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『爆心 長崎の空』日向寺太郎監督インタビュー

bakusin-550.jpgbakusin-s1.jpg『爆心 長崎の空』日向寺太郎監督インタビュー
(2013年6月11日(火)大阪、ホテルイルモンテにて)
(2013年 日本 1時間38分)
監督:日向寺太郎
出演:北乃きい、稲森いずみ、柳樂優弥、佐野史郎、杉本哲太、宮下順子、池脇千鶴、石橋蓮司
2013年7月13日(土)~岩波ホール、7月20日(土)~なんばパークスシネマ、テアトル梅田 他全国公開

公式サイト⇒ http://www.bakusin-movie.com/
(C)2013「爆心 長崎の空」パートナーズ

「長崎の街に魅せられた。一瞬にして灰になった街の今と昔をつなぐ母娘三代の物語に、今生きていることはどういうことと向き合う。そんな思いが詰まっています」

黒木和雄監督(故人)の助監督を務めた日向寺太郎監督(48)が実写版『火垂るの墓』以来5年ぶりに撮った映画『爆心 長崎の空』(7月20日公開)が完成、11日来阪PRでインタビューに応えた。最後まで戦争にこだわった師・黒木監督同様、被爆地・長崎を舞台にしているが、今作は北乃きい主演の現代劇。「入り口を変えて」現在から過去をあぶりだすアプローチに監督の新境地がうかがえた。


bakusin-2.jpg―――ドキュメンタリーのようなタイトルだが、テーマは長崎の街だった。
日向寺太郎監督:俳人・金子兜太(とうた)さんのドキュメンタリー撮影で訪れた長崎に魅せられた。金子さんも「創作意欲を刺激された」と話しておられたが、長崎は迷路のように入り組んだ坂道と路地、中華街と異国情緒、隠れキリシタンと何よりも一瞬にして廃墟になった町であることに強く惹かれた。長崎をもっとよく知りたいと、本を読みあさるうち、青来有一氏の小説「爆心」に出会い、映画化を申し込んだ。1年半改稿を重ね、途中、脚本家・原田(裕文)さんと2人で長崎を2週間訪れ、綿密なロケハンも出来ました。 

―――原作者は快諾?
日向寺太郎監督:許可はすぐもらいました。原作と映画が違うことを分かっている方で、映画化はオーケーだけど言外に「原作と拮抗する映画を」という作家として主張するニュアンスを感じました。

bakusin-3.jpg―――原作は6つの短編集になっている。
日向寺太郎監督:6編とも素晴らしいんですが、中でも被爆者の両親が孫を失う「鳥」と、子供を失った親の話「貝」に惹かれ、それを軸にして組み立てた。原作の2家族をひとつにし、子供を亡くした父親を母親(稲森いずみ)変えました。娘の女子大生・清水(きよみ=北乃)は映画オリジナル。試行錯誤しました。脚本家(原田裕文)とはこれまでで一番よく話し合った。やりたいことを全部分かってくれた。
祖母・瀧江(宮下順子)と父・良一(石橋蓮司)は孫の死を「神の思し召し」と考え、その娘・砂織(稲森)は子供を亡くした心の傷を癒せないままでいる。清美も含めて三世代にわたる母と娘の物語になりました。

―――脚本執筆中に長崎を訪れたのは?
日向寺太郎監督: (沢田慶)プロデューサーから出来るだけ長く長崎にいたらいい、と言われて、脚本家と2週間、長崎にいました。町をつぶさに見られた。脚本に具体名を入れることが出来た。フィクションだから違っていてもいいんですけどね。楽しい時間でした。

bakusin-4.jpg―――長期滞在で一番感じたことは?
日向寺太郎監督:高台から見たら「66年前(撮影時)はまったく違った風景だったんだ」と思ったら特別な感慨がわいた。今ここにいることが不思議な気がしました。

―――女子大生清水(北乃)は母親(稲森)とケンカして帰宅したら母親が心臓発作で急死。恋人とホテルにいる時に母親からの電話がかかっていたのに出なかったことを悔やむ。
日向寺太郎監督:脚本完成前に東日本大震災を経験した。宮城県仙台市で高校まで過ごしたので衝撃は大きかった。地震、津波のあとに原発事故があって気が滅入った。長崎と福島、原爆と原発…。今、『爆心  長崎の空』を撮るとはどういうことか、と考えた。
「急死」はひとつのテーマでしたね。死ぬと思わなかった人があっけなく死んでしまう。生と死をどうしようもなく意識しました。清水には母親の死に何にも責任がないのに「自分のせい」と思ってしまう。 

bakusin-s2.jpg―――『火垂るの墓』から5年ぶりだが、やりきった。
日向寺太郎監督:『火垂るの墓』をやったことが大きかった。生きるとはどういうことか、という根源的な問いに向き合わざるを得なかった。未来は私たちの現在によって作られる。この映画にはそんな思いが詰まっています。
(安永 五郎)