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『おだやかな日常』第17回釜山国際映画祭新着レポート

odayakana-pusan-550.jpg『おだやかな日常』第17回釜山国際映画祭新着レポート
odayakana-pusan-1.jpg(2012年 日本 1時間42分)
監督・脚本・編集:内田伸輝
出演:杉野希妃、篠原友希子、山本剛史、渡辺杏実、寺島進
12月22日(土)よりユーロスペースほか全国順次公開 ©odayaka film partners

 10月5日(金)、第17回釜山国際映画祭にて、日本映画「おだやかな日常」がワールドプレミア上映され、内田伸輝監督、主演兼プロデューサーの杉野希妃、同じく主演の篠原友希子が舞台挨拶をした。
 今回の釜山国際映画祭出品で本作は世界的にも注目を集めており、国際的に影響力のあるSCREEN INTERNATIONAL紙の「今年の釜山国際映画祭で最もホットな映画10本(The power of 10)」の1本として紹介されている。5日の上映はチケット発売開始直後に完売、チケット売り切れを嘆く声も多く、関心の高さが伺えた。
 上映後のQ&Aで、熱心な観客から質問が以下の通り相次ぎ、登壇者が答える度に満席の客席から拍手が何度も起こった。


odayakana-pusan-uchida.jpg━━━二組の夫婦の在り方を対照的にしたのは何故か?
内田:震災以降、考え方の違いから離婚するケースが増えている。また逆に震災をキッカケに絆を深めて結ばれる夫婦も多くいる。サエコ夫婦の場合、震災前からこの夫婦の関係は冷えきっていたのだが、震災をキッカケにそれが露になった一つのケースでした。きれいなものだけを撮るのが映画ではないと私は思っています。

━━━日本の人は、放射能汚染に無関心なのか?
内田:東京で汚染を気にしている人の数は、表面的には、かなり少ないように見えますが、ネットなどの匿名の人の書き込みなどを見ると、どこかで不安に思っている人は多くいます。無関心な人と、そうでない人の数は同じくらいだと思います。最近では、総理官邸前で原発再稼働反対デモの数も増えて来ていて、声を出す人の数は徐々に増えているような気がします。

odayakana-pusan-sugino.jpg━━━演技的にも見せ場が多く、女優としてこの作品に挑戦するのには相当な覚悟が必要だったと思うが、何故オファーを受けたのか?
杉野:監督から企画のオファーを受けて、プロデューサーとしても是非一緒にこの作品を作りたい、作らなければいけないと思いました。この震災をキッカケに、日本は外に、海外に目を向けて行くと思いましたが、どんどん閉鎖的になって行く事に何とかしなければという気持ちでした。
篠原:きれいなものだけではなく、人間のネガティブな部分もちゃんと演じられてこそ役者だと思うし、そういう作品に心惹かれます。

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━━━監督からはどのような演出をされたのか?
 杉野:台本は完璧に100ページくらいありましたが、現場では全て忘れて本当に感じたことだけを言葉にしてほしいと言われました。役者として試されているような感じが、とてもエキサイティングで面白いと思いました。
篠原:監督はもっとこうしてああしてと細かく言うタイプではないです。感情を爆発させたり、抑えたりと、自分が意識的にコントロールをしたというよりは、監督がうまく導いてくれたように思います。

 


odayakana-1.jpg【ものがたり】  2011年3月11日、東京近郊。同じマンションの別の部屋に住むユカコとサエコ。その日もほかの日と同じ日常が続くはずだった。地震とその後起こる放射能事故がなければ通路で挨拶を交わすだけの二人の人生が、思いもよらぬ形で交錯していくー―。福島原発から漏れだす放射能は、ユカコの生活を少しづつ蝕んでいく。日常に入りこんでくる放射能を遮断できない苛立ちと不安は、夫との関係に揺らぎをもたらす。一方、震災直後に別の女性の元へ行ってしまった夫を頼ることもできず、ただ一人、子供を守らなければならないサエコは、娘の通う保育園での放射能事故の対応で徐々に周囲から孤立していく。やがてサエコはその不安からある事件を起こしてしまうのだった…。

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