「京都」と一致するもの

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映画・ドラマに次々出演池田エライザ
も登壇!
注目の若手俳優が一挙登壇の舞台挨拶

池田の「エライザや~、で!」の挨拶&関西弁の胸キュンセリフに大阪の観客もお墨付き!

 
小学館「ベツコミ」で連載され、コミック累計100万部を突破した「一礼して、キス」が遂に実写化。映画『一礼して、キス』が11月11日(土)に全国ロードショーを迎えました。

公開を記念しまして公開翌日の11月12日(日)なんばパークスシネマにて、メインキャストを務めました池田エライザ、中尾暢樹、松尾太陽による舞台挨拶を実施いたしました。


日時:11月12日(日)17:00~17:20 
場所:なんばパークスシネマ スクリーン④
登壇者: 池田エライザ/中尾暢樹/松尾太陽


司会の紹介に続き現れた本日のゲスト、池田エライザさん、中尾暢樹(なかおまさき)さん、松尾太陽(まつおたかし)さん。会場は満席、またゲストの名前を書いたカードも多く見られるなど、今注目&人気のゲストの登場に、会場からも大きな拍手が起こりました。

――まずは映画のタイトル『一礼して、キス』にかけて、それぞれが一礼してから挨拶をお願いします。
ichireisite-butai-240-2.jpg池田が「今日はみなさんにとって大切な日曜日にこの『一礼して、キス』の舞台挨拶に来て頂きありがとうございます!大阪ということで・・・太陽の地元!(客席に)お帰りーって言ってあげて!」と促すと会場から大きな「お帰りー!」の声が。大阪出身の松尾も「ただいま!」と嬉しそうに答えた。さらに池田は松尾の所属する超特急での自己紹介を真似、「エライザや~、で!」とポーズを決め、会場を盛り上げた。

続いて中尾もまずは「大阪のみんな・・・俺や~、で!」ともはやお約束の自己紹介。「今日は上映前と言うことで、もっと面白くなるようにみどころとか伝えていけたらと思います!」と挨拶。

そして挨拶トリは大阪出身の松尾。「みなさん、“ほんまもんの”たかしや~、で!」と挨拶すると、地元大阪のファンから大きな歓声が上がった。


――公開初日を迎えた気持ちは?
ichireisite-butai-240-1.jpg中尾は「映画を見返すと綺麗な恋愛ではなくて、共感できない部分もたくさんある。でも恋愛ってそういうものだと思うし、そう言うところを含めて恋愛っていいな思って、また恋愛したいなって思ってもらえたらいいと思います。」と答え、続けて(自分が演じた)三神のダメなところは?と言う質問には池田が「すぐ触る。劇中の三神すぐ触る!」と答えると中尾も「あれはギリギリセクハラ!同意の上です(笑)」と作中の役での演出について語った。

 
――(松尾さんに対し)劇中では標準語の役柄。関西弁が出てしまうことは?
松尾が「役を演じている時は大丈夫なんですけど、気が緩むと(自然体の役だったので)ぽろっと出てしまったりするので、あまり抜けすぐないように気を付けました。」と撮影中の苦労を話すと、中尾は「俺は勝手にキュンとしてたよ(笑)」と言い、すかさずフォローしていた。

大阪での舞台挨拶と言うことで、関西の話に。中尾は「最近一人で京都旅をして湯葉とか豆腐とか、お出汁も東京と違ってて凄く美味しかったです。さっきも串カツの“だるま”の話も聞いたし、タコ焼きがあったりして食べたんですけど、いいとこだなと思いました。」と大阪の名物でも


――初対面と今で、印象が変わったところはありますか?
ichireisite-butai-240-3.jpgまず池田が「中尾君は弓道の練習に対しても、取材の時もずっとまじめだなと思いました。」と言うと中尾も「しっかりした人が来たな」と互いに真面目な印象を持ちそのままの人柄だったことを明かした。

松尾は「自分は全部で2日間くらいしかいれなかったけど、そこまで緊張せず、この現場じゃないと(自分が演じた)自然体の役はできなかったんじゃないかと思うくらい全然気を遣うことなくいれた印象があります。」と答えると、横にいた池田が「イェーイ!」とハイタッチ!現場から続く仲の良さが現れていた。

 
――注目してほしいポイントや、お気に入りのシーンは?
松尾は「作品が弓道をテーマにしているので、(弓矢を)引っ張ってから、離れをするまでの張りつめた時間とか、ドキドキする感じが映画館でしか感じられないと思うし、それと恋愛のドキドキとが、全然違うものなんだけどリンクするところを作品を通して見つけてほしい。色々なドキドキを見つけてほしいです。」と答え池田は「(主人公の)杏ちゃんが走ると物語が進むと思った。それが青春だな!走ってたな学生時代!と思ったので、杏ちゃんが走るところに注目してみてほしいです。」とそれぞれのオススメポイントを話した。


ichireisite-500-2.jpg――胸キュン台詞がたくさんの本作。大阪の舞台挨拶なので、関西弁で聞かせてもらえますか?
「面白くなっちゃいますよ?」と心配そうに聞く中尾にMCから「でもそれをカッコよく決めるのが中尾さんじゃないですか!」と上手くのせられ、「そうですね、中尾さんです。」と逆にやる気を出す中尾。池田は「頑張れ」と中尾を励ますが、MCから「池田さんもありますよ?」と言われると「・・・帰る」と舞台を降りようとするが、すかさず中尾と松尾が引き留める事態に。まずは池田が関西人のMCや松尾から教えてもらいながら「今から練習なん?頑張ってな!」と言うと、客席から「可愛い―!」と言う声が続出。「ちょっと違ったね、ごめんね。」と言うが、松尾からは「いや、そんなことないですよ。100点!」と絶賛。


ichireisite-500-1.jpg続いて中尾が挑戦。池田が映画監督ばりに「本番よーい!あい!」とスタートすると、「もっとちゃんと~、俺のもんになってな~」とぎこちなく関西弁を発表、会場からは慰めの?拍手が起きるがフォローのためにもう一つ発表することに。続けて「好きだからやで!」と今度はしっかりと決めると、関西弁のプロ?の松尾は「1回目と2回目と合わせて100点になりました!」と池田に続き太鼓判を押した。そして最後はMCから「やっぱり本物聞いて終わりましょ!」と促されると、松尾は「もっとちゃんと、俺のもんになってや!」と決めると会場からも拍手とため息のような歓声が上がり、中尾も「これか!」と感心していた。


フォトセッションでは、通常のポーズに加え、ゲストの3人が「タカシやで!」ポーズを決めるなど、サービス満点の演出を披露。3人とも同い年と言うこともあり、仲のよさが垣間見えた。

ichireisite-butai-500-1.jpg最後に池田の「この映画は私の初めての主演映画となりました。これからいろんな映画に出ても初めての主演はこの作品だと言われていく作品なので、愛情を持ち続けていきたいという想いでいっぱいです。なのでこの作品を観に来て下さる皆さんに“ありがとう”と伝えたいです!こうやって大阪の皆さんとラフにお話出来て嬉しいです、温かく迎え入れてくれてありがとうございます。皆さんこの作品を観てドキドキして下さい!」という本作への強い想いと、関西への感謝に溢れるコメントで舞台挨拶は終了した。


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<後輩男子>が、<先輩女子>に、恋をした━。今秋最高の偏愛映画、遂に公開。
コミック累計100万部突破の大人気恋愛漫画「一礼して、キス」(小学館「ベツコミフラワーコミックス」)完全映画化。
恋を知らずに、相手を傷つけるほど愛してしまう曜太。愛を痛いほど感じて、相手に応えてしまう杏。
不器用な曜太の杏への想いは、胴着男子のイケメンたちの登場で、さらに大混乱!?

