『凶悪』山田孝之、白石和彌監督舞台挨拶(2013.9.6 なんばパークスシネマ)
(2013年 日本 2時間8分)
監督:白石和彌
原作:新潮45編集部編『凶悪−ある死刑囚の告発−』新潮文庫刊
出演:山田孝之、リリー・フランキー、ピエール瀧、池脇千鶴、白川和子、吉村実子
2013年9月21日(土)~新宿ピカデリー、大阪ステーションシティシネマ、なんばパークスシネマ、神戸国際松竹、T・ジョイ京都他全国ロードショー
公式サイト⇒http://www.kyouaku.com/
(C) 2013「凶悪」製作委員会
~「パーティーの前には絶対に観ないで!」
山田孝之、破壊力のある主演作『凶悪』を語る~
凶悪そのものの犯人像に肉薄する一方、ふとしたきっかけから事件にとりつかれたように真実の追求に執念を燃やす記者と、その目に光る熱意を超えた危うさが脳裏に焼き付く。実話をもとに、闇に葬り去られた犯罪を暴いた新潮45編集部のベストセラーノンフィクション「凶悪-ある死刑囚の告発-」 を『ロストパラダイス・イン・トーキョー』の白石和彌が映画化。未解決事件を一人で調べることになった記者と、事件を告白した死刑囚、死刑囚が復讐を訴える通称「先生」死の錬金術師の3人が事件の全貌と共に交錯する。お金が人を凶悪に駆り立てる現代社会が露わに映し出されると共に、3人がお互いの運命を左右していく様はスリリングで、人間のエゴのぶつかり合いにも映るだろう。
本作の劇場公開に先駆け、なんばパークスシネマで開催された有料上映会では主人公の雑誌記者藤井役の山田孝之と白石和彌監督が舞台挨拶に登壇。満席の客席横通路から観客前を通って登場したゲスト二人に、最初から場内の熱気は最高潮となった。本年度屈指の骨太な社会派エンターテイメント作品『凶悪』の舞台挨拶の模様をご紹介したい。
(最初のご挨拶)
山田孝之(以下山田):結構ドシンとくる作品なのですが、映画として楽しんでもらって、この映画には今社会が抱えている問題点がすごく多く提示されています。そういうところを観て、感じて、答えは出なくてもいいので、そういうことを考えるのが大事だと思います。考えるきっかけになればいいなと思っています。
白石和彌監督(以下監督):確かに観終わった後すっきりすることは何一つないです。ただ、映画の力は観た後すっきりすることがそんなに必要なのかと思っているところがあります。そういう意味では、今なかなかこういう映画が邦画の中ではないので、今まで観たことのない映画体験ができるのではないかと思っています。よく「観終わった後おもしろいと言いづらい」と言われるのですが、いや面白がっていいんです世と言いたいです。今日はありがとうございます。
━━━脚本を読まれて、一番感じたことは何ですか?
山田:一番というのは難しいですね。いろいろとありますから。あくまでもフィクションで、映画としてすごく面白いし、藤井というキャラクターが最初から最後まで、人としてどうなっていくのかという変化をすごく意識しましたので、その点も観てもらいたいです。この後、食事とかタイミング悪く誕生日パーティーがある人には本当に申し訳ないですが、今まで宣伝期間の間に「パーティーの前には絶対にみないでください」と注意をしてきたので、その後友達関係がどうなろうとあなた方の責任です(会場笑)。そのぐらい破壊力があるので、すごく面白いですし、意味がある作品ですし、今日はタダですし。 <有料上映会と知り>あ、ちょっと態度を改めます(会場爆笑)。試写会かと思っていました。すいませんでした。
━━━観終わった後、お友達と話を深めていただくといいですね。
山田:そうですね。こういうものを観た後で、ちゃんと話ができる関係性こそ、大事な関係だと思います。
━━━撮影のエピソードは?
監督:リリー・フランキーさんは普段から自然体で飄々とした人なのですが、自分がやる役を「こいつ、ひどいですよね。でも淡々と面白おかしく殺せばいいですよね」と、現場でもそんな感じだったんです。でも撮影がだいぶん終わりかけたとき、「監督、昨日飲みに行ったんですけれど、マスターに『そいつぶっこんじゃえよ(殺しちゃえよ)』と言ってたんだ」と聞かされ、リリーさんでもそれだけ入り込んでいらっしゃるんだと思いました。
━━━リリー・フランキーさんとピエール瀧さんは仲がいいそうですね。
監督:20年来のお付き合いで、よくお酒を飲んだりされているそうです。撮影中も、こちらで人を殺しながら、休憩になると控え室に行って、二人で「動物の森」をやっていたそうです。
山田:僕も誘われました。 ゲームには興味がなかったのですが、一歩引いて見てみると、リリー・フランキーさんとピエール瀧さんに「動物の森」を勧められるのはすごく面白い状況だなと思って、迷いはしましたね。
━━━撮影のとき、お二人とは離れていたのですか?
山田:いえ、三人で大部屋だったので、くだらない話をしたり、ちょうどそのとき現場でAmazonでWii Uを買ったので、「山田くんも一緒にドラクエ10やろうよ、買いなよ」と言われて。一日渋って、翌日の面会室のシーンを撮影しているときにそんな話をしたのですが、再びAmazonを見ると値段が上がっていたんですよ。ピエール瀧さんには「だから言ったじゃん、早く買わないとまた値段が上がるから、買いな」と言われてWii Uを買ったわけです。でも連絡先を交換してやろうよと言われたけどまだ一回もやっていなくて、家のインテリアになっています。
━━━一緒に演じるという意味では、リリー・フランキーさんやピエール瀧さんと共演するのは初めてですか?
山田:お二人とも共演するのは初めてです。今までいろいろな作品でいろいろな役者さんと共演した中で感じたことがない新鮮なものがありました。
━━━女性陣では池脇千鶴さんと共演されましたが、いかがでしたか?
山田:楽しかったです。芝居をやっていて、興奮しましたね。「あ~楽しい、あ~!」みたいな。
━━━大阪は山田さんにとってそんなになじみはないですか?
山田:今日は日帰りですが、大体こういうプロモーションは泊まりで、知り合いがいるので飲んだり、ミナミを歩いたこともあります。たこ焼き~とか。
━━━やはり大阪といえば、たこ焼きですか?
山田:あまりそういうのは好きではないのですが、プロモーションで来たとき、気を遣ってたこ焼きやお好み焼きを出してくれたりすると食べてしまうし、そうするとまた違うたこ焼きも食べたくなってしまう。結局、「大阪=たこ焼き」みたいになってしまうんですね。
監督:僕も仕事で大阪に何ども来たことがありますが、食べるのは串カツですね。ソース二度づけ禁止は大阪で教えてもらいました。
━━━では、最後のメッセージをお願いいたします。
監督:凄惨な事件を描きつつも、これぞエンターテイメントというつもりで作りました。確かに観終わったあと、観始めるときと自分の感情が違ったところに行くかと思いますが、その感情をどこに置いたらいいか、皆さんも観終わった後考えてみてください。今日は、ありがとうございました。
山田:人それぞれ好みがあるので、この映画を観て合わない人はいると思います。それで「これはあまり・・・」と言われたら、もしかしたらこの映画が合うかもしれない人がその評判を聞いて観に行かなくなることが出てくるかもしれません。好みが合わなければ心に留めておいて、もしかしたら好きかもという人には勧めていただけるとありがたいですね。本当にこういう作品だからこそ、多くの人に観てもらいたいので、どうかよろしくお願いいたします。
(江口由美)