「京都」と一致するもの

◆主演女優賞に高橋惠子さん(出席)、主演男優賞に井浦新さん(出席)
◆『かぞくのくに』(作品賞、監督賞・ヤン・ヨンヒ監督)、受賞記念上映
◆新作プレミア『オース! バタヤン』特別上映(出演の浜村淳さん舞台挨拶)


「おおさかシネマフェスティバル2013」開催
~ 映画ファンのための映画まつり ~

高橋惠子さんが、井浦新さんが、ひなまつりの日「おおさか」の映画祭にやってくる!

大阪の春恒例の「おおさかシネマフェスティバル2013」が3月3日(日曜日)に大阪歴史博物館で開催される。
「映画ファンのための映画まつり」として関西の映画ファンに広く支持されてきた本映画祭は、4年前から「大阪アジアン映画祭」と統合し、日本映画のお祭りとアジア映画の祭典という一大イベントとして開催。
 前身の「おおさか映画祭」以来の恒例行事であり、当フェスティバル最大のイベント「2012年度ベストテンおよび個人賞」が下記の通り決定した。
このベストテンは、年間200本以上観賞した方々からなる投票委員による投票をもとに選考委員会によって決定されたもので、2012年1月から12月までに関西で公開された映画を対象とし、個人賞は優れた技量を有するとともに「大阪および関西」ゆかりの方であることが判断材料となっている。
主演男優賞に『かぞくのくに』の井浦新、主演女優賞に島根県・隠岐島を舞台にした京都芸術造形大学ほか製作の『カミハテ商店』で23年ぶりに映画に主演した高橋惠子のほか、監督賞・ヤン・ヨンヒ、脚本賞・西川美和、撮影賞・木村大作、音楽賞・谷川賢作、新人監督賞・山本起也など、大阪ならではの特色ある映画祭だ。
 
また、受賞記念として午前中にベストテン1位(作品賞)、監督賞のダブル受賞となったヤン・ヨンヒ監督作品『かぞくのくに』を上映。表彰式後には大阪・鶴橋で行われた歌手・田端義夫のライヴ(司会・浜村淳)をもとにした異色のドキュメンタリー『オース! バタヤン』の特別プレミア上映を開催。
実行委員会は「大阪・関西の映画ファンが集う熱い場になれば!」と話している。


おおさかシネマフェスティバル2013開催概要
ベストテン発表&表彰式および受賞記念作品と新作プレミア上映、多彩なゲストを迎えて開催する映画のお祭り!

■日時:2013年3月3日(日)10時スタート(9時30分開場)
■会場:大阪歴史博物館4階講堂(大阪市中央区大手前4-1-32 TEL.06-6946-5728) 
   地下鉄谷町線・中央線「谷町四丁目駅」2号、9号出口(NHK大阪放送会館隣)
■料金:1日通し券 前売2,800円/当日3,000円(※全指定席)
■チケット発売:2月9日(土)10時~/Pコード550-785
(電話予約:0570-02-9999 HP:
http://pia.jp/t/oaff/
■映画祭公式ホームページ:
http://www.oaff.jp
■スケジュール
09:30~ 開場
10:00~ 開演(委員長挨拶)
10:05~ 作品賞、監督賞受賞記念『かぞくのくに』(ヤン・ヨンヒ監督)上映(100分)
11:45~ ヤン・ヨンヒ監督、井浦新、浜村淳トークショー (30分)
     (休憩45分)
13:00~ ベストテン発表&表彰式(~14:30予定)
     (休憩30分)
15:00~ 新作プレミア上映『オース! バタヤン』(95分)
     (終了16:35)


【ベストテンおよび受賞結果】

かぞくのくにnew.jpg■日本映画部門
1位 かぞくのくに
2位 ふがいない僕は空を見た
3位 鍵泥棒のメソッド
4位 夢売るふたり
5位 桐島、部活やめるってよ
6位 北のカナリアたち
7位 愛と誠
8位 苦役列車
8位 わが母の記
10位 終の信託

作品賞:アーティスト.jpg■外国映画部門
1位 アーティスト
2位 アルゴ
3位 レ・ミゼラブル
4位 ヘルプ~心がつなぐストーリー
5位 ヒューゴの不思議な発明
6位 人生の特等席
6位 ニーチェの馬
8位 別離
8位 少年と自転車
8位 ダークナイト ライジング

※日本映画部門は8位が、外国映画部門は6位と8位が同得票。

■個人賞(外国映画部門)
 監督賞     タル・ベーラ(ニーチェの馬)タル・ベーラ監督.jpg


 

 

 

 

 

 

主演女優賞:ミシェル・ヨー.jpg主演女優賞 ミシェル・ヨー(The Lady アウンサンスーチー ひき裂かれた愛)


 

 

 

 

主演男優賞:クリント・イーストウッド.jpg主演男優賞 クリント・イーストウッド(人生の特等席)
 

 

 

 

 

 

助演女優賞:エイミー・アダムス.jpg助演女優賞 エイミー・アダムス(人生の特等席)


 

 

 

 

助演男優賞:アーミー・ハマー.jpg助演男優賞 アーミー・ハマー(J・エドガー)

 

 

 


■個人賞(日本映画部門、受賞者コメント)                                                                                                                                                                                                                                 
 監督賞:ヤン・ヨンヒ.jpgのサムネイル画像【監督賞】◎ ヤン・ヨンヒ〔梁英姫〕(『かぞくのくに』)

●1964年、大阪生まれの在日コリアン2世、米国ニューヨーク・ニュースクール大学大学院メディア研究学科修士号取得。高校教師、劇団女優、ラジオパーソナリティを経て、ドキュメンタリーの世界へ。アジア各国やニューヨークでの取材活動後、NHKほかでテレビドキュメンタリーを発表。05年、自身の父を主人公に家族を描いたドキュメンタリー映画『ディア・ピョンヤン』を発表。ベルリン国際映画祭、サンダンス映画祭ほかで多数受賞し、06年日本と韓国で公開。09年、自身の姪の成長を描いたドキュメンタリー映画『愛しきソナ』発表。初の劇映画『かぞくのくに』(12年)はベルリン国際映画祭国際アートシアター連盟賞を受賞。
【受賞の言葉】故郷である大阪で評価を頂き感無量です。学生時代、授業が終わると制服のまま梅田や心斎橋の名画座に駆け込む少女でした。スクリーンと向き合いながら未知なる人生と出会い広い世界を知り沢山の勇気を貰いました。監督としてやっとスタートラインに立ったばかりです。これからも魂を込めて心を揺さぶるような作品をつくっていこうと思います。

主演女優賞:高橋恵子.jpgのサムネイル画像【主演女優賞】◎ 高橋惠子(『カミハテ商店』)
●1955年1月、北海道出身。小学校6年から東京・町田市で育つ。中学時代にスカウトされ、大映の研修所で演技レッスンを積み、70年春、中学卒業と同時に大映入社。同年8月公開の『高校生ブルース』(帯盛迪彦監督)で主演デビュー。続く『おさな妻』(70年、臼坂礼次郎監督)の大胆な演技で大映末期の看板スターに。71年、東宝移籍。東宝・日本テレビ共同制作の「太陽にほえろ!」にレギュラー出演。73年の熊井啓監督『朝やけの詩』の全裸で泳ぐシーンが話題を集めた。82年『TATOO<刺青>あり』で高橋伴明監督と知り合って結婚し、高橋惠子に改名、舞台などで活躍。代表作は増村保造監督『遊び』(71年)、同『動脈列島』(75年)、浦山桐郎監督『青春の門』(75年)など。89年『花物語』(堀川弘通監督)を最後に映画主演から遠ざかっており、『カミハテ商店』は23年ぶりの主演映画になる。
【受賞の言葉】23年ぶりにやらせて頂いた主演映画で、主演女優賞という名誉ある賞を受賞させて頂き大変嬉しく思っています。主演女優賞は私の役者人生で初です! これからもこの頂いた賞を励みに、何かを残せる表現者になって行きたいです。

主演男優賞:井浦新.jpgのサムネイル画像【主演男優賞】◎ 井浦 新(『かぞくのくに』『11.25自決の日 三島由紀夫と若者たち』)
●1974年9月15日生まれ、東京都出身。98年、是枝裕和監督の映画『ワンダフルライフ』に初主演。以降、映画を中心に、ドラマ、ナレーションや連載などで幅広く活動。『かぞくのくに』(12年、ヤン・ヨンヒ監督)で第55回ブルーリボン賞助演男優賞を受賞。最近の映画出演作に『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程』(07年、若松孝二監督)、『空気人形』(09年、是枝裕和監督)、『11.25自決の日 三島由紀夫と若者たち』(11年、若松孝二監督)など。今後は『千年の愉楽』(12年、若松孝二監督)、『弥勒』(13年、林海象監督)、『そして父になる』(13年、是枝裕和監督)、『ジ、エクストリーム、スキヤキ』(前田司郎監督)などの公開を控える。
【受賞の言葉】『かぞくのくに』『11.25自決の日 三島由紀夫と若者たち』、この2作品には特別な想いがありますので、合わせての受賞にとても価値を感じています。『かぞくのくに』はヨンヒ監督の人生そのものが作品となった映画です。監督の兄の象徴でもあるソンホ役で評価されたということは、監督のご家族や生き様を評価していただいたということでもあります。そこがなによりも嬉しく、ありがたい事です。 『11.25自決の日 三島由紀夫と若者たち』は、役者としての自分を息子のように育てて下さった、若松孝二監督の下で主演を任された映画。自分の代表作になる作品で、このような評価を頂き、監督も喜んでくれると思います。大きな土産話が増えました。ありがとうございます。 この2作品が、第8回大阪アジアン映画祭で日本からアジアにむけ、知って頂くきっかけになる事を心から感謝し、この時代に刻ませていただけた事を、光栄に感じております。

助演女優賞:松原智恵子.jpgのサムネイル画像【助演女優賞】 ◎ 松原智恵子(『「わたし」の人生(みち) 我が命のタンゴ』『私の叔父さん』)
●1945年1月、愛知県名古屋市出身。高校生時代に日活の「ミス16歳コンテト」に入賞、副賞としての撮影所見学がきっかけでデビュー。日活時代の60年代は主にアクション映画や青春映画のヒロイン役を務め、吉永小百合、和泉雅子とともに「日活三人娘」と呼ばれた。67年のブロマイド売り上げでトップになったこともある都会派の清純派スター。昨年は『私の叔父さん』(細野辰興監督)、『「わたし」の人生(みち)我が命のタンゴ』(和田秀樹監督)など3本に出演、『きいろいゾウ』(廣木隆一監督)が公開中。今も清純派の面影を残すイメージで熟年ファンにアピールしている。
【受賞の言葉】16歳で日活からデビューして52年、アクション映画や青春映画が多く賞には無縁でしたので、受賞を聞いた時は、正直驚きました。ここ3年程は『小川の辺』『私の叔父さん』『「わたし」の人生(みち) 我が命のタンゴ』『きいろいゾウ』と作品や監督に恵まれ映画に携わる楽しさを実感しております。今後も色々な作品にめぐり会えるよう頑張ってまいります。本当にありがとうございました。

