「京都」と一致するもの

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《フランス映画祭 2019 横浜》

フェスティバル・ミューズ 中谷美紀

~仏語でフランス映画の魅力を語る~

 
フランス大使館にて、6/20(木)~6/23(日)に横浜で開催の「フランス映画祭2019 横浜」ラインナップ発表記者会見 を行いました。フランス映画祭代表団・団長にはクロード・ルルーシュ監督に決定。今年のフェスティバル・ミューズの中谷美 紀さんが、流暢なフランス語と日本語でご挨拶を行い、ユニフランス代表のジョルダーノからは、映画祭のラインアップや見ど ころの紹介がありました。
 


【日時】5月28日(火)11:00~12:00
【会場】フランス大使館 大使公邸(東京都港区南麻布4-11−44 )
【登壇者】中谷美紀(フェスティバル・ミューズ) 林文子(横浜市長)
                  川口均(日産自動車株式会社 副社長 チーフサステナビリティオフィサー)
     ローラン・ピック(駐日フランス大使)
     イザベル・ジョルダーノ(ユニフランス代表)
 


FFF2019-5.28-500.pngピック大使: 今年は27回目のフランス映画祭。昨年から横浜に戻って開催し、13000人ものお客様にお越しいただいて大成功となりまし た。ユニフランス70周年、横浜・リヨン姉妹都市提携60周年という記念の年でもあります。日仏の関係性をフランス映画祭 で発展させ、映画が友情の橋渡しとなり、内容豊かなものになることを願っております。

林市長: 昨年13年ぶりに横浜での開催で、たくさんの方から「毎年やってほしい」と声をかけていただきました。フランス映画という のは、生きる喜びや哀しみを知れる日本人にぴったりの映画だと思っています。 そして、今年の映画祭に華を添えてくださるフェスティバル・ミューズを紹介させていただきます。凛とした美しさと優しさ、そ の胸に秘めた情熱、素晴らしい舞台女優として、映画女優として、そしてテレビに大活躍の方です。芸術や文化にも造詣の 深い、中谷美紀さんです!

FFF2019-5.28-240.png中谷:(まずはフランス語で、続いて日本語でご挨拶) フランス映画祭がいよいよ開催となります。フランス映画はリュミエール兄弟が映画という素晴らしい芸術をこの世にもたら して以来、人々の心に寄り添い、そして誰かが言えなかった言葉を代弁し、時には世界に対して問題提起をする存在であ り続けました。そうした素晴らしい映画の数々を、横浜のフランス映画祭で観ることが叶います。横浜の街は港町で、ご存 知の通り、カンヌの街に少し似ています。映画もさることながら、街の風情も楽しんでいただけたら幸いです。ぜひ、皆様の ご来場をお待ちしております。

川口副社長: 今年も日仏の文化交流に日産が貢献できることを光栄に存じております。実は横浜はSDGs未来都市、0カーボン横浜とい うのを掲げています。100%電気自動車である日産LEAFを今回の映画祭に役立ていただこうと、オフィシャルカーとして、 本日もお持ちした次第です。 私世代で考えると、映画は青春や人生において意味のあるものです。私の青春時代はハリウッド映画ではなくて、まさにフ ランス映画が青春そのものでした。アラン・ドロンの『太陽がいっぱい』、『男と女』、カトリーヌ・ドヌーブの『昼顔』、『個人教 授』・・・またレイモン・ルフェールの『白い恋人たち』のように音楽と映画が、心に深くしみわたるものでした。まるで印象派 の絵画のように感じています。そんなフランス映画祭をサポートできるのは光栄なことです。

ジョルダーノ代表: 世界はたしかに動乱に満ちています。文化、特に映画は私たちを結び付けてくれるものです。今年のカンヌ映画祭でアラ ン・ドロンと会う機会がありました。彼が「自分の人生の中でひとつ重要なことがある。それは映画は自分をを幸福にしてく れたことだ」と語ってくれました。「フランス映画祭2019 横浜」の映画が皆さんを幸せにすることを願っています。
 

ジョルダーノ代表: 今年の上映作品のテーマは3つです。1つ目は「パリの街」。光の街であり影もある。『アマンダと僕』『ディリリとパリ の時間旅行』の2つです。 第2のテーマは「女性の視線」で現代社会をみること。『愛しのベイビー』『カブールのツバメ』の2つです。 第3のテーマは「見捨てられた人々の報復」です。『シンク・オア・スイム』『崖っぷちの女たち』『社会の片隅で』『シノ ニムズ』です。 今回はミシェル・ルグランとフランシス・レイの追悼イベントも行います。以前、ミシェル・ルグランと話す機会があった のですが、どれほど日本が好きかを語ってくれたので「いつかフランス映画祭にきてほしい」と思っていましたが、残 念ながら亡くなってしまいました。フランシス・レイは世界中で愛された音楽家で『男と女』でも知られています。 彼らの音楽はフランスの芸術の力がどれだけ大きいかを伝えてくれました。その演奏を担当するのは、慶応義塾大 学 ライト・ミュージック・ソサイェティの皆さんです。若い人たちがつないでくれることを嬉しく思います。

今年のフランス代表団・団長は、クロード・ルルーシュ監督が務めます。彼は若い世代やあらゆるものに対しての ゴッドファーザー的な立場です。カンヌ映画祭でお会いしましたが、公式のパーティなどにはいかず、小さな上映会 で若い世代の映画を観ていました。ぜひ、若い人たちにクロード・ルルーシュ監督の言葉を聞いてほしいと思ってい ます。
 
その後、Q&Aにて中谷美紀さんに「どんな映画が好きか」という質問が。
中谷:10代のころからフランス映画が大好きでした。川口副社長もおっしゃっていましたが、フランス映画が私の青春 でした。『気狂いピエロ』『勝手にしやがれ』『大人はわかってくれない』や、クロード・ルルーシュ監督の『男と女』『白 い恋人たち』『愛と哀しみのボレロ』など。光と影を大切にとらえ、人々の人生をつぶさに見つめ、弱者にまなざしを向 け、ピリッとした笑いもあるのがフランス映画だと思います。
 

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【フランス映画祭2019 横浜 Festival du film français au Japon 2019 開催概要】


◼️期間:6月20日(木)~6月23日(日)
◼️会場:みなとみらい地区中心に開催(横浜みなとみらいホール、イオンシネマみなとみらいなど)

◼️主催:ユニフランス
◼️共催:在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ日本、横浜市
◼️特別協賛:日産自動車株式会社
 
◼️フランス映画祭とは 1993年、当時のユニフランス会長で映画プロデューサーのダニエル・トスカン・デュ・プランティエにより横浜で誕生。2006年に会場を東京に移し、2011年 より2016年まで、有楽町朝日ホール及びTOHOシネマズ日劇で開催。2012年からは、アンスティチュ・フランセ日本の協力により、地方での開催を実施。各地 の映画ファンにも喜ばれるイベントとなった。フランス映画祭を通し、日本国内におけるフランス映画全体の活況を図ること、フランス映画を配給する各社の助 けとなること、また、まだ買付のついてないフランス映画、新進の監督や俳優に日本で紹介される機会を作ることがその狙い。加えて、来日するゲストによるマ スタークラスを実施し、日本の未来の映画の作り手との繋がりも重要視されている。

第25回という節目である2017年には、フランスを代表する女優のカトリーヌ・ドヌーヴが団長として来日。フランスでも人気の高い北野武監督が親善大使を務 めた。昨年は13年ぶりに横浜に場所を移し、フランソワ・トリュフォー監督やジャン=リュック・ゴダール監督の名作でも知られる女優のナタリー・バイが団 長を務め、フェスティバル・ミューズに常盤貴子さんが就任し、華やかに開催された。
 
横浜みなとみらいホール:5月29日(水)10:00より 、イオンシネマみなとみらい:5月29日(水)8:00より 全作品チケット販売開始!!
詳細は公式サイトにて http://unifrance.jp/festival/2019/

 

(オフィシャルレポートより)

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『兄消える』柳澤慎一インタビュー

(2019年5月20日(月)シネ・リーブル梅田にて)


「柳澤慎一さん:60年ぶりの主演作「これが遺作です」

「土屋貴子さん:生まれ育った信州上田の観光大使に」

 

映画俳優・柳澤慎一氏が60年ぶりに映画『兄消える』(西川信廣監督)に主演。御年87才、これが170作目。主演は『酔いどれ幽霊』(58年)以来。自ら「遺作です」と笑ったが「遺作にふさわしい映画」で、“らしい生きざま”を見せた。ホンマお達者!


信州上田を舞台にした兄弟の物語。弟(高橋長英)は父親の介護で結婚もせずコツコツと父親が残した鉄工場を継いで一人暮らしてきた。その父親が百歳で亡くなり、賑やかに葬儀を終えたあと、40年間行方知れずだった兄・金之助(柳澤慎一)がふらりと舞い戻ってきた。今ごろ突然、なんで? 今年80歳になるというのに娘ほど年の離れた女・樹里(土屋貴子)を連れて。「今晩から世話になる」と居候を始める。


anikieru-500-1.jpg兄は「金を借りに来て」父親と喧嘩になり、プイと出て行った。フィリピンで暮らしていたというが詳しいことは不明。一方、樹里の方も何者かに追われている様子。下町の地味な人情ドラマなのになぜか緊迫感が漂う。兄とあの女は一体何をして生きてきたのか、これから何をするのか?


