「京都」と一致するもの

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アミール・ナデリ監督×坪田義史監督『シェル・コレクター』トークイベント

~「坪田監督はこれからの日本映画界を担う新星!」ナデリ監督が太鼓判!~

 第45回ロッテルダム国際映画祭Bright Future部門正式出品
リリー・フランキー15年ぶりの単独主演作


日米合作、リリー・フランキー15年ぶりの単独主演最新作『シェル・コレクター』の公開を記念して、坪田義史監督、本作のプロデューサーであるエリック・ニアリ、そしてそのニアリがプロデュースした西島秀俊主演映画『CUT』の監督であるアミール・ナデリがトークイベントに登壇。

自身も熱狂的な映画マニアであるアミール・ナデリが同じく映画狂の西島秀俊を主演に据え、日本で撮り上げた『CUT』と、同じく映画マニアで知られるリリー・フランキー、寺島しのぶ、池松壮亮、橋本愛が出演し、米原作を日本で舞台に置きかえた『シェル・コレクター』。商業作品に媚びない作品を手がけてきた監督同士の映画トークに花が咲きました。


【日程】3月6日(日)12:10~12:40(10:40の回上映後)

【場所】テアトル新宿

【登壇者】坪田義史監督、エリック・ニアリ(プロデューサー)、アミール・ナデリ監督(『CUT』)

<イベント内容>
ナデリ監督『CUT』のプロデューサーで、本作のプロデューサーでもあるエリック・ニアリ氏を介して『シェル・コレクター』にアドバイザーとして参加していたナデリ監督。開口一番「日本映画を20年来教えてきているが、坪田監督は素晴らしい!」と絶賛。色使いや台詞の少なさ、リリー・フランキーや池松壮亮など日本で一番おもしろい役者たちの起用など、映画の面白さを挙げながら、ナデリ監督は興味津々の様子で坪田監督を質問攻めに!最後は「坪田監督はこれからの日本映画界を担う人!」と太鼓判を押しました。


shell-500.jpg★ラッシュ段階で見てナデリ監督が衝撃を受けた映画『シェル・コレクター』

ナデリ:エリックさんは私の前作『CUT』や新作「Monte(原題)」のプロデューサーで、彼は鋭くもあり優しい意見をいつもシェアしてくれるのです。そういった関係性もあって、はじめに彼は僕に坪田監督の8ミリ作品と『シェル・コレクター』を編集段階で見せてくれました。

エリック:坪田監督の8ミリ作品『でかいメガネ』をナデリ監督に見せたらとても気に入ってくださって、「『シェル・コレクター』で私にできることがあれば是非!」とおっしゃってくださったのです。そして(昨年の)夏に編集段階で映画を見せて貴重なアドバイスをたくさんいただきました。今日完成したものをよくやく見てもらうことができました。

坪田:NYで編集していたのですが、ある日を境にエリックさんの意見がとても論理的になったんです。「これは裏に誰かいる!」と思ったら、それがナデリ監督でした。

ナデリ:日本映画を20年教えてきていて、常に新しい才能を探していますが、坪田監督は久しぶりに現れた新星だと感じています。監督はみな他の作品から影響を受けていることが多いと思いますが、坪田監督の作品は自分自身の経験や内から湧き上がってきたものが描かれていると思います。それはとても大切なことです。海や水、その関係性、そこにいる魚や貝類の描き方が、自分でもこう撮るだろうと思うものに近く、関わりたいと思うようになりました。

若い監督は自分の言いたいことを言葉や台詞で伝えようとすることが多いと感じますが、彼は違って水や水中、空気感、雰囲気など、ロケーションで語ろうとしているのが素晴らしいです。


★原作の選択、色彩、キャスティング…オリジナリティあふれる世界にナデリ監督敬服!

ナデリ:なぜこの原作を選び、日本の沖縄を舞台に置き換えてどう映画化しようと思ったのですか?

shell-b-240-2.jpg坪田:2012年に渡米し、異国の地で日本人としてアイデンティティを打ち出せる作品を作りたいと思っていました。震災後だったので、自然と人が対峙する映画を撮りたいと思ったときにアンソニー・ドーアの『シェル・コレクター』が浮かびました。日本人としてのアイデンティティを提示するのに、西洋の文芸作品を日本の情景に脚色してみたかったんです。

ナデリ:私は原作を知らなかったので、日本の話だと思っていました。リリーさんのボディランゲージが日本的だし、海との繋がり方、キャラクターの立ち振る舞いも非常に日本的に感じました。これほど日本のものにしてしまうとは、お見事です!水彩画を思わせる色使いも日本的で印象的でしたね。

坪田:私は色には過敏な方で、16ミリのフィルムが捉える鮮やかな色にはこだわりました。海の青さだけでなく、植物の緑であったり、(橋本愛演じる)嶌子の着ているドレスの赤など、色はポイントになるように設計しています。

 
★日本を代表するシネフィル俳優たちがすごい!

ナデリ:日本でいま一番おもしろい役者たちが出演していますね。演出はどうしたのですか?

shell-240-2.jpg坪田:リリーさんはアーティストであり、役者であり、小説家でもあり、とてもボーダーレスに活躍されている方です。今回ファンタジーと現実の境界線上を演じてほしくて、「現実と寓話の狭間」についてリリーさんとよく話し合いました。リアルではなくファンタジーを跨ぐ芝居をしてほしいと。

ナデリ:まさにボディランゲージを通じてそれが綴られていますね。台詞は少ないけれど、掃除をしているだけでも、その立ち振る舞いからどんなことを考えているのかが伝わってきます。情報を役者に与えすぎなかったのではないですか?伝えすぎることがなかったから、演じる側のイマジネーションが触発されて良い演技を引き出したのではないかと思います。

坪田: (『無伴奏』の)矢崎仁司監督とも話しましたが、池松壮亮さんは日本映画を助けてくれる、映画を豊かなものにしてくれるひとだと思います。作品との関わり方が誠実です。池松さんの存在で、商業とアートをつなぐことができるのだなと思っています。

ナデリ:池松さんは『CUT』を見に来てくれて、その後話をしました。「監督と仕事をしたい」と言ってくださいました。『シェル・コレクター』を観たとき、「彼を知ってる!」と驚きましたね。『CUT』を見たあとに映画について熱く語るその姿から、彼がいかに映画が好きなのかが伝わってきました。この作品では、イノセンスがあって、感じているものが観客に伝わる演技でしたね。


★坪田監督についてナデリ監督から一言!

ナデリ:坪田監督は新しい、素晴らしい、これからの日本映画界を担っていく監督になると思います。間違いなく将来日本を代表する監督になると確信しています!


『シェル・コレクター』 <本作の紹介>

★美大出身者勢ぞろい!!
リリー・フランキー(武蔵野美術大学卒)、坪田義史監督(多摩美術大学卒)、抽象映像監督・牧野貴(日本大学芸術学部卒)、脚本・澤井香織(東京藝術大学大学院卒)。美大出身者たちが創りだす、新感覚映画が誕生!

★日米の才能が集結!!
原作:アンソニー・ドーア「シェル・コレクター」(米)、音楽:ビリー・マーティン(メデスキ,マーティン&ウッド)(米)、プロデューサー:黒岩久美(『スモーク』『ブルー・イン・ザ・フェイス』プロデュース)、エリック・ニアリ(『CUT』プロデュース)(米)、劇中絵画:日本とアメリカで活躍する画家・下條ユリ、抽象映像監督:牧野貴……と日米の才能が集結して、未体験の映像世界が完成!

 
<貝の螺旋が描き出す官能的な美しさに魅入られた人々の物語>

shell-240-1.jpg盲目の貝類学者を演じるのはリリー・フランキー。本作が実に15年ぶりの単独主演作となる。
いづみを演じるのは日本映画界に不可欠な女優、寺島しのぶ。学者の息子・光役に、受賞が続く若手実力派俳優・池松壮亮、いづみと同じ奇病に冒された娘・嶌子には話題作の公開が相次ぐ女優、橋本愛。貝が魅せる螺旋の美しさ、沖縄の海と空の雄大さ、そして実力派俳優たちが織り成す孤独と再生……。

貝の毒は奇病を救う薬なのか、それとも自然が人間に与えた警鐘なのか。自然の中で生きる人間に向けたメッセージが詩的な映像美で描き出されます。


◆ストーリー

貝の美しさと謎に魅了され、その世界で名を成した盲目の学者は妻子と離れ、沖縄の孤島で厭世的生活を送っていた。

しかし、島に流れ着いた女・いづみの奇病を偶然にも貝の毒で治したために、それを知った人々が貝による奇跡的な治療を求めて次々と島に押し寄せるようになる。その中には息子・光や、同じく奇病を患う娘・嶌子を助けようとする地元の有力者・弓場の姿もあった。


出演:リリー・フランキー  池松壮亮 橋本 愛 普久原明 新垣正弘 / 寺島しのぶ
監督・編集:坪田義史(『美代子阿佐ヶ谷気分』
脚本:澤井香織、坪田義史
原作:アンソニー・ドーア『シェル・コレクター』(新潮クレスト・ブックス刊)
(C)2016 Shell Collector LLC(USA)、『シェル・コレクター』製作委員会
公式サイト⇒ 
www.bitters.co.jp/shellcollector
配給:ビターズ・エンド

テアトル梅田にて大ヒット上映中! 3/5~京都シネマ、シネ・リーブル神戸にて公開

joe-int-550.jpgボクサー辰吉丈一郎を20年間追いかけたドキュメンタリーの労作『ジョーのあした』を撮った阪本順治監督と、辰吉の会見風景


あきらめんボクサー『ジョーのあした 辰吉丈一郎との20年』インタビュー

ゲスト:阪本順治監督、辰吉丈一郎

■ (2015年 日本 1時間21分)
■ 監督:
阪本順治
ナレーション:豊川悦司
大阪先行公開!2016年2月20日(土)~シネ・リーブル梅田、塚口サンサン劇場、2月27日(土)~シネマート心斎橋、順次~京都シネマ ほか順次公開
■公式サイト⇒ http://www.joe-tomorrow.com/
■ (C)日本映画投資合同会社



~“あきらめんボクサー”ジョーの執念~

 

joe-462.jpg阪本順治監督が一世を風びした天才ボクサー・辰吉丈一郎を20年間にわたり追い続けたドキュメンタリー映画『ジョーのあした  辰吉丈一郎との20年』(2月20日から大阪先行公開)が完成。先ごろ大阪・ABCホールで完成披露試写会が行われた。ようやく陽の目を見た“奇跡のドキュメンタリー”を、舞台挨拶で訪れた阪本監督と主人公ジョーに聞いた。