助演男優賞:青木崇高.jpgのサムネイル画像【助演男優賞】◎ 青木崇高(『黄金を抱いて翔べ』『るろうに剣心』)
●1980年3月、大阪・八尾市出身。03年、映画『バトル・ロワイアルⅡ 鎮魂歌』(深作欣二監督)で本格的映画デビュー。08年、NHK朝ドラ「ちりとてちん」でヒロインの相手役の落語家・徒然亭草々役を熱演、10年、NHK大河ドラマ「龍馬伝」では後藤象二郎役を演じるため増量。翌年、三池崇史監督の『一命』には減量して臨んだ。昨年の『るろうに剣心』(大友啓史監督)ではハードなアクションシーンに挑戦し、『黄金を抱いて翔べ』(井筒和幸監督)では主人公らに敵対するチンピラ、キング役で注目を集めた。
【受賞の言葉】はじめて映画を観たのも、はじめて人を好きになったのも、はじめてフラれたのも、すべて生まれ育った大阪でした。経験や体験から生まれる芝居があるとして、それが今回の賞 に繋がっているならば、間違いなく大阪という土地のおかげなのです。今まで出会った人々に感謝しつつ、これから出会うであろう人々に期待しつつ、しっかりと邁進していく所存です。ありがとうございました。

新人女優賞:宮嶋麻衣.jpgのサムネイル画像【新人女優賞】◎ 宮嶋麻衣(『とめ子の明日なき暴走』)
●1986年2月15日、岐阜県恵那市出身。岐阜県立中津商業高校では声優志望で演劇部に所属。卒業後、名古屋ビジュアルアーツ入学、NACに所属。07年、NHK朝ドラ「ちりとてちん」でヒロインを叱咤激励する親友・順子役を務める。11年は「カーネーション」で吉田屋の芸者・駒子役、現在放送中の「純と愛」ではストーカーにおびえる新婦役。吉浦敦博監督の長編劇映画デビュー作『とめ子の明日なき暴走』(12年)に主演。女性ストリートミュージシャン・山田とめ子が、ホームレスの少年スネオ(中嶋悠耶)と出会い、恋に落ちる姿を熱演。
【受賞の言葉】素晴らしい賞をいただきとても光栄です。吉浦監督の想い、ご一緒させていただいたスタッフ・役者の皆さんがいてくれたから私もこの役を演じることが出来ました。本当に皆さんのお蔭です。応援してくれている方々、私を選んでくれた方々に心から感謝申し上げます。

新人男優賞:五十嵐信次郎 (ロボットといっしょのもの).jpg【新人男優賞】◎ 五十嵐信次郎(『ロボジー』)
●1938年、東京生まれ。歌手のほか俳優、音楽プロデューサーとしても活躍。落語家としても精進を重ね、「ミッキー亭カーチス」の名で立川流Bコースの真打として高座にも立つ。昨年のお正月映画『ロボジー』(矢口史靖監督)では「五十嵐信次郎」名で主役として出演。大ヒット作となった。現在も音楽ライブ、舞台、映画、ドラマ、バラエティーと幅広く活躍中。
【受賞の言葉】74歳で新人賞受賞とはこれ、びっくり! ロボジーの「五十嵐信次郎」は全て矢口史靖の洒落です。ありがとう!

脚本賞:西川美和.jpgのサムネイル画像【脚本賞】◎ 西川美和(『夢売るふたり』)
●1974年7月、広島県出身。大学在学中に是枝裕和監督作品『ワンダフルライフ』(99年)にスタッフとして参加。02年、自作脚本による『蛇イチゴ』で監督デビュー。06年、再びオリジナル脚本で監督した『ゆれる』がカンヌ国際映画祭の監督週間に出品される。同年、キネマ旬報ベスト・テン日本映画第2位、おおさかシネマフェスティバル1位、ブルーリボン賞監督賞など数々の栄誉に輝いた。09年、長編第3作『ディア・ドクター』では、キネマ旬報ベスト・テン日本映画第1位、2度目のブルーリボン賞監督賞、おおさかシネマフェスティバルでは笑福亭鶴瓶が主演男優賞に輝いた。
【受賞の言葉】この作品に脚本賞を下さるなんて、おおさかシネマフェスティバルって……!(笑) 非常にうれしいです。すべてをかけて書いたホンですから。心から感謝します。ありがとうございます。

撮影賞:木村大作.jpg【撮影賞】◎ 木村大作(『北のカナリアたち』)
●1939年7月13日、東京出身。東京都立蔵前工業高校卒業後、東宝撮影部入社。73年、須川栄三監督の『野獣狩り』でキャメラマンとしてデビュー。黒澤監督作品には撮影助手として参加。森谷司郎監督『八甲田山』(77年)、深作欣二監督『復活の日』(80年)、降旗康男監督『駅 STATION』(81年)、『夜叉』(85年)、『あ・うん』(89年)などで名声を高めた。03年、紫綬褒章受章。09年には『劔岳 点の記』を自ら企画・製作・脚本・撮影・監督を務め、日本全国縦断キャンペーンを敢行した。10年、おおさかシネマフェスティバルで「監督賞」「撮影賞」をダブル受賞した。同年、旭日小綬章受章。今年は立山連峰を題材にした監督第2作『春を背負って』を撮影する予定。

【受賞の言葉】『劔岳 点の記』から4年間で『北のカナリアたち』(阪本順治監督)1本だけしか撮影を担当していませんが、自分にとっては、『劔岳』から連続受賞ということになり、うれしいですよ。厳しさの中に愛しさがある、と聞いているので、厳しい映画を楽しんでやっている。4月からは2度目の監督作『春を背負って』を撮る予定なので、また山に入ります。

音楽賞:谷川賢作.jpg【音楽賞】 ◎ 谷川賢作(『カミハテ商店』)
●1960年、東京出身の作曲家、ピアニスト。父は詩人の谷川俊太郎。ジャズピアノを佐藤允彦に師事。演奏家として、現代詩をうたうバンド「DiVa」、ハーモニカ奏者・続木力とのユニット「パリャーソ」のほか、父・俊太郎と朗読と音楽のコンサートを全国各地で開催。80年代半ばから作・編曲活動を始め、映画『四十七人の刺客』(94年、市川崑監督)、『竜馬の妻とその夫の愛人』(02年、市川準監督)などの音楽を担当。88年・95年・97年には日本アカデミー賞最優秀音楽賞受賞。06年、びわ湖ホール制作「雷の落ちない村」の音楽監督。最近では、京都造形芸術大学映画学科が中心となって製作した『カミハテ商店』、ドキュメンタリー映画『ひとにぎりの塩』(石井かほり監督)、テレビ東京の新春ワイド時代劇「白虎隊~敗れざる者たち」などの音楽を担当。
【受賞の言葉】ラッシュを最初に見せられた時はちょっととまどってしまったのですが、あえてピアノを弾かずにビリンバウの土着的なリズムをフィーチャリングしたのが映像に不思議にマッチしていたような気がします。長いつきあいの山本起也監督の初劇映画作品で、このような栄えある賞を頂き感謝の気持ちでいっぱいです。ありがとうございました。

新人監督賞:山本起也.jpg【新人監督賞】◎ 山本起也(『カミハテ商店』)
●1966年、静岡市出身。広告映像の演出を経てドキュメンタリー映画製作を開始。無名の4回戦ボクサーたちを6年にわたり追った処女作『ジム』(03年)で劇場デビュー。90歳になる実の祖母の「住み慣れた家の取り壊し」を題材とした監督第2作『ツヒノスミカ』(06年)で、スペインの国際ドキュメンタリー映画祭「PUNTO DE VISTA」にてジャン・ヴィゴ賞(最優秀監督賞)を受賞。本作『カミハテ商店』(12年)で劇映画に進出。カルロヴィ・ヴァリ国際映画祭メインコンぺ(12作品)に選ばれる快挙となった。
【受賞の言葉】何より主演の高橋惠子さん、音楽の谷川賢作さんとともに栄えある賞をいただける事を嬉しく思います。お二人の素晴らしい仕事なくして『カミハテ商店』は完成しませんでした。さらには原案の日當遥、山口奈都美を始めスタッフ、出演者の創造の結晶であるこの映画を、一人でも多くの皆様にご覧いただくよう頑張ります。ありがとうございました。

特別賞:若松孝二監督.jpg【特別賞】◎ 若松孝二 
●1936年4月1日、宮城県出身。農業高校を2年で中退し、上京。もめ事で拘置所経験も。テレビ映画助監督を経て、63年ピンク映画『甘い罠』で監督デビュー。抜群の観客動員力を発揮し、65年に設立した若松プロを拠点に自由な活動を展開。同年『壁の中の秘事』がベルリン国際映画祭に出品された時は、日本の映画業界から「国辱映画」と非難された。70年ごろにはパレスチナゲリラのキャンプ生活も体験し『赤軍―PFLP世界戦争宣言』(71年)を撮った。時代の最先端を行く監督として話題を集め、近年は時代を総括する作品群『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程』(07年)、『キャタピラー』(10年)、『11.25自決の日 三島由紀夫と若者たち』(11年)などを撮り、いずれも高く評価された。遺作は中上健次原作の『千年の愉楽』(12年)。

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『王になった男』イ・ビョンホン 記者会見&ジャパンプレミア

(2012年 韓国 2時間11分)
監督:チュ・チャンミン
出演:イ・ビョンホン、リュ・スンリョン、ハン・ヒョジュ、キム・イングォン、シム・ウンギョン

2013年2月16日(土)~新宿バルト9、丸の内ルーブル、大阪ステーションシティシネマ、梅田ブルク7、なんばパークスシネマ、T・ジョイ京都、TOHOシネマズ西宮OS、他全国ロードショー

★作品紹介はこちら
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ouninatta-otoko-2.jpg 『王になった男』のプロモーションとして「悪魔を見た」以来約2年ぶりに記者会見に登壇したイ・ビョンホン。想像をはるかに超えるマスコミ陣で会見場があふれる中、ひとつひとつの質問に真摯に、そしてユーモアを含めて答える彼の一問一答の様子と、ジャパンプレミア&大ヒット祈願調印式の模様をお届けします。


【記者会見】

―――最初のご挨拶
ビョンホン:来日するのも久しぶりですし、このように記者の皆様の前で記者会見を行うのも久しぶりなのですが、非常に嬉しくて胸がときめいています。

―――初めての時代劇、しかも暴君である王と彼の影武者となる心優しい道化師の一人二役を演じるのはかなりの「挑戦」という意味合いが強かったのでは?
ビョンホン:私にとって時代劇も王の役を演じるのも初めてでした。これまで時代劇を避けていたわけでもなく、今回の作品も時代劇だからといって挑戦しようと思ったわけでもありませんでした。とにかくこの作品の物語が非常に素晴らしく、楽しい作品だったので出演を決めました。そして撮影中はとても楽しく過ごせましたし、とても多くのことを学ぶことができました。

ouninatta-otoko-k2.jpg―――「王になった男」は韓国で興行成績3位を収めたが「イ・ビョンホンさんが考える要因」と日本の観客にどういう所を見てほしいか教えてください。
ビョンホン:まずはイ・ビョンホンが出演している作品だからではないかと思います。…冗談です(笑)。この作品は歴史的事実を基盤にしている物語ですが、実際の王の日記を見ると、映画の中で描かれている15日間というのは空白になっているんですね。そこからヒントを得てモチーフにし、空白の15日間に「こういうことがもし起きていたら?」というフィクションを加味して作られました。時代や国を問わず、どの人達も世の中に対して鬱憤や不満や悲しみを持っていたりすると思うんですが、それをこの映画では代わりに露吐してくれたように思います。観てくれた観客は代理満足を得られたのではないかと思います。そういった点が非常にたくさんの方に痛快で楽しく観ていただけた所ではないかと思います。