柳澤さんは『ザ・マジックアワー』(08)出演以来、自ら「出入り口を閉ざし、シャッターを下ろした生活をしてきた」。この作品のオファーが来た時も「絶対断ろう、と思った」という。何しろ映画の主演は実に半世紀を超える60年ぶり。11年間、人間嫌いが高じて世捨て人だった柳澤さんには生半可な決断ではなかった。


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【 土屋貴子さん(左)と柳澤慎一さん 】

「大体、セリフを覚えるのも並大抵じゃない」  。それほどの拒絶反応を覆したのは西川信廣監督と、何十年も「柳澤さんで撮りたい」と思い続けてきた新田博邦プロデューサー(企画)の熱意のなせるワザだった。


「どういう構想を持っているか、説明に務めた」と新田プロデューサー。柳澤さんも「私にたどり着くまでが大変だっただろう」と同情する。当然のことと言えば失礼だが、このお年で五体満足な訳はない。「だけど“ヨーイ・スタート”がかかったらもう止めることは出来ない。監督やプロデューサー、スタッフに迷惑はかけられない。無茶すぎる、と思った」。だけど、プロデューサーの説明は理路整然していて、普通の活動屋とは違った。異色な方だな、と思った」。そんな思いで自ら決断した。それはまた、長い間映画の中で過ごしてきた俳優の業でもあっただろうか。


anikieru-500-4.jpg撮影は昨年末、約20日間。柳澤さんは足の付け根を負傷し「患部から細菌が入って歯も腫れた」と歯ぐきも見せてくれた。実際、静脈血栓と診断され、足を切断するかどうか、というところまで追い込まれたという。60年ぶりのチャレンジはまさしく命がけだった。立っているだけでも負担がかかる状態。考えたら、PRのためとは言え「よお大阪まで来れた」と感心する。まったく、冗談では済まない。


anikieru-500-3.jpg映画は、大ベテランらしく、心に染み入るようなシーンがふんだん。まじめ一筋の弟との会話などは両ベテランの真骨頂。ええ加減な兄貴と樹里がお腹を空かした子供と遭遇し「メシを食わせてやる」という場面は世間から見る“はぐれトリオ”の連帯シーン。謎だった樹里の失踪の理由は最後近くに明らかになるが、喫茶店で金之助がいない間に、何者かに連れさられる空白の一瞬。事態を知った金之助が「一人になった」時のぼう然とした表情に孤独感が滲み出た。この表情が60年のキャリアを感じさせた。


「何気ない表情に見えるが、考え尽くしたシーン」と新田プロデューサーは証言する。この業界、金之助みたいな生き方を実行する人もいた。「ちゃらんぽらんでいい加減なオヤジ、こんなやつはいやだな、と思ってもらえたら成功かな」。最近増えている少子高齢化もの。「兄消える」もその1本にちがいない。だが、明確に一線を画すのが主人公・金之助の何とも言えない軽妙さ、不思議な明かるさ。新田プロデューサーが長年待ち続けたのは、柳澤さん以外には出せない、この「軽妙な明るさ」だったに違いない。筆者が調子に乗って、「いい映画になったんですから、遺作なんて言わず、もう1本どないですか?」と言ったら、「いやいやもうできませんな」というご返答でした。

 

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兄・金之助と一緒に帰って来た謎の女・樹里を演じた土屋貴子(54)も柳澤さんに同行してPR。しっとりと落ち着いた作品の出来栄えに自信の笑顔を見せた。大ベテラン柳澤氏との共演は大変な刺激になったようで「柳澤さんは努力する姿を人前で見せない。そんなところは、私も将来そうなりたいと思う」。


映画の舞台になったのは長野県上田市。土屋の出身地で現在、信州上田の観光大使を務めている。「兄消える」は現地で「映画を連日満席にする会」が結成されるなどご当地らしい盛り上がりを見せている

 

(安永 五郎)


出演:柳澤愼一 高橋長英/土屋貴子/ 金内喜久夫 たかお鷹 原康義 坂口芳貞 / 新橋耐子/雪村いづみ(特別出演) 江守徹(特別出演)
監督:西川信廣 脚本:戌井昭人 音楽:池辺晋一郎
企画・製作:新田博邦 エグゼクティブ・プロデューサー:井上元文
撮影監督・編集:小美野昌史|助監督:平波亘|照明:淡路俊之|美術:橋本千春
仕上げ:荷田一隆|整音:松本能紀|音効:藤田昌宏|衣装:深野明美|メイク:渡辺祐子
スチール:谷川真紀子|協力プロデューサー:増田徳也|AP:春山智
協力:上田市|特別協力:文学座|企画・制作:ミューズ・プランニング
製作:「兄消える」製作委員会|配給:エレファントハウス、ミューズ・プランニング
©「兄消える」製作委員会
公式サイト: https://ani-kieru.net/

2019年5月31日(金)~テアトル梅田、6月1日(土)~京都シネマ、順次元町映画館、6月14日(金)~豊岡劇場 ほか全国順次公開

 

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クローゼットに閉じ込められた僕の奇想天外な旅』

クロ旅オリジナルステッカー プレゼント!

※ポストカードサイズでかわいいです!

 

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■提供:東北新社

■プレゼント数: 10名様

■締切:2019年6月16日(日)

公式サイト: http://clotabi-movie.jp/

 

公開日:2019年6月7日(金)~なんばパークスシネマ、大阪ステーションシティシネマ、MOVIX京都、神戸国際松竹、MOVIXあまがさき にて 公開!

 


  

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クローゼットに閉じこめられて世界旅行!?

驚きに満ちた旅のなかでアジャが見つけた大切なものとは──


憧れのインテリアショップがあるパリへやってきたインド人青年アジャ。閉店後、店内のクローゼットで一晩を明かすことを決めたが、そのクローゼットがトラックで搬出されてしまう!知らぬうちに奇想天外な旅へと巻き込まれたアジャの運命やいかに…!?


世界を知らない青年が、ハプニング連続の世界旅行を続けるなかで様々な出会いを通じ成長していく本作は、30ヵ国以上の出版社に翻訳権が売れた人気小説が原作。『人生、ブラボー!』のケン・スコットが監督を務め、実際に世界各国を飛び回り撮影が行われた。主人公アジャを演じるのはインド期待の星、ダヌーシュ。共演にベレニス・ベジョ、エリン・モリアーティ、バーカッド・アブディ、ジェラール・ジュニョなど15ヶ国からが集結し、観る人を世界旅行へいざなう。はちゃめちゃな旅の終わりに待っている最高のハッピーエンドは観る人の心を輝かせること必至!

 



【監督】ケン・スコット(『人生ブラボー!』)    
【出演】ダヌーシュ、ベレニス・ベジョ(『アーティスト』)、エリン・モリアーティ(『はじまりへの旅』)、バーカッド・アブディ(『キャプテン・フィリップス)、ジェラール・ジュニョ(『バティニョールおじさん』) 
【原題】The Extraordinary Journey of the Fakir 
【原作】ロマン・プエルトラス「IKEAのタンスに閉じこめられたサドゥーの奇想天外な旅」(小学館文庫/吉田恒雄 訳)
    96分 / フランス、ベルギー、インド / 英語 / 配給:東北新社 STAR CHANNEL MOVIES
    ©2018 Copyright BRIO FILMS-SCOPE PICTURES-LITTLR RED CAR-TF1 AUDIOVISUELS-SONY PICTURES ENTERTAINMENT FRANCE All rights reserved.

2019年6月7日(金)~なんばパークスシネマ、大阪ステーションシティシネマ、MOVIX京都、神戸国際松竹、MOVIXあまがさき にて 公開!

 



 (プレスリリースより)

 
 

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(2019年5月17日(金)大阪商工会議所国際ホール)

ゲスト:中野量太監督



蒼井優×竹内結子×松原智恵子×山﨑努
日本映画界が誇る豪華実力派俳優の共演!

日本アカデミー賞他 国内映画賞34部門受賞『湯を沸かすほどの熱い愛』
中野量太監督 最新作『長いお別れ』

 

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~認知症の父親と共に紡ぐファミリー・ヒストリー~

 

2016年公開の商業映画デビュー作『湯を沸かすほどの熱い愛』の大ヒットでいきなり映画賞総なめの快挙を遂げた中野量太監督。オリジナル脚本にこだわってきた中野監督が、最新作の『長いお別れ』では直木賞受賞作家の中島京子の同名小説を映画化。元校長を務めていた厳格な父が認知症になったと告げられ家族の7年に及ぶファミリー・ヒストリーを、蒼井優、竹内結子、松原智恵子、山﨑努という日本映画界が誇る豪華キャストで贈る、笑って泣いて、前に進んでいく、愛おしいほど家族愛にあふれたヒューマンドラマである。


「認知症はゆっくり記憶を失っていく病気で、家族にとっては悲しいことも多いが、“記憶は失っても、愛は失わない”ということを丁寧に撮ったつもりです」という中野監督。さり気なく自慢話をしては笑いをとる辺りは、さすが関西人!ソフトな語りながら、創意工夫に満ちた演出方法は熟練の大ベテラン俳優の山﨑努をも魅了したようだ。そんな才気あふれる中野量太監督が、5月31日(金)の公開を前に、試写会の舞台挨拶に登壇した。
 



nagaiowakare-bu-o-240-3.jpg――最初のご挨拶。
『長いお別れ』を監督しました中野量太です。こんなに沢山の方に来て頂いて驚いています。昨日大阪入りしまして串揚げを食べ、先ほどはたこ焼きを食べました。実家は京都なんですが、大阪は久しぶりでしたので美味しく頂けました。