‘90年代、“浪速のジョー”の登場は衝撃的だった。日本人選手の世界タイトル戦での連敗が続いていた1991年2月、大阪帝拳ジムの辰吉丈一郎が、WBC世界バンタム級王者グレグ・リチャードソン(米国)を10回終了TKOで破り、第24代バンタム級世界チャンピオンの座に着いた。当時21歳、デビュー8戦目の世界タイトルは具志堅用高(9戦)を抜く日本最速の快挙だった。阪本監督のデビュー作、ボクシング映画『どついたるねん』の評判を聞いた雑誌編集者の企画で2人が対談したことから、監督とジョーのロングラン・インタビューが始まった。1回目の撮影は、’95年8月、ラスベガスでのノンタイトル戦。だが、映画には派手なファイトシーンは少なく、1人の人間をこんなにも長く追い続けた「記録映画」は珍しい。


joe-550.jpg阪本監督は「最初はそんな(長く撮る)つもりじゃなかった」と言う。辰吉も「気がついたら20年経って、45歳になっていた」。1989年に19歳のボクサー辰吉がデビュー。同じ年に阪本監督もデビューした。雑誌のインタビュー以来、監督が辰吉の試合を見に行ったり、るみ夫人も含めて食事するなど、家族ぐるみの付き合い。「サカP」と「辰ちゃん」の付き合いはもう25年になるという。取材=インタビューといった堅苦しい“撮影”ではない。「彼は自分の試合のことを作品と表現する。その感性に惚れた」と監督。辰ちゃんは「監督が取材に来たら、自然に話せた。初対面の印象はうっすらと残っている。監督と思ってモノ言ってない」。サカPはことあるごとにジョーのインタビューを重ねた。大阪に戻るたびに「守口へ行き、ジョーと話した。彼には矛盾がない。自由に撮れて、NGもない。ホントに清々しい気持ちになれた」。監督には、ジョーとの会話は一服の清涼剤に違いない。その穏やかな雰囲気が画面から滲み出る。


joe-500-3.jpg撮りためた20年間、1000分のフィルムを1回まとめたい、自分が見てみたいと、出来あがったのがこの映画。だが、画面にくっきり姿を現すのは「まだ辞めない」ジョーの姿だ。今も「4度目(世界タイトル)を狙っている」ときっぱり。「これで引退したら、フツーのボクサーになってしまう」と答える表情は大まじめだ。“途中経過”のこの映画についても「勝手なこと、すんなよ。まだ現役やし。引退したら映画にする、と聞いていた」という。  天才と言われたジョーもこれまで何度か“引退の危機”にさらされた。最初の王座奪取から1年後、ラバナレス(メキシコ)との初防衛戦、9回TKOでプロ初黒星。’93年にラバナレスを相手に世界再挑戦、判定勝ちで王座に返り咲くが、網膜はく離が判明し事実上、引退を余儀なくされる。


joe-500-2.jpgだが奇跡的に手術が成功し、現役続行。’94年、フィアレス(メキシコ)を3回TKOで下し、3度目の世界チャンピオンに。同年12月、薬師寺保栄との世界統一戦で注目を集めるが、判定負けで陥落。大阪帝拳から引退勧告を出される。ジョーはこれも拒否するが「引退選手扱い」となり、国内で試合が出来なくなる。これほどの逆境。普通の選手なら諦めてもおかしくないがジョーは違う。「海外でやる」とタイなどで試合を続けた。引き際などまったく考えないこの執念はどこから来るのか?  このとてつもない執着こそがジョーという男だ。今も現役ボクサーとしてトレーニングは欠かさないという。


阪本監督は、’94年にドキュメンタリー・ドラマ『BOXER JOE』撮っているが「不満が残った。引き続きカメラを回したい、と彼に申し出た。“引退するまで追う”つもりだったが、まさか20年経っても引退しないとは、想像も出来なかった」。

 
joe-500-1.jpg映画のスーパーヒーロー『ロッキー』は時の流れに忠実に、スタローンが宿敵アポロの息子のトレーナーを務めるが、難波のジョーの現役はまだまだ終わらない。辰吉の次男・寿以輝がプロデビューしたのが「辰吉君にも区切りになるかなと思った」阪本監督だが「かえって現役への闘志が燃え上がったよう」というからオソロしい。


だから『ジョーのあした』には間違いなく続編がある。4度目の世界チャンピオンの座を射止めた時が真のフィナーレ=クライマックスになるのだろう。これはもう、どんなボクシング映画にも出来ない破天荒な『夢』に違いない。      

(安永 五郎)

 

aboutCoffee-550.jpg『A Film About Coffee』京都公開記念イベント「珈琲マルシェ」開催決定!
Fuglen Tokyo(東京)、TRUNK COFFEE(名古屋)、MERRY TIME(大阪)、LiLo Coffee Roasters(大阪)など、話題のコーヒーショップが集う。

元小学校を改築したノスタルジックの中で、コーヒーを片手に映画を楽しめる冬の休日に。


京都木屋町・立誠シネマプロジェクトにて、絶賛公開中の『A Film About Coffee』。公開を記念して、2/20(土)に人気のコーヒーショップを集めた一日限りのイベント『京都珈琲マルシェ』を開催します。参加コーヒーショップは、世界最高水準のコーヒーの街、ノルウェーの首都オスロに本店を構えるFuglen Tokyo、スペシャルティコーヒーを自家焙煎している名古屋の人気コーヒーショップTRUNK COFFEE、アメリカ西海岸のコーヒー新潮流を代表するひとつの「Fourbarrel Coffee(フォーバレル・コーヒー)」を日本で初めて扱うMERRY TIME、大阪で若者から大人気のLiLo Coffee Roastersなど、個性豊かなショップが京都に集結します。当日は、5種類のコーヒーの味の違いをお楽しみいただける飲みくらべチケット(1200円)でご用意。コーヒーの奥深い世界を、ぜひ体験して みてください。

aboutCoffee-mar-250.jpg会場となる元・立誠シネマは小学校を改築した場所です。3階の立誠シネマプロジェクトでは、20日限定で、映画『A Film About Coffee』を1日4回上映します。ノスタルジックな雰囲気の中、映画とコーヒーを片手に休日のひと時をお楽しみください。飲みくらべチケットをお買い求めのお客様には、嬉しい特典も。

参加コーヒーショップ(アルファベット順)
・Fuglen Tokyo(東京)
・LiLo Coffee Roasters(大阪)
・MERRY TIME(大阪)
・TRUNK COFFEE(名古屋)
・Traveling Coffee(京都)


*元・立誠小学校とは
廃校になった小学校の建物を利用して立誠・シネマプロジェクトなど様々なイベントが行われている場所です。

 


☆京都 珈琲マルシェ
 イベント概要☆
【日時】
2016年2月20日 (土)11:00~19:00

(映画『A Film About Coffee』の上映時間は、小学校三階にある立誠シネマプロジェクトにて、この日のみ4回上映。
10:00/11:30/13:00/17:40)

【場所】
元・立誠小学校 1階職員室 Traveling Coffeeとエントランス
(〒604-8023 京都府京都市 中京区備前島町310−2)
阪急京都線「河原町駅」1番出口から北に徒歩3分

【お問い合わせ】※一般の方
映画についてのお問い合わせ 電話:080-3770-0818

珈琲マルシェについてのお問い合わせ 電話:メジロフィルムズ 090-2668-8100
※5店舗のコーヒーを飲み比べられるチケット(1200円)をお買い求めのお客様に映画割引券をプレゼント。

 


■A Film About Coffee関連サイト
【公式サイト】 http://afilmaboutcoffee.jp/
【Facebook】 https://www.facebook.com/afilmaboutcoffee
【Twitter】 https://twitter.com/coffee_film_jp
【Instagram】 https://instagram.com/afilmaboutcoffee_jp/
【本予告YouTube】 https://www.youtube.com/watch?v=6wa-MNgkNsc

 


 aboutCoffee-m550.jpg『A Film About Coffee』(ア・フィルム・アバウト・コーヒー)

「おいしいコーヒー」はどこから来るのだろうか?
コーヒーを愛するすべての人におくる Seed to Cup(種からカップまで)の物語


【作品概要】
「究極のコーヒー」を求め、豆の選定、焙煎、ドリップ方法……様々なアプローチで追求するコーヒーのプロフェッショナルたち。本質を追い求める姿はまるで求道者のようだ。ここ数年で拡大を見せる、高品質で風味の優れた「スペシャルティコーヒー」の市場。その担い手たちは従来の“質より量”のコーヒー業界のカウンターとして、豆の生産地からカフェに至るまでのあらゆる場所に新たな経済の仕組みを息吹かせ始めている。コーヒーから始まるこの変革の姿を美しい映像とともに作り上げたのは、サンフランシスコ在住のCMクリエイター、ブランドン・ローパー監督。本作は自主制作映画でありながらも、世界30カ国108都市のコーヒー愛好者の手で自主的な上映会が開催され話題を呼び、ついに本国アメリカでも配給が決まった。コーヒーへの深い愛情が育んだ本作は、知られざる Seed to Cup(種からカップまで)の物語であり、琥珀色の神秘の液体の奥深い世界へいざなう招待状だ。観た後は、コーヒーがより身近に、より愛しく思えるだろう。

【主な出演者(海外)】
「スタンプタウン・コーヒー・ロースターズ」生豆バイヤー ダリン・ダニエル
「ハンサム・コーヒー・ロースターズ」共同オーナー/2010年世界バリスタ・チャンピオン マイケル・フィリップス
「ブルーボトルコーヒー」オーナー ジェームス・フリーマン
「カウンター・カルチャー・コーヒー」バリスタ/2012年全米バリスタ・チャンピオン ケイティ・カージュロ
「リチュアル・コーヒー・ロースターズ」オーナー アイリーン・ハッシ・リナルディ
「リチュアル・コーヒー・ロースターズ」バリスタ ケヴィン・ボーリン
「コアヴァ・コーヒー・ロースターズ」バリスタ デヴィン・チャップマン
「G&Bコーヒー」共同オーナー/2008年全米バリスタ・チャンピオン カイル・グランビル
「ラ・マルゾッコ」CEO ケント・バッケ

aboutCoffee-m500.jpg【主な出演者(東京)】
表参道「大坊珈琲店」(※2013年に閉店)オーナー 大坊勝次
下北沢「ベアポンド・エスプレッソ」オーナー 田中勝幸
表参道「オモテサンドウ・コーヒー」オーナー 國友栄一
代々木公園「リトルナップ コーヒースタンド」オーナー 濱田大介
富ヶ谷「フグレン・トウキョウ」オーナー 小島賢治

監督:ブランドン・ローパー
出演: ダリン・ダニエル(スタンプタウン・コーヒー・ロースターズ)、マイケル・フィリップス(ハンサム・コーヒー・ロースターズ)、ジェームス・フリーマン(ブルーボトルコーヒー)、ケイティ・カージュロ(カウンター・カルチャー・コーヒー)、アイリーン・ハッシ・リナルディ(リチュアル・コーヒー・ロースターズ)、大坊勝次(大坊珈琲店) 、田中勝幸(ベアポンド・エスプレッソ)ほか
(2014 年 / アメリカ / 66 分 / 16:9 / デジタル)
提供:シンカ/ヌマブックス/シャ・ラ・ラ・カンパニー 配給・宣伝:メジロフィルムズ 


 

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~3人の女と1人の男、抗い、寄生し、自分を見つけるまでの青春物語~

 
『歓待』(11)『ほとりの朔子』(14)『欲動』(14)と、女優、プロデューサー、監督として唯一無二の存在感を放つ杉野希妃。その初監督作品、『マンガ肉と僕』が2月11日からいよいよ劇場公開される。主人公サトミを演じ、監督業をこなしながら、自らの出演シーンはサトミとして演技に専念している様子を、撮影現場取材で実際に目にし、そのバイタリティーと頭の切り替えの早さに驚かされたが、出来上がった作品もうれしいサプライズに溢れている。
「杉野希妃初監督作『マンガ肉と僕』撮影に密着!主演も務める同作への想いを語る。」はコチラ
 
男に抗うために太ることを自分に課す主人公サトミを演じるために、真夏の撮影の中特殊メイクで挑んだ杉野と、杉野が寄生する大学の同級生ワタベを演じる三浦貴大とのやりとりは、奇妙だけど、どこか笑える。その後ワタベが付き合うことになったバイトの同僚菜子(徳永えり)就職直前から同棲状態だった弁護士志望の年上女性(ちすん)など、3人の女性と付き合いながら変貌を遂げるワタベは、男のリアルが滲み出て興味深い。成長する女と成長しきれない男。永遠の命題のようなテーマに加え、今までプロデューサーとして社会的な問題を作品に内在させてきた杉野希妃らしい、社会的な側面を盛り込み、現在日本の抱える問題も背景に滲ませた。和テイストの音楽が舞台となった京都の風情に馴染み、新しいのに懐かしい感覚を呼び起こす青春物語だ。
 