日本の観客の方には見どころというよりも「もし自分が王様だったらどうだっただろう?」と思いながら観ていただけると楽しめると思います。この作品は歴史的な根拠を基にしているけれども、そういったことを知らなくても、国の習慣や文化を知らなくても楽しんで観られると思います。その例として先ごろプレミア上映されたアメリカやイギリスなどでも非常に楽しんでもらえたので、尚更そんな思いを強くしました。

―――数々の作品で現場をひっぱってきた主演という立場と、王には共通する所はありますか?
ビョンホン:表面的には似ている部分があると思います。いつもまわりの視線を集める所や、それによって制限された生活をしなければならない所、権力を持っていても乱用してはいけない所とか、似ている所はたくさんあります。自分が何かを仮に命令したとしても、そこには必ず責任が伴うということも似ている点だと思います。ただ、俳優としては王とは違う部分もあると思うんですね。王は民の思いに耳を傾け、民の求めていることをやっていきますが、俳優というのはファンの好みだけに合わせてしまうと自分のカラーを失くしてしまう、ということが演技の面ではあると思います。ですので作品を選ぶ時も自分の意思で選択すべきだと思っています。もちろん耳を傾けはしますが、傾けすぎると自分の所信を失ってしまうので、そういった所は違うと思います。

―――イ・ビョンホンさんがコミカルに踊るシーンなどは初めて見ましたが、何かエピソードはありますか? あなたのような素敵な笑顔になりたくて練習しているが何か練習方法はありますか?
ビョンホン:ハソンという人物は突拍子がなく滑稽で、人を笑わせるキャラクター。
パフォーマンスのシーンは実はとても大変だったんです。最初は大したことないんじゃないかと思っていたんですが全く違っていました。韓国舞踊というのは基礎から学ばないといけなくて、歩き方ひとつにしても長時間練習してようやく身につくもの。踊るシーンは最初の撮影で撮るはずだったんですが、練習が足りなくて結局最後にまわしました。そしてそのシーンを撮って今回の映画が全て終了したんです。また、舞踊の練習はしても表情の練習はしません。俳優というのは心の中にその時々の感情を持っていないと表情として伝わらないからです。なので練習はしないでください(笑)。

ouninatta-otoko-4.jpg―――出演しようと決定づけたシーンを教えてください。
ビョンホン:ひとつのシーンだけで決めたわけではありません。全体の内容が私の心に響いたので出演を決めました。ではなぜこの作品が気に入ったかというと、誰でも一度は「自分が王様だったらどうするだろうか?」と想像すると思うんですが、そういったことを非常に骨太なメッセージで伝えてくれているなと思ったからです。しかも重くなりがちな所が面白く、コミカルに描かれていたので素晴らしいシナリオだと思い、そこが私にとってアピールポイントになりました。

ouninatta-otoko-b4.jpg―――どの作品も非常にストイックに向かっているように思うが、身体的、精神的に気を付けていることはありますか? また自身の「弱み」を教えてください。
ビョンホン:俳優という職業は何かを練習したり、何かを勉強して深みを出せるものではないと思います。俳優は人生を語り、人生を自分の体をもって演技をし、見せるからです。本を読んだり自分を磨いたりするといったことで俳優の仕事ができるとは思っていません。そして後輩には「分別を持ってはいけないと」とよく言っています。俳優だけではなくアーティストも然りですが。そういった人達は奇抜なアイディアが必要で、時には突拍子もない考えがあるかと思うんです。そういった想像の芽を切ってしまうから「分別を持つな」と言っているんですね。韓国では親が子供に一番言う小言が「もっと大人になれ」「分別を持て」なんですが、私は年がいくつになったとしても、やっぱり少年としての気持ちを持っていた方がいいと思います。そういった気持ちがあればいい考えも浮かびますし、それを表現できるのだと思います。そういったことをよく後輩に話してはいるんですけども、自分の弱みとしては、まわりにそう忠告しつつ、自分ではそれが実践できない所が弱みでしょうか(笑)。

 


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【ジャパンプレミア&調印式】

 

新宿バルト9にて幸運なプレミア上映を鑑賞した約400名の観客が待ち構える中、「皆さんこんにちは。イ・ビョンホンです。おいしかったですか?…あっ、面白かったですか」と日本語で挨拶した彼の姿にファンは大興奮。

「作品を決める時には、こういった作品だからやる、やらないといった選び方をせず、あくまでもその物語が何かが重要だと思っています。また、この映画にでてくる影武者のハソンのコミカルなキャラクターのほうが、王よりも自分の性格に似ているので、周りのスタッフは特に驚いた様子はなかったですね(笑)」と彼が言うと、長年見守り続けてきたファンはスタッフ同様、頷きながら納得の表情を見せていた。

ouninatta-otoko-b2.jpgその後、劇場内のスターステージで行われた“大ヒット祈願調印式”には、イ・ビョンホンの大ファンだと公言する岩下志麻が応援に駆けつけ、「イ・ビョンホンさんはとにかく素敵で、かっこよくて、チャーミング!」「役と一体になってのめり込む役作りの姿勢は同じ俳優として尊敬しています」とベタぼめ。

「もし共演する機会があったら、屈折した心を持つ御曹司と女社長が出会うミステリーなんかがいい」と岩下が言えば、ビョンホンは「2人とも武芸の達人役で一緒にアクションをやりたいですね」と明かした。

そして、映画の大ヒットを祈願し、映画の中でビョンホン演じる王が押印するシーンを模し、二人で大型はんこをパネルに押印!ステージ前に集まった約500人の観客からは大歓声が上がり盛大なイベントは幕を閉じた。

(木村 友美)

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『横道世之介』高良健吾、吉高由里子 舞台挨拶

(2013年1月29日大阪ステーションシティシネマにて)

ゲスト:高良健吾、吉高由里子

(2013年 日本 2時間40分)
監督・脚本:沖田修一  脚本:前田司郎
原作:吉田修一著『横道世之介』毎日新聞社 文春文庫刊
出演:高良健吾、吉高由里子、池松壮亮、伊藤歩 、綾野剛、井浦新、余貴美子、きたろう

2013年2月23日(土)~新宿ピカデリー、大阪ステーションシティシネマ、なんばパークスシネマ、MOVIX京都、T・ジョイ京都、神戸国際松竹、109シネマズHAT神戸他全国ロードショー

公式サイト⇒ http://yonosuke-movie.com/

©2013『横道世之介』製作委員会


yokomichi-1.jpg 横道世之介という一度聞いたら忘れられないような名前の青年が織りなす愛と友情の軌跡。世之介と出会ったすべての人々の心に輝石をもたらす感動作を作り上げたのは、『南極料理人』『キツツキと雨』の沖田修一監督。掴みどころのない不思議な青年世之介を演じたのは、『おにいちゃんのハナビ』『軽蔑』の高良健吾。世之介の彼女となる実業家の娘・祥子を演じるのは、『婚前特急』『僕等がいた(前後篇)』の吉高由里子。二人は、5年前の『蛇にピアス』で初共演、今回2度目の共演となる。息が合ってるのか合ってないのか、対称的な舞台挨拶で会場の観客を魅了した。


【最初のご挨拶】

高良:今日はお越し下さいましてありがとうございます。
吉高:大阪の皆さんこんばんは~、大阪以外からも来て頂いた方もおられると思いますが、本当にありがとうございます。2時間40分長いですが、見終わった後、自分の身の回りのちょっとしたことが好きになったりすると思いますが、どうぞ最後までごゆっくりお楽しみ下さい。

yokomichi-s1.jpg――― 「横道世之介」の原作を読んだ監督が、この主人公は高良健吾君っぽいね~と言われたらしいですが?
高良:監督とは5年前の『南極料理人』で初めてお会いしたのですが、そう仰って頂いて大変光栄ですし、監督がそう仰るのなら、多分その通りだと思います。この台本読んだ時に、世之介は目の前の人や出来事、風景などにちゃんと反応しているな、狭い範囲で生きていても世之介なりの関わり方をしているなと感じました。また、普通の青年と言われますが、僕から見れば理想的な生き方をしている青年だと思いました。

――― 共感しながら役を演じていたのですか?
高良:半径の狭いところで芝居を終わらせたかったし、答えを見せたくなかった。観客の皆様には、世之介流の生き方を自由に感じて頂ければいいかなと思いました。笑って下さいという芝居はしていないのですが、自然体の中で面白く感じて頂ければいいかなと思います。

yokomichi-s2.jpg――― そのヒロインを演じられた吉高さんは、祥子さんの役について監督からは?
吉高:沖田監督からは特別な指示はなかったです。ただ、テストの時に、「今のはアリ、ナシ」とか言われましたが、本番では自由に演じてました。

――― 映画の中では笑えるシーンも多かったようですが?
吉高:本番中、可笑しくて、ホントに笑っていました。

――― 1987年から始まって2003年までを描いています。その間、世之介はいろんな人と出会っていきますが、その度にテンションも変わっていったりしたのですか?
高良:繋がりとかは考えなくて、自分が学生の時でも、毎日テンション違ったし、行動範囲も狭かったので、目の前にいる人に対しても普通に接していました。相手が同じ人でもテンションは違いました。登場する人たちもそれそれぞれ変わったことをしていることが多く、それが面白いですよね。

――― 多彩なキャスティングできっとお楽しみ頂けると思いますが、吉高さんはこの映画をご覧になって感じたことは?
吉高:関係者と一緒に試写室で初めて見たのですが、予想していないところで笑っていたのに驚きました。何でもないようなところで笑われて、何だか不思議な感じでした。公開されたら、映画館に確かめに行きたいような気がしています。自分が出ている映画でもう一回見たいと思うことはあまりなかったのですが、2月23日公開されたら、お金払って見に行きたいと思います(笑)。

――― 是非、ここ大阪ステーションシティシネマにもお越し下さい。
吉高:予想していたより大きい劇場だったので、ニヤニヤ、ヘラヘラしています(笑)。

yokomichi-s3.jpg――― 5年前『蛇にピアス』で共演されてますが、お互い変わったなと思うところはありますか?
高良:出会った時から変わった人だな~と思いました。今でも吉高さんは吉高さんだと。でも、お互い成長しているところもあるし、前はネガティブなことを話していましたが、視野が広くなったなあと感じました。
吉高:現場にいる高良さんを見るのは2度目ですが、現場を楽しもうと自ら動いている点は前と全然違うなと思いました。変わらない点は、自分の意見をちゃんと持っているし、相手と変に擦り合わせようとしないところが信頼できるところです。あとは、5年前より4~5㎏太いよね? と(笑)。