――初めて原作本を映画化されましたが?
元々オリジナル脚本で映画を撮ってきたのですが、今回は本を薦められて読んでみたら凄く面白くて、認知症の父親を問題を抱えた家族が一所懸命支える姿が可愛らしかったり、クスッと笑えたりと、僕の好きなテーマと一致したのです。元々家族が苦しい状況で右往左往している姿が愛おしかたり、滑稽だったりする作品を作ってきましたからね。皆さんも、認知症だからと言って構えずに、クスッと笑って観て下さいね。


nagaiowakare-500-2.jpg――高齢化社会にふさわしい作品ですね?
今や65歳以上の5人に1人は認知症になる時代です。僕の祖母も認知症ですし、決して他人ごとではありません。本を読み終えて、いま撮るべき映画だと思ったのです。


nagaiowakare-bu-o-240-4.jpg――キャスティングは?
山﨑努さんは、以前に原作を読んでおられて、その時から「この役は自分に来るだろう」と予想されていたそうです。オファーされてみて、運命を感じたとか!?  演じる自信があるからこそ予想できたのだと思います。そんな方を引き当てたのも僕の強運のお陰ですね~(笑)。


――大ベテランの山﨑努さんと演技のことで食い違う点などはなかったのですか?
山﨑さんのような偉大な俳優さんとお会いする機会などなかったのですが、私の脚本を読んで下さって、とても気に入って頂けたのです。それから鉄板焼きを食べに行った際に、僕の過去の作品も観て、「本当にいい作品を撮っているね!」ととても褒めて下さいました。お酒が回りあまり覚えていないのですが、聞くところによると、最後はハグしていたらしいです、あの山﨑勉さんと!?(笑)ご自宅にも招待して下さって、役柄や作品についてよくお話させて頂きましたので、現場での食い違いはなかったですね。


nagaiowakare-500-1.jpg――女優の皆さんとは?
それぞれの役を演じてもらうというよりは、4人が家族に見えるように心掛けました。例えば、映画は70歳の誕生日で父親の認知症を告げられるシーンから物語は展開していきますが、そこで認知症になる前の67歳のお誕生日会を撮影前にやってもらったのです。元気な父親を知っていたからこそ、認知症のことを聞いて本当にびっくりするようにね。


――7年という間は?
認知症はどんどん症状が進んでいきます。でも、順撮りはできなかったのですが、山﨑さんはさすがです!演技プランのようなものをご用意されていたようで、そのプラン通りに演じておられました。


nagaiowakare-500-5.jpg――心がホッと軽くなるような映画ですね?
認知症の映画といっても重苦しいものではなく、全く新しい映画にしようと最初から思って撮りました。認知症になると人はどこか少しずつ変化していくけど、それは全体のほんの数パーセントだけ。90パーセント以上は変わらないのです。悲しいですが、家族の名前も忘れてしまうのは仕方のないことです。でも、「この人は自分にとって大切な人である」ということは忘れない。「記憶は失っても、愛は失わない」…そのことを丁寧に撮ったつもりです。


(この日は、マスコミによるフォトセッションの後、会場のお客様にも撮影が許可された。)


――最後のご挨拶。
認知症を扱った作品ですが、そんなに重苦しい映画ではないので、肩の力を抜いてお楽しみ下さい。気に入って頂けたら、せっかく僕の写真を撮られたのですから(笑)、SNSなどでご家族、ご親戚・ご近所の方々におススメ頂ければ嬉しいです。どうぞよろしくお願い致します。

 


『長いお別れ』

名優・山﨑努の存在感と、可憐な松原智恵子の健気さに魅了される感動作

【STORY】

8c8c13e03a9a2146.jpg父(山﨑努)の70歳の誕生に久しぶりに実家にもどった姉の麻里(竹内結子)と芙美(蒼井優)の姉妹は、母(松原智恵子)から父が認知症になったことを告げられる。元校長まで務めた厳格な父が…とショックを受けるが、少しずつ記憶を失っていく現状を受け止めざるを得なくなる。麻里は、夫の研究のためアメリカで息子と3人で暮らしているが、慣れない海外生活の上に寡黙な夫に反抗期の息子と、両親を気遣いながらもジレンマを抱えていた。そして、芙美の方は、いずれは自分のカフェを開きたいと思っているが、仕事にも恋にも行き詰まりを感じている。海外にいる姉の代わりに母を助ける芙美。


認知症が進み記憶を失っていく父が、ある日行方不明になる。それは、家族にとってかけがえのない思い出を呼び起こすことになる。「記憶は失っても、愛は失わない」…変わらぬ愛情でもって父を支える母の姿を見て、娘たちにも少し変化がおとずれていく……。
 

・監督:中野量太 
・出演:蒼井優 竹内結子 松原智恵子 山﨑努 北村有起哉 中村倫也 杉田雷麟 蒲田優惟人
・脚本:中野量太 大野敏哉 
・原作:中島京子『長いお別れ』(文春文庫刊)
・主題歌:優河「めぐる」
・企画:アスミック・エース Hara Office 
・配給・制作:アスミック・エース 

・©2019『長いお別れ』製作委員会 ©中島京子/文藝春秋

・公式サイト:http://nagaiowakare.asmik-ace.co.jp/
・公式Facebook:www.facebook.com/nagaiowakaremovie/ 
・公式twitter:
@nagaiowakare_mv 

2019年5月31日(金)~ 全国ロードショー



(河田 真喜子)

 

 
 
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京都人の足として長年愛されている通称「嵐電」(京福電気鉄道嵐山本線)は、古くから映画撮影所が多く集まる地区を走り、溝口健二をはじめとする多くの映画人が愛用していたことでも知られる路面電車だ。その嵐電をモチーフに、京都に住む人、外から来た人の視点を織り交ぜながら、3つのラブストーリーを描いた映画『嵐電』が、5月24日(金)からテアトル新宿、京都シネマ、6月7日(金)からテアトル梅田他で全国順次公開される。
 
監督は『ゲゲゲの女房』(10)、『楽隊のうさぎ』(13)の鈴木卓爾。嵐電の街で妻・斗麻子(安部聡子)と体験した出来事を呼び覚ますため、京都に滞在するノンフィクション作家衛星(井浦新)、撮影のため京都を訪れた新進俳優、譜雨(金井浩人)と撮影所にランチを届ける近所のカフェ店員嘉子(大西礼芳)、嵐電オタクの子午線(石田健太)と彼に一目惚れした修学旅行生の南天(窪瀬環)らが、時には時空を超えて出会いや別れ、そして愛おしい感情を共有していく。夕子さん電車や深夜電車の都市伝説を交えながら、鈴木節満開の時空を超えたヒューマンドラマだ。世界初上映された大阪アジアン映画祭のオープニングでは、キャストが勢ぞろいし、満席の観客と大いに盛り上がった。
 
本作の鈴木卓爾監督、出演の井浦新さん、大西礼芳さん、金井浩人さんにお話を伺った。
 

 
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■京都に住み、その空気を吸いながら、大学のプロジェクトとつなげ、自分でプロデュース(鈴木)

―――京都で愛され続けてきた嵐電を題材にした映画ですが、制作のきっかけは?
鈴木: 2015年9月、オムロの西田宣善さんから「嵐電を題材にラブストーリーを撮ってほしい」と1枚の企画書を渡されたのがきっかけです。「嵐電の中で不思議な美女に出会った男は、謎の事件に巻き込まれていく…」という内容だったのですが、そこで僕はホセ・ルイス・ゲリンの『シルビアのいる街で』(07)を思い出しました。ストラスブールというトラムが走る街を舞台に、ある場所で出会った女の人をずっと探し求めている映画で、60分間全くストーリーはないのですが、絵でしっかりと見せきる映画でした。
 
2016年4月から京都造形芸術大学(以降京都造形大)准教授に就任したので、単身赴任で京都に住み、京都の空気を吸いながら、北白川派映画として京都造形大のプロジェクトとつなげたり、自分でプロデュースをするという方向で映画を制作することになりました。西田さんの父、西田智さんは、その昔、嵐電に乗車中に「あなたはいい顔をしているから、映画に出ませんか」とあの溝口健二監督にスカウトされたそうです。『武蔵野夫人』(51)や『新平家物語』(55)に出演されているし、西田(宣善)さんが初めて8ミリカメラを手にされた時は、まず嵐電を撮影しに行くぐらい、かなり長年の思い入れのある企画だったそうです。僕がシネマインパクトで撮った『ポッポー町の人々』(12)は、都営荒川線という単一車両で走っている電車の町を架空の町に見立てた群像劇なのですが、西田さんはその作品をご覧になり、依頼してくださったそうです。
 
―――あちらの世界とこちらの世界を行き来するアイデアは最初からあったのですか?
鈴木:私は素でやると、時制を無視してしまうタイプなので、監督補の浅利宏さんに撮影までの間、台本を通訳してもらったり、セリフの改変、シーンの書き足し等で分かりやすくしてもらいました。シャガールの絵のように時空を超えるような、「映画ってそういうものじゃないですか」ということを、他の映画監督はやらないですよね。今日は今日、明日は明日と時制どおりですし、回想は回想シーンとしてでしか登場しないということに私はどこか不自由を感じています。あまりにも遊ばなさすぎると感じてきました。テオ・アンゲロプロス監督はワンカットで10年をすっ飛ばしているじゃないかと思いますけれどね。
 
