「京都」と一致するもの


ディズニー100周年記念作品

100年のすべてが、この物語に。世紀のドラマティック・ミュージカル


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この冬、古都・京都を彩る―

映画『ウィッシュ』公開記念

特別なイルミネーション&クリスマスツリーが登場!!



wish-main-550.jpg2023年、ウォルト・ディズニー・カンパニーが創立 100 周年を迎え、その記念作となるアニメーション最新作が『アナと雪の女王』のスタッフ陣が贈る、ディズニー100 年の歴史の集大成となる新たなドラマティック・ミュージカル『ウィッシュ』です。どんな願いも叶う魔法の王国の驚くべき真実をたった一人知ってしまった新ディズニー・ヒロイン“アーシャ”。願いを信じ続けた彼女が起こした奇跡とはー?


wish-ivent-550.jpgこの冬、ディズニー100周年記念作品『ウィッシュ』の世界観を表現した演出で、古都・京都を彩ります!京都駅ビルの【大階段グラフィカルイルミネーション Plus】は、高さ22m(京都駅ビル4~9Fまで125段分)の大階段に約15,000個のLEDがちりばめられ、季節感あふれるデザインがイルミネーションによって彩られていますが、この度映画『ウィッシュ』の公開を記念して、期間限定で本作をイメージした特別仕様のイルミネーションを放映!劇中歌「ウィッシュ~この願い~」に合わせたダイナミックな光のアニメーションが楽しめます。


さらに、クリスマスが近づいた12月6日(水)からは、同じく映画『ウィッシュ』をイメージした特別仕様のクリスマスツリーも登場!本作の数々の名シーンがプリントされたオーナメントがあしらわれ、ツリーのトップには本作に登場するいたずらな願い星<スター>をイメージしたモニュメントが飾られます。

ディズニーの歴史と“願いのちから”を感じながら、大切な時間を楽しんで下さい。
 


  【大階段グラフィカルイルミネーションPlus】

◆期間:2023年12月1日(金)~2024年1月21日(日) 17:00~22:00

◆場所:京都駅ビル4F大階段(室町小路広場)


【クリスマスツリー】

◆期間:2023年12月6日(水)~12月25日(月)

◆場所:京都駅ビル4F大階段(室町小路広場)

  会場の室町小路広場は、毎日7:00~23:00の時間で開放しております


<映画『ウィッシュ』について>

【ストーリー】
wish-pos-240.jpg100年のすべてが、この物語に―世紀のドラマティック・ミュージカルが誕生。願いが叶う魔法の王国に暮らす少女アーシャの願いは、100才になる祖父の願いが叶うこと。だが、すべての“願い”は魔法を操る王様に支配されているという衝撃の真実を彼女は知ってしまう。みんなの願いを取り戻したいという、ひたむきな思いに応えたのは、“願い星”のスター。空から舞い降りたスターと、相棒である子ヤギのバレンティノと共に、アーシャは立ち上がる。「願いが、私を強くする」──願い星に選ばれた少女アーシャが、王国に巻き起こす奇跡とは…?
 


■監督:クリス・バック『アナと雪の女王』『アナと雪の女王2』、
    ファウン・ヴィーラスンソーン『アナと雪の女王』『ズートピア』
■脚本:ジェニファー・リー『アナと雪の女王』『アナと雪の女王2』 
■音楽:ジュリア・マイケルズ『シュガー・ラッシュ:オンライン』
■製作:ピーター・デル・ヴェッコ『アナと雪の女王』『アナと雪の女王2』、
            フアン・パブロ・レイジェス『アナと雪の女王2』『ミラベルと魔法だらけの家』
■声の出演:生田絵梨花(アーシャ)、福山雅治(マグニフィコ王)、山寺宏一(バレンティノ)、檀れい(アマヤ王妃)、鹿賀丈史(サビーノ)、大平あひる(ダリア)、蒼井翔太(ガーボ)、青野紗穂(ハル)、落合福嗣(サイモン)、岡本信彦(サフィ)、宮里駿(ダリオ)、竹達彩奈(バジーマ)
■原題:WISH  全米公開:2023年11月22日 
■配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
■コピーライト表記:© 2023 Disney. All Rights Reserved.
■公式サイト:https://www.disney.co.jp/movie/wish