――― えっ、どういうこと?
高良:この撮影の前にヘビーな『罪と罰』という作品に出演して痩せちゃったので、世之介では太腿をパンパンにしたくてパクパク食べてたら、吉高さんも同じようにパクパク食べてました。なんで吉高さんまで食べるんだろう?って(笑)。
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吉高:高良君が美味しそうに食べているのを見たら嬉しくなって、いつも間にか同じように食べてました。出来上がった時の自分を見たらびっくり!こんなに丸かったっけ?… は~い(笑)
――― 健康的で、映画に元気をもたらしてくれてるようでいいじゃないですか?
吉高:この役に合っていたようで、結果オーライ!って感じです(笑)。

――― 映画の中で16年後というのがありましたので、お二人の16年後はどうなっているでしょうか?
高良:41歳です。あまり先のことは考えられないです。25歳までは想像できていたのですが、その先は分からないです。
吉高:40歳ですね・・・カッサカサになってなきゃいいんですが…(笑)
――― お肌がですか?
吉高:お肌も全部です。潤っていればいいかなと。ちょっとした変化に気付けるような大人になっていればいいかなと思いま。
――― 16年後、映画の舞台挨拶などでお会いできたら嬉しいですね。
吉高:何してるんでしょうね~干されないよう気を付けます(笑)。

yokomichi-s5.jpg――― 最後のメッセージを。
吉高:25歳になったら、もっとしっかりした舞台挨拶ができるように頑張りたいと思います。取材などで何度もこの映画について語りながら、益々この映画が好きになってきました。皆さんも見終わった後、今生きている時間をもっと好きになると思います。長い時間ですが、よろしくお付き合いください。
高良:今日は本当にありがとうございました。この映画をご覧になったら、普段の日常が特別なものに感じたり、キラキラしたものに見えたりすると思います。登場人物と見ている景色は違えども、みなさんが通ってきた時の感情と重なり、懐かしく思って下さるのではないかと。この映画は説明しながら作っていないので、見終わった後も続いていきます。みなさんで自由に育てていって下さればいいなと思います。ツイッターなどで広めてくださると嬉しいです。よろしくお願いいたします。


 物静かに語る高良健吾に対し、天然というか、キュートな語り口で観客の笑いをよんでいた吉高由里子。計算してできるキャラクターではない。そんな吉高由里子が映画の中で使う「ざあます」言葉が余計に可笑しみを生み、世之介の行く末の切なさを際立たせる。誰もの記憶に残る純朴な世之介の笑顔は、きっとあなたの心にも温もりをもたらすと思います。横道世之介くんに会いに行ってあげてください。

(河田 真喜子)

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 "映画の新しい才能の発見と育成"、"映画の新しい環境づくり"をテーマに、1977年にスタートした映画祭「PFFぴあフィルムフェスティバル」。昨年9月の東京開催でスタートした「第34回PFF」は12月の神戸開催に続き、2月16日(土)~22日(金)の1週間、京都シネマで「PFF in 京都」が開催される。
 平均年齢23.6歳の未来の巨匠たちがひしめく、コンペティション部門「PFFアワード2012」の入選16作品を一挙上映!11名の監督たちが会場に駆け付け、質疑応答も開催。また映画祭最終日には、初夏に公開予定のPFFスカラシップ作品『HOMESICK』の先行プレミア上映を行うなど、最前線の日本映画を体感できる7日間だ。
 神戸会場で好評を博した当日学生券や、前売限定販売の全作品フリーパスなどお得なチケットも販売。全作品制覇目指して、足を運んでみよう!


<上映プログラム紹介>
(1)「PFFアワード2012」 世界最大級の自主映画のコンペティション部門
若手監督の登竜門として、黒沢清(『贖罪』)、園子温(『希望の国』)、矢口史靖(『ロボジー』)、内田けんじ(『鍵泥棒のメソッド』)、石井裕也(『舟を編む』)ら現在の日本映画界で活躍する監督たちを輩出してきた「PFFアワード」。
今年の入選監督は、20代前半が大半を占める「若さ」が特徴で、話題の映画・映像学校出身者が勢揃いしている。自主映画でありながら、海外映画祭への出品や劇場公開が実現するなど、プロ顔負けの完成度の高さに国内外の映画人も驚愕しているのだ。

【PFFアワード2012 データ】
応募総数:522本 / 入選作品:16本 / 入選監督の平均年齢:23.6歳

▼プロ顔負けの完成度!海外映画祭出品や劇場公開が続々決定!
PFF2013(2)グランプリ「くじらのまち」.jpg『くじらのまち』(監督:鶴岡慧子) ※PFFグランプリ受賞
釜山国際映画祭(韓国)コンペティション部門出品 2012年10月
 ベルリン国際映画祭(ドイツ)フォーラム部門出品 2013年2月

 

PFF2013(3)準グランプリ「魅力の人間」.jpg『魅力の人間』(監督:二ノ宮隆太郎) ※PFF準グランプリ受賞
バンクーバー国際映画祭(カナダ)コンペティション部門出品 2012年10月
ロッテルダム国際映画祭(オランダ)Bright Future部門出品 2013年1月
 ゆうばり国際ファンタスティック映画祭(日本)フォアキャスト部門出品 2月

『故郷の詩』(監督:嶺豪一) ※PFF審査員特別賞受賞
 バンクーバー国際映画祭(カナダ)招待作品部門出品 2012年10月

『リコ』(監督:弓場絢)
バンクーバー国際映画祭(カナダ)コンペティション部門出品 2012年10月

『Her Res ~出会いをめぐる三分間の試問3本立て~』(監督:山戸結希)
ポレポレ東中野(東京)にて劇場公開 2012年11月10日(土)~16日(金)
オーディトリウム渋谷(東京)にて劇場公開 2013年2月16日(土)~21日(木)

『かしこい狗は、吠えずに笑う』(監督:渡部亮平) ※PFFエンターテインメント賞&映画ファン賞受賞
メイド・イン・プサン独立映画祭(韓国)招待作品部門出品 2012年11月
シネマルナティック(愛媛)にて劇場公開 2013年3月23日(土)~29日(金)

『ゆれもせで』(監督:川原康臣)
シネマ・ロサ(東京)にて劇場公開 2013年2月2日(土)~15日(金)

『極私的ランナウェイ』(監督:河合健)
トリウッド(東京)にて劇場公開 2013年2月9日(土)~10日(日)
 ゆうばり国際ファンタスティック映画祭(日本)オフシアター・コンペティション部門出品 2013年2月

▼11名の監督が来場予定!上映後の質疑応答に参加しよう!
 来場予定監督 
PFF2013(1)京都出身監督「あん、あん、あん」.jpg2/16(土)『あの日から村々する』加藤秀則、『あん、あん、あん』イノウエ カナ、『リコ』弓場 絢
2/17(日)『オハヨー』佐久川満月、『ゆれもせで』川原康臣
2/18(月)『水槽』加藤綾佳
2/19(火)『Please Please Me』青石太郎
2/20(水)『stay チューン』伊藤智之、『極私的ランナウェイ』河合 健
2/21(木)『継母』工藤隆史、『飛び火』永山正史

▼観客投票により「PFF京都賞」を決定!
会場のお客様の投票で、京都グランプリを決定!果たしてどの作品が多くの支持を得るのか!


(2)PFFスカラシップ作品 先行プレミア上映
「PFFスカラシップ」とは「PFFアワード」の入賞者によるオリジナル企画を、PFFが企画から公開までトータルプロデュースする新人監督育成システムです。今回は、2013年初夏公開予定の最新スカラシップ作品『HOMESICK』を先行プレミア上映します。

第22回PFFスカラシップ作品
『HOMESICK』2012年/99分/カラー
監督:廣原 暁
出演:郭 智博、金田悠希、舩﨑飛翼、本間 翔、奥田恵梨華


「第34回PFFぴあフィルムフェスティバル in 京都」 

会期:2013年2月16日(土)~22日(金) 連日18:30~
会場:京都シネマ  【公式サイト】http://pff.jp/34th/
※作品上映後、監督による質疑応答を予定。

jijyojibaku-s550.jpg『R-18文学賞vol.1 自縄自縛の私』舞台挨拶(13.1.22 梅田ブルク7)
jijyojibaku-1.jpg登壇者:竹中直人監督、平田薫
(2013年 日本 1時間46分)
監督:竹中直人
原作:蛭田 亜紗子「自縄自縛の私」(新潮社刊『自縄自縛の私』所収)
出演:平田薫、安藤政信、綾部祐二、津田寛治
2013年2月2日(土)~新宿バルト9、梅田ブルク7、TOHOシネマズなんば、109シネマズHAT神戸、T・ジョイ京都他全国公開
公式サイト→http://www.r18-jijojibaku.com/
(C) 吉本興業

 角田光代をはじめとする女性審査員により選ばれた「女による女のためのR-18文学賞」受賞作品が竹中直人監督によって映画化。『R-18文学賞vol.1 自縄自縛の私』というタイトルとは裏腹に、どこかほのぼのしたタッチで個性的な性癖を持つOLの秘かな歓びや葛藤を描き、ストレス社会に生きる現代女性を元気づける異色成長ストーリーに仕上がっている。
公開に先駆け、舞台挨拶付き試写会が22日梅田ブルク7で開催され、満席の熱気ぶりに本作への期待が大いに伺えた。全身薔薇柄のオシャレなスーツに身を包んだ竹中直人監督と、レトロな赤白ストライプのロングワンピース姿が爽やかな主演百合亜役の平田薫が登壇、自縄自縛秘話やお二人の“秘かな愉しみ”などが飛び出し、会場を沸かせた。平田薫がサプライズで監督への手紙を朗読する場面もあり、映画さながら心地よい感動を味わえた舞台挨拶の模様をご紹介したい。


jijyojibaku-s2.jpg(最初のご挨拶)
平田:はじめまして。百合亜役を演じさせていただきました平田薫です。こんなにたくさんの方が集まってくださると思っていなかったので、すごくびっくりしています。ありがとうございます。短い時間ですが、最後まで楽しんでいってください。
竹中:お集まりいただきまして本当にありがとうございます。第7作目『自縄自縛の私』、一生懸命撮りました。1時間46分と非常にいい時間の映画となっております。最後までゆっくり楽しんで、笑ったり泣いたりしながら、よろしくお願いいたします。

━━━ちょっと変わった趣味を持っている女性が主人公ですが、平田さんはこの作品のお話があったとき、どんな風に思いましたか?
平田:自縄自縛という言葉も最初知らなかったです。自分の知らないことにチャレンジできるというのはすごく好奇心でいっぱいでした。(実際に演じてみて)自縛は特殊といえば特殊なのですが、百合亜という女の子を演じるのに監督やスタッフのみなさんやキャストのみなさんがすごく守って、支えて下さったので、全然迷いや悩んだりすることがなく演じることができ、本当に幸せでした。

jijyojibaku-s1.jpg━━━撮影に入る前に、平田さんにお話されたことは何かありましたか?
竹中:あんまり覚えていないですね。平田さんの雰囲気が良かったので。僕はこの作品の依頼をしようと思ったときにあまり自縄自縛があまり特殊なものだとは思わなかったですね。彼女が生きるための手段で、日常で必要なものだと捉えていたので、あまり肉感的な女優さんでは撮りたくなかったんです。平田さんに初めてお会いしたとき、彼女しかいないと思って、イメージがぴったりだったので自然に入ってもらいました。監督の仕事というのは役者さんにどれだけ楽に現場を解放してその場所に居られるか、そういう時間を作るかが大切だと思うので、すごくいい時間が過ごせました。楽しかったよね?
平田:楽しかったです!