 
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■衛星は、『嵐電』の世界の中で出会い、すれ違う人をとにかく見つめている役回りとして、そこにいようと思った。(井浦)

―――井浦さんは、どのようにオファーが来たのですか?
井浦:監督が直接、僕の目をじっと見て、「僕の映画に出てください!」とおっしゃってくださったので、二つ返事で「はい!どんな役でもやります」と飛び込んでいきました。「電車の映画なんです」という誘い方もしてくださいました。僕は電車が好きで、乗り鉄、撮り鉄なので、大好きな電車の映画に携わり、その現場で過ごせるのはなんて幸せなんだろうと思いました。卓爾監督とは役者としても多数共演していますし、監督とまた新しく何かを探すことができるという気持ちもありました。
 
―――鎌倉からやってきたノンフィクションライターという役どころはいかがでしたか?
井浦:僕が演じた衛星は、あの世とこの世を行き来するので、難しかったですし、どう演じていこうかと考えました。衛星が映っているところは全部あの世かもしれない、というぐらいのテンションでいいのではないかと。『嵐電』の台本をいただき、文字を素直に読むことで想像させられる世界もあれば、また違う角度から見ると、全く違うところに飛んで行ってしまう。ワンシーンワンシーンで色々なことが起きています。撮影現場では、普通でないものがある中で、僕たちは芝居をさせていただきました。本当に想像させられる映画ですし、大きな軸として、各世代のラブストーリーがあります。監督も、本当に言いたいことを一番奥にしまい込みかつ、たくさんの人が楽しんでもらえるようにする。とてもチャレンジングな試みをされていることが台本から分かりましたので、衛星を演じるにあたり、難しいことはせず、しっかりとこの作品の核を握り続けたまま、何もしないでおこう。『嵐電』の世界の中で出会い、すれ違う人をとにかく見つめている。そういう役回りとして、そこにいようと思いました。
 
 
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■関西弁だと気持ちの動き方が全然違う。(大西)

―――大西さんは『MADE IN JAPAN〜こらッ!〜』(11)、『彌勒 MIROKU』(13)に続く北白川派作品への出演ですが、京都在住の嘉子役はいかがでしたか?
大西:卓爾監督の作品は初出演ですが、卒業制作展のゲストに呼んでいただき、映画のコメントをいただいたことがありました。「あのシーンの建物から出てきた大西さんの歩き方って、すごく素人っぽかったですよね」と言われて、素人っぽいってどういうことなんやろと考え始め、卓爾さんって何を考えてるんやろ、卓爾さんの演出する映画に出たいとずっと思っていました。今回、念願が叶ってうれしかったです。
鈴木:大西さんが人を見る時の目が、凄いなと思っていました。ちょっと人間じゃないような、「ん?漫画?異次元か?」みたいな感じで、早く撮りたいと思わせる目つきをされていた。そんな大西さんの起用をずっと狙っていました。
大西:今回は京都造形大に帰ってきたという感じではなく、鈴木組に参加するという気持ちで来ました。私は三重県出身で地元から出たことがなく、他の場所の空気や人と出会ったことがない人見知りだったのですが、そういう自分を思い出しながら演じました。大学で京都、仕事で東京に出て、いろいろな人に会い、仕事をする中で人との接し方がすごく変わってきたので、嘉子は今の自分とは違うけれど、昔の自分とは近いかもしれません。あとは関西弁だったので、標準語をしゃべっている時と気持ちの動き方が全然違う。今回は関西弁に助けられた部分もあると思います。
 
 

■今の若い俳優が持つ悩みを、役に投入した。(金井)

―――金井さんは俳優の卵、譜雨役で、劇中劇のシーンもありましたね。
金井:東京から来たそんなに有名じゃない俳優という役は、等身大の自分に近かったと思います。今の若い俳優が悩みがちなこと、今自分がどこにいて、これからどこにいくのかという悩みを僕も常に持っているので、そういうところを役に投入できればいいなと思いました。(だんだん嘉子のことが好きになっていく演技については)大西さん自身を好きになることから役にぶつかっていきました。
大西:嘉子と譜雨は最初とてもギクシャクしているのですが、そのギクシャクし具合も卓爾監督に結構細かく指導していただいたのを覚えています。譜雨の言葉尻を捉えて、「少しでも気に入らないことがあれば目を逸らすとか、そういうことするんですかねぇ」って。(笑)
鈴木:それは「目を逸らせ」ということですね(笑)今回、台本は本当に感情を抑えて書いているので、読んだだけではどう演じていいのかわからなかったと思います。俳優さんがどう見つけてくれるか、極力俳優さんに放り投げたかった。台本に書く抑揚の表現(?や!マーク)を止めると、どんどん演技が変わっていきますし、そこから映画にしかできないことが生まれたらいいなという思いがあったんです。
 
 
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■京都が小さな星、その周りをみんながグルグル動いて、電車が一回りしている。(大西)

―――3組の男女の話が描かれますが、それぞれ、結局どうなったのだろうかという想像を掻き立てますね。
大西:演じている時は思わなかったけれど、京都が小さな星で、その周りをみんながグルグル動いて、電車が一回りする気がします。
井浦:『嵐電』の世界自体が銀河ですよね。珈琲屋さんの名前が「銀河」ですし、若者たちが、全てのシーンで巡りながらセリフを話すんです。登場人物の名前もそれを想像させるものがポンポンと置かれていますし、星々の話、神話だなと思いました。
鈴木:京都が舞台ですし、「帷子ノ辻(かたびらのつじ)」を通過してくる嵐電を相手にしなくてはならないわけですから、登場人物も星の守りを受け、風水的にも良いものをと「北門南天」や「有村子午線」、「川口明輝尾」という名前を付けました。それでようやく俺、頑張れるなと思いましたね。
 
 
 

■嵐電は、『風の谷のナウシカ』王蟲のイメージ。生き物のように撮りたかった。(鈴木)

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―――嵐電があらゆるシーンで登場するだけでなく、踏切音やレールを通過する音など、嵐電の気配を常に感じさせました。どのようにサウンドデザインをされたのですか?
鈴木:今回の録音は京都造形で録音技術を教えてこられた中山隆匡さんにお願いしました。嵐電は一両一両違う車両が、毎日走っていて、撮影では「この日のこの場面を撮るので、この車両が走ってくれるとありがたいです」という感じで京福電鉄さんにお願いをし、全て運行通りの中で、僕たちは準備してヨーイドンで撮影しました。それでNGが出ると、同じ方角からその電車が来るのを1時間待つことになるので、全員で集中力を高めて臨んでいました。嵐電の鉄の軋む音やブレーキ音は、トラムが新しくなったらそうは聞こえなくなるような音を、今でも京都の街で響かせて走っている。例えば西院駅では踏切遮断機がないのに、「チン、チン、チン、チン」と100年前ぐらいから使われている鐘が踏切の役割として今も現役で鳴っています。そういう音はこの映画の命です。
 
あと電車映画ではありますが、「電車映画だ」と思って撮らない方がいいのではないか。最初は『風の谷のナウシカ』の腐海にゴツゴツ突然現れては消えていく巨大な王蟲のイメージで嵐電を撮れたら最高だなと思ったのです。腐海の向こうで一匹だけナウシカを迎えに来る王蟲が僕には嵐電に見えて、あの作品は路面電車の映画だと思っています(笑)
 
もう一つ、嵐電の映画を撮るということは、いろいろな路面電車映画の記憶がベースになります。F・W・ムルナウの『サンライズ』(27)、アキ・カウリスマキの『浮き雲』(66)、それからバフティヤル・フドイナザーロフの『少年、機関車に乗る』(91)というとんでもない傑作もあります。常に人間と電車が近いし、家並みも近かったり、アヒルが横切ることもある。さすがに線路をまたいで撮影はできませんが、実際にできる中から嵐電を撮ろうとした時、音に関しては嵐電を生き物のように撮りたいという考えで作っています。
 
 
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■北白川派の映画現場に入ると、自分の演技が「清められる」感じがする。(井浦)

―――今回の現場は京都造形大の学生キャスト、スタッフが多数携わっていますが、プロの役者として井浦さんは何かアドバイスなどをされたのですか?
井浦:生徒さんたちを育てているのは先生で、監督の鈴木卓爾さんですから、僕は双方の関係を一歩引いて見ていました。これから映画のプロ、俳優のプロを志す人たちが集まる現場から、正直言えば、僕も勉強しに来ている部分がありました。
 
実際、こちらが意識しなくても、現場で僕が「おはようございます」と入り、帰る瞬間まで、学生の皆さんは俳優がどのように現場に入るか、スタッフとどのような関わり方をして一緒に映画を作っていくのか等を見ているはずです。僕は今まで先輩方から現場で学んできたことを、何も変わらずにやる。逆に学生たちとやっているからといって、変えてはいけません。いつもの現場と同じように僕が鈴木組でやっていることを、知りたい人が自由に知る。監督と共演者とスタッフが皆で映画を作っていく中で、そういうことが自然にあればいいなと思います。
 