記者会見では、杉野希妃監督と主演の三浦貴大さんが登壇し、原作で惹かれた点や京都撮影の印象、そして役に対する思いについて語ってくださった。その模様をご紹介したい。
 

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■サトミは自分が演じたキャラクターの中で一番楽しく、アドレナリンが出ていた。(杉野)

 ワタベはメンタリティーの部分で、重なるところが多かった。(三浦)

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―――ユニークなシナリオですが、杉野監督からオファーを受けたときの感想や、現場での演出についてお聞かせください。
三浦:この作品の話をいただき、脚本を読ませたいただいた後監督にお会いしたのですが、おそらく杉野監督も役者と相談しながら、役の方向性を決めていきたかったのだと思います。ワタベと三浦貴大という俳優とは、リンクする部分がたくさんあり、メンタリティーの部分で重なりました。一方で、自分を出していくことになりますから、演じるとは別の部分で大変なこともあるだろうなと楽しみにしながら現場に入りました。年の近い監督とあまり仕事をしたことがないので、現場の前から楽しみでした。しかも今回はサトミ役でも出演されているので、大変さは想像を絶するのではないかと心配していました。今、僕が役者以外のことをヤレと言われても無理なので、単純にスゴイなと思って観ていました。
 
―――3人の女性に囲まれての撮影は楽しかったのでは?
三浦:楽しかったですよ。
杉野:いやいや、苦労されたと思います。とてもふり幅の大きいキャラクターばかりなので、相手をするのが大変だったのではないでしょうか。三浦君は吸収力がすごくて、10%伝えただけで、全てをわかって「やってみます」と言って、次のテイクで全てが修正されているのです。間合いやセリフの言い回しの微妙なニュアンスなど、言葉では言いにくいような部分なのですが。どんどん水を吸収するスポンジのような方ですね。私が演じるときは、毎回モニターチェックもしていたのですが、温かく見守ってくれ、一緒に映画を撮れてよかったなと思っています。そういう包容力を本来持っていらっしゃるのでしょう。
 

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―――サトミ役は最初から自分で演じようと思っていたのですか?
杉野:当初は吉本の芸人さんを起用する案もありましたが、私自身サトミのキャラクターに共感する部分があり、やってみたいと思っていたので自分から志願して演じることにしました。最初は本当に30キロ太ろうと考えたのですが、太ったあと痩せるシーンもあるので結局は特殊メイクにしました。動くのも大変でしたが、自分が演じたキャラクターの中で一番楽しく、アドレナリンが出ていた気がします。
 
―――三浦さんのキャスティングの経緯は?
杉野:『東京プレイボーイクラブ』を見たときから面白い役者さんだと注目していましたが、脚本を書いている段階でも、「これを三浦君がやってくれたら」と想定しながら執筆していました。リンクしそうだという何かが醸し出されていたのでしょうね。
 
―――三浦さんご自身は、どのあたりがリンクすると感じたのですか?
三浦:ワタベは、一番最初田舎から出てきた時は人見知りで、うまくコミュニケーションが取れません。この映画のオファーがくる少し前に小学校の時の先生にお会いしたのですが、小学校入学当時、僕はずっと机の下に「友達がいない」と隠れていたそうです。元々のメンタリティーでワタベと似ている部分があったのでしょうね。成長の仕方も自分と似ているなと思っていました。
 

■映画の聖地、京都で今の時代の女性像を意識して撮った。(杉野)

 京都は映画向きな街。出来上がった作品をイメージしやすい。(三浦)

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―――作品トータルのトーンやリズムなど、何か決めていたことはありますか?
杉野:クラッシックな映画を意識した部分はあるので、カット割を激しくしてテンポを良くすることはあまり考えませんでした。やはり役者さんの演技が一番大事なので、演じていただいた上で修正していく。役者の皆さんが元々持っている素質をどうやって活かすかが監督としての仕事ではないかと思っています。
 
―――意識したクラッシック作品とは、溝口作品ですか?
杉野:おこがましい言い方ですが、あの年代の監督の中で、女が描かれているという意味では、溝口作品を常に意識している部分はあります。「男に嫌われるために女が太る」という原作のモチーフ自身も、どこか溝口作品につながるテーマのような気がしますし、せっかく映画を撮るのなら映画の聖地、京都で撮ってみたいと主張させていただきました。そして京都で撮るなら溝口作品のような女性像とはまた違う、今の時代の女性像を意識し、ラストシーンは描いているつもりです。
 
―――『マンガ肉と僕』、そして既に公開された『欲動』とフィルモグラフィーを重ねてみて、見えてきた方向性や、気づいた変化などはありますか?
杉野:『マンガ肉と僕』と『欲動』は完全にスタイルが違う作品なので、自分のスタイルが何なのかがまだ確立はされていないです。自分自身が詰まっていると感じるのは『マンガ肉と僕』ですね。「これが等身大です」と言えるような作品になっている気がします。『欲動』は女性の解放を意識して撮りましたが、自分自身をさらけ出すというより、少し客観的に撮った気がします。

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―――京都で撮影した印象は?
三浦:役者として場所が与える影響はすごく大きくて、脚本の設定した場所で撮影できるのはすごく大きいです。セットでグリーンバックだとか、京都だけれどこのシーンは東京で撮るとなると、ここが京都だという気持ちを作らなければいけないので、一段階手間がなくなり、ありがたかったです。また、京都は歴史のある街並みで、こういう作品になるだろうというイメージがしやすい。なんて映画向きな街なのだろうと思いました。京都は建物もあれば、道が一直線に抜けている場所もありますし、新しいところもあれば、歴史もあり、自然もありますから。
杉野:京都の方々は映画の撮影をしていても、自然と見守りながら通り過ぎていかれるのがとても心地よく、街に見守られながら撮れている実感がすごく湧いていました。知恩院前のラストシーンは奇跡的なショットが撮れており、ある動物が奇跡的な演技をしてくれました。まさに映画の神様が舞い降りてきたと思う瞬間でしたね。

 

■映画は残るものだから、社会問題や自分自身が感じていることを入れるべき。(杉野)

 女性の成長に置いていかれる男の気持ちを反映させた。(三浦)

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―――ニュースで流れる映像や、ワタベが福島出身という設定など、杉野監督作品には、原作には多分なかったような社会性が盛り込まれている印象があります。
杉野:今の日本も溝口監督が撮られていた時代とは変わっていないなと思う部分はあります。未だに女性を軽視するような言葉が普通に飛び交っていますし、人それぞれ色々な生き方があって当然だと思いますが、例えば「子どもを産むのは当たり前」だとか、そういう趣旨の発言が出てくるのを見ると、釈然としないなと思う時もあります。そのようなときに、このお話をいただいたので、社会に抗う女たちをテーマにすると面白いなと思って進めていきましたので、必然的に福島の問題や、テレビのニュースで流れていた慰安婦問題なども含まれていきました。その時だけの問題ではなく、ずっと続いていく問題である気はしましたし、何十年後観た人たちには、当時こういうことが話題だったのだと感じていただけるはずです。映画は残るものですから社会問題や、自分自身がモヤモヤしているものを映画自身に入れるべきではないかと思ったのです。
 
―――この映画はワタベがサトミに寄生され、その後は彼女に寄生していきます。寄生することが悪いという風には描かれておらず、時には生き残るために必要といった表現もされていましたが、三浦さんは演じてみて「寄生」をどう感じましたか?
三浦:劇中でも言っていますが、「生態系を保つために、強いものに寄生して生きることは必要」だと僕自身も思います。ワタベの周りに3人の女性がいて、3人とも徐々に変化していきます。その中でワタベも成長しているのですが、女性の成長に置いていかれてしまう。ワタベが大学一年生の時は男性と女性が立場や内面性が同じぐらいの場所にいる感じで、ワタベは寄生される側なのですが、結局ワタベは置いていかれ、男が寄生する側になってしまいます。私生活でも僕は30歳になりましたが、同級生の女性から置いて行かれているなと思うことがあり、その気持ちをそのままこの作品にも反映させた感じです。女性を軽視している発言をよく聞くという話で僕が昔から思っていたことは、社会的な目から見て男も「働いて当たり前」という決めつけがあり、僕はそれが嫌なんです。実際にはそんなに働きたくないし、結婚して子どもができたなら主夫になっても構いません。社会的な男に対する目が嫌なので、杉野監督がおっしゃった「女性に対する軽視の発言が今でも変わらず多い」という部分も理解しやすかった気がします。
(江口由美)
 

<作品情報>
『マンガ肉と僕』(2014年 日本 1時間34分)
監督:杉野希妃
原作:朝香式『マンガ肉と僕』新潮社刊
出演:杉野希妃、三浦貴大、徳永えり、ちすん他
2016年2月13日(土)~シネ・ヌーヴォ、元町映画館、京都みなみ会館にて公開、
公式サイト⇒http://manganikutoboku.com/
(C) 吉本興業
 
 

nekoyon-s-550.jpg生き物を飼うことの大変さと喜びと。『猫なんかよんでもこない。』インタビュー

ゲスト:山本透監督、原作者の杉作先生
(2015年11月21日 大阪にて) 


『猫なんかよんでもこない。』
nekoyon-550.jpg・2015年 日本 1時間43分
・原作:杉作(「猫なんかよんでもこない。」実業之日本社刊/全4巻+その後(公式ファンブック))
・監督・脚本:山本 透  共同脚本:林 民夫
・出演:風間俊介、つるの剛士、松岡茉優、内田淳子、矢柴俊博/市川実和子(猫:子供時代(チンとクロ)、大人時代(のりこ、りんご))

2016年1月30日(土)~TOHOシネマズ(梅田、なんば、二条、西宮OS) ほか全国ロードショー
公式サイト: http://nekoyon-movie.com/
・コピーライト:© 2015杉作・実業之日本社/「猫なんかよんでもこない。」製作委員会
★風間俊介と山本透監督の舞台挨拶レポートはこちら



~独りではない、猫と共に乗り越えられた逆境の日々~

 
『グッモーエビアン!』や『探検隊の栄光』と、家族や仲間との絆を熱いハートで描く山本透監督が、“大人が泣ける猫漫画”として注目されている元ボクサーの漫画家・杉作著の『猫なんかよんでもこない。』を風間俊介主演で映画化。猫嫌いな主人公が猫の面倒を看ながら徐々に自立していき、さらに逆境を乗り越えられるほど成長していく物語は、静かだけど熱い想いが余韻として残る山本監督ならでの手腕が光る映画である。


本作の公開を控え、山本透監督と原作者の杉作先生が来阪。気まぐれな猫を相手に苦労された撮影中の秘話や、原作と映画についてのそれぞれの想いをうかがうことができて、より映画『猫よん。』への親近感がわいてきた。 
 



【映画化の意図と主人公ミツオについて】
――― 原作のどういうところに魅力を感じたのですか?
山本監督:まず、猫の描き方が愛玩動物的ではなく対生き物として対等に描かれて新鮮に感じられたことと、4コマ・8コマ漫画ですがとてもドラマチックな物語だったことです。猫嫌いなプロボクサーが猫の面倒を看させられて、さらに挫折を経て漫画家を目指すなんてよくある話ではなく、それが実話というところにも魅力を感じました。猫を撮るのは大変だということは分かっていましたが、とても感動した原作だったので、これは是非映画にしたいなと思いました。

――― 時代設定は?
山本監督:ちょっと前くらいです。DVDよりVHSを持っていたり、「あしたのジョー」とか読んでいる世代だったり、ブラウン管TVだったりしますが、昔の映画ですよと売りたかった訳でもないので、ぼやかしています。

