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『東京家族』舞台挨拶

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『東京家族』舞台挨拶

(2012年12月19日(木)御堂会館にて)
ゲスト:山田洋次監督(81)、橋爪功(71)、吉行和子(77)

 

(2012年 日本 2時間26分)

監督:山田洋次

出演:橋爪功 吉行和子 西村雅彦 夏川結衣 中嶋朋子 林家正蔵 妻夫木聡 蒼井優

2013年1月19日(土)~全国ロードショー

★作品紹介はこちら

★公式サイト⇒ http://www.tokyo-kazoku.jp/
(C)2013「東京家族」製作委員会



~時代の変化を背景に、日本人の心を描き続けてきた山田洋次監督の集大成~

 

tokyokazoku-s5.jpg 山田洋次監督といえば『男はつらいよ』シリーズで有名だが、『家族』(1972年)『息子』(1991年)『母べえ』(2008年)『おとうと』(2010年)などと、家族の絆をテーマにした作品も多い。寅さんシリーズでも、とらやの家族が寅さんを心配する様子が基本となって、毎回寅さんの恋愛模様が展開される。久しぶりに帰ってきたのにケンカして、居辛くなって出て行く寅さんを妹のさくらが駅のホームで見送るシーンが好きだ。世間並の幸せに浸れない渡世人の兄を心配する肉親ならではの情愛にあふれ、思わず共感して泣けてきた思い出がある。そんな『男はつらいよ』シリーズは、日本の風物詩となって、「寅さんを見ないと盆も正月も来ない!」と言われたほどで、毎年劇場へ行くのが楽しみだった。

 幸せって何だろう? 時代の変化と共に変わる家族の形態・・・人と接することを拒み、語り合うことも、ケンカすることもなくなり、孤立していく人々。『東京家族』は、小津安二郎監督の『東京物語』を現代に置き換えてはいるが、今まで日本の家族を見つめてきた山田洋次監督の特色がしっかりと織り込まれている。家族それぞれの心情をより露わにし、思いやる気持ちの貴さを浮き彫りにしている。山田洋次監督の誠実で優しい想いに心が洗われるようだ。

tokyokazoku-1.jpg 山田洋次監督の50周年記念作品。その集大成ともいえる『東京家族』の試写会の舞台挨拶に、この秋文化勲章を受章したばかりの81歳の山田洋次監督は、71歳の橋爪功と77歳の吉行和子と共に登壇。日本が誇る巨匠の本作に込めた思いが語られた。


――― 最初のご挨拶
山田監督:お寒い中、よくおいで下さいました。ありがとうございます。一昨年の秋から準備しておりましたが、クランクイン直前に東日本大震災が起こり、撮影延期となりました。脚本も練り直し、今年の3月から撮影を開始し、今日の大阪での試写を迎えることができて、感慨感無量です。

tokyokazoku-s4.jpg橋爪:私は役者としての経歴は長いのですが、このような試写会のキャンペーンは初めてでして、ちょっと照れくさいです。私は生まれも育ちも大阪は東住吉区でして、ここで標準語でしゃべると怒られそうですね(笑)。私が子供の頃は、ヨーロッパやアメリカ映画が一度に入ってきて映画が大量に公開され、映画館に入りびたりでした。そんな少年時代を過ごした私は、スクリーンというより銀幕という言葉がふさわしいと思ってまして、その銀幕に自分の顔が映るのは、こっぱずかしいです。皆様にご覧頂くのは不安、是非優しいお気持ちでご覧頂きたいと思います。

吉行:すっかり冬となってまいりましたが、今日はお寒い中ありがとうございます。山田監督も橋爪さんも大阪出身なんで、ちょっと肩身が狭いです。私が演じております富子はとても心が広くて優しい役でしたので、撮影中は毎日優しい人でいられました(笑)。どうか優しい気持ちでご覧ください。

tokyokazoku-s8.jpg――― 50周年を迎えたお気持ちは?
山田監督:ただ長くやっているだけでして、そんなに威張れることではありません。巨匠という人はそんなにいっぱい作らないものなんですが、僕はちょっと作り過ぎだなと思っています。「長生きも芸のうち」と言いますが、私はこうして長生きをして、沢山映画を撮ることができただけです。

――― 小津安二郎監督への思いは?
山田監督:小津さんの『東京物語』は世界のベスト1に選ばれるような大傑作ですが、60年前に家族が消えていくのではという不安を預言しているような映画ですね。そして現代、小津さんの預言が当たっているかのように家族の絆が希薄になってきて、日本人がどのような思いで親や兄弟に対しているのか、小津さんの頃とはまた違った家族の現状が見えてくるのではないかという気持ちで作りました。

――― 橋爪さんと吉行さんの夫婦役は?
tokyokazoku-s3.jpg橋爪:実は吉行さんと夫婦を演じるのは3度目でして、「吉行・橋爪夫婦三部作」と勝手に呼んでいるんですけど(笑)。舞台でも何度かご一緒したことがあり、ある時、僕がアメリカのおばあさんの役で、吉行さんは日本から来た留学生のお嬢ちゃんの役というワケの分かんない役でした(笑)。俳優同士で遠慮はなく、最初妻役が吉行さんと聞いて、「は~良かった!」と思いました。何も心配せずに、そのまんま夫婦になれたという感じです。

吉行:そんな意味では「愛してるんですよ~」(笑)。1回目も長年連れ添った夫婦役でして、長~いこと一緒にいる感じです。休憩中に橋爪さんがだらけて足をさらけ出していたのですが、それがあまりにも白くて綺麗な足だったので、思わず「ちょっと触るわよ~」と言って触らせてもらいました(笑)。橋爪さんも平気な顔で触らせてくれました。そんな風に、私達は信頼しきって、愛し合ってきたんですよ。

――― “家族の絆”とは別に、もうひとつのテーマ“故郷”については?
山田監督:寅さんシリーズで28年も日本中をあっちこっち撮影して回り、いわゆるシャッター通りになっている所が多くなっています。今回は瀬戸内の島ですが、そこも同様で、胸を痛めてきました。今後、10~20年後が心配です。どういう解決策があるのか・・・今日に至っています。そういう寂しい故郷でひとり暮らす主人公。そこに課題が残されているのではと考えて頂きたい。

tokyokazoku-s2.jpg――― 観客へのメッセージをお願いします。
山田監督:皆さんが楽しんで満足して頂けるかとても不安です。試写会というのは判決を待っているようで、有罪判決だけは受けたくないなと思っています。様々な年齢の方がそれぞれに思いを抱いて、自分たちは幸せなんだろうか? 幸せな未来に向かっているのだろうか? というようなことを考えて頂ければ幸いです。どうぞ楽しんでご覧ください。本日はどうもありがとうございました。

(河田 真喜子)

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