 

━━━監督自ら演技してみせる場面もあったそうですね。
平田:必ずこうしなければいけないと押しつけることもなく、自然と「こうだったらいいな」とか「こういう雰囲気だよ」というの優しく教えてくれる感じです。演技して「こうだよ」と見せてくれたときは、あまりにもお上手なので、私そんなに上手に出来んだけど・・・とちょっと焦りもしました。
竹中: 『自縄自縛の私』というタイトルですから、縄が大事なので、その縄を大切に愛でるというシーンがあって・・・(実演してみせた姿に会場爆笑)。

━━━ワンカット長回しのシーンで、平田さんは実際に自縄自縛をされていますね。
平田:長回しでワンカットで撮るシーンが何回かあったので、4種類ぐらい縛れるようになりました。1か月半ぐらいひたすら家で練習しました。百合亜が縛って一晩過ごすシーンがあったので、一度自分も緩めに縛って一晩過ごしたことがあったのですが、たまたま次の日の朝、大きめの地震がきて、目が覚めたときすごく揺れていたのに動けなくて、一瞬命の危険を感じました。怖かったです。

jijyojibaku-2.jpg━━━共演の方々も個性派揃いですが、中でもピースの綾部さんは女性に人気があるのは分かるような気がしましたが、どういう視点でキャストに選ばれたんですか?
竹中:自分の理想をやってほしかったんですよ。女性と目と目が合ったらすぐに唇を奪うという。そういう男になりたいと思っていたのですが、年をとって出来なくなってしまったので、綾部君にやってもらいました。(演技面で)何を言ってもすぐにやってくれました。登場のシーンも普通にやったらつまらないから、スローモーションでやってくれとお願いしたら「追いつけるかな~~~」とスローモーションで(笑)。

━━━実際に綾部さんと共演された平田さんはいかがでしたか?
平田:以前一回映画で共演させていただいたことがあり、撮影前お会いしたときに綾部さんから「キスシーンがあるよ、薫ちゃん」といわれて、そのときちょうどキスシーンがなくなったときだったので、「キスシーンなくなりましたよ」と伝えたら、すごくがっかりされていたんです。その話を監督に伝えたら、キスシーンが復活して(笑)。
竹中:自分の理想を映像で撮るのはちょっと恥ずかしかったのですが、綾部君がすごく残念そうだったので「じゃあ、復活させよう」と。復活するからにはただ単純な小さなキスではダメなので、「長回しにするから、延々吹いつくしてくれ!」と言って本番に入りましたね。

jijyojibaku-3.jpg━━━お二人にとって誰にも言えない歓びや、人には言えない趣味はありますか?
平田:人に見られたくないストレス解消法なのですが、お酒を飲むのが大好きで、ちょっと溜まってきて次の日が休みとなったら、500mlのビール6缶を買って、ワインを買って、家で飲みます。一人でベロベロになるので、ストレス解消できるのですが、テレビに向かって一人でしゃべったり、醜態をさらしています。
竹中:僕はフィギュアのマニアです。ダークナイト・ライジングのアン・ハザウェイのフィギュアが出ないかと楽しみにしています。ヤバいですね。ヒース・レジャーのジョーカーのフィギュアとか何台も持っています。昔からずっと集めていたので、フランケンシュタインとか大好きです。ブルース・リーのフィギュアもたくさん持っています。それを愛でるのが好きで、ブルース・リーの『燃えろドラゴン』の時のフィギュアなんか、たまらないです。自分の映画を見れる部屋に飾ってあるのですが、地方に行くとき、ブルース・リーのフィギュアだけは持っていき、それを部屋に置いて、写真を撮るんです。

jijyojibaku-s3.jpgここで平田薫から竹中監督へのサプライズプレゼントとして、竹中監督に宛てた手紙が朗読され、竹中直人監督が感動の面持ちで聞き入る一幕も。
 竹中監督へ こうして完成披露するとみなさんに観てもらえる喜びと、撮影からもう一年経ったことに驚きます。おととしのクリスマス、初めて監督との顔合わせがありました。初めてお会いしたときは、私でいいのかなという不安と大先輩に初めて会う緊張で、正直あまり覚えていません。その後、ロケハンに連れて行ってもらえると知り、さらに緊張が高まりました。当日、監督やスタッフのみなさんと合流したとき、竹中組に当たり前のように受け入れてもらえたこと、その空気がとても心地よかったです。みなさんの百合亜という役への想い、愛情を知って、心を全開に開いて信じてついていくことができました。「現場でちゃんと見ているからね。心配しなくていいよ」と声をかけて下さった時、本当に心強かった。いつも安心して、リラックスしていられました。監督と出会えたこと、竹中組のみなさんと出会えたこと、監督に見守られながら百合亜でいられたことが本当に幸せでした。私の一生の宝物です。私はこの撮影の日々を思い出したら、どんなときも百合亜が強くなったように、自信を持って頑張れる気がします。私を百合亜にしてくださって。本当にありがとうございました。いつか監督と一緒にお芝居をしたいという秘かな目標があります。時間がかかってしまうかもしれないですが、実現するようにがんばります。本当にありがとうございました。これからもよろしくお願いします。

jijyojibaku-4.jpg(最後のご挨拶)
 竹中:本当に僕の大好きな俳優たちがいっぱい集まって、この映画に出てくれました。僕は自分の映画は客観的に観れる方なのですが、帰るころにはとても美しい青春映画になっているのではないかと思います。最後までゆっくり楽しんでいってください。今回私が出ていないので、すっきり映画を観ることができると思います(会場笑)。よろしくお願いします。今日はお忙しい中ありがとうございました。(江口 由美)


sayonara-de-s550.jpg『さよならドビュッシー』合同インタビュー

ゲスト:利重剛監督、清塚信也

(2013年 日本 2時間11分)
原作:中山七里『さよならドビュッシー』(宝島社文庫)
監督・脚本:利重剛
出演:橋本愛,清塚信也,ミッキー・カーチス,吉沢悠,柳憂怜、,相築あきこ,山本剛史,熊谷真実
主題歌:「境界線」和泉沙世子(キングレコード)

2013年1月26日~新宿ピカデリー、大阪ステーションシティシネマ、なんばパークスシネマ、MOVIX京都、神戸国際松竹、他全国ロードショー

★作品紹介⇒ こちら
★公式サイト⇒ http://good-bye-debussy.com/
© 2013さよならドビュッシー製作委員会

 

~ピアニスト・清塚信也、スクリーンデビュー!~

 

sayonara-de-1.jpg 祖父の莫大な遺産をめぐる陰謀と、火事で全身に大やけどを負いながらもピアノを通じて再生しようとする少女の成長を描いた感動作『さよなら、ドビュッシー』。原作は第8回〈このミステリーがすごい!〉で大賞に輝いた中山七里の同名小説。16歳にして数々の映画で強烈な存在感を示す橋本愛が、主人公・香月遥を演じる。そして、今回注目されるのが、遥のピアノ教師を務めながら、遥の身辺に起こる事件を解いていく岬洋介という重要な役どころを演じたピアニストの清塚信也である。『神童』では松山ケンイチの、『のだめカンタービレ』では玉木宏のピアノ演奏シーンの吹替えを経て、これが俳優としてのスクリーンデビューとなる。

 ピアノ演奏シーンの多い本作。「理屈ではなく、説得力のある映画にしようと思った」という利重剛監督は、「ピアノ指導の経験もあるピアニストの清塚信也さんこそ適役」として出演依頼。その起用が功を奏して、ひとり秘密を抱え孤独な闘いを悲痛なまでに見せる橋本愛に対し、それを優しく見守り導く姿は、新鮮な感動をよぶ。特に、ピアノコンクールで見せる肉体の限界を超えた必死の演奏には胸が熱くなる。


その岬洋介を演じた清塚信也氏と利重剛監督が、キャンペーンのため来阪。作品にかける思いを語った。

sayonara-de-s2.jpg――― 『神童』『のだめカンタービレ』とピアノ演奏シーンでの吹替えをされてきて、スクリーン初登場ですが、如何でしたか?
清塚:緊張することもなく、とても楽しい時間を過ごせました。

――― 元々利重監督とは親しかったのですか?
清塚:いえ、この映画で初めてお会いしました。家はたまたま近かったのですが。

――― 演奏しながらの演技は難しかったのでは?
監督:3日間稽古の時間を取っていましたが、撮影前の2~3時間で済みました。清塚さんは実際にピアノを教えておられるので、レッスンの時の細かい方法などのアイデアからシーンを発展させたり、アドバイスを受けたりして、脚本にも反映させていきました。脚本の最終段階では一緒に作っていきました。弾きながら喋るという、いつものレッスンと同じようにやってもらっただけです。「手首で呼吸する」なんて、私らでは思いつかない言葉ですからね。
清塚:「手首で呼吸する」というのは、ショパンがレッスンで使った言葉で、僕も実際レッスンでそう教えられましたから。

――― 橋本愛さんとの共演は如何でしたか?
清塚:とても楽しかったです。劇中の人物と同じように、最後まで誰なんだろう?と思わせるような不思議な魅力の持ち主だと思いました。
監督:日本映画界が注目する女優ですから、いいタイミングで一緒に仕事ができて本当に良かったです。

sayonara-de-s1.jpg――― 原作のどこに惹かれたのですか?
監督:音楽の演奏シーンの描写です。そこが書きたくてミステリーにしているくらいですから、一番の魅力とも言えますが、それをどうやって映画にするの?…… 私の気持ちからすると、プロのピアニストに、あるいは少なくともピアノが弾ける人に演じてほしいと思いました。最初は有名な俳優さんにという声もありましたが、バレエ映画だったら熊川哲也さんの名前が挙がるように、ピアノ界だったら誰に? この映画を機にスターダムに乗れる人を……そこで、萩生田監督のススメもあり、清塚さんにお願いしました。

――― オファーを受けた時のお気持ちは?
清塚:とても嬉しかったです。元々映画も演技も大好きでして、役者をしている友人のワークショップへ入ったこともあります。原作者の中山七里先生のファンで、タイトル本を進呈して頂いたこともあります。そうしたら映画出演のお話を頂戴したのです。中山先生からのご紹介かなと思ったら、全く関係ないルートでお話が来たので、この偶然には驚きました。

――― 演奏と演技の共通点と相違点は?
清塚:共通点は沢山あります。リハーサルの時から監督とよく話し合ってきました。でも、ピアノは、練習の積み重ねで、本番で力を出し切るというのがパターンです。それに対し、演技は、現場で監督や他のスタッフや相手役の俳優さんとか、多くの人のハーモニーでできているので、自分が詰め込んだものを一点張りに出しても上手くいかない。それが大きな相いです。

――― 演技に対する興味は?
清塚:表現のひとつとして興味がありました。映画、舞台、演技の関連している芸術性が好き。どうして感動するのか、考えながらゆっくり見るのが好きです。その内、監督の意図が分かってきて、無意識から意識へと変化していくのが楽しいのですね。

