『カミハテ商店』
(2012年 日本(北白川派)1時間44分)
監督:山本起也
プロデューサー:高橋伴明
出演:高橋惠子、寺島進、あがた森魚
2012年11月10日(土)~ユーロスペース、11月24日(土)~京都シネマ、12月8日(土)~第七藝術劇場、12月15日(土)~神戸元町映画館、他全国順次公開
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(C)北白川派
京都造形芸術大学の映画製作集団「北白川派」の第3作「カミハテ商店」が完成し29日、上映予定の大阪・十三の劇場で山本起也監督、プロデューサーを務めた高橋伴明監督、主演の高橋恵子(57)がPR会見を行い“自殺の名所”で雑貨屋を営む女性を描いた風変わりな映画をアピールした。
―――北白川派の第3作の意図は?
高橋伴明監督:山本監督になった以上、自分には絶対撮れない映画、自分が見てみたいものを作ってもらいたいと思った。
―――高橋恵子さんは23年ぶりに主演ですが?
高橋伴明監督:当初はもっと老人で達観した人を考えていた、もうちょっと生身の人、人生途中のおばさんがいいかな、ということで「うちのカミさんはどうか」と山本監督に言った。
―――最初にこの役を聞いた時は?
高橋恵子: 内容を知らずにオーケーした。うれしかった。(伴明監督の前作)「MADE IN JAPAN こらッ!」の時にも声かけてもらったけど、舞台と重なって出られなかったので。
山本起也監督: (恵子さんの起用は)早い段階で聞いたが、恵子さんで映画撮ってヘタなこと出来ない、と考え込んだ。最初は70歳ぐらいのおばあさんと思っていた。ひと晩考えてお願いします、と。
―――脚本読んでどうだったか?
高橋恵子: わあ難しいな、と思ったけど(主役の)千代さんが描かれてない分、やりがいがあるなと思った。
―――恵子さんに「おばあちゃん」というセリフもあったが。
山本起也監督: 一番違和感があったのは恵子さんかな。映画の最初の方で若い女性2人が言うんだけど、おばさんぐらいの意味ですね。
―――北白川派の映画は授業の一環ですか?
山本起也監督: 学生の原案を伴明監督が持ってきた。
高橋伴明監督: (監督は)ドキュメンタリーの人なんで、自殺志願者を見送る人を客観的に捉えられる、と思った。
山本起也監督: ドキュメンタリーも劇映画も、映画の山への登り方が違うだけで、私は大まじめに劇映画を作ったつもりです。千代は、どうしてこんなについてないんだろうという女ですね。
―――千代というキャラクターについて?
高橋恵子: 撮影しながらも(千代は)どういう気持ちで住んでいるのかな? と想像しながら彼女の闇の部分に入っていく感じで、胃が痛くなった。手掛かりがなく、想像するしかなかった。(冒頭に描かれる)お父さんの自殺が大きかったでしょうね。母の死で本当に一人になって、カミハテ商店をたたむのか、いややっていこう、前向きなものではなくて、自分の中に死ぬことは出来ないという鬱陶しい思いがずっとあった。でも、こんな風に生きていくんだ、ということを千代さんと一緒に探していって、ここで生きていくんだと覚悟が決まった。牛乳配達の若者の自殺を止めたりしてちょっとした変化はありますが。
―――断崖絶壁の絶景には魅せられるが・・・?
山本起也監督: 一目ぼれですね。現場ではテンパってたんであまり覚えてないけど、千代が父を見送った時の角度でずっと押した。そのこだわりは強かった。
―――冬の景色も春の風景もある。撮影日数は?
山本起也監督: ちょうど3週間。インの日はドカ雪で中止になったけど、雪の実景を撮れた。それがだんだん春になっていって、最後の日は春の絵が撮れました。 伴明監督 この映画には映画の神様がついていた、と思う。
―――北白川派の映画は、伴明監督の「MADE IN JAPAN こらッ!」の家族崩壊に続いて自殺願望の映画になったが・・・?
高橋伴明監督: そうですね。絶対ほかでは撮れない映画を作りたい。4本目(林海象監督「弥勒」)がもう出来ていて、5本目のあとは学生から脚本、監督を公募したけど、意外なことに応募が少ない。若い人は「責任を取りたくない」という気持ちが強いようだ。
山本起也監督: 映画は団体戦なんで、今の人は苦手なのかもしれない。一人でやるのは好きみたいですがね。映画館で、大勢で映画を見るということも知らない世代ですからね。
(安永 五郎)