――― 主人公のミツオをどんな若者と解釈して描いたのですか?
山本監督:人間そんなに簡単に変われるものではないので、ボクシングを諦めたからといってすぐに次の目標が見つかる訳でもない。それでも、猫の存在によって生きていくために何かしなければと前向きに物事を考えるようになる。簡単ではないが、そんな生き方ができる若者だと思いました。

 



【猫の撮影について】
nekoyon-s-240-di-1.jpg――― 飼い猫がこの映画を見てとても喜んでいたのですが、猫をこのようにリラックスして撮る秘訣は?
山本監督:秘訣という秘密兵器のようなものはなく、極力猫に合せただけです。2~3週間という短期間での撮影でしたが、猫がどんな状態かしっぽを見れば分かってしまうので、撮影現場となったアパートにも早めに入って慣れさせたり、お腹が空いたらエサをあげたり、できるだけ猫のリズムに合わせるようにしました。そのため役者さんやスタッフが大変だったと思います。突然「このシーンを撮るぞ!」と始めたり、「猫がどんな状態だろうがそのまま芝居を続けるように」と言ったり、アドリブもありで風間君も現場も大変でした。だからこそ、自然な猫の姿が撮れたんだと思います。

――― 風間さんと猫とのやりとりはアドリブが多かったのですか?
山本監督:そうですね。テレビから猫が落ちるシーンも、風間君の真剣な演技に猫が応えたというか、生き物対生き物の自然な反応ですね。

――― 猫目線で撮るための工夫や、いい表情を捉えるために溜め撮りとかされたのですか?
山本監督:いろんな猫の映画を見てきたのですが、猫の動きだけを切り離して撮ると温度が伝わらない気がしたんです。そこで、なるべく切り離さないで人間と一緒のシーンで撮るようにしました。

――― クロが病気になった状態はどうやって撮ったのですか?
山本監督:猫は基本濡らせば痩せて見えるので、猫用のトリートメントやヘヤワックスなどを使いました。目がしょぼしょぼして見えたのは、たまたまそんな状態の時の映像を使っただけで、何もしてないです。

――― 布団の中に入ってきたり舐めたりするシーンは、何か特別な工夫をされたのですか?
山本監督:あまり裏話はしたくないので書かないでほしいのですが(笑)、確かにちょっとした工夫はしました。でも、自然に舐めているシーンも沢山ありますよ。

――― 子猫時代のチン・クロは本当の捨て猫なんですか?
山本監督:スタッフの一人がもらってきて飼っている猫で、タレント猫ではありません。

――― 猫がとてものびのびしているように見えたのですが?
山本監督:トレーナーさんに預けても躾けられる訳でもないので、他のタレント猫たちと慣れさせたぐらいですね。

――― 猫のオーデションってどうするんですか?
山本監督:一応こんな猫が欲しいと伝えて沢山連れて来てもらったのですが、どれがどれだか分からなくなりました(笑)。一匹ずつ顔を撫でたりあやしたりしながら反応を見ました。人懐っこい猫かどうかで決めました。
 
 



【杉作先生と原作について】
――― 杉作先生は完成した映画を見てどう思いましたか?
nekoyon-s-240-sugi-2.jpg杉作先生:自分の頭の中のことが映画になったという不思議な感じでした。ほぼ実話ですので、映画の中に自分がいるみたいです。

――― 当時と比較して、今の状況をどう捉えておられますか?
杉作先生:今の状況がよく分からないんです(笑)。こうして映画になって不思議な感じなんですけど、今までにない面白さと驚きと、これも猫のお陰だなと改めて感じます。

――― 自分が映画になった感じは?
杉作先生:最初は違和感があったのですが、見始めたら映画は映画というひとつの作品の世界感を楽しみました。映画の中の自分は違うものと客観的に見ました。

――― ウメさんとか違う設定でしたが、拒否感みたいなものは?
杉作先生:それはなかったです。むしろ、自分もそうなったらいいなと、あんな所で働いてそういう出会いがあったらいいなと思いました(笑)。
山本監督:なるほどね、そういうこと初めて聞いた(笑)。

――― ウメさんとの出会いは、猫だけではなく明るさと温もりをもたらす重要な役ですが、事実とは違うのですか?
杉作先生:ウメさんは事実ですが、登場と設定の仕方が違います。
山本監督:1巻と2巻を合わせたような、いくつかの役を合せたようになっています。

――― この原作を映画にするには難しかったのでは?
山本監督:そうでもないですよ。1巻だけだとミツオの成長物語になるのですが、猫のことを教えてくれる人が必要だったので、猫の代弁者として大家さんやウメさんのキャラを膨らませました。

 



【山本監督の映画作りと本作について】
――― 過去の監督作品や本作から、現代人らしい絆を描くのが得意でいらっしゃるようですが?
nekoyon-s-240-di-2.jpg山本監督:極端な言い方をするとハッピーエンドの映画しか撮りたくないんです。映画館を出る時に気持ち良くありたい。映画文化そのものはいろんな作品があっていいのですが、自分は「明日も頑張ろう!」と思えるような作品を撮りたいと思っています。子供や孫たちにも気持ち良く見てもらえるような映画を撮り続けられたら幸せだと思っています。

――― 映画に独自性を持たせようと思って撮っているのですか?
山本監督:今度こうだったから次はこうしよう!というような考え方はしません。それぞれの作品に合った自分らしさが出ていればいいです。どこにでも転がっていそうな日常を描いているからこそ、そうでないものが潜んでいないかと探したりします。前作の『探検隊の栄光』では「くだらねえ!」と言ってほしかったし(笑)、「でもなんか熱いものを感じるよね」と思ってもらえたらいいなと。本作では、猫の可愛らしさだけではなく、避妊のことや病気のことなど、今まで避けられてきた問題も逃げないで描きました。生き物を飼うことの大変さをひとつひとつ描くことによって原作の良さに近付ける気がしたのです。

――― 猫を飼っている人にとっては「あるある」というシーンが沢山あったのですが?
山本監督:私自身今まで犬も猫も亡くした経験があり、今もまた猫を飼っていますが、原作の中でもグッとくるシーンが何度かありました。この映画をうちの3人の息子たちも見たのですが、「ちゃんとめんどうみるよ!」と言って、何だか知らないけど兄弟で話し合ってましたよ(笑)。

(河田 真喜子)



【STORY】
nekoyon-500-1.jpg猫嫌いのミツオ(風間俊介)は、兄貴(つるの剛士)が気まぐれで拾ってきた2匹の猫の世話をすることになる。ボクサーを目指し日々トレーニングしていたが、世界のリングまであと一歩というところで怪我のため挫折。それまで生活の面倒をみてくれていた兄貴は結婚を理由に田舎へ帰ってしまい、仕方なくアルバイトを始める。大家さん(市川実和子)やバイト先で知り合ったウメさん(松岡茉優)に猫のことを教えてもらいながら、猫と共に生きて行く。極貧の中でも独りではない。気まぐれな猫・チンとクロに振り回される日々を送るも、次第にミツオ自身の新たな目標掴んでいく。


【山本透監督プロフィール】やまもととおる
1969年生まれ、東京都出身。武蔵大学を卒業後、TV番組制作会社勤務を経てフリーランスの助監督になる。以後、ドラマや映画など多数の作品作りに関わり、山崎貴、利重剛、平山秀幸、中村義洋などの助監督として活躍。

長編映画初監督作は2008年の『キズモモ。』(脚本も担当)。2012年には麻生久美子と大泉洋が競演したホームコメディ『グッモーエビアン!』がスマッシュヒット。同作でヒロインの三吉彩花に第67回毎日映画コンクールスポニチグランプリ新人賞をもたらした。2015年10月16日に公開した冒険コメディ『探検隊の栄光』では藤原竜也とタッグを組んでいる。現在、短編映画『Do You Belive in Love?』の編集中。


【杉作先生プロフィール】すぎさく
元プロボクシング選手という異色の経歴をもつ人気マンガ家。新潟県新潟市(旧亀田町)出身。
1999年『イモウトヨ』で青木雄二賞受賞。
2000年『クロ號』でマンガ家デビュー。『猫なんかよんでもこない。』他、著書多数 

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家族を好きになる映画になれば。『はなちゃんのみそ汁』阿久根知昭監督インタビュー
 

~千恵さんはそこにいる。広末涼子が「代表作にしたい」と取り組んだ、今も続く家族の物語~

 

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ガンで、33歳の若さでこの世を去った安武千恵さんが生前書き続けていたブログをもとに、その闘病や娘はなちゃんとの日々を、夫の安武信吾さんが綴った人気エッセイ『はなちゃんのみそ汁』。『ぺコロスの母に会いに行く』の脚本を手掛けた阿久根知昭監督が、本作で脚本と同時に監督デビューを果たし、千恵役に広末涼子、信吾役に滝藤賢一を迎え、ひたむきに生きる家族の姿をスクリーンに映し出した。
 
千恵、信吾、はなの安武一家の明るさや、音楽を学んでいた千恵ならではの音楽シーンが盛り込まれている他、千恵がはなに教えたみそから手づくりの美味しいみそ汁も登場。従来の難病ものとは一線を画す、今も千恵がそこにいるような温かい家族物語となっている。
 
脚本も手がけた阿久根知昭監督に、脚本を書く際に重きを置いた点や、主演広末涼子のエピソード、そしてクライマックスのコンサートシーンについて、お話を伺った。
 

 

■脚本では、原作が言いたいことをきちんと盛り込み、最後には見てくれたお客様に大きなプレゼントを心がけて。

―――阿久根監督は『ぺコロスの母に会いに行く』、そして本作も脚本を手掛けておられます。両作品とも死に向き合う主人公と支える家族の物語で、脚本が作品のトーンを左右する、いわば脚本家の腕の見せ所のように思うのですが、本作の依頼があった際、どのようなことを念頭に置いて脚本を書かれたのですか?
阿久根監督:原作がヒットしていると、「実写化の映画は、原作の世界を壊す」と大体言われます。原作の世界を壊さないためにどうすればいいのか。原作もいいけれど、その世界を踏襲した映画もいいと言われるためには、原作が言いたいことをきちんと盛り込み、自分で加工することが必要になります。もう一つ、僕はここまで見てくれたお客様に最後に大きなプレゼントを用意することを心がけています。『はなちゃんのみそ汁』では、コンサートシーンを取り入れました。コンサートは実際にあったことなのですが、千恵さんのご主人の安武さんはあまりクラシックに興味がなかったので、本に書いていなかったのです。
 
―――脚本を書く際に、原作者の安武さんとも擦り合わせをされていたのですね。
阿久根監督:安武さんからは「俺たちロックンローラーだから、最後はロックで終わりましょうよ」と言われたので、第二稿で、ロックで飛び入り演奏するシーンを入れたりもしました。ただ、ここは千恵さんの色合いがでないといけないので、最後はクラッシックコンサートシーンにしました。安武さんとはなちゃんは、千恵さんの姉を演じた一青窈さんの後ろに座って聞いていたのですが、安武さんがぼろ泣きで、一青窈さんをカメラで捉えたときにあまりにも目立つので、カメラさんに安武さんの顔は半分カットしてもらうよう指示を出しました(笑)。
 
―――千恵さんのブログでも抗がん剤治療の辛さなどが綴られていましたが、映画化するにあたり、いわゆる難病ものとは違う感じのトーンの作品にするのは勇気が要ったのでは?
阿久根監督:難病ものは日本では年に5、6本作られているので、僕が作る必要はないと最初は思っていました。でも、安武さんやはなちゃんとお会いすると、毎日楽しく過ごしていらっしゃるし、何より凄いなと思ったのが、今でも千恵さんがいるんですよ。はなちゃんは「ママが~」と言うし、家にお邪魔すると千恵さんが「いらっしゃい」と言いそうな気がしてくるのです。千恵さんのお誕生日は今でもお祝いされていますし、安武さんがしみじみと「ママはいくつになったのかな?」と聞くと、はなちゃんが即答で「40歳!」。そこで安武さんがニヤニヤしながら「年食ったな~」と。
 