――― 清塚さんの起用はとても新鮮味があり、遥の成長の手助けをするあたりの繊細さに感動した。ミステリー性より主人公の秘めた心情面に重点をおいた構成については?
監督:そう思って頂けて嬉しいです。原作をあまり変えていません。大きなトリックとかはそのままやろうと思った。感情的にウソをつきたくない、本当にあるお話として受け止めてほしかったのです。世の中には大変な緊張した状況下で生きている人は沢山いると思う。限界ギリギリに頑張っている人にこそ見てほしい。そして、頑張る力やささやかな応援になればという願いはあります。
ミステリーだからロジカルになりがちですが、理屈ではなく、説得力のある映画にしようと思ったのです。そういう意味で、実際にピアノを弾く方で、ピアノレッスンをしている方に演じてほしくて、清塚さんにお願いしたのです。それを新鮮だと感じて頂けたら、大成功です。

――― 橋本愛さんは本当に弾いているのですか?
監督:どう思いましたか?(笑)実際に弾けたとしても、とても難しい役でした。清塚さんに指導して頂いて、その教え通りに弾くと、これがまたいい音が出るんですよ~♪

sayonara-de-s3.jpg――― 演奏シーンで難しかった点は?
監督:ピアノ自体曲面のある鏡面仕上げなので、スタッフの誰かが映ってしまうんですよ。特に、部屋での演奏シーンには苦労しました。設定として、おじいさんがヨーロッパで買ってきたピアノですから、それに相応しいピアノを探しました。清塚さんにもついて来てもらって、音を確かめながら、細かくチェックしながら探しました。
それから、ミスタッチするシーンが難しかったですね。でも、清塚さんは、正確にミスタッチできる世界でも第一人者ですよ!
清塚:ミスをやらせたら右に出る者がいない!(笑)
監督:愛ちゃんの吹替えのピアニストさんにミスタッチさせるのが難しかったですね。シーンの絵作りとかもね。

――― 続編のご予定は?
監督:ポーランドが舞台になっていますね~映画化できればいいですね~。


【舞台挨拶】
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【舞台挨拶】 (2013年1月21日(月)なんばパークスシネマにて)

登壇者:利重剛監督、清塚信也、泉沙世子(主題歌「境界線」を歌う)

――― 大阪の印象は?
監督:結構大阪の仕事が多かったので、好きですよ。朝ドラの時は7か月大阪に住んでいました。
清塚:コンサートでよく来ています。初めて大阪に来た時はまだ10代だったのですが、切符売り場で僕がぐずぐずしていたら後ろから押され、大阪って怖いところだなあと思いました。でも、その後コンサートで何回も来るようになって、大阪の人の優しさが分かるようになりました。
泉:私は豊中生まれです。ひどい方向音痴で、人に道を訊ねたら、遠い所でも連れてってくれて、メッチャ親切やなあと思います。

――― もう大阪の何か美味しい物を食べましたか?
清塚:りくろーおじさんのチーズケーキが美味しかったです。

――― 作品の印象やオススメは?
監督:一所懸命作りましたので、すべてが見所です。大事に撮った作品です。原作を読んでいても楽しめるように丁寧に丁寧に作りました。

 ――― 原作へのリスペクトが感じられました。
清塚:『神童』や『のだめカンタービレ』でピアノ演奏の吹替えはしましたが、演奏と演技をワンカットで撮れたのはとても珍しいと思います。橋本愛さんにも弾いているように指導したり、裏方としてもやりました。どこまでが演技か、と思える程上手なので、その辺りを見て頂けたら嬉しいです。
泉:清塚さんが、レッスン中に「気持ちを集中して!」と言いながら、気を散らしているシーンが好きです(笑)。


sayonara-de-2.jpg その他、橋本愛さんについて清塚信也さんが語ったエピソードとして、清塚氏が差し入れしたグリコのアイス〈パピコ〉を愛ちゃんが見て、「なんでこんな名前なんだろう?」と、珍しく彼女の方から訊いてきたので、清塚氏は早速お客様相談センターに電話して名前の意味を訊いた。すると、「誰かと分け合ったら楽しい」という回答があり、それを話すと、マネージャーさんやメイクさん達には受けたのに、肝心の愛ちゃんはずっと窓の外を見て無反応だったらしい。さすがクールな愛ちゃん!!!

(河田 真喜子)

Flashback-s550.jpg『フラッシュバックメモリーズ 3D』松江哲明監督、GOMAインタビュー
(2012年 日本 1時間12分)
監督:松江哲明 
出演:GOMA、辻コースケ、田鹿健太、椎野恭一(GOMA & The Jungle Rhythm Section)
2013年1月19日(土)~新宿バルト9、梅田ブルク7、Tジョイ京都(3D上映)、2月9日(土)~第七芸術劇場(2D上映,併映『極私的神聖かまってちゃん』)他全国順次上映
※フラッシュバックメモリーズ公開記念 GOMA個展 記憶展第三章「ひかり」
2013/3/9~3/20 @恵比寿KATA (liquidroom EBIS 2F)
2013/4/27~5/6 @大阪PINE BROOKLYN
flashback-1.jpgのサムネイル画像※フラッシュバックメモリーズ公開記念 ワンマンLIVE 「2nd Life」
LIVE: GOMA&The Jungle Rhythm Section
2013/04/05 大阪シャングリラ
2013/04/07 渋谷WWW

公式サイト⇒http://www.flashbackmemories.jp/
作品レビューはコチラ
© SPACE SHOWER NETWORKS.inc

松江監督:GOMAさんのエネルギーを映画で表現したかった

GOMA:やっと人生の2回目のスタートラインに立てるなと思わせてもらった

 交通事故で過去の記憶が消える高次脳機能障害を宣告されながらも、自分を信じて復活への道のりを歩み、再び力強い音色を響かせるディジュリドゥ奏者GOMAのライブドキュメンタリー『フラッシュバックメモリーズ 3D』が現在公開中だ。3D映像で迫力のライブがさも目の前で繰り広げられているかの臨場感を与え、観る者に勇気と感動を与えてくれる。本作のメガホンを撮った松江哲明監督と主演のGOMAさんに舞台挨拶前の貴重な時間をいただき、お話を伺った。


━━━今回ドキュメンタリーに3Dの手法を取り入れましたが、日頃松江監督は3Dに対してどう考えていらっしゃったのですか?
 Flashback-s1.jpg監督:僕は3D映画が好きなので、できるだけ公開している映画は見て、いつかやりたいと思っていました。ただ、ハリウッド映画のようなスケール感には興味がなくて、万華鏡のような、もっと個人的な中に入っていくことが3Dではできるのではないかと。音楽やライブものは合うなと思っていたのですが、今の音楽映画はカット割りが早すぎます。3Dが気持ちいいのと、編集のリズムが気持ちいいのとはちょっと違う気がしていました。自分が音楽ものを作るなら、もっとワンカットを長く、人の中に入っていくという漠然としたアイデアがありました。GOMAさんの音楽を聞いて、GOMAさんのライブという一回きりのエネルギーに対して、映画だったらこういうやり方があるというのをやってみたかったし、GOMAさんのエネルギーを映画で表現したかったです。

━━━GOMAさんのライブを目の前で観た感動に浸れました。ライブと当時並行して、「記憶」が一つのテーマになっています。
監督:GOMAさんと一緒に映画を撮ると決めてから、撮影するまでの間GOMAさんとお話をし、ただ聞いたことをインタビューのようにそのまま表現することはしたくなかったんです。聞いた感触というか、イメージを3Dだったら映像で表現できると思ったので、記憶というかGOMAさんの頭の中に入っていく映像を心がけました。ぼくの距離感があってGOMAさんを撮るという映画ではなく、できるだけGOMAさんの中に入っていくというか、GOMAさんに近づきたかったですね。

━━━GOMAさんは今回ドキュメンタリーで自分が映される立場となり、日記や過去の映像、家族の写真など色々なものをさらけ出すことに葛藤があったと思いますが。
 Flashback-s2.jpgGOMA:そこが最初自分の中の大きな壁でした。作るからには、自分のことを全部開いていかないといい物は出来ないとすごく思ったし、もしさらけ出すことが出来ないのなら、作ろうとしてくれている監督やみんなにすごく失礼だと思ったんです。自分をさらけ出すにあたって、自分や家族の今後の人生にどういうフィードバックがくるのかを、すごく考えました。監督やプロデューサーさんと回数を重ねて会っていくうちに、そういうことすら考えなくていい、今のままの自分で普通に仲間としてつき合える人たちだと思わせてもらえたのが、すごく大きかったです。

━━━GOMAさんの話をたくさん聞かれた監督ですが、葛藤している部分はあえて映さず、基本的にはポジティブな面に目を向け、強いメッセージを発していますね。
監督:僕は病気で苦しんでいるところだけではなく、日記にしても全部音楽につながる描き方にしました。軸は音楽で最終的に音楽で構成しよう、そこのエネルギーで押し切りたいと思ったので、内容も衝撃が大きいけれどそこは絡まないというところはどんどん切っていきました。やっぱり映画って映像だけではなくて、音もあるじゃないですか。GOMAさんの演奏が流れているときにリンクするとなると、シンプルに音楽と家族になり、そこに向かっていくものを選ぶと自然とポジティブなものが多かったということだと思います。

━━━はじめてGOMAさんの復活ライブをご覧になったとき、どんな印象でしたか?
監督:気持ちよかったです。音楽のエネルギーが圧倒的でした。僕はいい意味で復帰に至るまでのGOMAさんも事前に映像をちょっと見たぐらいでした。はじめての出会いがGOMAさんの力を出しているライブのときだったので、そこがよかったんじゃないかな。「これを表現しよう!」と思ったんです。

━━━ライブが持つエネルギーですね。3Dとライブシーンがこんなに合うとは思いませんでした。
監督:最初5.1チャンネルでやりたいというのはありましたね。ウーハーの効いた劇場でこの音を浴びたら気持ちいいだろうなと。

flashback-2.jpg━━━むちゃくちゃ気持ちよかったです!
監督:そういってもらえてうれしいですね。気持ちいい映画にしたかったんです。GOMAさんと会った後元気になるので、映画も元気なものにしなければいけない。GOMAさんと会ったときのことを撮るのではなく、会った気持ちをGOMAさんたちの音楽と映画で表現する。それをお客さんに伝えたかったし、そういうものの方が大事だと思うんです。
GOMA:観た人が元気になってくれたらうれしいですよね。
監督:僕がGOMAさんに会うと元気になるのに、映画を観ると「GOMAさんって大変なんだな」と思われちゃうと、映画としてよかったと言われても失礼じゃないですか。ドキュメンタリーは特にそういう作り方をしてしまって、被写体の人はこんなにエネルギッシュなのに、映画の中ではなぜこんなにかわいそうな扱いになるんだろうと。それは関係性があるし、作り手の主観でいいのですが、GOMAさんは音楽をしている人なので表現そのものに対してのリスペクトを崩してはいけない。そこが意外と守られていなくて、「なぜミュージシャンの映画を撮っているのにこんなに元気がないんだろう」と感じることはよくあります。