【キャスト】

ichireisite-butai-200-1.jpg★池田エライザ(いけだえらいざ)1996年4月16日生/福岡県出身
…中学から6年間青春を弓道に捧げてきたピュアな先輩女子岸本杏役
モデルや映画にドラマと人気急上昇中。モデルとして活躍し、女優としては2011年『高校デビュー』で映画初出演。2015年『みんな!エスパーだよ!』のヒロインに抜擢され、以降女優業が急増。主な出演作に「JKは雪女」(15・MBS)、「SHIBUYA零丁目」(16・CX)、『オオカミ少女と黒王子』(16)、「ホクサイと飯さえあれば」(17・MBS)、『ReLIFE リライフ』(17)、『トリガール!』(17)、『伊藤くんA to E』(18公開予定)がある。


ichireisite-200-2.jpg★中尾暢樹(なかおまさき)1996年11月27日生/埼玉県出身
…先輩・岸本杏の弓道をする姿に恋をした<後輩男子>の三神曜太役
2014年芸能活動をスタート。2016年2月放送開始「動物戦隊ジュウオウジャー」にて、主演のジュウオウイーグル/風切大和を演じ、一躍、注目を浴び、今後の活躍が期待されている。主な出演作に、「人は見た目が100パーセント」(17・CX)、「あいの結婚相談所」(17・テレビ朝日)がある。


ichireisite-200-3.jpg★松尾太陽(まつおたかし)1996年9月23日生/大阪府出身
…三神曜太の親友、由木直潔役
2010年、『大奥』(金子文紀監督)に出演して芸能界デビュー。11年に結成されたメインダンサー&バックボーカルグループ「超特急」のバックボーカル・タカシとしても活動し、他のメンバーとともに15年の映画『サイドライン』(福山桜子監督)で主演を果たす。松尾太陽名義で出演した作品に映画『一週間フレンズ。』(17/村上正典監督)、連続ドラマ「花にけだもの」(dTV・FOD)などがある。


【ストーリー】
ichireisite-pos.jpg中学からの6年間を弓道に捧げてきた、岸本杏(あん)。弓道部の部長は務めているものの、結局、満足のいく結果も出せないまま、高校三年生で挑んだ夏の大会が終わってしまう。次期部長は、後輩の三神曜太(ようた)。普段から、ほとんど練習もしないのに、入部した当初から、天才ぶりを見せつけ、大会でもいとも簡単に優勝してしまった三神に複雑な思いを抱える杏。そして、杏はついに引退を決意し、三神に部長の任を引き継ぐことに。だが、それを知った三神は、杏に“あるお願い”をしてきて…!?「俺は先輩の事、ずっと見てましたよ…。」三神の一途な愛がさく裂…。二人は無事、結ばれるのか?


監督:古澤健
出演:池田エライザ/中尾暢樹/松尾太陽/鈴木勝大/前山剛久/萩原みのり/結木滉星/金森啓斗/奥仲麻琴/押田岳/牧田哲也/吉岡睦雄/佐藤友祐(lol-エルオーエル-)(特別出演)/眞島秀和
原作:加賀やっこ「一礼して、キス」(小学館「ベツコミフラワーコミックス」)
主題歌:lol-エルオーエル-「think of you」
Ⓒ2017加賀やっこ・小学館/「一礼して、キス」製作委員会shitekiss.com

2017年11月11日(土)なんばパークスシネマにて公開中

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初主演、岸井ゆきのが監督に感謝したことは?『おじいちゃん、死んじゃったって。』舞台挨拶@テアトル梅田 
登壇者:森ガキ侑大監督、岸井ゆきの(主演)
司会:島拓生プロデューサー
 
有名CMを手掛けてきた森ガキ侑大監督のオリジナル脚本による長編デビュー作、『おじいちゃん、死んじゃったって。』が、11月4日(土)からテアトル新宿、テアトル梅田他で絶賛公開中だ。岩松了、光石研、美保純、水野美紀というベテラン勢の中で長編初主演を果たした岸井ゆきのと森ガキ監督が、11日(土)12:20の回、上映終了後舞台挨拶に登壇し、大阪の観客の前で、撮影の模様を振り返った。
 

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開口一番、「『ブレードランナー2049』より、こちらを選んでくれて感謝します!」と感動の面持ちの森ガキ監督の横で、「関西で撮影がある時はカレー屋をハシゴしていました。関西はスパイスカレーがいっぱい」と、岸井ゆきのは映画のインドロケにつながるカレー好きを披露。初監督の本作を携え、初の大阪舞台挨拶となる森ガキ監督は、「初めての長編映画を大阪の方に観ていただけるのがうれしいです。こうやって映画は多くの人に広がっていくのだなと思いました。大阪の取材では、東京よりもメディアの方の反応が良く、『この映画はいいので、自信を持って!』と言っていただきました」と感想を語ると、岸井も「最初は不安で落ち込み、小さくなっていました。現場で真ん中に立てるか、やるからにはしっかりしなければと色々考えていたのです。いざ現場に入ると森ガキ組のみなさんが、私たち(キャスト)の居心地のいい環境を丸ごと作っていてくれました」と監督に感謝しながら、初主演の感想を語った。

 

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岸井の言葉に森ガキ監督は、「撮影では2週間ぐらい一緒に寝泊まりする訳ですが、スタッフ間でケンカがあっても、(キャストには)絶対に見せない。そして、現場では絶対に感情を出して怒らないようにしました。疲れながらもそこは頑張りました」。さらに、ヒロイン吉子を演じる岸井について「ベテラン勢がいる中、中心に立ち、ストーリーを展開する役。つかみにくいキャラクターを演じきってもらい、東京でも岸井信者が増えました。後半『ゲロが出る』と言葉は荒いですが、その表情にキュンとするはず」と絶賛。そんな岸井の思い出に残るシーンとして挙げたのは、1カットで撮影された朝食のシーンだという。「舞台っぽく、皆アドレナリンが出ていて、いいグルーブ感」「最初は自由にアドリブを言い、誰かが脚本の台詞を言ってから、脚本の流れに戻っていく」と本当の家族のような空気が流れていた撮影の模様を振り返った。
 
 
初主演作でインドロケにも臨んだ岸井。予防接種を6本も打って、覚悟をもって旅立ったというインドは「大好き!楽しかったです。除菌スプレーさえあればどこへも行けると思いました」と撮影を心から楽しんだ様子。森ガキ監督も「人生で1度は行っておくべき場所」と価値観がひっくり返るようなエピソードを披露した。
 
 
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観客によるフォトセッションに笑顔で応えた後、オリジナル脚本による映画作りについて「今はオリジナル作品を撮るのが難しく、瀬々敬久監督(『64-ロクヨン-』)から、(オリジナル作品が)全国で上映されるというのは、本当にないことだと言われました。脚本の山﨑さんと3年間悩んで書き、イメージ通りに撮影できた。こういうことは今の映画界の状況では少ないこと」と振り返った森ガキ監督。「映画は残っていくもの。CMとはまた違う」とこれから口コミで広げてと訴えた。岸井も「観てもらえてうれしいです。熊本(人吉市)で2週間、インドでも撮影し、家族を一生懸命描きました。この映画は、もっと大きくなっていくと思います」と締めくくり、大阪舞台挨拶を終了した。

 
今人気上昇中のYogee New Waves(ヨギーニューウェーブズ)の書き下ろし曲が、作品の世界観と馴染む家族物語。これからの成長が楽しみな二人の初タッグ作をお見逃しなく!
(写真:河田真喜子、文:江口由美)
 

<作品情報>
『おじいちゃん、死んじゃったって。』(2017年 日本 1時間50分)
監督:森ガキ侑大
出演:岸井ゆきの、岩松両、美保純、光石研、水野美紀、岡山天音、小野花梨他
2017年11月4日(土)~テアトル新宿、テアトル梅田、神戸国際松竹、MOVIX京都他全国順次公開
(C) 2017 『おじいちゃん、死んじゃったって。』製作委員会
※第30回東京国際映画祭日本映画スプラッシュ部門公式出品
 
 
 
 

 

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チェン・ユーシュン監督、ダークコメディー『健忘村』に込めた思いを語る。@第9回京都ヒストリカ国際映画祭
登壇者:チェン・ユーシュン氏(監督) 
    飯星恵子氏(作家・タレント+ヒストリカ・ナビゲーター)
 

~権力を手にすると人はどうなるのか。

支配する側とされる側が記憶操作で入れ替わる、示唆深いダークコメディー~

 
10月28日から開催中の第9回京都ヒストリカ国際映画祭。7日目となる11月4日は、ヒストリカワールド作品として、『健忘村』(17台湾・中国)が上映された。中華民国設立直後の山村を舞台に、スー・チー、ワン・チエンユエン、 ジョセフ・チャン、リン・メイシュウ、トニー・ヤン、エリック・ツァンと豪華出演陣が繰り広げるブラックコメディー。とりわけ、記憶を消すことができるマシン「憂い忘れ」の造形や仕組みのユニークさは、衝撃的だ。記憶を消去するたびに変わる村人たちの態度や、支配者の入れ替わる姿が非常に示唆深い作品だ。上映後は、ヒストリカ・ナビゲーターの飯星恵子氏が聞き手となり、『ラブゴーゴー』(97)以来の来京を果たしたチェン・ユーシュン監督のトークショーが行われた。
 