後は、北白川派の映画現場にいると、芝居が「洗濯される」感覚があります。今まで色々なことを学び、こびり付いてきたものが、一度北白川派の現場に入ると清められる。真っ白になるわけではありませんが、真っ白い人たちが周りにたくさんいるので、「こんな芝居ができてよかったな」とか「子午線には敵わないな」とか、いいなと思う人たちがたくさんいる中で、芝居をさせていただいたのが、すごく良かったです。
 
 
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■嵐電そのものが、きっと映画。(井浦)

―――最後に、嵐電の思い出について教えてください。
井浦:路面電車と鉄道の違いは、鉄道は速いので車窓の風景を楽しむ時、どんどん流れてしまう。山が綺麗だとか、全体の風景をみる訳ですが、路面電車の場合、窓ガラスがスクリーンのようになって、例えば洗濯物が見えたり、住人の喧嘩が見えたりする。速度がゆっくりで隣との距離が近いので、物語の中を通過している気がします。嵐電そのものが、きっと映画なのです。嵐電の中でも窓ガラスの向こう側でも、映画のような瞬間がたくさんある。そんな気がします。
 
(江口由美)

 
<作品情報>
『嵐電』(2019年 日本 114分)
監督・脚本・プロデューサー:鈴木卓爾  音楽:あがた森魚
出演:井浦新、大西礼芳、安部聡子、金井浩人他
2019年5月24日(金)~テアトル新宿、京都シネマ、6月7日(金)~テアトル梅田、6月中旬〜シネ・リーブル神戸他全国順次公開
公式サイト:http://www.randen-movie.com/
© Migrant Birds / Omuro / Kyoto University of Art and Design

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アイススケートをメジャースポーツへと押し上げ、さらに芸術の領域にまで昇華させた伝説の五輪フィギュアスケート金メダリスト、ジョン・カリーを追った映画『氷上の王、ジョン・カリー』。5月31日(金)の公開に先駆け、ジャパンプレミアを開催いたしました。


日程:2019年5月9日(木)
場所:新宿ピカデリー(東京都新宿区新宿3丁目15−15)
登壇:町田樹(慶應義塾大学・法政大学非常勤講師)、宮本賢二(振付師)
司会:蒲田健(MC・パーソナリティー)
 



「伝説のスケーター“ジョン・カリー”のノーミス演技は
『ロト6』レベルの確率」 


元フィギュアスケート選手の町田樹さんが9日、新宿ピカデリーで開催された映画『氷上の王、ジョン・カリー』のジャパンプレミアに出席。本編上映後のトークコーナーでは、カリーの魅力はもとより、競技としてだけではない総合芸術としてのフィギュアスケートのあり方や令和に向けてのヴジョンなど、自身の現役時代の経験を交えながら熱く語った。この日は、髙橋大輔さんや羽生結弦さんらトップスケーターの振付師として活躍する宮本賢二も登壇した。


iceking-550.jpg本作は、アイススケートをメジャースポーツへと押し上げ、さらに芸術の領域にまで昇華させた伝説の英国人スケーター、ジョン・カリーの知られざる素顔に迫るドキュメンタリー。アスリートとしてのカリーだけでなく、栄光の裏にあった深い孤独、自ら立ち上げたカンパニーでの新たな挑戦、そして彼を蝕んでゆく病魔AIDSとの闘いを、貴重なパフォーマンス映像と、本人、家族や友人、スケート関係者へのインタビューで明らかにしていく。

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2018年、プロスケーター引退後は研究者の道へ進み、現在、慶應義塾大学・法政大学非常勤講師を務める町田さん。かつて雑誌の連載でカリーを取り上げたことがきっかけで、今回、本作の字幕監修・学術協力として参加することに。「芸術としてのフィギュアスケート作品を考えたときに、彼の名前が頭の中にパッと閃く」というほどカリーに惚れ込んでいる町田さんは、ジュニア時代に初めて優勝した大会もイギリスで行われた『ジョン・カリー・メモリアル』だそうで、「私とカリーの関係はそこから始まっている」とニッコリ。

 

iceking-pos.jpgカリーの伝記を読んで驚嘆したという町田さんは、「1976年のインスブルック冬季五輪で、フィギュアスケート男子シングルの金メダルをノーミスで獲得しているんですが、伝記によると、その前の練習で約1ヶ月間、ずっとノーミスだったそうです。ここまで完璧なまま本番を迎え、そして金メダルを獲るなんて、『LOTO6(ロトシックス)』を当てるくらい難しい。練習に裏打ちされた結果と美、なんですよね」と独特の表現でカリーの凄さを表現した。


また先日、フィギュアスケートの専門雑誌『ワールド・フィギュアスケート』で、「町田樹セレクション・スペシャルアワード」という新たな連載をスタートさせたという町田さん。「独断で勝手に賞を贈る」という企画だそうだが、もしもカリーに贈るとしたら、町田さんは、「ポラリス賞を贈りたい」と発表。その理由として、「ポラリスとは北極星のことなんですが、不動の基点として輝いている人、つまり、カリーはフィギュアスケーターの誰もが目標とすべき指標だと思うんですね。目指すべき人であり、学ぶべき人」と惜しむことなく称賛の言葉を贈った。


iceking-ive-240-2.jpg今年5月1日、ついに新元号「令和」を迎えたが、これからのフィギュアの未来について二人は、さらなる技術の向上を期待する。「4回転半、5回転の時代は間違いなく来るでしょうね。ただ、技術を上げた分、芸術性も上げていかなければならない」と語る宮本さんに対して町田さんは、大いに共感しながらも、「考えなくてはいけないのは、『その技術を使ってあなたは何を表現したいですか?』というところだと思います」と指摘。


さらに、「今後、間違いなくAIが深く関与してくる」と断言する町田さんは、「オリンピック競技になっている以上、勝ち負け、優劣は、客観的でなければならないと思う。ただ、AIが好む演技ばかりしていると、機械的な表現になってしまうので、令和のスターフィギュアスケーターの条件は、『AIに支配されない演技ができること』と言えるんじゃないか」と持論を展開。「もちろん、テクニカルスコア(技術点)などAIが必要な部分もあるので、AIと人間の相互補完的な演技の評価システムを構築していく時代なのかなと思います」と締めくくった。
 


【プロフィール】  

◆町田樹(慶應義塾大学・法政大学非常勤講師)
1990年生まれ。2006年全日本ジュニア選手権優勝。シニア転向後はグランプリシリーズで通算4勝。2014年2月ソチオリンピック出場、団体・個人ともに5位入賞。同年3月の世界選手権では銀メダル獲得。同年12月に選手引退の後は、プロフィギュアスケーターとして自作振付による作品をアイスショーで発表し続けた。2018年10月プロ引退。一方、2015年より早稲田大学大学院スポーツ科学研究科に進学、現在は博士後期課程に在学中。専門はスポーツマネジメント、スポーツ文化論、文化経済学、身体芸術論。2018年4月より慶應義塾大学・法政大学で非常勤講師も務めている。


◆宮本賢二(振付師)
シングルからアイスダンスに転向し、全日本選手権優勝などの数々の栄冠を手にした国内トップクラスのスケーター。2006年に現役を引退してからは、振付師として羽生結弦や髙橋大輔、織田信成、町田樹、エフゲニー・プルシェンコ、荒川静香、安藤美姫、宮原知子などの国内外のトップスケーターの他、様々なアイスショーの振り付けからアニメ『ユーリ!!! on ICE』の作中の振付まで数多くの振り付けを担当。テレビ、新聞等での解説も行っている。

 



映画『氷上の王、ジョン・カリー』


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アイススケートを「スポーツ」から「芸術」へと昇華させた、
伝説の五輪フィギュアスケート金メダリスト、その知られざる光と影。


アイススケートをメジャースポーツへと押し上げ、さらに芸術の領域にまで昇華させた伝説の英国人スケーター、ジョン・カリー。彼はバレエのメソッドを取り入れた演技で、1976年インスブルック冬季五輪フィギュアスケート男子シングルの金メダルを獲得する。しかし、マスコミが真っ先に伝えたのは、表に出るはずのなかった彼のセクシュアリティだった。同性愛が公的にも差別されていた時代に、ゲイであることが公表されたメダリストの存在は、世界中を驚かせ論争を巻き起こす。しかし、彼は華麗な滑りで多くの人を魅了し続け、現在の日本人スケーターにも影響を与えている。


iceking-500-1.jpg映画はアスリートとしてのカリーだけでなく、栄光の裏にあった深い孤独、自ら立ち上げたカンパニーでの新たな挑戦、そして彼を蝕んでゆく病魔AIDSとの闘いを、貴重なパフォーマンス映像と、本人、家族や友人、スケート関係者へのインタビューで明らかにしていく。新たに発掘された、ホームビデオで撮影された彼の最高傑作『ムーンスケート』について監督のジェイムス・エルスキンは「どんなスケートより美しく心を打たれた。これをみて感動を覚えない人はいないだろう」と語っている。


これは、時代に翻弄され不当な扱いを受けながらも、屈することなく高みを目指し、人を遠ざけながらも愛に飢え、滑り、踊り続けた男の物語。



・監督:ジェイムス・エルスキン(『パンターニ/海賊と呼ばれたサイクリスト』)
・出演:ジョン・カリー、ディック・バトン、ロビン・カズンズ、ジョニー・ウィアー、イアン・ロレッロ
・ナレーション:フレディ・フォックス(『パレードへようこそ』『キング・アーサー』)
・(2018年/イギリス/89分/英語/DCP/16:9/原題:The Ice King)
・字幕翻訳:牧野琴子
・字幕監修・学術協力:町田樹
・配給・宣伝:アップリンク
・(c) New Black Films Skating Limited 2018 / (c) 2018 Dogwoof 2018

・公式サイト http://www.uplink.co.jp/iceking/
・公式twitter https://twitter.com/theicekingjp
・公式facebook https://www.facebook.com/TheIceKingJP/

2019年5月31日(金)~新宿ピカデリー、東劇、アップリンク渋谷、アップリンク吉祥寺、シネ・リーブル梅田、なんばパークスシネマ、MOVIX京都、神戸国際松竹 ほか全国順次公開


(オフィシャル・レポートより)

 

 
 
 

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(2019年4月24日(水)リーガ・ロイヤルホテルにて)



「倍賞千恵子&藤竜也+星由里子」豪華俳優映画初共演!