2023年12月15日(金)全国ロードショー



【関連情報】

関西電鉄7社 タイアップ企画

セブンライナーズ及び関西広域を対象としたデジタルスタンプラリーの開催について


関西の鉄道会社7社と関西広域連合、一般財団法人関西観光本部が連携し、2023年12月15日(金)より公開予定のディズニー映画最新作『ウィッシュ』とタイアップした、関西への誘客、関西周遊に関する取組を展開。

ディズニー映画最新作『ウィッシュ』公開記念セブンライナーズデジタルスタンプラリーを開催いたします。



『ウィッシュ』公開記念セブンライナーズデジタルスタンプラリー 概要


●実施期間:令和5年11月24日(金)~令和6年1月31日(水)

●実施内容:それぞれのコースで設定されたラリーポイントを位置情報活用イベントアプリ「こことろ」を使って巡るデジタルスタンプラリー。

コースは下記の2つがございます。
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(1)~7ライナーズコース~

実施区域の各路線(JR西日本、阪神電鉄、阪急電鉄、京阪電鉄、近鉄、南海電鉄、Osaka Metro)にそれぞれ1駅ずつ設定されたラリーポイント7駅のうち4駅でデジタルスタンプを取得すれば、ゴールポイントの映画館(TOHOシネマズ梅田、TOHOシネマズなんば)で『ウィッシュ』オリジナルキーホルダー(非売品)をプレゼントします。

事業主体 7LINERS実行委員会
  関西広域連合、西日本旅客鉄道株式会社、
  阪神電気鉄道株式会社、阪急電鉄株式会社、

  京阪電気鉄道株式会社、
  近畿日本鉄道株式会社、
  南海電鉄株式会社、

  大阪市高速電気軌道株式会社、
  一般財団法人関西観光本部、

  (一社)京都位置情報活用協議会(事務局)

映画『ウィッシュ』オリジナルキーホルダー(非売品)©2023 Disney

 

(2)~関西広域周遊コース~

関西広域連合構成府県及び政令市に設定された城・城関連の施設を含むラリーポイントを3つ巡り応募すると抽選でディズニー映画最新作『ウィッシュ』オリジナルグッズ(非売品)をプレゼントします。

事業主体 関西広域連合


<本タイアップ企画に関するお問合せ>

7LINERS実行委員会 スタンプラリー事務局 TEL075-223-2210(平日10:00~17:00)
(京都位置情報活用協議会内 スタンプラリー係)


(オフィシャル・リリースより)
 
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  第80回ヴェネチア国際映画祭オリゾンディ部門でNETPAC賞を受賞した塚本晋也監督最新作『ほかげ』が、11月24日(金)よりユーロスペース、12月1日(金)よりシネ・リーブル梅田、シネ・リーブル神戸、京都シネマ、今冬豊岡劇場ほか全国順次公開ほか全国順次公開される。
 
『野火』『斬、』に続く戦争三部作の最終章とも言える本作は、終戦直後を舞台に、家族を戦争で亡くした女性や、戦争孤児、復員兵らがもがきながら懸命に生きる様や、戦場体験が精神を蝕み続ける様を痛切に映し出す。『生きてるだけで、愛。』をはじめ、NHK連続テレビ小説「ブギウギ」主演を務めている趣里のほか、『J005311』では監督を務めた河野宏紀、利重剛、大森立嗣、そして国やジャンルを超えて表現者として活躍している森山未來らが出演。新鋭の塚尾桜雅が演じる戦争孤児の目に映る戦後の喧騒と大人たちの葛藤は、今もあまたの場所で戦争が繰り返され、新しい戦前と呼ばれる現在、リアリティをもって胸に迫ってくることだろう。
本作の塚本晋也監督に、お話を伺った。
 

 

■戦場体験によるPTSDは、取り去ることが難しい

――――本作を拝見すると、終戦で出征した家族が戻ってきても、戦地でのトラウマから家族に暴力を振るってしまい、誰も幸せになれない結果を招いてしまうことを痛切に感じます。
塚本:戦地から帰ってきた人が必ずしも全てそのような態度を見せたわけではありませんが、生き残って帰ってきたわけですから、そこに加害行為があったことは少なくないはずでしょうし、その体験がトラウマとなってしまう。そのPTSDは取り去ることが難しく、高度経済成長期は懸命に働くことで一瞬忘れることができても、定年後に再び戦地での記憶が蘇り、夜中にうなされたりする人もいらっしゃるようです。
 