 
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■安武さんは「今までどこかでひっかかり、はなに説明できなかったことが、映画を観たことで説明でき、はなにも伝わった。それが映画が出来上がって一番良かったこと」

―――原作者の安武さん一家は、映画化されたことで何か変化があったのですか?
阿久根監督:安武さんが本にすることで、千恵さんはいつでも意識できる存在になりましたし、このままでは、はなちゃんは当時4歳だったのでママのことを忘れてしまうと思ったそうです。ところが、はなちゃんは辛くて本を読めない。だから今回はなちゃんは、映画を観たときの衝撃が凄かったのです。
 
―――映画の中で、千恵が子どもを産むかどうか悩むシーンが登場しますね。
阿久根監督:はなちゃんは、自分が産まれていなければママは助かったのではないかと尋ねたそうです。安武さんはその時は返す言葉が見つからなかったけれど、後ほど映画の中で千恵が「あんなに死んだ方がマシと思った抗がん剤治療も、はなのことを考えるだけで平気になるとやけん、びっくりよ」という会話をしているところを改めてはなちゃんに見せ、千恵さんの父が「死ぬ気で産め」と言ったことも含めて、はなちゃんを産むことでママは治療を頑張れたのだと伝えたそうです。はなちゃんは「分かった」と、布団で泣いたのだとか。安武さんは、「今までどこかでひっかかり、はなに説明できなかったことが、映画を観たことで説明でき、はなにも伝わった。それが、映画が出来上がって一番良かったことです」と言ってくださいました。はなちゃんも、ようやく安武さんの書いた本が読めたのです。
 
―――映画にすることで、原作者の安武さんやはなちゃんの抱えていたものを解放するきっかけになったようですね。阿久根監督にとっても、忘れられぬ出会いとなったのでは?
阿久根監督:安武さんは、どんな作品になるか分からないからと、大手からの映画化の誘いを全て断っていたそうです。「はなちゃんがこの映画を見て、こんなに素敵なママだったんだと思えるような、はなちゃんの宝物になるような映画にしたいです」と我々のプロデューサーがお話をしたとき、安武さんは『ぺコロスの母に会いにいく』が大好きだそうで、「阿久根さんに書いてほしい。ぺコロスみたいにしてください」という形のオファーが来たそうです。安武さんはこの映画のおかげで出会えましたが、生涯をかけて友達でいられるような、本当に映画のまんまの方なんですよ。
 

■家族を好きになる映画。そして見るたびに印象が変わる映画。

―――滝藤賢一さんが演じている安武さんは、本当にいい意味でいい加減で、茶目っ気があり、映画を見終わって、安武家のみなさんが大好きになるような感じでした。
阿久根監督:この映画は家族を好きになる映画で、見終わると、自分の家族に会いたくなる映画になればと思っています。安武さんも東京で試写を見た後、「はなにすぐ会いたい!」と。また、何回も見るたびに印象が変わる映画でもあるのです。安武さんが2回目見たときに、「監督、どこかいじりました?」と言われるぐらいでしたが、感動するところが変わるみたいです。初回はコンサートシーンで泣いたそうですが、2回目は抗がん剤治療を受けて帰ってきた千恵が夕暮れ時に、ソファに横になりながら家を見回すと旦那は腹ばいになって新聞を読み、手前ではながお絵かきをしている。「いいね、なんか普通って」と、大号泣したそうです。なんということはないシーンなのですが、僕もそのシーンを考えただけで泣いてしまいます。
 
 
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■はな役の赤松えみなちゃん、19日間の撮影で成長。

―――えみなちゃんのお芝居は、計算ではない自然な仕草がとても可愛らしく、「はなちゃん」の雰囲気が出ていました。博多や天神、大濠公園など、福岡に住んでいる人になじみの深い場所の数々が映し出されているのも魅力的ですね。
阿久根監督:それはよかったです。19日の撮影日程のうち、福岡での撮影は3日間だけで、高台で見下ろしている場面が、ファーストシーンでした。えみなちゃんはついカメラを見てしまい、そのシーンだけは撮影に時間がかかりました。ただ、ラストは、家の中で父娘二人の朝食シーンをワンカットの長回しで撮ったのですが、その時えみなちゃんは一度もカメラを見ずに、全部朝食の用意から食べるまでを演じたのです。彼女も19日間の撮影の中で成長しているんですね。えみなちゃんは、台詞は入っているのですが、それ以外に何を言うか分からないところがありました。そんな時も博多弁でしゃべるように、ちょっと高度なことをしてもらっていましたね。
 

■広末涼子「自分の代表作にしたい」、コンサートシーンでも観客エキストラを一つにまとめて。

―――そして何と言っても、千恵を演じる広末涼子さんが、ガンと闘いながらも明るく、そして娘のはなにみそ汁を作り続けることを伝え、命の大事さをつなぐ母親を、熱演しています。
阿久根監督:映像からも伝わってくると思いますが、広末涼子さんはこの映画のことを本当に理解してくれていました。最初の挨拶で、「自分の代表作にしたい。頑張ります!」とおっしゃっていました。19日という撮影で、普通は4~6シーンのところを1日で12シーン撮りの日もあったのですが、そこも頑張ってくれました。広末さんは自分で演じる一方、休憩時間もえみなちゃんとコミュニケーションを取って、全然休めなかったと思いますが、しんどそうなそぶりは一つも見せませんでした。最後のコンサートシーンで、エキストラの方が入ってから、挨拶をさせてほしいとマイクを持ち、「これからすごく大事なシーンの撮影をします。とてもいいシーンになりますので、どうぞよろしくお願いします」と話されたのです。この言葉で客席もキュッと締まり、本当にいい撮影ができました。終わった後に、広末さんは「千恵さんが来てましたね」と言っていましたが、多分、特別なエネルギーが働いたシーンになったのでしょう。
 
―――そのコンサートシーンでは、元宝塚トップスターで同期の遼河はるひさんと紺野まひるさんが千恵さんの先輩役で共演し、歌声を披露しています。宝塚歌劇ファンにはたまらない配役ですね。
阿久根監督:歌っている方は声を出すため、立ち姿がとても美しいです。立ち姿だけで歌っている人かどうか分かるので、キャスティングでも歌って演技できる人をリクエストしました。紺野まひるさんが決まった後、立ち姿がきれいでモデルぐらい背の高い方ということで白羽の矢が立ったのが遼河はるひさんでした。偶然にも、お二人は宝塚の同期で、しかも一番仲が良かったそうです。そして後ろには春風ひとみさんと、元タカラジェンヌ三人に広末さんが囲まれている絵になっていますね。

 

■遼河はるひ、紺野まひる、宝塚元同期トップスター共演で広末涼子を盛り上げた、見事なハーモニー。

―――本当に贅沢なシーンですが、撮影ではみなさんどのような様子でしたか?
阿久根監督:面白いことに、遼河はるひさんが歌っている『わたしのお父さん』は、宝塚歌劇団の課題曲だったので、みなさん今でも歌えるそうです。紺野まひるさんは撮影時少し体調を悪くされていたので心配していたのですが、現場に入ると同期の遼河さんとキャッキャ言いながらしゃべっていて、あまりにかしましいので驚きました(笑)そういう友達の雰囲気は広末さんを巻き込んで、とてもいい雰囲気を出してくれました。今回のコンサートシーンでは、中央に立つ千恵は、両サイドの遼河さんや紺野さん演じる先輩たちの友情で立たせてもらっています。歌うシーンでも、千恵の声が最初はあまり出ていないので、両サイドの二人も少し低くやわらかいトーンから入っています。途中で千恵の声が出るようになってから、二人とも遠慮なく伸びやかなトーンになり、三人のハーモニーがバッチリと合う形になっています。実際のコンサートでも、千恵さんは最初声が出しにくかったところまで、広末さんがきちんと再現しているのです。
 

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■撮影も含めて、みんなに千恵さんの導きがあったような現場。

―――ラストの父娘二人での朝食シーンは、どこかに千恵さんがいるような気がしました。
阿久根監督:ラストショットは千恵目線になっています。安武信吾の語りの時にはカメラがしっかり固定されており、千恵の語りの時にハンディで揺れているのはそういう意味なのです。だから観終わった後に、千恵さんがいなくなった気がしない。悲しいというより、ずっと一緒にいるように印象づけています。ちなみに撮影の寺田緑郎さんはオファーをしたとき抗がん剤治療をされていて、お嬢さんの名前も「はな」ということで、それは自分がやる作品だと、治療を中断して撮影に入ってくださいました。寺田さんも、自分の生き様を娘に遺そうと思ったのだそうです。ですから、彼のカメラワークにその力が出ています。最後に福岡の実景撮影を寺田さんにお願いした際に、教会の鐘を撮るため安武さんの協力を得て、一番最後に糸島にある教会を訪れたそうです。実はそこは千恵さんが眠っているところで、使えるかどうかわからないけれどと、寺田さんは千恵さんのお墓をラストカットにしたのですが、こみ上げてくるものがあったそうです。映画の中では使われていませんが、最後のカメラが千恵さんのお墓だったということは、最初からそのように運命づけられていたような気がすると、寺田さんもおっしゃっていました。本当にみんなに千恵さんの導きがあったような現場でしたね。
(江口由美)

<作品情報>
『はなちゃんのみそ汁』
(2015年 日本 1時間58分)
監督・脚本:阿久根知昭 
原作:安武信吾・千恵・はな『はなちゃんのみそ汁』文藝春秋刊 
出演:広末涼子、滝藤賢一、一青窈、紺野まひる、原田貴和子、春風ひとみ、遼河はるひ、赤松えみな(子役)、高畑淳子、鶴見辰吾、赤井英和、古谷一行
2015年12月19日(土)~ヒューマントラストシネマ有楽町、2016年1月9日(土)~テアトル梅田、TOHOシネマズなんば、TOHOシネマズ二条、T・ジョイ京都、シネ・リーブル神戸ほか
公式サイト⇒http://hanamiso.com/
(C) 2015「はなちゃんのみそ汁」フィルムパートナーズ
 
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誰かに関心を向けることは、とても大きな力。『ハッピーアワー』濱口竜介監督インタビュー
 

~30代後半女子4人の結婚生活、仕事、家族との葛藤と決断がリアルに浮かびあがる5時間17分という体験~

 
三ノ宮、神戸の海、摩耶山、有馬、芦屋川・・・これほどまでに私たちが生活圏としている神戸が映し出される作品はまずないだろう。まるで私たちの生活と地続きのような場所で、30代後半の4人の女性、あかり、桜子、芙美、純が夫婦関係や家族のこと、そして仕事と様々な悩みを抱えて生き、集まって悩みをぶつけ、様々な思いが交錯していく。
 

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『なみのこえ 新地町』『なみのこえ 気仙沼』『うたうひと』と東北で現地の人の声を聞く3本のドキュメンタリーを撮る一方、長編デビュー作の『PASSION』をはじめ、男女のすれ違いや壊れやすい関係を繊細に描いてきた濱口竜介監督。本作は神戸で半年に渡って開催した即興演技ワークショップに参加した受講生を主役に据え、演技経験がほとんどない彼女たちの今の輝きを、スクリーンに映し出した。3部構成の5時間17分という挑戦的かつ独創的な作品、『ハッピーアワー』は、すでにロカルノ国際映画祭で主演4人が最優秀女優賞、脚本スペシャルメンションを受賞した他、ナント三大陸映画祭で『銀の気球』賞と観客賞を受賞するなど海外で高い評価を得ている。ちなみに、脚本を担当したのは濱口監督をはじめ、野原位さん(映画監督他)、高橋知由さん(『不気味なものの肌に触れる』脚本)の3人によるユニット、「はたのこうぼう」。神戸で3人暮らしをしながら、脚本家兼スタッフとしてワークショップ運営も手がけたという。
 