 
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『祝宴!シェフ』(13)の前に、既に脳の記憶に関する短編を撮っていたというユーシェン監督。元々それを長編にしたいという思いがある中、台湾の社会的問題がネットで話題になっても1週間で忘れられてしまう状況に、人の記憶の忘れやすさを痛感し『健忘村』を撮影したと制作の経緯を明かした。辛い記憶を忘れさせるツールとしてマシン(「憂い忘れ」)を使うことで、別の意図が発生すると指摘したユーチェン氏。飯星氏から「忘れることができていいなと思う一方で、恐怖を覚えるホラーのように感じた人もいるようです」と話を振られると、「元来コメディーが得意ですが、ここ数年、推理モノやホラーも加えることを考えました。記憶を喪失するのは嬉しいことなのか、怖いことなのかは場合によると思います」と色々な意味が内在していることを示した。
 
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飯星氏からマシンのデザインのこだわりについて話が及ぶと、「マシンのデザインは長期間練りに練り、何度も修正しながらデザインを考えました。昔の時代のものやドイツのナチスが処刑に使ったもの、第二次世界大戦中実際に使っていたものなど、色々参考にしました」。さらに、頭に載せることができる固定式であまり動かないバージョンと、3層になり頭に載せられないバージョンの2種類を用意。とても精巧なものなので、現場で俳優陣も丁寧に扱ってもらっても壊れることが多く、美術部は大変だったとの裏話もユーチェン監督は披露した。
 
個性豊かなキャラクターが多いのもユーチェン監督作品ならでは。『祝宴!シェフ』よりキャストが多く、「それぞれの役割で個性を変えているのに加え、「憂い忘れ」の兜をかぶると個性が変わるので、多い人は3種類も個性を演じなければならない。ジョセフ・チャンも2種類の個性を演じましたし、本当に大変。毎日ホテルで自分が、「憂い忘れ」をかぶり、忘れてしまいたいと思いました」と演出面の苦労は相当のものだったようだ。
 

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秋蓉演じるスーチーが足に鎖をつながれた姿で登場したことに、監督作品らしくないと驚いた飯星氏。ユーチェン監督は、「100年前、特に女性は不自由な時代。夫婦でも男性が女性を牛耳り、役人は手下を牛耳る。スーチーが演じる、虐げられていた女性が最後は権利を奪い取る展開になっています。支配する側とされる側。愛情のある夫婦の間にも上下関係があります。寓意的な意味での政治的なことが、あらゆる場面に隠れているのです。政治的なことは本来恐ろしいことですが、それをラブコメディーでオブラートに包んでいます」と今までにない深い意味が込めた作品であることを示唆した。
 
スーチー演じるヒロインが村長になり「ここが桃源郷なのね」と呟くラストシーンがスカッとしたという飯星氏の意見に、「元々は虐げられていた女性が村長にのしあがり、権力を手にする。そうなると、どんなに善意がある人でもまた悪行をしでかしてしまう。当初はスーチーを独裁者のようなふるまいをするヒロインにしようとしたのですが、お正月映画だったのでブラックユーモアではなく明るい結末にしました」と試行錯誤をしたことも明かした。そのスーチーは、キャスティング時に村の女性役だったリン・メイシュウを「同じような役ばかり」と監督にアドバイス。その結果、盗賊団の長である郵便局員という重要な役どころになり、作品中でも初めての配達用自転車に上手く乗れないシーンで、見事な転倒ぷりを披露。ユーチェン監督も「男性の長を女性の長に変えました。スーチーさんの一言のおかげ」と感謝した。
 

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ユーチェン監督作品は、音楽のユニークさが作品のゆるく楽しい雰囲気に反映されているのも特徴の一つ。『健忘村』でも常にアカペラ(ボイスパーカッション)の盗賊団が笑いを誘う。その発想については、「7人いればバンドを組むことができる。楽器を持ちながらだと(アクションに)不便なので口で楽器替わりをし、殺人をするときに音楽を流したら面白いと考えました。俳優が7人もいると上手な人もいれば、リズム感ゼロ、音感ゼロ、歌詞が覚えられないと大変でしたが、殺人の場面を撮るため、音楽の授業、体育の授業に何カ月もかけてやっと撮れたのです」。また時代物ならではの苦労もあったようで、「何十年も台湾では時代物を撮っていないので、香港や大陸から美術の方を招き、お金もかけました。貧しい村なので馬だと高貴すぎると、ロバを用意しましたが、台湾にはほとんどいないのでアメリカから輸入しました。ロバはなかなか演じてくれず、叱りたいけれど、英語しか分からないのでそれは大変でした」。
 
最後にこれからの映画制作について飯星氏に聞かれたユーチェン監督。体力的にあと数本ぐらいとしながら、「撮りたいストーリーを持ってはいるが、映画を撮るのは大変。私の映画制作が(十何年も)時間がかかったのもそのせいです。観客がそれを望んだり、肯定してくれたり、賞を受賞することで自信が持てると思いますが、自分の個性を活かせる映画を撮り続けていけたらと思います」と、培ってきた個性を大事に、映画を撮り続けることを表明しトークショーは終了した。終了後もサインや写真撮影の依頼に快く応え、大パネルの前で、大勢のファンと交流したチェン・ユーシュン監督。台湾映画らしいふわりとした緩さと、記憶を操作された人間の滑稽さが怖さにも映るダークぶりが癖になる。そこに秘められた狙いに思いを馳せると、また別の味わいが出てくるだろう。ユーシュン監督の新境地ともいえる作品だ。
(江口由美)
 
第9回京都ヒストリカ国際映画祭はコチラ 
 
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11月3日(金・祝)に閉幕した第30回東京国際映画祭。最終日にコンペティション部門、アジアの未来部門、日本映画スプラッシュ部門の審査結果および観客賞が発表された。今年の東京グランプリに輝いたのは、審査委員長のトミー・リー・ジョーンズ氏が、「この美しい撮影法に感銘を受け、神話を現実として捉えている内容が素敵だと思いました。神話的な体験を通して、共通の認識を得るという体験です」と講評したトルコの名匠、セミフ・カプランオール監督の『グレイン』。最優秀監督賞は、エドモンド・ヨウ監督(『アケラット-ロヒンギャの祈り』)が2度目のコンペディション部門出品で、初の栄光を手にした。また、観客賞には3年ぶりに日本映画『勝手にふるえてろ』が受賞した。以下本年度の受賞結果と受賞コメント、最後にトミー・リー・ジョーンズ審査委員長の総評を紹介したい。
 
<コンペティション>
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東京グランプリ/東京都知事賞 『グレイン』(監督: セミフ・カプランオール)
「実は今回の映画は⻑い旅路を経てきました。というのも製作に5 年かかりました。そして、今回ここから世界に向かって広がっていく出発点になると思っております。今回の制作に携わってくださった私の様々な友⼈たち、チーム、特に俳優のジャン=マルク・バールにお礼を申し上げたいです。彼は素晴らしい演技を⾒せてくれました。最後に、私たちは世界に様々な害を与えています。私たちが⽣きていくその全ての瞬間がその理由になってしまっています。その理由には過剰な消費があります。私たちはどこから来たのか、どこに向かっていくのか、こういったことを私たちは把握しなければいけない、理解しなければならないと思っています。私は監督として⼤地や種⼦、創造されることに敬意を払いながら作品を作りました。この作品を作ることを神が導いてくれたと思っています。」
 
 
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最優秀監督賞 エドモンド・ヨウ(『アケラット-ロヒンギャの祈り』)
「私たちクルーは 20 ⼈未満 で、⾃分たちのことを“アケラットファミリー”と呼んでいました。ダフネはこの映画のために詩を書いたりしてくれました。ほとんどのスタッフがこの映画に登場します。映画⾃体は、12 ⽇間⾬の中作っていました。先ほど私のミューズのような存在であるダフネが、東京ジェムストーン賞を取った時は泣きそうになりました。クルーの皆に感謝をしたいと思います。東京国際映画祭に来まして、普段映画を作っていると⼀⼈になったような気になってしまうのですが、世界各国の監督と知り合いになって、映画を作っている⼈はみんな家族なのだと強く思います。⼀⼈の映画⼈としてこの作品を皆さんに観ていただき、感じていただきたい、やはり世界は平和にならなければいけないと強く思っております。」
 