――――元々は戦争大作の企画を進めておられものの、コロナで大きく方向性が変わったとのことですが、どうやって製作へのモチベーションを維持されていたのですか?
塚本:僕は『斬、』(2018)の公開が終わって、新しい企画を完全に立ち上げようとしていた時期にコロナ禍へ突入したので、完全に止まっていた時期が結構ありました。静かに家で映画を見ながら、本当は作りたかった戦争大作の準備を水面下で粛々と進めていました。ただ、それがあまりにも難しい企画で始めるのが難しく、最初「闇市企画」と銘打っていた本作に着手し始めたのです。
 
 
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■闇市企画から『ほかげ』が誕生するまで

――――一方で、ミニシアターを訪問して撮影したミニ動画を無料公開されていますね。
塚本:当時ミニシアターが大変だったので、お邪魔して撮影をしたかったのだけど、当時は東京から地方へ人が行くことも嫌がられる状況だったので、公共の施設を使わず、誰にも合わないようにタイニーハウスを作り、「誰にも触れないで来ました!」とマスク姿ですっと現れ、撮影して去ろうと思ったのです。車の中に、昔から作りたかった小さい家を作ってね。「タイニーハウスで豊岡劇場に行く」動画もあるんですよ。その撮影の間にも、今回の撮影用にカメラを実験しました。
 
――――「闇市企画」から、どのような変遷を経て『ほかげ』になったのですか?
塚本:ヤクザやテキ屋、愚連隊が登場し、それぞれの思惑が渦巻くようなものを最初は考えていましたが、規模が大きすぎて一旦白紙に。当時パンパンと呼ばれていた人と戦争孤児とのエピソードも実際に数多くありましたので、その女の人と戦争孤児を起点に、帰還兵を織り交ぜて描こうと方向性が決まっていきました。手記でご自身の体験を書いている人も多いので、それらを参考にしながら、自分で想像して、キャラクターを作っていきました。
 
 

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■役が憑依するタイプの俳優、趣里は「いつか、ご一緒したかった」

――――女を演じた趣里さんの、戦争孤児と出会うまでと出会ってからの心境の変化も交えた演技が素晴らしかったです。
塚本:いつかはご一緒したかったのですが、先延ばしにしていたら、自分があと何本作れるかわからないなと思い、この機会にオファーさせていただきました。趣里さんは、役が憑依するタイプの俳優で、『生きているだけで、愛』を観た後は、あんな感じの人なのかと思っていましたが、実際にお会いすると、ほがらかすぎてビックリしました。撮影前にお会いしたときに役の内容をお話して大体のコンセンサスを取り、その後に衣装を着て、セットの中でリハーサルを行う形でした。ただ昨年夏が異常な暑さで続けることが困難だったので、途中で「もういいか」とやめました。ただ大体は掴んでいただけたので、残りはポイントだけ説明し、素晴らしい演技をしていただきました。
 
 
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■500人以上応募のオーディションで選ばれた河野宏紀は、「存在感が秀でていた」

――――趣里さんが演じた女の元にやってくる復員兵を演じたのは、初監督作『J005311』でPFFアワード2022グランプリを受賞した河野宏紀さんです。
塚本:河野さんは演技をするときに素直で嘘がない。本当の感情で演じられるまでは、演技ができないタイプだと思います。丁寧に、真摯にその役に向き合ってくれました。オーディションでは500人以上応募があったのですが、僕は自分で撮影もするので、映したくなる人がいいんです。そういう観点でも、河野さんは存在感が秀でていました。
 
――――復員兵は元教師で、教科書だけは自分の拠り所のように大事に持っており、同じく女の家に居ついた戦争孤児に勉強を教えるシーンがとても印象的でした。
塚本:映画では描かれていませんが、孤児の裏設定として、疎開先で親戚にいじめられ、脱走して帰ってきたら、東京の自宅も空襲で焼けて両親共に亡くなったので、全く勉強することができなかった。でも勉強したいという気持ちはあり、復員兵が優しく教えてくれるものだから、彼は勉強する気持ちになれたのです。
 
 