シニア世代に贈る、滑稽なほど不器用な“昭和の夫婦”の愛情物語

 

昭和の高度成長期を猛烈社員・仕事人間として生き抜いてきた夫と、家庭を守ることで夫を支えてきた妻。夫は家に帰っても「風呂」「飯」「寝る」としか言わず、家のことは妻に任せっきりで、妻の話に耳を傾けることもない。だが、子供も巣立ち、夫婦二人だけの生活になってくると、それまで耐えてきたことが苦痛になってくる。本作は、そんなシニア世代の夫婦のひずみによって巻き起こる騒動をコミカルに描きながら、新たな夫婦の在り様をしみじみと感じさせてくれるラブストーリーである。


hatukoi-550-2.jpg結婚50年の70代夫婦に訪れた危機をめぐる物語に、世代を超えて共感するところも多い。メガホンをとったのは、大阪十三を舞台にした映画『かぞくのひけつ』(‘06)で監督デビューを飾った小林聖太郎監督。5月10日(金)の公開を前に、「若い世代にも新たな夫婦像を見出してほしい」という小林監督にお話を伺った。
 



国民的映画『男はつらいよ』シリーズ、“寅さんの妹・さくら”でお馴染みの倍賞千恵子が久しぶりの映画主演で、藤竜也演じる亭主関白の夫・勝にかいがいしく尽くす妻の有喜子を愛らしく演じている。編み物しながら韓流ドラマ見て、愛猫のチビとお喋りするのが一番の楽しみ。ところが、ある日チビが居なくなったことで、長年連れ添った夫との関係にヒビが入る。意外にも映画初共演という二人は自宅がご近所という親しい間柄だが、撮影中はヒビの入った夫婦らしく距離を置いていたという。


――お二人の役作りについて?
実際の倍賞さんも藤さんも77歳とは思えないほどお若い。そのため、藤さんは角刈りに、倍賞さんにも役柄に合わせてメイクアップではなくダウンしています。

藤さんは初め脚本を読んだ時に「今どき、こんな人居ないんじゃないの?」と思って地元の友人たちに聞いて回ったら、「いやいや、もっと酷い夫もいるよ!」といっぱい具体例を聞かされて驚いたそうです。倍賞さんとは、私的すぎて取材では言えないような夫婦や男女のことについていろいろお話しました。


hatukoi-500-2.jpg――「倍賞さんが可愛らしすぎてつい優しくしてしまって、監督にNG出された」と藤竜也さんが仰ってましたが?
はい。優しくなった時、それから逆に、勝が不器用を通り越して無神経になったと感じた時に、その都度、少しずつ修正しながら演出しました。加減を見極めるのも監督の仕事ですから。


――作品のどこに重点をおいたのですか?
言葉のコミュニケーションが大事だ、ということでしょうか。有喜子が、「私がどんな思いをしてきたか、お父さんわかりますか!」というセリフがありますが、ずっと我慢してきているので、実はネガティブなことをあまり夫に言ってないのです。自分で抑え込まずに、もっとイヤなことはイヤとお互い言えるようだったら、危機は回避できたんじゃないかな、とも思います。


hatukoi-500-6.jpg――『若大将』シリーズの星由里子さんが、夫・勝が密かに会う女・志津子の役で出演されていますね?
映画ファンにとっては何とも豪華な顔ぶれでしょう。撮影終了2か月後の星由里子さんの訃報に本当に驚きました。撮影中はまったく不調を感じさせず、打ち上げに風邪をひいて出席できないというお電話を頂いたのが最後でした。

――勝の話に無邪気に笑って耳を傾けていたお姿がとても印象的でしたね。
       西炯子原作の同名漫画は30代女性にも人気がありますが、その世代を意識しましたか?

特にその世代に向けた何かを意識してはいませんが、有喜子さんと世代は違っても彼女の孤独には共感できるんじゃないでしょうか。あるいは共感ではなく、そんな母親にいら立ちを覚えている末娘・菜穂子(市川実日子)に気持ちを乗せられるかなと思っています。

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「この映画をどういう風に見てもらえるかな」と脚本の段階でぼんやりと考えていたのですが、長期間パートナーシップを維持してきた人、特に女性に最も共感してもらえる映画になるだろうと思いました。そして、男性優位社会や家父長制に少なからぬ違和感を持ってきた人たち。人は所属する組織や血縁・家族などに縛られず、自分のしたいようにすることを認められるべきだ、というようなことを、そう思っていてもなかなか表明できない人たちに届けて、その背中を押すことにつながればいいな、と。もちろんそんなことは全く思わず、ただ良かったわ、とか、猫可愛かったわ、と思ってもらえれば充分ではありますが……。


――今の若い世代の男性は家事を手伝うことにあまり抵抗がないようですが?
「手伝う」というのは他人ごとのようでおかしいと思います。普通に家事を分担してやっているだけです。家事をしない世の夫たちを再教育するためにもこの映画を観てもらって、「そのままやと、こんな未来が待ってるよ~!」と警鐘を鳴らせればいいかな?(笑)


hatukoi-500-1.jpg――猫が拠り所という、お茶の間の造形は?
プロフェッショナルなスタッフが脚本を頼りに美術や小道具なども頑張ってくれました。中でも、初仕事が『男はつらいよ』シリーズだった装飾の高橋光さんは、「倍賞さんとまた一緒に仕事ができる!」と、とても丁寧に作って下さいました。「編み物が好き」を軸にして、どういう年月を経て生活してきたかを、そこに座ればその人たちの生活が見えてくる、そんな家庭的な雰囲気もよく出ていたと思います。


――シニア世代を題材にした映画が増えてきたことについて?
増えているという実感はあまりないですが、もしそうだとすると、悪いことではないと思います。少なくとも高校生の色恋モノしかないよりは。他の映画がどうであるかはともかく、『チビ』は、初めに準備稿を読んだ時から名前の通り小さいけれども可愛らしい話になるのではないかなと思いました。これからも特に世代に拘らずに作品を撮っていきたいと思っています。いろんな世代の方にこの映画を観て語り合って頂ければ嬉しいです。
 



【小林聖太郎監督 プロフィール】
 1971 年 3 月 3 日生まれ、大阪府出身。大学卒業後、ジャーナリスト今井一の助手を経て、映画監督・原一男主宰「CINEMA 塾」に第一期生として参加。原一男のほか、中江裕司、行定勲、井筒和幸など多くの監督のもとで助監督として経験を積み、06 年『かぞくのひけつ』で監督デビュー。同作で第 47 回日本映画監督協会新人賞、新藤兼人賞を受賞。11 年公開の『毎日かあさん』では第 14 回上海国際映画祭アジア新人賞部門で作品賞を受賞した。その他の監督作は『マエストロ!」(15)、『破門 ふたりのヤクビョーガミ』(17)など。

 



◆出演:倍賞千恵子、藤 竜也、市川実日子、星由里子、佐藤流司
◆監督:小林聖太郎
◆原作:西炯子「お父さん、チビがいなくなりました」(小学館フラワーコミックα刊)
◆脚本:本調有香   
◆配給:クロックワークス 
◆© 2019 西炯子・小学館/「お父さん、チビがいなくなりました」製作委員会

シネルフレ作品紹介⇒ こちら
公式サイト:http://chibi-movie.com/

2019年5月10日(金)~梅田ブルク7、なんばパークスシネマ、MOVIX京都、神戸国際松竹 他全国ロードショー



(河田 真喜子)

 

 
 
 

 

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(2019年4月28日(日)テアトル梅田にて)

ゲスト:今泉力哉監督、畳野彩加さん(Homecomings) 福富優樹さん(Homecomings)


 

一途に“好き”を邁進する、非モテ系女子の可笑しみと切なさと

 

好きな男に呼び出されれば、昼夜を問わず、仕事も何もかも放り出してスッ飛んで行く。それでも恩着せがましいことは言わない。必死で「特別な彼女になりたい!」と思いつつも、執着心を見せずにさりげなく尽くす。いくらツンデレにされようが、拒否されようが、他の彼女を紹介されようが、それでも諦めきれない。テルコは今日もマモちゃんのために生きるのだ。


aigananda-pos.jpg直木賞作家の角田光代が 2006 年に発表した「愛がなんだ」を基にした、一方通行でも恋に邁進するテルコの恋する日々を、今までにない視点で描いた“実録・片思い作戦”風のラブストーリーに、男女問わず共感すること必至。テルコを演じるのは、本作が主演二作目となる岸井ゆきの。素朴な童顔ながら少女から悪女まで演じ分ける演技派として人気急上昇の若手女優である。テルコが恋焦がれるマモちゃんを演じるのは、出演作の絶えない人気俳優の成田凌(5月31日にも『さよならくちびる』の公開を控えている)。テルコを都合よく扱いながらも“心ここにあらず”の無神経男ぶりがまたカワイイ。(そう感じた人はテルコに近いかも?)


