のラブレター』で経験済みですが、私の祖父母や両親などに訊きながらゼロから書いていると、柴田家を描きつつも、いつの間にか深川家のお話になっていきました。この映画を家族が見て、「恥ずかしくて見ておられん」と言ってました(笑)。

――― キャスティングについて?
深川監督:
トヨさん自身は、八千草薫さんのファンで、『相棒』が好きと聞いていましたが、詩のイメージから可愛らしく観音様のような八千草さんしかいないと思いました。本当に受けて頂いて良かった! 武田さんは、何もいいところのない小学生のような健一の役をやれる人と言えば、武田さんが浮かんできたのです。瞬発力を持ったエネルギーの塊のような役を武田さんに演じて頂ければと。まるで動物園で面白い動物を見ているような感覚で、物語にいろんな楽しみが生まれてくるのではと思いました(笑)。

kujikenaide-yachigusa3.jpg――― 58年ぶりの主演映画ですが?
八千草:
それはあまり意識していませんでした。『蝶々夫人』が終わってから結婚して女優を辞めようと思っていたら、菊田和夫先生が、外国の女優さんは結婚しても女優業を続けていると言われ、TVドラマに出演したり、最近では映画に出演することが多くなりました。ゆっくりとした仕事が好きなものですから、今回も深川監督は「こうしなさい」というような言い方ではなく、いろんな言葉を返して頂きました。もっともっとお話を伺いたいと思うような楽しいお仕事でした。

――― トヨさんの詩の魅力について?
八千草:
トヨさんの詩で、「あたし本当は…」と始まるところあります。人間は長く生きていると、「本当は…」と言って何も言えなくなることがあります。苦しいことや悲しいことを明るく変えてしまう特徴が好きです。「息子が夫とそっくりの顔でテレビを見ている、何だか得した気分」などと、明るくさせて下さる詩です。

kujikenaide-takeda1.jpg――― 60歳を過ぎて、アイドルのプロデュースを始められたが、いくつになってもやることは?
武田:
どんな額縁を持って世界を見るかが大切だと思います。私は最近フライングフィッシュを始めたのですが、これがまた下手くそで全く釣れません。6回釣りに行って、1匹も釣れない! 周りはみんな釣れているのに、自分だけが釣れないなんて…1? 終いには私の近くで魚を放流して下さったのですが、それでも釣れない! もう皆さん大爆笑でしたよ。ひとり下手がいることでこれ程皆さんを楽しませられるのか…世の中上手な人ばかりじゃ面白くない、下手な奴もいるから面白い。老いも若きもいろんな人がいるから面白い、とつくづく思いました。新しい事を始めるのに遅すぎるということはないと思います。

――― 最近のネット炎上については?
武田:
ネットには全く興味がありませんね。最近「恨み」に関連する言葉多くなってきましたね。柴田トヨさんの詩をオススメします。人を傷付けないよう、思いやりのある言葉を使い分ける必要がありますね。

(最後に)
八千草:
武田さんの仰る通りです。この映画は、息子やお嫁さんや夫や両親と、家族がいっぱい出てきます。みんなの思いやりを強く感じました。家族は一番安心できて、心を許してもらえるところだと思います。是非多くの方に見て頂きたいと思います。よろしくお願いいたします。

 


 

kujikenaide-yachigusa2.jpg いつになくスローテンポ!? 武田鉄矢さんも深川栄洋監督もMCも、皆が八千草薫さんのたおやかなテンポに合わせるかのように、ゆったりと、穏やかに、ひとつひとつ言葉を選びながら話していた。「いつでも人生これから」と謳った柴田トヨさんは 今年の1月、映画の完成を待たずに101歳で亡くなられた。トヨさんも“美人さん”だったようだが、日本人が一番“大和なでしこ”と思う女優:八千草薫さんに演じてもらってさぞかし喜んでおられることだろう。(ちなみに、“日本男子”と思う男優は高倉健だそうだ) 80歳を超えても優しい微笑みを絶やさず、慈愛に満ちた眼差しで周囲を和ませる八千草薫さんは、まるで観音様のようだった。(拝)

(河田 真喜子)