東京に先駆け、撮影の地、神戸の元町映画館で12月5日(土)から日本公開がスタート。舞台挨拶のため来場した濱口監督に、企画の経緯や、演技経験のない人を使って映画を撮るということ、脚本の作りのプロセス、そして本作に込められた思いについて、お話を伺った。
 

■仙台での滞在、撮影後、「どこでも映画が作れるのであれば、東京以外のどこかで映画を撮りたい」

――-濱口監督は神戸に居を移し、滞在しながら本作を作り上げたとのことですが、なぜ神戸を選んだのですか?
濱口監督:神戸に来る前、ドキュメンタリーを撮るため2年ほど仙台に住み、すごく小規模なチームでしたが、ドキュメンタリー映画を3本作ることができました。東京を離れてすごく風通しがよくなったような気持ちもあり、どこでも映画が作れるのであれば次も東京以外のどこかで映画を撮りたいと思ったのです。元々時間をかけて映画を作りたい、そのために演技のワークショップを長期間行い、そこから映画制作をしていくというアイデアがありました。ある程度人を集める必要がありますが、演技経験がない方がより良いのではないかという予感もあったので、人が多く、かつ役者志望は少なそうな関西エリア、しかも映画という文化的なことに協力してくれるのは京都や神戸で可能ではないかと考えました。神戸・デザインクリエイティブセンター(KIITO)のセンター長が東北三部作のプロデューサー、芹沢高志さんで、ワークショップ企画のことを相談すると、芹沢さんの方でもレジデンスアーティストを探していたそうで、最終的にはレジデンスアーティストとして招かれ、KIITO主催でワークショップをする流れになりました。
 
 
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■神戸は、映画にとって必要なものが全部ある「映画になる街」。

―――実際に映画を撮るということを前提に神戸に住んだ感想は?
濱口監督:暮らしがロケハンみたいな感じでした。大体KIITOに行って、基本的には生活していてここがいいなとか、こんなカメラポジションがあるなということを探しているわけですが、映画になる街ですね。パンレットの寄稿文で柴崎友香さんが「坂を登ればいつもそこに海がある。それが神戸の街」と書いて下さっていますが、山があり、海があり、その間に都市があり、電車が通っている。山を越えたら有馬温泉があり、ちょっと違う気分を楽しめますし。僕にとって映画を作るのに必要なものが全部あるという場所は、なかなかないように思えました。暮らしそのものが映画になる、その時とても魅力的に見える街だと思います。
 
―――撮影までのワークショップは、どのような内容でしたか?
濱口監督:「即興演技ワークショップin Kobe」というタイトルですが、いわゆる演技のレッスンはせず、「人に聞く」ということをテーマにやっていました。最初に行ったのは、自分が興味のある人のところに行き、いい声を撮ってくるというものでした。撮影担当としてスタッフが同行し、受講生が1時間強インタビューをして、後日、自分が一番いい声だと思う映像を抜粋してブレゼンテーションしました。また月に一度、自分が興味を持てる著名なゲストをお呼びし、受講生が聞き手を務めるトークイベントを開催しました。翻訳家の柴田元幸さんや女優の渡辺真起子さんが来てくださいました。
 
―――脚本はワークショップと同時並行で書いていたのですか?
濱口監督:ワークショップは最終的に映画を作るためにやっていたので、最後の成果発表は脚本の本読みも兼ねるようにしました。脚本は2013年末に3人で3本書きました。それぞれが原案を出し、物語をシーンごとに並べて、大まかな構造を作る作業(柱立て)、ダイアログを埋める作業の3つの作業をまわしながら担当すると、それぞれの脚本が3人全員の手を通過するようになります。そのような方法で書いた3本の脚本から、最終的に選んだのが今回の『ハッピーアワー』の脚本で、その時の仮タイトルは『ブライズ(花嫁たち)』。どこまでも皮肉な感じでしたね(笑)。ワークショップ参加者17人全員が参加できるのが、この脚本だったということもあります。
 
―――男性3人のユニットで、ここまで30代後半女性のリアルな心理を脚本に書けることに驚きを感じましたが、受講生の生い立ちや彼女たちから聞いた話を脚本にアイデアとして盛り込んでいるのでしょうか?
濱口監督:受講生から色々と話は聞きましたが、そのまま盛り込んでしまうと信頼関係が損なわれてしまうので、実はそんなに入っていません。ただ、話すことによって分かるその人の感じは、ありますよね。例えば、こういうことは言うけれど、こういうことは言わない人だとか。そういった何が言えて、何が言えないという傾向は、キャラクターに反映されています。
 
 
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■演者の体でも言えるし、キャラクターが言いそうなことでもあるし、ドラマを進めるための台詞でもあるというものを書きながら見つけ、脚本の精度を上げていく。

―――30代夫婦のすれ違いは一般的に結構よく描かれていますが、女同士の仲良しグループ的会話の奥にある、本音のぶつかり合いは見ていてヒリヒリしたものを感じました。自分自身を顧みてもそこまで本音をぶちまけるような機会が大人になればなるほど、ない気がします。
濱口監督:今回はキャラクター設定をする際に、サブテキストを用意しました。過去の関係性が脚本形式に書かれ、結構ツッコんだことが分かるものと、キャラクターが質問を投げかけられた時にどう答えるかという架空のインタビュー問答集(家族構成他)を演者に渡しました。日常では言わないようなことだからこそ、ドラマになっていく台詞が映画の中にはあります。演者は日常を生きていますし、キャラクターだって何でも言えるわけではないし、ドラマを動かすために動いてくれるわけでもない。ただ全体としてドラマを動かしていかなければならないというこちらの思惑が重なるので、脚本を書いていて膠着状態に陥ることがよくあります。「あれは言うけれど、この局面では言わない」程度のことを書くので映画が長くなる部分もありますが、逆にある種の精度が上がるのです。演者の体でも言えるし、このキャラクターが言いそうなことでもあるし、ドラマを進めるための台詞でもあるというものを書きながら見つけていく感じですね。
 
―――確かに、印象に残る台詞は、ぐっと胸の中で溜めこんだ思いを吐き出したようなプロセスを経ているので、飛び出した時は「ようやく出たか!」という爽快感がありました。
濱口監督:あらかじめ演じる人に違和感になるような要素を取り除いていくことによって、違和感のない台詞になっているのではないかと思います。女性を描こうと思ったことはなく、この人たちが演じやすいようにということを考えながら、ひたすら書いていたら、最終的にそういう感想をいただくことが増えたと思っています。
 
―――ワークショップを最初から最後まで全部入れ込む構成も非常にユニークでしたが、ワークショップや朗読会をまるごと映画の中に取り入れた理由は?
濱口監督:別々の環境で過ごしている4人が集まらないと話が進まないので、ワークショップと有馬旅行と朗読会をそれにあたるものにしています。ワークショップは全体を通してドキュメンタリー的に撮影をしました。うさん臭さを出すという命題があってのワークショップですから、ある程度説明が必要で、一つの時間として全体を語り切ることになるのです。ダイジェスト的にみせることもできますが、それだと全然訳が分からなくなりますから。朗読会で純の夫、公平が登場し、打ち上げにも参加するというアイデアは、結構撮影の後半に出てきたアイデアです。桜子と芙美、それに対する公平という精神的に距離のある三人が同じテーブルについても違和感のない流れにしないといけないので、面白いけれど、そんなことが起こるのか自問しながら、書きました。
 

■演者自身が言える、言えない部分を映画に取り込むと、ある程度日ごろ彼女たちがさらされている環境が自然と反映されているのではないか。

―――既にロカルノ映画祭で最優秀女優賞、ナント三大陸映画祭で観客賞と海外での評価が高いですが、海外の観客からの反響は?
濱口監督:「ヒロインの彼女たちを友人のように感じる」というのも驚きですが、一番驚くのは、「日本の社会は、こういう社会なのか?」と言われたことです。日本の社会の中で抑圧されている女性を描いているような印象を抱かれるらしいです。言いたいことの言えなさや、抑圧のされ方がそう映るのですが、、先ほど言ったような演者自身が言える、言えないという部分を映画に取り込んでいくと、ある程度日ごろ日本社会に生きる人たちがさらされている環境が自然と反映されるのではないかという気はします。
 
―――一方的に女性だけが抑圧されているとは言い切れない部分があり、30代男性も厳しい現状にさらされていると感じますね。
濱口監督:日本に限らず、近代化された社会では、仕事から糧を得るとき女性より男性の方がある程度、外でお金を稼ぎやすい状況はそんなに変わらないと思います。その時、男性はどうしても社会から保護されがちで、家族に対して関心を向けないことを正当化しやすい。女性はそのような夫の無関心に苦しむ一方、問題自体を自覚しやすいです。男性は、何かを引き起こしている原因が自分であることに思い至りません。
 

■人と人とが互いに関心を向け合うだけで、社会全体の幸福はそれなりに上がっていくはず。

―――離婚裁判では、「あなたの無関心が私を殺す」という趣旨の純の台詞もありましたね。
濱口監督:社会全体の問題だと思いますが、関心を誰かに向けるということがとても大きな力を持っているということの価値を、社会全体が認めていないんですよ。人と人とが互いに関心を向け合うだけで、おそらく社会全体の幸福はそれなりに上がっていくと思いますが、社会全体でそれが一番大事なことだとは設定されていない。お金を稼ぎ、それによって必要なものを買って生きるということが幸福の指標として設定されているので、関心というものが持っている力を、特に男性たちは知らない。女性たちは、関心を向けられないことで、逆説的に関心の力をある程度知っているので、そのことがないことを問題にしやすいのではないでしょうか。
 

■今、私たちの中で何かが起きているという実感が関係性の中では必要。それが関係性を持続させる力になる。

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―――とても腑に落ちる言葉です。本作や過去作品を通して、濱口監督の作品は、人と人とのコミュニケーションが柱になっていると感じます。聞くという行為が重要視されているのも、根っこはそこにあるのですか?
濱口監督:妻や夫という役割の中に入ってしまうと、これをやっておけばいいということになりがちですが、実際人間はそれでは満足しません。本当に今、私たちの中で何かが起きているという実感が関係性の中では必要だし、関係性を持続させる力になると思います。ただ、きちんと相手と向き合い、見たり聞いたりするというのは単純に時間がかかります。とても大事なものなのに、関心を向けられていない。だから、僕はそこを取り扱っているのだと思います。
 
―――撮影も、神戸の街の様々な表情を切り取りつつ、演者たちの言葉にならない思いが滲む表情をじっくりと映し出されており秀逸でしたが、濱口監督から撮影面でリクエストしたことはありますか?
濱口監督:ワークショップを週に一度半年間やっていたとき、毎週撮影の北川喜雄さんは東京から通ってくれ、ワークショップ自体の記録をしてくれていました。カメラを据えてそこにいる人という感じで、ずっと付き合ってくれました。こちらからも「まあ、来てよ」とオーダーしやすい人柄ですし。特に演技経験のない人がほとんどなので、そういう人たちがカメラを向けられると怖い訳です。彼自身、ワークショップにも参加し、演者との関係を深めるようなことをしてくれていました。北川さんのカメラだからという部分で、演者の緊張を和らげる要素になっていたと思います。
 
―――最後にこれから作品をご覧になるみなさん、特に関西のみなさんに一言お願いします。
濱口監督:神戸という街を中心に、関西で撮った映画なので、皆さんの生活にすごく近いものが映っていると思います。映画のある時点から、生活の中のドラマチックな瞬間にどんどんシフトしていくのですが、見ながら自分たちの生活の中にあるドラマの種のようなものに自覚的になっていただけたら、とてもうれしいことだと思います。
(江口由美)
 