4月19日(金)に公開されて以来、若い世代を中心に注目を集め、その大ヒット御礼として2週目に入った4月28日(日)に、大阪では平成最後となる舞台挨拶が開催された。今泉力哉監督をはじめ、主題歌を担当したHomecomingsの畳野彩加さんと福富優樹さんが登壇。上映後に3人によるトークと、Homecomingsによる主題歌が演奏され、満員の観客は一段と大きな感動と余韻に浸ることができた。

以下はトークの模様をお伝えします。(敬称略)



aigananda-bu-I-240-1.jpg――大阪では平成最後の舞台挨拶ですが?
今泉監督:平成もあっという間ですね。まだ令和を迎えられる準備ができていませんが。

福富:元号が切り替わるのは始めてなので、特別な思いはまだないですね。


――Homecomingsに曲を依頼された経緯は?
今泉監督:東京で行きつけのお店の人に勧められてHomecomingsを聞いていました。劇中歌とかいつかお願いしたいなと思っていたところ、今回プロデューサーと相談して主題歌をお願いすることになりました。Homecomingsは、映画とコラボしたイベントもやっていて、是非映画好きの人に主題歌を作ってほしいと思いました。

福富:元々『サッドティー』が好きな作品だったので、本決まりの前のふんわりオファーの段階で、『サッドティー』を見直したり、原作を読んだりして準備する期間がありました。是非やりたかったので、本決まりになってとても嬉しかったです。本編を観て曲作りに入りました。《東京国際映画祭2018》での上映ではエンドロールは無音だったので、それでイメージが湧いてきました。


aigananda-bu-500-1.jpg――作品を観てからの曲作りはどのように?
福富:作詞は僕で、作曲は畳野さんです。この作品は観る人によって共感するキャラクターが違うのかなと思ったので、皆がそれぞれ自分のことを歌っているんだなと思ってもらえるように作詞しました。

畳野:Homecomingsの4人のメンバー皆がそうなんですけど、サウンドトラックを集めるのが好きなものですから、今回主題歌を提供することになってとっても嬉しかったです。歌詞ができてから曲を付けるのですが、観終わってから余韻に浸ってもらえるような曲にしたいと思いました。


aigananda-500-3.jpg――曲ができてからの作品の印象は変わってきましたか?
今泉監督:主題歌は作品にとって相当大事なもので、どんな曲が仕上がってくるのかとても楽しみにしていました。以前からHomecomingsの曲は知っていましたが、仕上がった曲がとても良かったので、「間違いなかったな!」と安心しました。特に、テルコだけの曲とか誰かに限定した曲ではないところが良かったですね。


――本作の中で好きなシーンは?
福富:ナカハラ君が餃子を食べるシーン。この映画は食べるシーンが多いのですが、食べながらお喋りをするシーンが印象的です。

畳野:私もそのシーンが好きですが、テルコとマモちゃんが明け方に居酒屋から出てくるシーンも好きです。

今泉監督:あのシーンは、実際明け方に撮ったのですが、朝3時からスタンバイしていたのに、そのうち雨が降ってきちゃって(笑)、でも、その雨のお陰で綺麗なシーンが撮れました。


aigananda-bu-F-240-1.jpg――(観客からの質問)自分に近いと思えるキャラクターは誰ですか?
福富:僕はマモちゃんかな?(笑)でも、共感したのはナカハラ君です。恋焦がれる、ぼんやりと追いかけるような存在なのかな…。

畳野:大学生の頃の私は葉子かな(笑)。人の気持ちを考えられず、周りを巻き込んで迷惑を掛けていたような気がします。

福富:(高校の時からの同級生だという)確かに…(笑)。でも告白したことはないよね?

畳野:ありますよ!今は葉子ではないけど…。

今泉監督:私はどれにも当てはまらないです。男女入れ替われるキャラクターたちですし、諦められるか、どうか?これっという人物はいませんね。そこまで恋焦がれるテルコがとても羨ましいと思いました。会社の同僚の女子が「仕事を辞めるほど好きになれて羨ましい」と言うセリフがあります。テルコは決して褒められるべき女性ではないのですが、誰か一人だけでもテルコを肯定できる人を登場させたかったのです。


最後に、Homecomingsの畳野彩加さんにより、主題歌「CAKES」が歌われた。

 

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aigananda-500-4.jpgテルコの親友・葉子とナカハラ君の関係は、テルコとマモちゃんの逆バージョンで、ナカハラ君の情けないほどの純情がせつない。最後にナカハラ君が見せた男らしさに、「ありえない相手!」とずっとナカハラ君を軽視していた葉子の心が動く辺りが、また可笑しい!――果たして、テルコの恋の行方はどうなることやら……?
 



Homecomings】
福富優樹(Gt.)、福田穂那美(Ba./Cho)、畳野彩加(Vo./Gt.)、石田成美(Dr./Cho) 京都を拠点に活動する 4 ピース・バンド。

The Pains of Being Pure at Heart / Mac DeMarco / Julien Baker / Norman Blake(Teenage Fanclub)といった海外アーティス トとの共演、3度に渡る「FUJI ROCK FESTIVAL」への出演など、2012年の結成から精力的 に活動を展開。 2016 年 2nd フルアルバム『SALE OF BROKEN DREAMS』、2017 年に 5 曲入り EP 『SYMPHONY』をリリース。同年新たなイベント「 New Neighbors」をスタート、 Homecomings のアートワークを手掛けるイラストレーター”サヌキナオヤ”氏との共同企画で彼 女たちがセレクトした映画の上映とアコースティックライブを映画館で行っている。

 



【監督】:今泉力哉 (『サッドティー』『パンとバスと2度目のハツコイ』)
【出演】:岸井ゆきの  成田凌  深川麻衣 若葉竜也 穂志もえか 中島 歩  片岡礼子 筒井真理子/江口のりこ 
【配給】:エレファントハウス  2019年/日本/123分/ヨーロピアンビスタ
 © 2019 映画「愛がなんだ」製作委員会
【公式サイト】http://aigananda.com/

4月19日(金)~テアトル梅田/なんばパークスシネマ/シネ・リーブル神戸、 4月20 日(土)~京都シネマ にて公開中


(河田 真喜子)

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​凄惨な児童虐待事件が頻発している昨今、社会情勢を喚起させる映画


『こどもしょくどう』

・原作・脚本:足立 紳
・監督:日向寺太郎
・出演:藤本哉汰、鈴木梨央、浅川 蓮、吉川 凜、常盤孝子、吉岡秀隆
2019年4月5日(金)~テアトル梅田、4月12日(金)~神戸国際松竹、4月20日(土)~京都シネマ
公式サイト⇒ https://kodomoshokudo.pal-ep.com/
・(C)2018「こどもしょくどう」製作委員会

 

トシのせいか、社会事件には鈍感になりつつあるが、この虐待オヤジの所業には震えがきた。到底許せるものではない。こんな絶望的な状況の中、映画はかつてのように、すさんだ社会情勢に一石を投じることが出来るか、興味深い。


kodomoshokudou-500-3.jpg映画「こどもしょくどう」は、一見豊かに見える日本の社会をえぐって見せる。小学5年生の高野ユウト(藤本哉汰)は食堂を営む両親(吉岡秀隆、常盤貴子)や妹と穏やかに暮らしていた。その一方、ユウトの幼なじみのタカシは育児放棄の家庭でユウトも両親もタカシを心配し、夕食を振る舞っていた。


ある日、ユウトとタカシは河原で父親と車中生活をしている姉妹に出会い、かわいそうな姉妹の姿にユウトは両親に「2人にも食事を出してほしい」と頼む。妹は「温かいごはん」を素直に喜ぶが、姉のミチル(鈴木梨央)は他人を拒否しているように見えた…。


kodomoshokudou-500-1.jpgユウト少年は先頭に立っていじめ組を止めたりしない。さほど目立つことなく、両親の食堂で食事を振る舞う。さりげない行為にユウト少年の「精一杯」が見える。彼はヒーローにはほど遠い“フツーの子”どもだった。


車中生活をする姉妹の父親があるときからいなくなり、2人の“棲み家”の車が不良少年たちに破壊される。2人は住む場所を奪われ、行き場所もなくしてしまう…。ユウトたちはもはや為すすべもなかった。


kodomoshokudou-di-1.jpg2008年作品「火垂るの墓」で知られる日向寺監督は映画は「二つの流れで描きたかった。ひとつは“子供の視点”、もうひとつはこどもしょくどうが出来るまでの“いい大人たち”の話。面白い話ではない」という。


監督は「背景には社会や世間の無関心がある」と指摘する。さらに「大人と子どもは合わせ鏡。両親もユウトのように決断出来るものでない。“社会”に共同体がなくなっている時代。虐待行為を止める親やご近所もいない。虐待を止めることが出来なくなっている土壌がある」。