審査委員特別賞 『ナポリ、輝きの陰で』(監督: シルヴィア・ルーツィ、ルカ・ベッリーノ)
最優秀女優賞 アデリーヌ・デルミー(『マリリンヌ』)
最優秀男優賞 ドアン・イーホン(『迫り来る嵐』)
最優秀芸術貢献賞 『迫り来る嵐』(監督:ドン・ユエ)
最優秀脚本賞Presented by WOWOW:『ペット安楽死請負人』(監督・脚本:テーム・ニッキ)
観客賞 『勝手にふるえてろ』(監督:大九明子)
東京ジェムストーン賞 松岡茉優、石橋静河、アデリーヌ・デルミー、ダフネ・ロー
 
<アジアの未来>
作品賞 『僕の帰る場所』(監督: 藤元明緒)
国際交流基金アジアセンター特別賞 藤元明緒『僕の帰る場所』
スペシャルメンション 『老いた野獣』 (監督:チョウ・ズーヤン)
 
<日本映画スプラッシュ>
作品賞 『Of Love and Law』(監督:戸田ひかる)
 
<トミー・リー・ジョーンズ審査委員長 総評>
「最良の映画祭というのは、映画製作者や観客を厳しい商業的需要から開放すべきものだと思います。私たちは、カークラッシュやレンズに銃⼝を向けたり、都市が爆発したり凍ったり、危機に陥っている⼥性、思春期のスーパーヒーローなども必要としません。それを悪いことだと⾔っているのではなく、ただ私たちはそれを必須とみなしておりません。最良であれば、映画祭というものは理路整然とした物語、視覚的な美しさ、そして観客の時間をしかるべき注意と 努⼒で向上させるという映画の持つ責任を開放しません。私たち映画製作者はみなさんの時間を無駄にするため に⽣まれてきたのではなくより良いものにするために⽣まれました。そして皆さんに対し、謙虚な⼼と希望をもって仕える者ということをこの審査員を代表して申し上げます。」
 
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原作者アレッサンドロ・バリッコ氏が語る「絹」と映画『シルク』@第9回京都ヒストリカ国際映画祭
登壇者:アレッサンドロ・バリッコ氏(作家) 
    中井美訪子氏(聞き手、通訳)
 

~原作で一番感じるのは淋しさよりも、人生色々なことがあるという「驚き」~

 
10月28日から開催中の第9回京都ヒストリカ国際映画祭。4日目となる11月1日は、特別招待作品として、仏と幕末日本で織りなされる愛の物語『シルク』(07日本・カナダ・イタリア)がフィルム上映された。マイケル・ピット、キーラ・ナイトレイ、アルフレッド・モリーナという豪華出演陣に加え、日本パートでは主人公エルヴェが心を寄せる謎めいた少女を芦名星が演じた他、役所広司、國村隼、本郷奏多らが出演。中谷美紀も最後に得るヴェへ重大な秘密を明かすパリ在住の夫人役で見事な存在感を見せる。シルク・ドゥ・ソレイユの演出でも知られるフランソワ・ジラール監督が、見事な映像美で神秘的な日本での情景を描き出し、坂本龍一の音楽が情感を静かに掻き立てる。まさにシルクのように滑らかで美しく、そして切ない物語だ。
 
『シルク』上映後、原作者であり、イタリアを代表する作家として多方面で活躍しているアレッサンドロ・バリッコ氏が登壇し、原作本となった「絹」の執筆秘話や、映画化の裏話をざっくばらんに語って下さった。聞き手、通訳として登壇した中井美訪子氏とのトークショーの模様をご紹介したい。
 

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■チェスをしているように、一つ一つの章を丁寧に書いた、小さな本「絹」(seta)

映画化されましたが、原作は本当に薄い、小さな本です。章が小さく、中には4行で終わる章もありますが、一つ一つの章を丁寧に書きました。まるでチェスをしているような気分で、とてもコントロールされた感じで書けた印象があります。イタリアではこの本が出版されたとき、日本の俳句を集めているようだとまで言われたものです。実はこの物語は自分のために書きたかった。ですから、出版社にこの物語ができた時、「あまりにも短いのでゴメン」と言ったのです。「今回の本はとても短いけれど、次の本はかなり分厚い本になるから、そちらは成功すると思うよ」と伝えました。実際には、この小さな本「絹」(seta)は僕の人生で一番ヒットした作品になったのです。
 

■友人の祖先の実話と、祖先が残した日記帳から、19世紀にヨーロッパ人が想像していた日本を描く。

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これを書いた当時、まだ僕は日本に行ったこともなければ、特別行きたくもなかった。この物語は、イタリア人の友達がその友達の祖先の話を聞いたこと、祖先の日記帳を見つけたことが発端でした。その祖先は蚕の卵を買い付ける仕事をしていたのです。イタリアから毎年日本まで買いに行ったという話を聞いた時、僕の頭の中で物語がグルグル周り出しました。卵が孵化するまでに急いでイタリアへ帰らねばならず、温度を低くするために車両を貸し切って氷詰めにしていた。それがクレイジーだけれど、とても魅力的だったのです。当時日本は、ヨーロッパでも未知の世界でしたが、そうして届いた蚕の卵から、美しい女性が身にまとうシルクの服飾品に変わっていった。冒険だけでなく、美やミステリーなど魅力的な要素がたくさんありました。そして、ヨーロッパから日本に行く話を語りたいと思いました。僕がシルクで書いた日本は19世紀にヨーロッパ人が想像していた日本、つまり伝説のようなものです。19世紀に日本に来たヨーロッパ人はほんのわずかでしたから、当時の人たちは日本のことは噂で聞いたことぐらいでしか知り得なかったのです。
 

■エルヴェが日本で出会う謎めいた女性を日本人にしたのは、ジラール監督の強いこだわりだった。

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自分の本が映画化される時、全然違うものになることは受け入れています。フランソワ・ジラール監督は、『グレン・グールドをめぐる32章』(93)をとても気に入っているし、イギリスで僕が書いた『ノヴェチェント』も舞台監督として舞台化してくれ、尊敬している監督です。他にも「絹」映画化のオファーはたくさんありましたが、それらは断り、イタリア人プロデューサーと相談してジラール監督に決めました。全体的には原作とかなり近い仕上がりですが、一番大きく違うのは、主人公エルヴェが日本で出会う女性が原作では西洋人だったことです。監督とこの点については結構話し合いました。監督は日本のエロチシズムについてアイデアを持っていたので、「女性は日本人」であることは譲らなかった。東洋人女性が出ているのは原作とは違う点でした。

 

■映画は原作より淋しげ。原作で一番感じるのは「驚き」だった。

あとは作品の雰囲気が違います。映画の方が原作よりも寂しい気がします。原作の中では悲劇的なことがたくさん起こるのですが、何よりも一番感じるのは驚きでした。人生はこれだけ色々なことがあるという驚きがポイント。主人公のエルヴェは原作では淋しいキャラクターではなく、イキイキして色々なことをたくさん味わいたい人物ですが、映画では少し暗いキャラクターになっていますね。ラストシーンの語り方も、映画では心の中が壊れているようです。原作では明かりや光で満ちています。エルヴェが、風が湖の平面を色々動かしていくのを眺めている。とても小さく軽い動き、湖の表面が風で色々な方向にいくのを眺め、「僕の人生はこういう感じなのだ」と思う。風の中で動く、晴れ晴れして落ち着いた湖という感じに描いています。映画が淋し気なのは、ジラール監督が僕より切ない性格だからかもしれません。
 

■主人公の妻エレーヌ役に、キーラ・ナイトレイは美しすぎた!?