<作品情報>
『ハッピーアワー』
(2015 日本 5時間17分)
監督:濱口竜介
出演:田中幸恵、菊池葉月、三原麻衣子、川村りら他
2015年12月5日(土)~元町映画館、12月12日(土)~シアター・イメージフォーラム、2016年1月23日(土)~第七藝術劇場、2月6日(土)~立誠シネマ、2月20日(土)京都みなみ会館オールナイト上映、他全国順次公開
公式サイト⇒http://hh.fictive.jp/
(C) 2015 神戸ワークショップシネマプロジェクト
 

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『ヴィオレット―ある作家の肖像―』主演エマニュエル・ドゥボスインタビュー
 

~女性で初めて“性”を赤裸々に語ったフランス作家ヴィオレット、その孤独と葛藤に満ちた半生とは?~

 
フランスを代表する女性作家でありフェミニズム運動家のシモーヌ・ド・ボーヴォワールが、その才能に惚れ込み、世間に認められるまでバックアップを惜しまなかった女性作家がいた。自らの体験を美しい文体で赤裸々に綴り、初めて“性”を語った女性作家として64年の『私生児』で大成功を収めたヴィオレット・リュデュックだ。父親に認知されず、またその容姿から愛する人からも拒まれ、孤独の中で全てを書くことに捧げてきた激動のヴィオレットの半生を、『セラフィーヌの庭』のマルタン・プロヴォ監督が映画化した。
 
 
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マルタン・プロヴォ監督が「最初からヴィオレット役と決めていた」というエマニュエル・ドゥヴォスが、自分の容姿に悩み、母との関係に苦しみながら、ボーヴォワールを慕い、自分の力で生きる道を切り開くヴィオレットを熱演。ヴィオレットの愛には応えられないと断言しながらも、女性の自由な表現を求めて、ヴィオレットの執筆活動を全面的に支援するボーヴォワール役には、『屋根裏部屋のマリアたち』のサンドリーヌ・キベルランが扮し、フランス文学界に革命を起こした二人の友情や愛情を超越した関係が描かれている。40年代から60年代に渡る二人の対照的なファッションや、その変化も見どころだ。
 
6月に開催されたフランス映画祭2015の団長として久々の来日を果たしたエマニュエル・ドゥボスが、タイトなスケジュールの中インタビューに応じ、ヴィオレット・リュデュックを演じたことについて、また自身のキャリアについて語った。
 

 

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―――フランスを代表する女優として活躍されているドゥボスさんですが、女優を目指したきっかけは?
エマニュエル・ドゥボス(以下ドゥボス):もともと役者一家の出身なので、小さい時から舞台に自然に接していましたし、何歳の時に女優になったか分からないぐらい、最初から女優になりたいと思っていた気がします。もしかしたら色々な人の人生を演じることに魅力を感じたのかもしれませんが、一人の人間が役者になりたいと思う動機は、常に謎だと思います。
 
―――ドゥボスさんの女優人生の中で、一番大きな変化が訪れたのはいつですか? 
ドゥボス:私のキャリアは徐々に上っていったので、特別大きな変化はありませんが、ジャック・オーディアール監督の『リード・マイ・リップス』は、私にとって大きなきっかけになりました。この作品で私は賞をいただきましたし、作品も大成功を収めました。ヴィオレットと同じように強烈な役なので、変わるきっかけになったと思います。
 
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―――マルタン・プロヴォ監督からオファーを受けた時、まだ脚本は出来ていなかったそうですが、出演を決めた理由は?
ドゥボス:私が出演作を選ぶ基準は、出来あがった映画を一観客として観てみたいと思うか、役柄が自分にあっているか、シナリオの質や監督の才能などを総合的に判断しています。本作の場合、マルタン・プロヴォ監督の前作『セラフィーヌの庭』が大好きでしたし、プロヴォ監督がそんなに変な作品を作るはずはないと思っていましたから。
 
―――プロヴォ監督は、ヴィオレット役はドゥボスさんしかいないと思っていたそうですが、演じるにあたって二人でどのように役を作り上げていったのですか?
ドゥボス:撮影前に何度も会い、ヴィオレットに対してお互いにどんな印象を抱いているか話をしました。対話を通して、役が出来上がってきた感じです。実際にヴィオレットと知り合いだったというパトリック・モディアーノ氏にも会う機会があったのですが、出来上がった映画を観て、「本物のヴィオレットはもっとひどかった」。とても耐えがたい外見の人だったそうです。私自身、ヴィオレットが書いた全ての本を読みましたし、彼女がシモーヌ・ボーヴォワールに宛てて書いた手紙や、詳しい自伝も読みました。それだけヴィオレットは自己表現をしていた訳ですから、そういうものを読み込むと、彼女のことは大体分かりました。プロヴォ監督の前で演じる上でも、迷いなく演じることができました。
 
 
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―――映画の冒頭に「女性の醜さは罪である・・・」という詩が登場しますが、ドゥボスさんご自身は女性の美について、どのような考えをお持ちですか?
ドゥボス:美に関する感覚はパーソナルなものだと思いますが、役を演じる上で、つけ鼻をし、醜い姿になって感じたことは、「極端に醜いのは本当に重荷だ」ということです。ヴィオレットは自分の鼻が耐えられず、整形手術もしていますが、それでもあまり美しくなれませんでした。逆にそれはキツいことだったと思います。
 
―――ドゥボスさんが演じたヴィオレットは、個性的である一方、少し親しみすら覚えるようなかわいらしさもありました。
ドゥボス:自分と似ている部分を見つけようとはしたものの、一つもなく、探すだけ無駄でした。ただ、あまりひどい所ばかり見せてもいけませんから、私が演じるヴィオレットには少女のようなかわいい面も必要でした。
 
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―――南仏で自分の居場所を見つけ、幸せそうに過ごすところで終わっていきますが、ヴィオレットの人生をどう捉えていますか?
ドゥボス:現実のヴィオレットも『私生児』がフランスでベストセラーになった後、様々な国で翻訳されました。彼女の心の傷の元は、父親に認知されなかったことにありましたが、ようやく世間が自分を認めてくれ、世間の中に自分の居場所が出来たことで、心が穏やかになったのです。また、ヴィオレットはボーヴォワールというメンター(導き役)がいました。二人の関係は特殊な関係で、これに比べられるものは私の中にもありません。その後南仏に家を見つけ、半ば引退生活とはなりましたが、友人を招いたり、人生に欠けていたものをみつけ、心の平穏を得ました。最後はガンで闘病の末亡くなっているので、死ぬ間際は辛かったと思いますが、南仏でようやく自分の居場所を見つけることができたのでしょう。
 
(江口由美)
 

<作品情報>
『ヴィオレット―ある作家の肖像―』
(2013年 フランス 2時間9分)
監督:マルタン・プロヴォ
出演:エマニュエル・ドゥヴォス、サンドリーヌ・キベルラン、オリヴィエ・グルメ
2015年12月19日(土)~岩波ホール、2016年1月9日(土)~シネ・リーブル梅田、京都シネマ、1月16日(土)~神戸アートビレッジセンターほか全国順次ロードショー
公式サイト ⇒ http://www.moviola.jp/violette/
配給:ムヴィオラ 
© TS PRODUCTIONS – 2013
 

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『人の望みの喜びよ』杉田真一監督インタビュー
 

~震災で両親を失った姉と弟の心情を、子どもの目線ですくい取る~

 
震災により目の前で両親が亡くなったことを弟に告げられず、一人苦しみを抱え込む姉と、大人たちの中で無邪気な笑顔を見せながら、姉のことが気になる弟。思いがけない出来事のその後を、幼い二人に寄り添うようにじっくりと描いた杉田真一監督初の長編作品『人の望みの喜びよ』が、12月5日(土)から第七藝術劇場で公開される(以降、元町映画館、京都みなみ会館にて公開)。第64回ベルリン国際映画祭ジェネレーション部門スペシャルメンションを受賞した本作は、罪悪感や思いがけない出来事にどう向き合っていくかという普遍的なテーマを、台詞ではなく主演二人の自然な表情や動きで、静かに感じさせてくれる「心で観る」作品だ。
 
阪本順治監督や大森立嗣監督の助監督を経て、長編デビュー作を撮り上げた地元伊丹出身の杉田真一監督に、助監督時代のエピソードや、本作のテーマ、そして子ども目線で描くことの意義について、お話を伺った。
 

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■阪本監督の映画との向き合い方を目の当たりにし、ここでしっかり勉強したいと思った。

―――杉田監督は、様々な監督の下で助監督として仕事をされていますが、いつから助監督の仕事を始めたのですか?
大学一年生のときにちょうど山下敦弘監督が『ばかのハコ船』を撮影されており、最後の夏のシーンを手伝わせてもらったことが最初のスタッフとしての仕事です。大森立嗣監督は、『赤目四十八滝心中未遂』で助監督をされており、関西での上映で来場した大森さんと劇場でお会いしたのがきっかけです。僕は上映劇場でもぎりスタッフをしていましたが、大森さんも気に入ってくれ、当時準備中だった『ゲルマニウムの夜』にスタッフとして参加すればと声までかけてもらいました。大学はどうしても卒業したかったので、卒業後『ゲルマニウムの夜』劇場公開初日を見に夜行バスで東京まで行ったら、大森さんは僕のことを覚えていてくれ、「卒業したなら、東京に出てきたら?」と。その言葉を機に上京し、山下監督の『天然コケッコー』などを経て、大森さんの作品準備に呼んでいただくようになりました。
 
 
―――山下監督、大森監督と学生時代から実力派の監督と仕事をされていたのですね。今も杉田監督が師匠と仰ぐ阪本順治監督の助監督になったきっかけは?
大森監督のカメラマンである大塚亮さんが、阪本監督のカメラマン、笠松則通さんの弟子という関係だったので、大塚さんと僕の仕事が空いてしまったときに、阪本監督の『展望台』(『The ショートフィルムズ みんな、はじめはコドモだった』)に参加させてもらいました。『カメレオン』の現場で阪本監督の映画との向き合い方を目の当たりにした時、ここでしっかり勉強したいと思い、以降は新作を撮る時は阪本監督も僕を呼んで下さるようになりました。
 
 
―――錚々たる監督の下で修業を積んでいらっしゃいますが、ご自身が監督される際に思い出すような教えはありますか?
大森監督も阪本監督も、ご自身の作品に本当に真摯に向き合い、誰よりも勉強するし、誰よりも苦しむし、誰よりも役者さんをリスペクトし、スタッフもリスペクトしてくださいます。ただこうしろと言うだけの演出ではなく、役者さんが表現したことに対し、それを受け止めながら、時には軌道修正を加えたりし、リスペクトを忘れないのです。僕が憧れるのはそういう演出で、その方が役者さんも輝きますし、思っていたことと違っても案外それが面白いのではないでしょうか。大森監督は「そこで生まれてきたものを信用するしかないよね」とはっきりおっしゃいますから。阪本監督は「役者には顔を見て演出、スタッフには背中で演出」とおっしゃっていました。
 
 