━━━ラストの演奏が終わってライブの余韻に浸る雰囲気の中、監督の「はい、カット」の声が響いてハッとして現実に引き戻された感がありましたが、あえてそこまで入れた理由は?
 flashback-s3.jpg監督:僕が編集したらあれは入れないです。僕の意図としてはない方がいいと思うのですが、編集の今井さんがニコニコするんですよ。
GOMA:「ここ、いいでしょう」みたいな(笑)
監督:僕そういうの好きなんですよ。僕だけの良い悪いで映画を作っているのではなくて、スタッフが「いや、この映画はこういうことだよ」と言ってくれると、いいよと言えるので。そういうことをしてくれるとうれしいです。整音のタカアキさんも「こんなことをしてくれるの」ということをやってくれるし、僕一人でやるより、スタッフが自信満々でやってくれることがいいです。あの「カット」の声ではなく、あの声の後のGOMAさんの顔で止めているのがいいんですよね。カットの後のGOMAさんの顔をみせたいんです。僕は最後神々しいGOMAさんで終わるつもりでしたが、ふっと戻ってくる感じというか、続く感が欲しかったのです。皆人生は続くから、バシッと終わる映画より、ちょっと続く映画が好きなんですよね。僕の映画は結構そういう、ちょっと蛇足感がありますね。
GOMA:ホッとした顔してますよね。「無事に演奏できた・・・」みたいな。
監督:でもちょっと余裕のある顔で、僕はあれが好きです。GOMAさんは他のライブではいつも泣かれているのも観ていたので。全力を出して、お客さんの前のときはGOMAさんは「できたー」という演奏になるんですよ。泣いて「ありがとう」という。でも映画はそれではいけない気がするんです。映画はちょっと余裕があるという感じで。
GOMA:あれ(ライブシーン)をお客さんのいるところで撮っていたら、また違っていたでしょうね。
監督:「これは映画なんですよ」というのが好きですよね。
GOMA:ライブに普段来てくれている人が映画を観に来ても楽しめます。ライブハウスでやっている僕とは違う僕を観れるという。ライブハウスでやると、お客さんからのエネルギーをもらって、演奏してキャッチボールする感覚で気持ちが上がっていくのですが、それとはまた違うエネルギーでやっていました。自分で観ていて面白いです。
監督:「ライブと同じことをやってください」というのは嫌なんです。『ライブテープ』もそうで、ライブのそこは演出できませんから。映画を撮っているときは映画の顔というか、そこが見たいんです。いいライブを撮るのなら、ずっと追いかけてライブ映像を集めてやればいいわけですが、別にそういうことをしたいのではなく、映画を撮っている状況の時間をみせてくださいということですね。そういう点は編集の今井さんと合うんです。映画に対する批評的な面があるというか、その中で100点満点を目指すのではなく、お客さんが「あれ」と思うような部分を残す。そこはインディペンデントの作り方かもしれません。
GOMA:音がすごくいいです。音が生々しいというか、あまりディジュリドゥの録音を聴いて「いい音だな」と思ったことがないのですが、今回は本当にライブな音をしています。ベラッとした音になりがちですが、体感する楽器なのでその波動みたいな部分をカットしてしまうエンジニアが多くて。タカアキさんが作ってくれた音はすごく立体感があって、音を浴びる感じがします。

━━━日々自分と向き合うのは大変なことですが、GOMAさんは記憶を失うことで、過去に捉われず今の自分と真摯に向き合い続けていますね。
 flashback-3.jpgGOMA:脳に傷があるとお医者さんに言われて、傷ついた脳の細胞が元に戻ることはないと言われたときはショックで、最初は左半身の麻痺があったのでしゃべるのもうまく舌が回らなかったり、一度本当にどん底まで落ちたというか、人生終わったなというところまで行ってしまいました。でも人間って落ちるところまで落ちて、毎日泣いて泣いて涙が出なくなってくる。そうすると、少しずつ暗闇の中に光が見えてきて、家族や周りの仲間の支えもあって、残された何パーセントに望みをかけて「リハビリがんばるぞ」という気持ちになってきて、すごい進化を感じるんです。その進化が自分で少しずつ分かるようになる段階に来たとき、脳の記憶するところのシナプスが少しずつ繋がってきているんです。過去の自分の記憶が少し残っているから、ちょっと前の自分と比べられるようになってきていて、事故から2~3年半ぐらいで、少し前の自分と今の自分を比べられることが分かってきたとき、「よっしゃ、がんばるぞ」という気持ちになれました。身体のリハビリと一緒に、精神的な部分も鍛えられていきます。心と身体はすごくつながっているんだなと思います。今の自分の持っている身体と脳をどういう風に使って生きていけばいいのかを考えるようになってきました。

━━━最後に、この作品はお二人にとってどんな意味を持つのでしょうか?
 Flashback-s4.jpg監督:僕にとってGOMAさんとの出会いはこの映画がきっかけなので、生き方レベルで影響を受けざるをえないです。他にいないです。体験していることが全然違うというか、同じものを見ていてもGOMAさんだったらどう思うか予測がつかないですし。そういう人がいるんだというだけで、自分の中でもすごく幅が広がりました。もう一つは、震災の後これを作っていたので、それが自分にとって良かったです。どうやってこの国で生きていこうかと思ったときに、「GOMAさんだったら・・・」と考えたので、それはとてもいい形でこの映画に向かって表現することができました。映画自体がどうのというより、そちらの方がずっと大きいですね。
GOMA:僕はこの映画が完成したのを見たときに、「やっと人生の2回目のスタートラインに立てるな」、そう思わせてもらえたんです。事故から3年間、自分のわからなくなった過去を掘り返すことばかりしていたけれど、こういうのはもうやる必要がなくなった。そう思わせてくれたのが監督であり、高根プロデューサーであり、配給でがんばってくれる直江さんとかタカアキさんとか今井さんとか、みんなの支えがあってこの形になってきていると思うから、これからようやく人生2回目のチャレンジが始まるなといった感じです。  (江口 由美)

sennnen-b550.jpgsennen-2.jpg『千年の愉楽』舞台挨拶
(2012年 日本 1時間58分)
監督:若松孝二
出演:寺島しのぶ、佐野史郎、高良健吾、高岡蒼佑、染谷将太、山本太郎、井浦新
2013年3月9日(土)~テアトル新宿、テアトル梅田、第七藝術劇場、京都シネマ、シネ・リーブル神戸にて公開
公式サイト⇒ http://www.wakamatsukoji.org/sennennoyuraku/
(C)若松プロダクション

 

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  若松孝二監督の遺作となった中上健次原作の映画「千年の愉楽」(若松プロ)が14日、京阪神の劇場で特別に先行上映され、主演カルテットの高良健吾、高岡蒼佑、井浦新、佐野史郎が神戸、京都、大阪・梅田、十三の4劇場をPR行脚した。いずれも大入り満員の盛況で、質疑応答もある舞台挨拶はさながら若松監督の追悼集会のようだった。

 


sennen-b5.jpg―――若松監督の思い出は多いと思うが? 
佐野:監督とは舞台の状況劇場からのお付き合いで、32年ぐらい仕事させてもらった恩師。「千年の愉楽」やろう、と言ってもらってうれしかった。監督の内なるメッセージが感じられる。その中にいられるのがしあわせでした。
監督とはよく飲んで、3時ごろまで話したこともあった。(テオ・)アンゲロプロス(監督)の話になって、若松監督は反逆とか政治的な面で語られるけど、映像詩人なんだと思った。監督は亡くなったけれども、今までの作品の中にいらっしゃるし、監督が教えてくれたことを伝えていきたい。
高良:僕の役、半蔵が死ぬシーンはたまたま雨で中止になり、11月11日に撮ることになった。この日は偶然にも僕の誕生日でした。死ぬ役は役とはいってもつらくて引きずったりするけど、誕生日だから死の方から生きることを感じることが出来た。生まれては死んでいく、そういう物語の感覚になれました。
 sennen-b2.jpg高岡:ちょうどこのお話もらった時、世間をお騒がせしてましたが、そんな時、監督に話したら「そんなもの、人生のちょっとした1ページだよ。オレなんか公安に目付けられちゃって、入れない国もあるんだよ。まあ大丈夫だよ」と言われて、この人、すごいなあと思った。監督に安心して任せることが出来ました。どこかで生き続けてて見てくださってると思います。
 井浦:私は冒頭で死んでしまう彦之助の役ですが、大変、ということではないけどホームレスの人が実際に生活しているところで撮りました。撮影が終わってスタッフが撤収作業に入ってる時も監督だけはじっとたたずんでいて、すべて終わった後、住人の皆さんに感謝の気持ちを伝えていた。これが若松さんだ、と惚れ込んでてしまうところですね。権力やシステムを嫌う監督だけど、人間の本質を知ってる、筋を通す人だと…。
今回も、全国の単館系の人々との付き合いを大事にするという監督の思いからこんなことが出来たと思う。
何にも分からない素人の自分に一から教えてもらい、息子のように可愛がってもらった。今は何も考えないようにしている。だけど、この映画を上映出来て、映画館がある限り、新作はこれが最後だけれど、若松監督の映画は続いて行きます。

sennen-b1.jpg―――若松監督の撮影現場で大変だったことは? 
佐野:僕たちよりも、急な階段での撮影が多く、片肺の監督が大変だったと思う。いつもテストなしで「ハイ、本番」なんだけど、ファーストカットでいきなり本番撮影だったのはさすがに初めてでびっくりした。それぐらいかな。
高良:終わってみると大変なことも全部コミコミで、あー楽しかったな、と。若松組は「段取りがない」と聞いていた。これまでにも「自由にしていい」という組もあったけど、けっこう自由じゃない組もあった。だけどこの組はホントに自由だった。デカい安心感があった。正味4日間の出番だったけど、楽しかった思い出しかない。
 sennen-4.jpg高岡:ファーストシーンからラブシーンで、そこが大変だった。いきなりみんなの前でお尻を出して、から始まって、メイクさんたちにも全部見られたことで心が解放された。撮影見たことない人が見に来ていて、70歳ぐらいのおばあちゃんが日に日に化粧濃くなっていくのが凄かった。
井浦:「千年の愉楽」の前に佐野さんとテレビの番組やっていて、その後だったので、どういう顔して佐野さんと会うのか、後ろめたい気持ちがあった。それが一番大変だったけど、その分、佐野さんとも気持ち良く飛べた。「楽しかった」それしかないですね。

sennen-3.jpg――監督は「愛ある罵声」で知られてますが、今回の罵声は?
佐野:直接はなかったけど、お経詠むシーンでは、何詠んだらいいか、先に聞いていた。時間かかって、そこにエネルギー使って紀州弁の習練が足りなかった。そんなに(紀州弁が)ないから、と思っていたのに、現場行ったら井浦が思いっきり紀州弁で「こいつ裏切りやがったな」と思った。  監督から「佐野ちゃん、ナマけてたんじゃないの。お経はいいけど」とチクリと言われて、それがズシリときた。
 sennen-b4.jpg井浦:この作品ではあんまり“罵声”浴びなかったですね。比較的静かな現場だった。監督が怒りをぶつけた「連赤」(実録連合赤軍  あさま山荘への道程)の時はまともに怒っていて、朝起きたらけんか、怒られるたびにこちらも怒りが燃えたぎってきて、現場行くときに「監督とけんかしに行くぞ」と気合い入れて、その怒りを芝居にぶつける、それが映画のエネルギーになってたと思う。
でも、現場が終わると普通に和やかに会話して、酒飲んで何にも後に残さない。お釈迦様の手のひらの上で遊ばせてもらってたんでしょうね。
監督は怒る人を決めていた。「連赤」の時は、大西信満で、ちゃんと(罵声に)耐えられるかどうか、先に調べている。僕もどなられたけど、大西は凄かった。「~三島由紀夫」の時は満島真之介が怒られ役だった。でも、怒鳴ることで全体をピリッと引き締めていたと思う。
 sennen-b6.jpg佐野:「連赤」などに比べると「千年」の現場は静かで監督もずっと穏やかだった。だけど、スタッフにはいつものように厳しかった。この撮影では一度、照明さんが怒られた。「漫然と(光を)当ててるんじゃねえ」と。それは役者にも同じで、監督は照明さんに「何を映したいんだ」と言いながら、役者にも「お前は何をどうやりたいんだ」と問いかけているんだ、と思った。
(安永 五郎)