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僕の原作がそのまま映画になっていると感じた箇所もあります。例えばパルダビュー(フランスの蚕商人)を演じるアルフレッド・モリーナは物語で描いた通りの商人像ですし、主人公の妻、エレーヌ役のキーラ・ナイトレイは『パイレーツ・オブ・カリビアン』でいい女優さんだと思ったら、僕の映画に違う感じの役で出演してくれたので、うれしかった。僕の原作ではエレーヌについて書いた箇所は少なく、あまり印象に残りません。もう一人の東洋で出会う女性の方が、存在感があります。原作では、エレーヌのキャラクターを丁寧で、少ない言葉でありながら、存在感があるように書きました。途中で登場する手紙を、実際は妻のエレーヌが書いたと分かった時、サプライズをもたらすようにしたかったのです。これを映画で表すのはとても難しいことでした。映画の4分の3の間キーラ・ナイトレイを隠すのは無理な話です。キーラ・ナイトレイが現れた時から、観客は「彼女は凄いことをするに違いない」と思うはずです。ジラール監督にはもう少し美しくなく、目立たない女優さんにした方がいいのではないかと助言しましたが、監督は「こんなに高い映画を作るのに、きれいな女優さんがいなければどうするんだ」と。私の小説が原作の『海の上のピアニスト』でジュゼッペ・トルナトーレ監督にも同じことを言われました。(原作とニュアンスや話が変わっても、美しい女優を登場させることが)映画を作るルールになっているようです。
 

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原作と映画の違いにも着目したアレッサンドロ・バリッコ氏によるトークショー。最後には、「絹」の一節をバリッコ氏が朗読し、流れるような美しいイタリア語に観客の皆さんも聞き惚れる、とても貴重な時間となった。最後に人生を噛みしめ、希望を抱くエルヴェを描いた原作「絹」も読んでみたいと思わせるトークショーだった。
(江口由美)
 
第9回京都ヒストリカ国際映画祭はコチラ 
 

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デビュー作はオリジナル脚本で普遍的なものと決めていた。
『おじいちゃん、死んじゃったって。』森ガキ侑大監督インタビュー
 
お葬式を題材にした映画は数あれど、セックスシーンから始まる物語はなかなかないだろう。自宅で彼氏といそしんでいる時に飛び込んできた訃報。ベランダから、庭にいる父に向かってヒロイン、吉子が発する言葉、「おじいちゃん、死んじゃったって。」がそのままタイトルとなっているのも、意表を突かれて面白い。資生堂、ソフトバンク等、数々の有名CMを手掛けてきた森ガキ侑大監督の長編デビュー作、『おじいちゃん、死んじゃったって。』が、11月4日(土)からテアトル新宿、テアトル梅田、神戸国際松竹、MOVIX京都他全国順次公開される。
 

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20代半ばで上京してからは寝る間も惜しんで働き、CM業界でキャリアを積んできたという森ガキ監督。元来の夢であった映画監督、そのデビュー作はオリジナル脚本でという熱い思いが、脚本の山﨑佐保子さんとの出会いによって見事な化学反応を起こした。祖父、父の死を前にした家族の悲喜こもごもと、ヒロインの成長を描くヒューマンドラマは、普遍的でありながら、少しヒリヒリとした感情を覚え、思わぬ笑いがこみ上げる。本作が初主演となる岸井ゆきのをはじめ、脇を固める俳優たちも岩松了、光石研、美保純、水野美紀というベテランから、岡山天音、尾野花梨、池本啓太、松澤匠という若手まで個性豊かな面々が勢ぞろい。お葬式での衝突を経て、各々が抱えるうまくいかない日常が、少し前に進んでいく様子は、静かな感動を呼ぶ。
 
本作の森ガキ侑大監督に、初長編『おじいちゃん、死んじゃったって。』で描きたかったことについて、お話を伺った。

 


 

■とても好きな小津作品。普遍的な内容だが、学生の時に観るのと、結婚した今観るのと、見方が本当に変わる。

―――本作は森ガキ監督の初長編ですが、前作の短編『ゼンマイシキ夫婦』(14)でサイレント映画のような夫婦の物語を紡いでいますね。
登場する夫婦にはそれぞれ、背中にゼンマイがついているのですが、自分では自分のゼンマイを回せない。旦那さんは奥さんのゼンマイを回し、奥さんは旦那さんのゼンマイを回す。つまり、二人でいないと生きられない状況になっています。何のために相手のゼンマイを回しているのかを切り口に、夫婦の関係性を描きました。本当の愛をゼンマイで表現し、FOXの短編映画祭と小津安二郎記念・蓼科高原映画祭で賞をいただきました。
 
―――小津安二郎監督の作品がお好きなのですか?
小津監督はとても好きで、小津監督が晩年、数多くの名作を生み出した更科高原の映画祭に出品したかったのです。小津作品は、学生の頃よく観ていました。家族をテーマにしておられ、普遍的な内容なのですが、学生の時に観るのと、結婚し、家族がいる今観るのとでは、見方が本当に変わりましたね。今、ようやくその表現の深さが分かった気がします。
 
―――今回、脚本を担当したのは、映画の脚本が初となる山﨑佐保子さんですが、どのような経緯で長編デビュー作の脚本を書いていただくことになったのですか?
CMの編集をはじめ、本作の編集担当の平井健一さんから、僕と同い年でまだデビューしていない脚本家がいると紹介してもらったのが日本映画学校で荒井晴彦さんに師事していた山﨑さんでした。意気投合し、今の日本映画について色々意見を交わした後、山﨑さんがその時書いていた脚本をいくつか見せていただいたのです。その中で、撮りたいと思ったのがお葬式の話でした。山﨑さんは本作を観た出版社の方から、映画を本にしたいと連絡があり、脚本家デビューと同時に小説家デビューも果たしています。映画が先というのは稀なケースだそうで、「この映画で大きく人生が変わった」と話していました。
 
 
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■デビュー作はオリジナルで普遍的なものを。“家族と生/性と死”を描きたかった。

―――数ある脚本の中から、お葬式の話を選んだのは小津監督の作品にもつながります。
小津作品もそうですが、普遍的な、誰にもささる企画を必ずやりたかった。ただ、分かりやすく表現するのではなく、自分自身のちょっとした色や、芸術的要素を入れることができる、融合的なバランスのものを映画化したかったので、僕のやりたいことに合致していました。『ゼンマイシキ夫婦』で描いた夫婦も普遍的な要素ですが、次は“家族と生/性と死”を描きたいとずっと思っていたので、そこにもハマった感じですね。デビュー作はオリジナルで普遍的なものというのは、ずっと決めていましたから。

 

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■セックスでの成長を、主人公吉子の成長に反映させる。

―――物語は、主人公の吉子が実家で彼氏とセックスをしている時に、おじいちゃんの死を知るところから始まります。この映画の柱でもありますね。
映画のセリフにもありますが、「隣の村で戦争をしていて、僕らは楽しんで酒を飲んだりしている」と。どんなことがあっても、親族や子どもが万が一死ぬことがあって、しばらくは落ち込み続けても、人間は飯も食えば、トイレにも行く訳です。それは避けられない人間の本質的な部分です。途中でも吉子と彼氏とのセックスシーンが出てきますが、2回目は割り切ったところがあります。吉子自身、死に対して整理がつき、死を生活の一部と受け止める。そして、兄弟げんかをし、みっともないところを見せる吉子の父や叔父に対し、分からないなりに、理解しようとする。それが大人の階段を上ることになります。セックスでの成長を、彼女自身の成長に反映させました。
 
―――吉子を演じる岸井ゆきのは今勢いのある若手の一人ですが、彼女の魅力とは?
芝居が上手いし、目がきれいですね。もう一つは、田舎の恰好をさせると、いい意味でどんくさい女の子の雰囲気を表現できます。衣装次第で東京のシティーガールの雰囲気にもなれるし、どちらも演じられるのが強みです。主人公は皆の気持ちを代弁しているので、彼女の素朴さは共感してもらえると思います。
 

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■ロケ地の熊本県人吉市は、脚本で思い描いた場所の匂いがした。

―――日本の原風景が映し出されているのも印象的です。ロケーションのこだわりは?
主人公の吉子は、本当は東京に出ていきたいけれど、田舎で悶々としている。弟は東京に行ったのにという葛藤があります。吉子のいる田舎は、東京に新幹線で1~2時間で行ける場所だと説得力がないので、脚本を読んだ時、東京からすごく遠い村を思い浮かべました。空港に行くのにも時間がかかり、東京への憧れが強くなる場所と考えていくと、熊本の人吉市がとても自然豊かで、脚本で思い描いた場所の匂いがしたのです。ただ、クランクイン直前に熊本地震が起き、タイトルがタイトルなので不謹慎ととられるかもしれないと撮影を断念し、仕切り直しもやむを得ないと思っていました。でも、人吉市の皆さんが、「震災後の復興が大変なので、映画を撮って盛り上げてほしい」とおっしゃってくださり、その言葉で撮影をスタートすることができました。
 