■「おまえ助監督に向いていないから、監督する準備をしておけ」との言葉に背中を押された。

―――助監督時代が6年ほど続いたそうですが、そこから自分の作品を撮るにいたった経緯は?
28歳の頃、『座頭市 THE LAST』のサード助監督をしていたのですが、照明を待つ間に、カメラマンの笠松さんに幾つになるか聞かれたので28歳と答えると、「その年に松岡錠司は『バタアシ金魚』を撮ってたな。助監督なんて3年やれば分かる。今回の『座頭市 THE LAST』でフィルムが余るから、それで短編映画を撮れば?」。我に返ってそうだなと思う部分もありましたが、阪本組でやりたい仕事をさせていただいていたので、そこから外れる不安もあったんです。続く『行きずりの街』が完成した夜に、阪本監督が二人で飲みにつれて行って下さり「おまえ助監督に向いていないから、セカンド助監督で2本ぐらいやったら、監督する準備をしておけ」とも言ってくださって。低予算だけど短編の話があったときにやろうと思えたのは、そんな背中を押す言葉があったからだと思います。その後短編を撮った時も、「もう助監督に戻っちゃだめだ。自分の作品のことを一番に考えろ。短編はいくら評価されても短編でしかないから、長編を作れ」とアドバイスしてくださいました。
 
 
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■大きなハプニングが起こった時に真正面からどう向き合うのか、また、何かしたいけどできない後ろめたさをテーマに描く。

―――本作のアイデアはいつ頃生まれたのですか?
東日本大震災後、実家の伊丹で3カ月生活しながら、今後世の中がどうなっていくのか感じていなくてはいけないと思いました。三好プロデューサーと長編のアイデアを考えていたときで、東日本大震災が起こり、何かしたいけれど出来ない後ろめたさを感じていました。そういう後ろめたさとどう向き合うのか。それをもっと具体的に反映した企画が今回の原案でした。はっきり打ち出すのかどうかのボリュームの違いはありましたが、一番ボリュームが大きいものを選びました。こういう題材を選んでいながら、そこから逃げるのは不誠実ではないかという思いがありましたから。
 
 
――物語は地震で少女が両親を失うところから始まりますが、監督自身の被災体験も反映されているのですか?
僕は、主人公の春奈よりは少し年上の14歳で阪神淡路大震災に遭いました。大人でもない、子どもでもない、すごく宙ぶらりんの年代を主人公にしたいと思ったのは、僕の被災体験が元になっていると思います。大人になると、頭では考えられるけれど、心がついていかないような感情が描けない。大人だと、かわしたり、別の人に相談できたり、様々な手段を選択できますが、子どもたちはそういうかわし方をしらないし、目の前で起こった事に真正面から対峙するしかありません。僕個人の立ち位置もそうですが、大きなハプニングが起こった時に真正面からどう向き合うのかに焦点を当てたかったので、子どもたちの方がテーマにも合うと思い、主人公二人の目線で描くことを選びました。
 
 
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■大人目線で描いた子どもだけには絶対にしたくない。彼らがやってみたいことを極力尊重する撮り方をした。

―――物語を通じて、主人公の子ども二人の目線で描ききっています。台詞で表現するのとは違い、感情をため込んだまま、ただ歩く春奈の姿をじっと追っていますね。
そういう表現が(春奈役の)大森絢音さんだから出来ました。実際に撮影してみないと分からなかった部分です。最初に震災が起こったところから始まり、そこで大森さんがどういう表情をするかで、この後観る人や、僕らも含めて彼女の思いを一緒に抱えることができるかが決まります。この思いさえ共通して持てるのなら、じっと寄り添って描くという表現は可能だと思わせてくれました。文字ではいくらでも表現できますが、どうやったら説得力のある映像になるかを試行錯誤し、最初の思いを一緒に抱えながら撮っていった感じです。
 
スケジュールが短い低予算映画ですが、冒頭と最後のシーンだけは撮り順を変えたくありませんでした。そうでなければ、何を手掛かりに映画を作り、何がOKか判断できません。大人目線で描いた子どもだけには絶対にしたくなかったので、プロデューサーにそこだけは無理にお願いしました。
 
 
―――子ども目線で描くということは、実はかなり難しいと思いますが、特に演出面で気を付けたことはありましたか?
思い描いていることはもちろんあるのですが、なかなか思うようにいかないことが多いです。そのときに子どもが合わせるのではなく、こちらが合わせればいいと思い、大人に演じてもらうより、すり合わせの幅を緩やかにしました。カメラマンにも、今回は子どもに合わせるので、そんなにテイクを重ねられないから一発撮りのつもりで緊張感を持つようにと話しました。子どもたちとは自分が演じる役の気持ちの動きなどを話し合いました。もちろん彼らが分からない、納得できないこともありました。そこで無理やり台詞を言ってもらうことはできますが、それでは彼らが演じる人物の気持ちは伝わってこないので、彼らがやってみたいことを極力尊重する方を選びました。普段僕がしゃべっている言葉が通じないこともあり、5歳の子どもに伝えるにはどうしたらいいかも考えました。今となっては勉強になったと思います。
 
 
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■十字架を背負ってしまった人の気持ちも、希望も日常の中にある。

―――日常の描写が続く中、後半からラストにかけては、姉弟二人だけの世界になり、二人の内面が響き合って静かな感動を呼びます。特にラストはハッとさせるものがありました。
物語としては大きな起伏もありませんし、冒頭の震災以降は見て下さる方の日常とリンクできるようなシーンばかりが並んでいる気がします。でも、十字架を背負ってしまった人の気持ちは日常にこそ現れるでしょうし、希望も日常の中にあると思うのですが、あまりにも近すぎて見えないことがあるのではないでしょうか。そこにふと気づいた瞬間を、ラストに持ってきたいと思っていました。分かりやすいハッピーエンドとして描くより、ただ目の前で悲しんでいる姉を勇気づけてあげたい一心で弟がとった行動によって表現しました。現場で翔太役の稜久君の笑顔を見たとき、この後は何をくっつけても蛇足にしかならない、こんなに説得力のあるところで終われなかったら、この映画は何だったんだと。まさに、稜久君と綾音さんの二人だから撮れたし、様々なことを積み重ねていった結果だと思います。
 
 
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■『人の望みの喜びよ』は、全てを肯定する言葉。少しでも相手をリスペクトしたいし、それを映画で表現していきたい。

―――『人の望みの喜びよ』というタイトルも、非常に印象的です。このタイトルに込めた思いや、表現したかったことを教えてください。
脚本を書いているときに、「人の望みの喜びよ」という言葉をものさしにしていました。正直、本作を見て「人の望みの喜びよ」という言葉とリンクしにくいし、覚えづらいので、他のタイトルを勧められました。でも、この言葉に向かって書き、作ってきたので、どうしても他の言葉ではしっくりこないのです。バッハの『主よ、人の望みの喜びよ』からとったのですが、否定するものが一つもない、全てを肯定する言葉で、映画のテーマにもなっています。震災後の風潮を見ていると、「復興」などの分かりやすい言葉で語られがちですが、その言葉によって苦しむ人もいるのではないか。震災などが起こったとき、生きる上で背負わなくてもいいものを背負ったり、罪悪感を抱えてしまう人もいますが、全てひっくるめて肯定できないのかと思うのです。
 
 
―――確かに今の日本は、スローガンのようなポジティブで強い言葉が全面的に出過ぎて、息苦しさを感じますね。
簡単に他人を否定することはできますが、点のような自分を中心とした考え方をもう少し広げて、自分と相手との意識を広げ、少しでも相手をリスペクトできないのかなという気持ちがあります。僕の高校の恩師が、「自分が楽しいと思うときは、足元を見ろ」と言ってくれ、今でも胸に残っているのですが、自分が楽しい時に実は他人の足を踏んでいても気づかないことがあるかもしれない。そういう時に、ふと冷静になって足元を見ることができる自分でいたいし、その方が人と関係するときにも豊かでいられるのではないでしょうか。言葉を投げるタイミングも、相手に合わせることでより加速するでしょうし、それをどうすればいいのかをこれからも映画で表現していきたいです。
(江口由美)
 

<作品情報>
『人の望みの喜びよ』
(2014 日本 1時間25分)
監督・脚本:杉田真一
出演:大森絢音、大石稜久、大塲駿平、吉本菜穂子
2015年12月5日(土)~第七藝術劇場、元町映画館、京都みなみ会館他全国順次公開
※12月5日(土)14:40の回、杉田真一監督 舞台挨拶予定
 12月6日(土)14:40の回 杉田真一監督、阪本順治監督 トークショー予定
※第64回ベルリン国際映画祭ジェネレーション部門スペシャルメンション受賞
公式サイト⇒http://nozomi-yorokobi.com/
(C) 344 Production
 

anohito-min-500-1.jpg織田作之助が書いたとされる幻の脚本を映画化した

山本一郎監督長編映画デビュー作『あのひと』

第22回ミンスク国際映画祭で審査員特別賞受賞!



第二次大戦末期の昭和19年に書かれた映画脚本『あのひと』が、2012年に大阪の中之島図書館で発見され、専門家によって文豪・織田作之助が書いたも のと認定されたと報道されました(2012年10月13日付「産経新聞」ほか)。松竹大船撮影所で製作予定だったものが、おそらく軍部の忌避にあい、実現しなかった幻の作品です。

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ストーリーは、4人の帰還軍人が戦死した部隊長の遺児「小隊長」を育てているところから始まります。やがて、戦局が厳しくなり軍需工場に働きに出た帰還軍人たちの代わりに、今度は4人の女たちが住み込んで遺児を育て始める。「小隊長」を中心とした戦時下の奇妙な共同生活を、時にユーモラスに描く意欲作で す。
 

そんな幻の作品『あのひと』が70年の時を超えて映画化! メガホンをとったのは、『武士の一分』(山田洋次監督)、『珈琲時光』(侯孝賢監督)など数々の傑作のプロデューサーを務めてきた山本一郎監督。本作が長編監督デビューとなります。織田作之助の脚本を一字一句変えず、独自の解釈であえて モノクロ/スタンダード・サイズを採用し映像美を追究。カメラマンに佐々木原保志(『その男、凶暴につき』『ゲゲゲの鬼太郎』他)など映画界を代表するスタッフが結集し、山本一郎監督の世界観を映像化しました。

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出演は、田畑智子、神戸浩、『太秦ライムライト』を製作した大野裕之率いる劇団とっても便利のメンバーに、福本清三、峰蘭太郎ら。撮影は、2013年夏に、京都の松竹撮影所で行われました。
 

 

 

このユニークな作品『あのひと』が、このたび、ベラルーシ共和国で11月6日から13日まで開催された、東ヨーロッパ・中央アジア最大の映画祭である第22回ミンスク国際映画祭にて、異例の2つの審査員特別賞を受賞!

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「映画を信じることの奇蹟、人生を信じることの奇蹟への特別賞」
「日本映画の伝統へのこだわりに対しての特別賞」

を受賞しました。

初監督作品が、国際映画祭で二つの特別賞という異例づくめの快挙です!


【山本一郎監督・受賞の言葉】
「とても光栄です。京都の松竹撮影所で撮影できた事が良かったです。20 年以上前のことですが、そこにあった、KYOTO 映画塾に感謝しています。「あのひと」に参加して下さった皆さま、ありがとうございました。
 

山本一郎監督作品・織田作之助の脚本とされる映画『あのひと』は近日、東京・渋谷のユーロスペースにて公開予定です。 


anohito-pos-1.jpg★映画『あのひと』 
87分 モノクロ/スタンダード (C)2014山本昆虫
監督:山本一郎(プロデューサーとして『武士の一分』(山田洋次監督)、『珈琲時光』(侯孝賢監督)を担当)
脚本:織田作之助(推定)
プロデューサー:榎望(『日本のいちばん長い日』『駆込み女と駆出し男』他)
出演:田畑智子、神戸浩/大野秀典、多井一晃、彩ほのか、鷲尾直彦、杉山味穂、中島ボイル、上野宝子、大野裕之、川嶋杏奈/林基継、橋本一郎、上西雄大/福本清三、峰蘭太郎 他
公開劇場:ユーロスペース(近日公開)ほか 
配給:劇団とっても便利
 

【一般からの問い合わせ先 および 配給・宣伝・宣材についての連絡先】
劇団とっても便利(担当:大野) info@benri-web.com

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