殺人にまで及んだ虐待オヤジに比べたらこの映画は“まだまし”に見える。父親不在でも、オンボロ車でも住む場所があるだけでもいいかも知れない。だが保護責任者が「責任を放棄する」という大人の無責任に大差はなく、同じ最悪の結果になってもおかしくない。


kodomoshokudou-pos.jpg「おなかをすかせているこどもに食事を与える」実に基本的、素朴で人間的な心が、ひとつの運動に結びつきつつある。こどもの貧困対策として注目を集めている「こども食堂」。12年初夏から始まり、昨年には2300か所を超え、さらに広がひつつあるという。


食堂は、食材は寄付、調理は地域ボランティア。無料または数百円で食事を提供する。このネットワークにはいくつもの食堂が登録され食材や寄付金、ボランティアの情報が集まり、社会運動の頼もしいトレンドになっている、という。


映画はこの運動よりやや遅れて企画されたが、満開の時期に合わせたように全国公開される。激しい叫び声や抗議行動よりも、おなかをすかせた子どもたちの空腹感が画面に漲る映画。時の権力者の“虐待防止”の法案以上に、多くの人の心を揺り動かすかも知れない。 


(安永 五郎)

 

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(2019年3月17日シネ・リーブル梅田にて)
ゲスト:坂田 聡(ただし)さん、眼鏡太郎さん、武 正晴 監督

 

「クソ女のままじゃ終われない!」どん底女子アナの起死回生奮闘記!
新境地を見せた夏帆の熱演と、奇祭「御崎祭」の巡行シーンが見所

 

本土最南端の鹿児島県南大隅町を舞台に、どん底女子アナが1300年続く奇祭「御崎祭」の完全復活をはかる起死回生の奮闘記、『きばいやんせ!私』。「頑張れ、私」という意味だが、NHK大河ドラマ「西郷どん」でもお馴染みとなった訛り懐かしい鹿児島の伝統祭の復興と若者の再生を謳った映画である。


kibaiyanse-550.jpg監督は『百円の恋』『嘘八百』『銃』と主人公の変化を深く見つめる作風で評価の高い武正晴監督。主演は『ピンクとグレー』『ビブリア古書堂の事件手帳』『友罪』と、近年清純派からの脱却で演技派女優としての成長著しい夏帆。不倫の果てに左遷された女子アナを思い切りのいい熱演で新境地を見せる。さらに、多くの作品で存在感を示す若手の演技派俳優、太賀岡山天音らと共に、「地方で生きること」「本気で打ち込む熱意」「様々な年齢の人々と協力し合うこと」「何かを成し遂げる歓び」など、身をもって体現してくれる。“ボーっと生きている”若者に、「本気で生きよう!」と呼び掛けているような爽快な感動作である。
 



kibaiyanse-bu-500-1.jpg公開中のシネ・リーブル梅田にて舞台挨拶が開催された。ゲストの武正晴監督と役場の課長役の坂田聡さんの紹介が始まると、客席後方から町長補佐役の眼鏡太郎さんがトランペットを吹きながら入場。映画の終盤でもトランペットを吹いていた眼さんの予定外の飛び込みに、会場は笑いに包まれる。

(以下、敬称略)kibaiyanse-bu-sakata-240-1.jpg



坂田の第一声は、「夏帆じゃなくてすみません!」。眼は「今日は来る予定ではなかったのですが、トランペットを吹くためだけにやって参りました」とご挨拶。


武監督との仕事について聞かれた坂田は「監督は撮影中寝ない人なんです。いつ寝てんだろう?代わりに助監督がどんどんやせ細っていきましたが…」(笑)。普通、現場ではやせ細っていくものだが、今回はモリモリ食べて太っていったとか?「滞在中のホテルに毎晩芋焼酎が次々と出され、主に坂田さんの部屋で飲んでましたね」と眼。坂田も「製作の方々が東京へ帰してくれなくて、ずっと鹿児島で待機してましたので、沢山ご馳走を頂く羽目となりました」。


ダイナミックな祭のシーンの撮影について、武監督は「祭りのシーンは1日で撮ったのですが、山を降りてからのシーンは次の日の撮影でした。実際の祭りと同じ行程を同じ時間をかけて歩いて撮っていきました。車で行けない所はすべて徒歩。あの重たい神輿を担いで、さらに途中降ってきた雨で重くなり、ドロドロになりながら、記憶がないほど大変でした」。


俳優たちの演技については、「実際の祭でもそうなんですが、道中の村々で応援の皆さんが用意して下さったおにぎりなどを食べながら、何とか日が沈む前に最後の神社まで辿り着けました。もう太賀君も天音君もみんなヘロヘロだったので、お疲れ様と言いに行ったら、天音君はもう居ないんですよ!? 祭の撮影が終了してすぐに鹿児島空港へ3時間かけて車をぶっ飛ばして行って、東京へ飛行機で飛んで、東京の舞台挨拶に間に合った!と言ってました。それでもって、翌日の撮影にも間に合うように帰って来たんですよ。ほんと、凄いよね!」


kibaiyanse-500-4.jpg坂田は、「太賀君はあの大きな竿を持って歩いていましたが、僕は全く持てませんでした。ずっと一人で持って行ったんですよ!」と太賀の体力を絶賛。武監督も、「あれができる役者はそうは居ないと思いますよ。地元の人が「跡取りができた!」と、太賀君見て喜んでましたからね」(笑)。

さらに役者魂について、「役者は撮影のためなら何でもできちゃう!トランペットも吹くしね!鹿児島弁も喋るしね!撮影でなきゃやらないですよ!俳優さんは凄いな!」と武監督も絶賛。


神輿を担いで山を下りるシーンについて、眼は「僕は背が低いので、背の高い人に負担をかけてしまって申し訳なかったです」。武監督は「あのシーンを見直すと、坂田さんがムッとしてるんですよ。役場の優しい課長さんが怖い人になってるんですよ」(笑)。「僕の肩にグッとのしかかってきて痛かったんですよ。なのに、眼君は持ってないのに苦しい顔しやがって!」(笑)と、思い出しては眼をからかう坂田。


太賀や坂田は鹿児島弁を完璧にマスターしていたが、山越えのシーンでは、つい標準語が出てしまったことについて、「いや~演じてられない位、危険な状態でしたから~」と緊迫した撮影時を振り返る坂田。


kibaiyanse-bu-500-2.jpg1300年の歴史ある奇祭「御崎祭」について、「あの坂は映像で見るより急勾配でして、なんであんな所を神輿担いで通らなきゃいけないのか?」と武監督。「それを1300年もやってる訳ですからね、伝統とはいえ凄いですよね」と坂田が歴史の重みを強調。「道にある岩石も、人の足を乗せやすいような形状になっていて、歴史を感じさせますよね。雨が降ろうが雪が降ろうが続けて来られた訳ですから。撮影時にも雨が降らないかな~と思っていたら降ってきたり、晴れてほしいシーンでは晴れてきたりと、何だか見守られている感じがしましたね」とラッキーだったと撮影時を振り返る武監督。


そして最後のご挨拶で、武監督は「お神輿、お祭とか伝統映画のようなイメージがありますが、若者たちが仕事や働くことについて自分自身を見つめ直していくという物語にもなっておりますので、多くの方に勧めて頂ければと嬉しいです。そして、本土最南端の南大隅町の人々の力強い大らかな笑顔を胸に秘めてお帰り頂ければ幸いです。この作品を末永く大事にして頂けますようお願いいたします。今日はどうもありがとうございました」と最後を締めくくった。


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『きばいやんせ!私』

【STORY】
不倫スキャンダルで叩かれやる気を失った女子アナの児島貴子(夏帆)は、全国の奇祭を紹介する番組制作のため、九州本島最南端の町、南大隅町を訪れる。そこはかつて父と共に子供時代の一年を過ごした町でもあった。父親と共に畜産業をしている太郎(太賀)や、家業のホテルを継いだドケチの洋平(岡山天音)はかつての同級生。廃れ行く祭の復興を巡って町の人々と対立する貴子だったが、彼らの協力もあり、昔ながらの祭に挑戦することになる。


若い担ぎ手のいなくなった現代では、20㎞の距離を人力で神輿行列を敢行するのは至難の業で、一部車を利用していた。だがそれではテレビ的に絵にならない上に、伝統ある祭の継承に誇りが感じられない!と貴子が高飛車な発言をしてしまい、「このぐぁんたれが!」(この馬鹿もんが!)と御崎祭奉賛会の会長(伊吹吾郎)の怒りを買う。完全なる祭の催行を巡る対立や、子供時代の思い出は、思いがけなく貴子が忘れていた仕事への熱意を呼び覚ますことになる。「クソ女のままじゃ終われない!」、どん底女子アナの起死回生は果たせるのか?
 

・監督:武 正晴
・原作:足立 紳「きばいやんせ!私」(双葉社刊 著:工藤晋)
・出演:夏帆、太賀、岡山天音、坂田 聡、眼鏡太郎、宇野祥平、鶴見辰吾、伊吹五郎
・配給:アイエス・フィールド/2018/日本/116 分
・(C)2018「きばいやんせ!私」製作委員会
公式サイト: http://kibaiyanse.net/

・シネ・リーブル梅田、イオンシネマ京都桂川、布施ラインシネマ、にて絶賛上映中!


(河田 真喜子)

 
 
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