―――初監督作品で、いきなりインドロケのシーンもありますね。撮影はどうでしたか?
インドに行って、本当に良かったです。インドでは、誰も死に対して恐怖感を抱いていない。ガンジス川は、死後に焼かれ、流される場所です。高齢の人たちは、そこで自分が死ぬのを待っている。インド人にとってはそれが名誉であり、死は希望があることなのです。その光景を見てから、僕の死に対する怖さが薄らいだ気がします。寿命を全うしての死は、怖くはないなと。岸井さんも、今まで体験したものとは全く違うと言っていましたし、価値観が少しは変わったのではないでしょうか。
 
 
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■「誰もが脇役にならない」ことが一つの挑戦

―――本作で、一番森ガキ監督がやりたかったことは?
大きなフォーマットで言えば、群像劇をやってみたかった。一人にフューチャーするのではなく、登場人物全員のイキイキとした人物像を、この短い時間でしっかりと描きたいと思っていました。誰もが脇役にならないというのが、1つの挑戦でしたね。それぞれの生き様をしっかり描いて、色々な世代に共感を呼ぶようにする。また、ストーリーを展開する上で吉子という主人公の成長を軸にしました。
 
―――次回作はどのような作品を考えていますか?
若い世代の青春群像劇もやりたいですね。脚本の山﨑さんと、今までの日本映画にないようなオリジナル作品をこれからも作りたいと思っています。もう一つは、韓国映画のレベルがとても高いので、韓国のプロデューサーや脚本家、スタッフと映画を作ってみたいという夢があります。
(江口由美)

<作品情報>
『おじいちゃん、死んじゃったって。』(2017年 日本 1時間50分)
監督:森ガキ侑大
出演:岸井ゆきの、岩松両、美保純、光石研、水野美紀、岡山天音、小野花梨他
2017年11月4日(土)~テアトル新宿、テアトル梅田、神戸国際松竹、MOVIX京都他全国順次公開
(C) 2017 『おじいちゃん、死んじゃったって。』製作委員会
※第30回東京国際映画祭日本映画スプラッシュ部門公式出品
 

nocturnal-550.jpg『ノクターナルアニマルズ』トークイベント

第89回アカデミー賞®助演男優賞ノミネート(マイケル・シャノン)
第74回ゴールデングローブ賞助演男優賞(アーロン・テイラー=ジョンソン)
第73回ヴェネチア国際映画祭 審査員グランプリ 
他多数受賞!!

サイコパス俳優揃い踏み!ありえない程細かいディティール!
トム
フォードが如何に映画を愛しているかわかる!


<開催概要>
日程:10月12日(木)トークイベント20:30~21:00
会場:映画美学校試写室(東京都渋谷区円山町1-5 KINOHAUS B1F)
登壇ゲスト:樋口毅宏氏(作家)、高橋ヨシキ氏(デザイナー・映画ライター)


nocturnal-ivent-500.jpg世界的ファッションデザイナーのトム・フォードが『シングルマン』(09)以来、7年ぶりに監督を務めた最新作『ノクターナル・アニマルズ』が11月3日(金・祝)より、TOHOシネマズ シャンテほか全国公開致します。 公開に先立ち”13日の金曜日”の前夜、10月12日(木)映画美学校試写室(渋谷)にて、試写会上映後に樋口毅宏さん(作家)×高橋ヨシキさん(デザイナー・映画ライター)によるトークイベントが行われました。


主演にエイミー・アダムス(『メッセージ』)、ジェイク・ギレンホール(『ナイトクローラー』)の実力派の2人を迎えた本作は、第73回ヴェネチア国際映画祭で審査員グランプリ受賞をはじめ、脇を固める名優マイケル・シャノンが本年度アカデミー賞で助演男優賞にノミネート、アーロン・テイラー=ジョンソンが第74回ゴールデングローブ賞助演男優賞を受賞するなど、各国の映画祭で受賞を重ね、高い評価を受けています。


日本最速で行われた試写会は、緊張感に満ちていた。上映中張りつめて息を飲んでいた来場者は、エンドクレジット後に唖然茫然とした表情を見せていた。一体、今自分たちは何を見たのだろうか?という空気が漂う中、上映後に行われた作家の樋口毅宏さん、デザイナーで映画ライターの高橋ヨシキさんによるトークイベントでは、この映画が何を示しているのかを分かりやすく解説してくれた。さらに、作家の目線から、樋口さんはこの映画の複雑な構造について『インセプション』『トータルリコール』などを例に挙げて解説。高橋さんも、トム・フォードという人物や彼のこだわりの映像について語った。
 


 
nocturnal-500-1.jpg★サイコパス感半端ない!最も信頼できる俳優たちの名演は超一級!


イベントに登壇早々、作家の樋口毅宏さんは「みなさんどうでした?一言で伝えにくいもやもやの残る映画でしょう」と、映画を観終わったばかりで茫然とする来場者を気遣い、興奮と緊張の糸がほどけた表情を見回した。

「ジェイク・ギレンホールは最も信頼できる俳優の一人。観て損することはない、元のとれる俳優ですね。その他のキャストも金だけの映画に出ない実力派ばかり揃ったオールキャストだよね!ジェイクなんて『ブロークバック・マウンテン』、『ナイトクローラー』、『ゾディアック』と本当に素晴らしい、トチ狂ってる!」と興奮気味に語る樋口さんに、「マペットに似てますよね。セサミストリートのアーニーとバートの、バートの方。目元が特にね」と高橋ヨシキさん。会場を笑いに誘った。

その他のキャスティングについても樋口さんは「『キックアス』シリーズでひ弱なオタク役を演じて、『ノーウェア・ボーイひとりぼっちのあいつ』ではジョン・レノンを演じるアーロン・テイラー=ジョンソンが、まさかあんな役を演じるなんて!実生活ではいいお父さんのリベラルな良い奴が、ちょー嫌な悪役を見事に演じていますね!」と本作でゴールデングローブ賞を受賞したアーロン・テイラー=ジョンソンを大絶賛!

アーロンと並び存在感を放つ警察官役を演じたマイケル・シャノンはアカデミー賞助演男優賞にノミネートされた。「彼もまた良い俳優だよね。『レボリューショナリー・ロード/燃え尽きるまで』『THE ICEMAN 氷の処刑人』とかもそうだけど、彼もまたJ・ギレンホールと同じくサイコパスな演技が最高に似合う!今度から何か困ったことがあったら末期がんの警察に何か頼もうと思った」と本作がサイコパス演技の上手い名俳優ぞろいと熱弁を振るった。



nocturnal-500-4.jpg★理想を追い求めた女は小説世界に飲み込まれた


本作の主人公スーザン(エイミー・アダムス)は、理想を追い求めた結果、エドワード(ジェイク・ギレンホール)からハットン(アーミー・ハマー)に鞍替えし、金も名誉も手にいれた、アートギャラリーのオーナー。ある日彼女の元に元夫から、クオリティの高い、残忍な内容の小説が届いたところから物語がはじまる。

映画は現在のスーザンと、過去のスーザンとエドワードの出来事、そして小説を読むスーザンの頭の中のイメージが映像化された3部構造から成っている。「さらば雑司ヶ谷」で鮮烈なデビューを果たした樋口さんは「煌びやかな世界に身を置く女性が主人公。だけど夢の中の方がリアルだと感じることがある。そこにさらに元夫からのものすごい内容の小説が届くわけですよね。読み進めていくうちに、今自分が立っている場所は現実か虚構なのかもわからなくなってしまうんですよ」と映画で描かれる主人公の心情の構造を解説。

さらに「こういう不思議な構造は他にもあって、映画だと『インセプション』や『トータルリコール』やウディ・アレンの『カイロの紫のバラ』とか、日本では江戸川乱歩が「うつし世はゆめ夜の夢こそまこと」と言ったこととかもありますね」と、似た構造を持つ映画などを紹介し「『ノクターナル・アニマルズ』が他と違うと思った部分は、小説の中に自分が飲み込まれてゆく、心を奪われていくという部分ですね」と目の前の現実と、心奪われる魅惑的な小説世界のバランスについて解説した。


nocturnal-500-3.jpg★ありえない程のディティールと伏線!気づいたらゾワっと鳥肌もの


本作の監督トム・フォードは、世界的に有名なファッションデザイナーであり、自身のブランドの立ち上げと同時に「FADE TO BLACK」という映画の制作会社を立ち上げた。デザイナーであり映画ライターの高橋さんは「世界最高のデザイナーは何をやってもうまい!ファションデザインしても良し、着こなしても良し、映画作っても良しのズルい奴!」と絶賛!