 

kiiroizou-s550.jpgkiiroizou-1.jpg『きいろいゾウ』舞台挨拶レポート
(2012.12.23 大阪ステーションシティシネマ)
ゲスト:宮﨑あおい、向井理  サプライズゲスト:本田望結
(2012年 日本 2時間11分)
監督:廣木隆一 
原作:西加奈子著『きいろいゾウ』小学館
出演:宮﨑あおい、向井理、柄本明、松原智恵子、リリー・フランキー、緒川たまき、濱田龍臣、本田望結
2013年2月2日(土)~新宿ピカデリー、大阪ステーションシティシネマ、なんばパークスシネマ、神戸国際松竹、T・ジョイ京都他全国ロードショー

公式サイト⇒http://www.kiiroizou.com/
(C) 2013西加奈子・小学館 / 「きいろいゾウ」製作委員会

作品レビューはコチラ

 西加奈子のロングセラー小説『きいろいゾウ』が、自身も同作の大ファンという宮﨑あおいと向井理を迎えて映画化され、『軽蔑』、『ヴァイブレーター』の廣木隆一監督がファンタジーとリアルが交錯する原作を、実感ある夫婦の物語に仕立てあげた。
 2013年2月の公開を前に、大阪ステーションシティシネマで行われた先行有料試写会では、上映後に主演の宮﨑あおい、向井理が登壇し、作品の余韻に浸る観客を前にツマとムコさながらのゆったりトークを展開、途中からサプライズゲストの本田望結がサンタクロース姿で登場し、会場からも歓声が沸く場面もあった。一足早いクリスマスプレゼントとなった、宮﨑あおい、向井理、本田望結による舞台挨拶をご紹介したい。


kiiroizou-s1.jpg(最初のご挨拶)
宮﨑:みなさん、こんばんは。今日は見に来て下さって、本当にありがとうございます。とても大好きな原作で、この作品の中に自分が入れたことを光栄に思います。みなさんが見られてどんな感想を持たれたのかとても気になりますが、心を込めて作った作品なので、好きでいてもらえたらいいなと思います。
向井:こんばんは。ムコ役を演じさせていただいた向井理です。この映画は今年の4月に三重県で撮影していました。とてもいい所で、ロケーションの力にも助けられた作品になっていると思います。よろしくお願いします。

━━━お二人は初共演ですが、宮﨑さんが最初に向井さんにどんなイメージを持っていましたか?
宮﨑:なんかシュッとしてますよね。背が高くて、スキがないイメージがありました。でもお会いして、ツマとして時間を共有している間はシュッとした感じが全然ないんです。現場でもムコさんとしてぼぉ~っとしていて。
向井:シュッとしているのは、仕事用なんです。
宮﨑:こんなにちゃんとスキがある人なんだなと、すごく面白かったです。

kiiroizou-s2.jpg━━━向井さんは最初宮﨑あおいさんにどんなイメージを持っていらっしゃいましたか?
向井:あまり誰に対しても「こういう人なのではないか」というイメージを持たないので、印象としてこんな人だと思ったことはないですね。(実際に共演してみると)面白い人ですよ。鼻歌歌っているし、変な絵を書いているし。でも芯が強いんですよ。お互い同じ場所にいるのですが、別々のことをしていて、現場で話すこともあったりなかったりで、むしろ会話は少ない方だと思います。それでも、お互いに無駄に自分たちのテリトリーを壊さないで、自分たちの距離間を保っていたので、本番でも本番じゃないときもずっと同じテンションでいられて、やりやすかったです。居心地が良かったです。

━━━映画でもファンタスティックな場面や現実的な場面が登場し、演じる上では難しいのではないかと思いましたが、宮﨑さんはツマを演じるにあたって、こうしようというイメージはありましたか?
宮﨑:こういう風にやろうというのは、いつもないですね。こういう服を着ているなとか、こういう髪型をしているなというイメージが沸くことはあります。(前髪を切ったことについて)原作を読んだときも、台本を読んでもちょっと変わっている印象があったので、自分で切っちゃった前髪といった感じかなと思いました。だんだん短くなるんですよ。ほとんど順撮りで撮っているので、前半戦は割と長めのまゆげからちょっと上がったぐらいなのですが、後半戦はムコさんがいなくなってから大変なことになっていて、前髪が全部立つぐらいになっているので、その辺を注目して2回見てください。

━━━向井さんは無精ひげをはやしていらっしゃいましたが、ムコさんはこんな感じとイメージされたのですか?
向井:監督とも相談して、物書きということもあったので、特に外見にこだわりのない人だと思ったので、髪型もボサボサですし、ヒゲもはやして、メイクもせずスッピンでした。

━━━あと、関西弁がなめらかで、全然違和感なかったですよね。
向井:大丈夫でしたか?結構不安だったのですが。(会場拍手)

━━━ツマとムコがデートするなら大阪ではどこがいいですか?
向井:どこやろね~(会場笑)彼らに対してあまりハイカラなイメージがないので。大阪はすごく近代的だから・・・食べるのが好きな二人なので、食い倒れたいです。

kiiroizou-s3.jpg~本田望結ちゃんが、サンタクロースの姿でプレゼントを手に登場!~

━━━ご挨拶をお願いします。
向井:宮﨑あおいさんの子どもの役を演じた本田望結です。よろしくお願いします!

━━━映画の中で髪が短かったですね。
本田:髪の毛の短い子の役は初めてだったので、びっくりもあったし、不思議な感じもあったし、すごく楽しかったです。

━━━今日は大きな袋を下げていますが、プレゼントがあるんですか?
本田:ツマさんとムコさんの似顔絵を書きました!

~宮﨑さんと向井さんに望結ちゃんからプレゼントを贈呈~

━━━宮﨑さん、向井さん、感想はいかがですか?
宮﨑:私はよく目が離れていると言われて、魚顔だと自称しているのですが、目がちゃんと離れているのでうれしいです。ありがとうございます。
向井:すごいね。ちょうどくせ毛でいつもこうなるので、よく見てるね。髪質がそっくり。
本田:向井さんと宮﨑さんに、書くときは似てると言ってもらえたらうれしいなと思っていたけど、似てると言われてちょっとほっとしました。

━━━望結ちゃんは映画の中で絵本を読むシーンがありますが、どんな気持ちで撮りましたか?
本田:絵本の中に出てくるのは初めてだったので、楽しいのもあるし、うれしいのもあるし、向井さんと望結で二人で声を撮ったときはドキドキもあったし、楽しかったし、うれしかったし、いろんな気持ちがありました。
向井:僕はきいろいゾウ役もやっているので、あの時は本当に手をつないで撮影したもんね、監督の指示で。
宮﨑:私はその撮影の時、見学に行きました。一日だけだったので、どんな風に撮影しているのか見たかったので。二人で声を撮っているときも、はしっこでニヤニヤしながら見ていました。

kiiroizou-s4.jpg━━━最後に、ご挨拶をお願いします。
向井:この映画はご覧になっていただいたとおり、これが僕たちの作った『きいろいゾウ』です。キャストもとても少なく、登場人物も少なく、人物設定も分かりやすく、こだわりのある映画になっていて、僕もこの映画をどう表現していいのか正直まだわからないところもあります。後半から全然違う映画になって、初めて見たときは2本映画を見たような、それぐらい前半のゆるい雰囲気と後半のとがったカットと、色々な要素が入った映画になっています。この映画がどんどん大きくなるのは、自分たちの力だけではできませんので、ぜひ多くの方に伝えていっていただきたいと思います。今日はありがとうございました。
宮﨑:この映画の中では心が痛くなったり、悲しくなったりするシーンがたくさんあったと思います。でもきっと自分が大切だと思う人と向き合うということは、もちろん幸せなことはいっぱいあるけれど、そういう痛い部分も必ず付いてくることで、それと一生懸命向き合おうとする夫婦のお話だと思います。ぜひ、みなさんがこの作品を広めていってくださればと思いますので、どうぞよろしくお願いします。(江口由美)

★吉本興業提供★

R-18-1.jpg『R-18文学賞 vol.1 自縄自縛の私
 舞台挨拶付特別試写会プレゼント!

・日時:2013年1月22日(火)19:00開演

・会場:梅田ブルク7 
    大阪市北区梅田1-12-6 E-MAビル7F

・登壇者:竹中直人監督、平田薫(予定)

・募集人数: 5組 10名様

・締切:2013年1月14日(月・祝)

・公式サイト⇒ http://www.r18-jijojibaku.com/



「R-18文学賞 vol.1 自縄自縛の私」


監督:竹中直人  制作企画:奥山和由  

原作:蛭田亜紗子「自縄自縛の私」(新潮文庫刊)                    

出演:平田薫、安藤政信、綾部祐二(ピース)、津田寛治  

主題歌:「No Reason」LOVE PSYCHEDELICO

配給:よしもとクリエイティブ・エージェンシー (C)吉本興業 R15+

R-18-3.jpg 誰でも人にはいえない愉しみを持っていて、そのささやかな時間の中で、自分を慰めいたわり、日々なんとか健気に生きている…。たまたま、彼女の場合は、それが<自縄、自分で自分の身体を縛ること>だった。OLの百合亜は、奴隷のようなサービス残業、部下からのいじめ、など蓄積されるばかりのストレスを解放する手段として、自縄を密かな趣味としてあたためてきた。ブログ経由で知り合った「運命の人」との出逢いから、次第に大胆な冒険を重ねていく…
 

R-18-2.jpg 「女による女のためのR-18文学賞」大賞受賞作を竹中直人監督が映画化。細やかでみずみずしい、フェミニンな資質を見事開花させ、新境地を見せた。絵本のような語り口を駆使し、絶妙な距離感で、女の子ならではの心象を丁寧に編み上げていく。新ミューズに平田薫が抜擢。スレンダーで透明感のある女優として同性から熱い支持を集める彼女が、今回はヒロインの複雑な心もようを、さらりとした演技で表現する姿に誰もが共感するだろう。


2013年2月2日(土)~梅田ブルク7、TOHOシネマズなんば、T・ジョイ京都、109シネマズHAT神戸にて公開

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