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『僕等がいた』 三木孝浩監督、春名慶氏インタビュー

bokura-k1.jpg (2012年日本 前篇:2時間3分 後篇:2時間1分)
監督:三木孝浩
原作:小畑 友紀『僕等がいた』小学館フラワーコミックス
出演:生田斗真、吉高由里子、高岡蒼佑、本仮屋ユイカ、
    小松彩夏、柄本佑、比嘉愛未、須藤理彩、麻生祐未他
前篇2012年3月17日~
後篇4月21日~全国東宝系ロードショー
公式サイト⇒http://bokura-movie.com/

累計1000万部を突破した大人気恋愛コミックを映画化した『僕等がいた』の三木孝浩監督と春名慶企画プロデューサーに二部作に仕上げた意図や、ブレのない恋愛映画になった秘訣についてお話を伺った。
 


 ━━━前篇での釧路の風景が印象的だが、撮影で工夫したところはあるか。
 三木監督:釧路は霧が多い町で、晴れているけれど白く霧がかかっている空気感がむしろおもしろいと思いました。前篇は釧路が舞台ですが、思い出を思い返すときの少し美化された感じとか、心の中にある映像のイメージを出せればと、少し明るく撮れるように工夫しました。 他の北海道の場所とは違う北欧っぽさ、ちょっとしっとりした感じが、キラキラした物語の中にある少し影の部分にかなりフィットしていた気がします。

 bokura-1.jpg━━━最初から二部作にするつもりだったのか。
 春名:本音を言うと三部作にしたいぐらいでした。原作で16巻分あるエピソードを、単発の2時間前後の器にエピソードを入れても表層をなぞったダイジェスト版になるのは否めません。珠玉のエピソードや恋愛の機微や深い部分を描きたいというのがまずありました。

 原作自体も8巻で矢野が七美が別れて東京に行き、その後いきなり大人になって時間のブランクがありました。高校時代の部分 はいわゆるボーイミーツガールの純愛ものだと思っていて、9巻目以降が『僕等がいた』ならではのヒューマンストーリーなのです。これをどう映画で描くかを 考えたときに、原作にあるポンと大人に飛んだ時間のブランクそのものを映画にしてしまおう。そこで一旦区切りをつけて、数週間空けて上映するという距離感 が、絵のタッチそのものや、あのキラキラから一気に影の部分に光を当てることになるのです。

 今回Mr.Childrenを主題歌に起用したのも、眩しさと切なさ、もどかしさとやるせなさ、といった青春の4要素が彼らの歌詞の世界観に全部詰まっていたからなんです。
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 ━━━二部作を興行面で説得するのに苦労した点はあるか。
 春名:5~6年前ならこの手のラブストーリーを二部作で上映するの はかなりのリスクがあると考えたでしょうが、邦画が成熟市場になってきてシネコンでプログラミングを自由に組み立てられる。そうすると、後編を公開してい ても、前編も劇場でかけていただける。そういう風に一気見することもできるサービスも新しい邦画の見せ方になるのではないでしょうか。


 ━━━年齢を問わずに感動できる作品だと思うが。
 三木監督:少女マンガだし、女性目線のファンタジーと思って作って はいますが、僕が高校時代を思い返して心を重ねた瞬間とか思い出に残っている色々な場面を全編に散りばめたつもりです。学園祭シーンや夏休みのお祭り、花 火や、放課後の屋上や、そこは世代を問わず誰でも思い出の端っこにその風景が思い浮かぶ映像ではないかと思うので、僕があの頃を思い出したように上の世代 の方にもひっかかってくれるのではなかと思う。

 bokura-k2.jpg━━━原作との違いはどこにあるのか。
 三木監督:映画も第一部、第二部と原作を踏襲して作ってはいるけれど、原作は時制に沿って描かれています。で も今回は大回想録にすることが軸になる映画にしました。だから最初に大人の七美をだしているのが大きく原作と違うところではないかと思います。そうするこ とで、そこを通り過ぎてきた人にこそ、ひっかかって欲しい。あの頃を思い出して欲しいというつもりで作っていましたね。

 ━━━後半が面白いので、それを楽しむために前篇を見ておかないとその感動は倍増しないのではないか。
 三木監督:それです(笑)。もう一度高校生からスタートして、前篇であの頃を思い出してもらって、その頃の思 い出が暖まっているうちに後篇を見てもらう。大人になったときに、そのとき好きになった想いを今どう抱えて生きていくのか、どう向き合うのかを後篇で一番 描きたかった部分です。まさしく後篇のその感じを見てもらいたいからこそ、前篇から二人の長い恋愛を体感してもらって彼らの苦悩を感じてもらえればと思い ます。


 ━━━二人の恋愛を描くのに、全くブレないように作っていると感じるが。
 三木監督:原作はエピソードが豊富にあって、竹内との三角関係のエピソードもたくさんあるのですが、映画として作る上でこの二人の恋愛にフォーカスしたいという共通のイメージがあったので。

bokura-3.jpg 春名:編集でかなり竹内のエピソードを減らしています。それがあれば原作ファンはとても喜ぶし、話が肉厚になりますが、一本線を通そうと決めました。
 七美が会えてもいないのにどうして好きでい続けられるのか。作っている自分自身にもどうやって納得させるのか脚本づくりや編集の中でずっと考えていたこと です。最近思ったのは、想い続ける原動力は記憶にあるのではないかと。それは前後篇で分けたことが功を奏していると思います。鮮烈な矢野とのまばゆい思い 出がある日ぽんと立ち消えてしまう。それによって矢野との思い出がより鮮明に刻印され、それをずっと持ち続けているからこそ愛し続けるエネルギー源に七美 はしていた。そういう物語だと納得しています。

 (キャンペーンの)壇上で監督もおっしゃってましたが、逆バリのキャスティングといってパブリックイメージとは逆のキャスティングをしました。生田斗真は 魅せる芝居で、三枚目でふわっと入ってくるキャラクターですが、今回は傷ついた王子様でとお願いしました。吉高由里子には「今まではコブつき、ワケありと いう役が多かったけど、今回あなたにそういった武器はあたえません。」と最初に言いました。王道のヒロインをやってほしかったんです。

 bokura-2.jpg━━━前篇最後、駅での別れのシーンの二人の表情がとてもよかった。
 三木監督:今回役者はすごく難しかったと思うんですよ。前篇を先に撮ってから、東京で後篇を撮ったのですが、どうしても時間軸が前後することもありました。それでも そのときどきのキャラクターの想いをちゃんと演じ分けて、見えないところでプランニングしてくれました。編集していると逆にこちらが気づかされて、主演の 二人は本当に素晴らしかったですね。


恋愛の喜びも苦しみも、真っ直ぐに伝わってくる本作を作ったお二人だけあって、作品への想いや伝えたいことが溢れている印象を受けた。邦画の恋愛映画史 上初となった二部作で上映することによって、より原作の世界観を体感できる作品に仕上げた三木孝浩監督。「初々しい恋愛を通り過ぎた大人にこそ見てほし い」というその言葉は、大人にも懐かしさを甦らせる珠玉のラブストーリーにふさわしい。過ぎし日に戻って、美しく輝く恋を思い返せる静かな感動に心揺さぶ られるだろう。
 (文:江口由美、写真:河田真喜子)

(C)2012「僕等がいた」製作委員会 (C)2002小畑友紀/小学館
 

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