いくつもの伏線が張り巡らされている複雑な構造について問われると「彼は本当に映画が好きなんだと思う。前作の『シングルマン』もそうだけど『ノクターナル・アニマルズ』もかなりディテールにこだわっている部分が多い。ものすごく良く作られている。相当な数の映画を観て、すごく真面目に映画を作る人だと感じましたね。色んな映画を感じる部分はあるけれど、露骨な引用をしていないのも良いですね。デザイナーとしても超一級なだけに、映像へのこだわりはすごいなと感じました」と、監督の映画愛と映像や脚本への強いこだわりについて、監督の言葉を代弁するかのようにきめ細やかに解説した。

また前作との共通点については「『シングルマン』では主人公が生き甲斐をなくしていたけれど、突如目の前にイケメンが表れた時から、映像が色味をもち始めました。それと同じで『ノクターナル・アニマルズ』のスーザンは、生活は色をなくしているけれど、小説を読むとカラフルになる。どちらも生きる実感を帯びるととたんに映像が色鮮やかになるんですよね」と語った。
 


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★この映画を一言で表すと…


樋口さんは「どう表現すればいいのか困りますよね。でもものすごいものを観た感がある映画。あとは、何を着飾っていようが、どんな豪邸に住んでいようか、その物質とお前自身は何も関係ないぞ、と言われているような映画ですね。怒りと復讐を込めた小説とか、どんな本や映画を観るかで自分の価値は決まると思う」。

 

 

nocturnal-ivent-takahashi-240-1.jpg高橋さんは「この映画は色んな見方を楽しめるオープンエンディングな映画ですよね。解釈は観る人それぞれに委ねられているんですよ。だから人それぞれの感想があって良いと思います。それを踏まえての僕の解釈は、誰もが感じる罪悪感にまつわる映画だと思うんですよね。限りなくエイミー・アダムスの一人相撲に近い。若い時にした後悔を未だに乗り越えられないんですよね。その穴は物質では埋まらない。ぼく個人は罪悪感なんて捨てちまえと思うけど、そう簡単にいくわけじゃないのが辛いねという映画だと思ってます」と締めくくった。
 

 


『ノクターナル・アニマルズ』

【STORY】
経済的には恵まれながらも、夫との関係が上手くいかず満たされない日々を過ごすスーザンのもとに20年前に別れた元夫から送られてきた衝撃的な内容の小説が送られてくる。精神的弱さを軽蔑していたはずの元夫の送ってきた小説の中に、それまで触れたことのない非凡な才能を読み取り、再会を望むようになるスーザン。彼はなぜ小説を送ってきたのか。それはまだ残る愛なのか、それとも復讐なのか――。


脚本・監督:トム・フォード 
出演:エイミー・アダムス、ジェイク・ギレンホール、マイケル・シャノン、アーロン・テイラー=ジョンソン、アイラ・フィッシャー、アーミー・ハマー、ローラ・リニー、アンドレア・ライズブロー、マイケル・シーン
原作:「ノクターナル・アニマルズ」(オースティン・ライト著/ハヤカワ文庫)
2016/アメリカ/116分/PG-12 /ユニバーサル作品 配給:ビターズ・エンド/パルコ 
(C)Universal Pictures  
公式サイト⇒ http://www.nocturnalanimals.jp/

2017年11月3日(金・祝)~TOHOシネマズ シャンテ、大阪ステーションシティシネマ、シネマート心斎橋、シネ・リーブル神戸、109シネマズHAT神戸、11月4日(土)~京都シネマ ほか全国ロードショー!


 (オフィシャル・レポートより)

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《京都国際映画祭2017》

~映画もアートもその他もぜんぶ~

NON STYLE登壇!井上がノーベル賞詩人の逃亡劇に共感⁉
 

 『NO』『ジャッキー/ファーストレディ 最後の使命』を手掛けたチリ出身のパブロ・ラライン監督が祖国の英雄、パブロ・ネルーダの半生を描いた『ネルーダ 大いなる愛の逃亡者』が、11月11日(土)より新宿シネマカリテ、YEBISU GARDEN CINEMA他にて全国ロードショーとなります。

この度、10月12日より開催中の京都国際映画祭2017にて特別招待作品として上映、NON STYLEのお二人が登壇するトークイベントが開催されました。


<イベント概要>

日時:10月13日(金) 10:00~場所:TOHOシネマズ二条
登壇者:NON STYLE 石田明、井上裕介  
司会:ロバータ


只今開催中の「京都国際映画祭2107」、2日目となる13日(金)に特別招待作品『ネルーダ 大いなる愛の逃亡者』が上映、上映前にNONSTYLE 石田明、井上裕介登壇のトークイベントが行われた。

MCロバータの呼び込みで盛大な拍手とともにNONSTYLEの石田明、井上裕介の二人が元気に登場!本作を見てお二人は詩が素敵、見ていて勉強になるので授業的な感じでも見られる、と映画を絶賛。

そして本イベントの登壇に抜擢された理由に関して、石田は、「司会のロバータさんはネルーダと名前が似てるからだよね。私、石田は大いなる愛、そして井上さんは逃亡者キャスティングですね。」と井上の昨年の井上の自動車事故に関して触れ、場を沸かせた。

また、本作の主人公ネルーダが政治家であり、ノーベル賞をも受賞した詩人であったことから、「日本でいうなら小泉純一郎や浜田幸一」とネルーダの多才さを讃えた。

SNSなどで愛の詩を投稿していた井上は、詩を学生時代から女性に送っていたそうだが、石田が「君は僕の単三電池です。だっけ?」と聞いたところ、井上は「バッテリーあんまり持たへんやんけ!」とNON STYLEお得意の井上イジリが炸裂。

喜劇もこなす主演のルイス・ニェッコをチリのビートたけしと多才さを例え、一方、執筆業もこなす石田に対して、自分の作品に主演してほしい人が誰か聞くと、真っ先に出た名前が、画になる男であるという理由で井上だった。それを聞いて井上は「ありがとうございます。吉本興業のキムタクです」とおどける。

サブタイトルの「大いなる愛の逃亡者」であることから、逃亡されたことはあるか、と井上に聞くと、電光石火の如く「なんやその質問!?」と昨年の事故のイジリに対して突っ込みを入れ、石田はネルーダにかけて「ニゲータ(逃げた)さん」と井上に対して愛称で呼び、会場は爆笑の渦に包まれた。井上は最後に事故のことを「気付かなかっただけなんです」と付け足して、イベントが終了となった。


neruda-main-550.jpg『ネルーダ 大いなる愛の逃亡者』

<STORY>
1948年、冷戦の影響はチリにも及び、上院議員で共産党員のパブロ・ネルーダ(ルイス・ニェッコ)の元にも共産党が非合法の扱いを受けるとの報告がきた。ネルーダは上院議会で政府を非難し、ビデラ大統領から弾劾されてしまう。大統領は警察官ペルショノー(ガエル・ガルシア・ベルナル)にネルーダの逮捕を命じ、ネルーダの危険な逃亡劇が始まる―。


監督:パブロ・ラライン『ジャッキー/ファーストレディ 最後の使命』  
脚本:ギレルモ・カルデロン 
出演:ルイス・ニェッコ、メルセデス・モラーン、ガエル・ガルシア・ベルナル 他
原題:NERUDA
2016/チリ・アルゼンチン・フランス・スペイン/スペイン語/108分/カラー/シネマスコープ/5.1ch
日本語字幕:石井美智子/字幕監修:野谷文昭 
配給:東北新社 STAR CHANNEL MOVIES
 ⒸFabula, FunnyBalloons, AZ Films, Setembro Cine, WilliesMovies, A.I.E. Santiago de Chile, 2016  

公式サイト⇒ http://neruda-movie.jp/


2017年11月11日(土)~新宿シネマカリテ、YEBISU GARDEN CINEMA 、
12月9日(土)~シネ・リーブル梅田、以降京都シネマにて順次ロードショー!


(オフィシャル・レポートより)

ernesto-bu2-550-1.jpg『エルネスト』公開御礼舞台挨拶 inTOHOシネマズなんば

(2017年10月8日(日)TOHOシネマズなんばにて)
ゲスト:オダギリジョー(41歳)、阪本順治監督(59歳)



ernesto-500-1.jpg今の時代だからこそ、
純粋に一途に生きた名もなき青年に心を寄せてほしい。


 

1959年のキューバ革命の英雄のひとり、エルネスト・チェ・ゲバラ。そのファーストネーム「エルネスト」を戦闘名にもらったボリビア出身の日系二世のフレディ・前村・ウルタードという医学生がいた。故国ボリビアの圧政への抵抗運動にチェ・ゲバラと共に参戦し、25歳という若さで亡くなった。立派な医師を目指して懸命に努力していた若者が、武器を持って戦う。一体何が彼にそうさせたのか。どのような青春時代を過ごしていたのか。チェ・ゲバラ(39歳)、フレディ・前村(25歳) 没後50年、知られざる日系二世の青春に心を寄せることで見えてくるものとは――。


「混迷する世界情勢の中、生きる目的さえ見出せない若者が多い今だからこそ、フレディ・前村の青春映画を作る意味がある」とその制作動機を語った阪本順治監督。また、「滅多に出会えない役。役者としても人間としても大きな自信に繋がった」と語るオダギリジョー。二人は10月6日(金)に公開されたばかりの劇場で、満員の観客を前に公開御礼の舞台挨拶を行った。

詳細は以下の通りです。(敬称略)
 



―― 最初のご挨拶。
ernesto-bu2-joe-240-1.jpgオダギリ:今日は足を運んで下さってありがとうございます。難波ということでたこ焼きを用意して下さいました。監督さんも用意してもらったんですか?
阪本監督:あんたに用意してもらったものは僕にも用意してもらってます(笑)。
オダギリ:あ~そうか…たこ焼きを食べたからといって元気になった訳ではないのですが、今日は頑張ります。よろしくお願いします。

阪本監督:こんにちは。観る前ということであまりあれこれ話したくないのですが、3年間準備して、オダギリ君もいろんなことを準備して、やっと公開の日を迎えることができました。戦争映画でもないし戦闘シーンの多いアクション映画でもありません。ひとりの名もなき学生が武器を持つまでの5年間の学生生活を中心にした物語です。オダギリ君は凄い仕事をやってくれました。皆さん、楽しんで帰って下さい。今日はありがとうございます。


―― 青春映画だと感じて熱い想いがしましたが?
阪本監督:僕、青春映画撮ったことないんですが、恥ずかしいくらい真っ直ぐな話です。昨今このような世の中ですから、一筋に生きた人間を見てもらうのもまた新鮮かな、と思いました。


―― この映画がフレディ・前村を知るキッカケになったのは大きかったと思いますが、フレディに近付くアプローチは?
ernesto-bu2-joe-240-2.jpgオダギリ:数十秒じゃ語れないですね~(笑)。フレディの外見が僕のいとこに似ていることに気付いて、ある程度は見た目を似せられるのではと思いました。中身については、先ず日焼けをした方がいいと思って、生まれて初めて日焼けサロンへ行きました。会員にもなりました。ちょっと渋谷っぽい人間になれたような気がしました(笑)。


―― フレディ・前村さんと次第に溶け合っていくようで、フレディ像をしっかりと印象付けましたね?
オダギリ:ありがとうございます。僕が最初に登場するシーンからしっかり見ていないと、見失うとどれが僕だか分からなくなりますよ(笑)。


―― これからの役者人生に影響が?
オダギリ:役者としても人間としても、この役をのり越えられたことが自信に繋がったのは確かです。


―― オールスペイン語で大変だったのでは?
オダギリ:今日、京都の舞台挨拶に、日本在住のフレディのお兄さんの息子さんがいらして下さいました。まさかのことでしたが、とても嬉しかったです。そこで、「僕のスペイン語はどうでしたか?」とボリビアのベニ州出身の方にお聞きしたら、「合格だ!」と言って頂けたんで、安心しました。


ernesto-bu2-sakamoto-240-1.jpg―― 撮影中、いろいろご苦労もあったのでは?
阪本監督:キューバは5か国目ですが、いろんなことが覆っていく感じでした。オダギリ君も海外での撮影経験が多くて、「トラブっても沈まない、振り向かない、どうやって挽回していくか」と気持ちを作り直す技術を持ってましたから、何とか切り抜けていけました。社会主義国のキューバは物資不足で、しょっちゅう停電もしてました。ホテルの部屋では、5つのスタンドあったのですが、1個ずつ球切れしていって、「最後のひとつが切れると俺は勉強できないぞ!」とヒヤヒヤでした。撮影現場でも、いろんな物がなくて、なければ作る、代替品を捜してくる、と言った感じで、クリアしてました。


―― 実在の人物を描くのに難しかったことは?
阪本監督:フレディのご家族の方を傷付けたくないので、取材には時間をかけました。映画の最後に5人のおじいちゃんたちが出てきますが、彼等はフレディのご学友の方たちです。彼らの一人一人にフレディの人となりや、学生時代にどんなエピソードがあったのか、どういう恋愛をしたのか、実際のことを沢山盛り込んで作っていきました。


―― チェ・ゲバラが大阪に来ていたことは、この映画で初めて知りました。
阪本監督:チェ・ゲバラは、広島へ夜行列車で行く日に、堺のクボタ鉄工の見学をして、前日には愛知でトヨタの工場見学もしています。大阪に来て広島が近いと知った彼は、周りが止めるのも聞かず、他の予定をキャンセルして夜行列車で広島へ行ったんです。


ernesto-bu2-240-1.jpg―― 被爆地・広島を訪れたからこそ、その後のチェ・ゲバラが遺した言葉には重みがあるんですね。この映画を観て、改めて感じ入りました。 最後のご挨拶をお願いします。
オダギリ:この映画が、シネコンで色々なタイプの作品と肩を並べられることはとても意味があることですし、こういうタイプの作品が選べる現状が少しでも長引けばいいなと思っています。今は阪本監督をはじめ才能のある監督さんたちが作品を作りにくい状況ですので、それを少しでも打破するためにも、皆様にこの映画の宣伝をして頂きたいと思います。応援よろしくお願いします。

阪本監督:映画の最後の最後に、「マリー・前村・ウルタードさんに捧げます」とあるんですが、それは亡くなったフレディの姉のマリーさんのことです。3年前に彼女に会いに行った時に、「フレディは医者になって人を助けようとキューバへ行ったのに、武器を持って人を殺めるかもしれないようなことになって、その狭間できっと苦しんでいたことでしょう」と仰いました。母のローサさんは、キューバでチェ・ゲバラの奥さんに、「あなたの息子は事故や病気で死んだのではない。人々のために戦って死んだのだから泣く必要はない」と慰められたけど、お母さんは自分の息子を失った悲しみで泣き崩れてしまったらしいです。それを聴いて、名もなき医学生が武器を持つまでの過程がとても大事なのではと思って、この映画を作りました。誰かの息子であり、誰かの兄弟だった若者が、25歳という若さで死んでいった。できることなら、皆さんの心の中でフレディが生き続けられればいいなと思います。今日はありがとうございました。


(河田 真喜子)



『エルネスト』は、TOHOシネマズ(梅田・なんば・二条)、神戸国際松竹、京都シネマにて絶賛公開中です!

ernesto-pos.jpg■2017年 日本=キューバ合作 2時間4分 
■原案:マリー・前村・ウルタード、エクトル・ソラーレス・前村著『革命の侍~チェ・ゲバラの下で戦った日系2世フレディ前村の生涯』(長崎出版・09年/17年9月キノブックスより再刊)
■脚本・監督:阪本順治 (『顔』、『闇の子供たち』、『大鹿村騒動記』、『団地』)

■出演:オダギリ ジョー、ホワン・ミゲル・バレロ・アコスタ、永山絢斗
■2017年10月6日(金)~TOHOシネマズ梅田ほか全国公開中!
■公式サイト: http://www.ernesto.jp
■(C)2017“ERNESTO”FILM PARTNERS

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