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■戦争孤児の気持ちが、リアリティをもって迫ってきた

――――戦争孤児を演じた塚尾桜雅さんは、ほぼ全編登場し、この眼差しが何を象徴しているのだろうと考えずにはいられませんでした。
塚本:戦争孤児を調べていると、彼らは被害者なのにゴミ扱いされ、憎まれて育たなくてはいけない非常に可哀想な境遇だったことを知りました。僕自身うまく言葉にできないのですが、自分は戦争孤児ではないけれど、そうであっても不思議ではないと思えるような感覚がありました。彼らは両親が亡くなったので、仕方なく上野に集まり、かっぱらいでも何でもして生きてきた。戦争中は上野にたどり着いた人たちが、親戚のためにと思って持ってきたおにぎりを、空襲で焼け死んでしまったから、そこにいた戦争孤児に差し出すということもよくあったそうです。でも、戦争が終わると、人々が急に彼らに冷たくなり、何ももらえなくなった感じとか、闇市がついに現れたとき、お宝のような場所が幻想のように立ち上がり、ここは色々できる場所だと弾んだ気持ちになったことなどが、とてもリアリティをもって自分に迫ってくるのです。
 
――――特に目力がすごいですね。
塚本:監督とカメラが別だと、瞬間的にカメラマンにとりたい画を伝えられず、何回も撮り直すことになると思いますが、僕も撮影しながら彼の目力のすごさに気づいたので、臨機応変に必要な方向へグッと寄ることができました。強い意志を示すときの目力だけでなく、寂しげなときの目の光のキラキラした感じも素晴らしいと思いました。
 
――――映画で登場する闇市もすごくリアリティがありましたが、こだわった点は?
塚本:闇市には以前から思い入れがありましたので、小規模低予算の作品であっても半端なことはしたくなかった。『野火』のときもお世話になった深谷の中嶋建設と、海獣シアターの美術スタッフが汚しや装飾に至るまで緻密に行いました。また中嶋建設には戦後本当にあった闇市の大鍋や、古い建具などがあったので、全部お借りしました。先ほど話に出た教科書も通常ならデザイナーが作り直しますが、戦前の教科書が実際にあったのです!
 

■戦争や戦後の実態を、映画的表現で見せる

――――リアリティといえば、女の部屋の中が一瞬にして焼け野原になるシーンも衝撃的です。
塚本:最初に柱に細かいひだができ、それが焼け跡の廃墟に変わっていくというイメージがあったので、それをなるべく崩さないように、空襲の後の外の世界を部屋の中で表現しました。外をそのまま映してもCGっぽさが出るだけで、あまり効果的に思えなかったので、もう少し違う形で、面白く感じられる方法はないかと考えたのです。後半、女が自分の病気に気づくのですが、梅毒で最初にでき物が現れたとき、そこがグジュグジュし始める感じが映った瞬間、炎の音とともに焼け跡が映る。ただ廃墟を見せるのではなく、女自身のグツグツと炎のイメージを掛け合わせた方が、映画的表現にしています。結局、女が病気になってしまったのも戦争のせいでもありますから、この二つを繋げて、熱さや息苦しさを出しました。
 
――――森山さんの起用は今回が初ですか?
塚本:NHK大河ドラマ『いだてん』で、同じシーンはなかったのですが、打ち上げの席やオープンセットでお会いしたことがあったぐらいでしたが、森山さんもいつかは出演していただきたい俳優だったので、前半が趣里さんメインなら、後半は森山さんメインでとお願いしました。彼の体での演技を、この映画でもぜひやってもらいたいと。軽やかさと重さと、いろいろなことが一度に演じられる俳優です。
 
 
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■闇市の最後の名残の風景と、『野火』のお客様からのエピソードから構想した描写

――――地下道のシーンも、現実を突きつけていました。監督自身の幼い頃の印象から生まれたシーンとお聞きしましたが。
塚本:映画の地下道とは違うのですが、渋谷駅下に大きなガード下があり、そこに傷痍軍人の方々や、今から思えば闇市の最後の名残と言える、敷物の上にガラクタやおもちゃを並べていたおっちゃんとか。僕はそのおもちゃを見るのが楽しみだったのですが、その場所が不思議なことになぜか原風景として、いつまでも自分の中に残っていたので、いつかその風景のことを映画で描きたいと今でも思っているのです。白装束の傷痍軍人でも、生活能力のある方もいれば、完全にそれを失っていた方もいたという話を『野火』の大阪舞台挨拶でお客様から聞いたことがあります。生活能力のない傷痍軍人の吹き溜まりのような場所があり、お酒や小便まみれで、怖いし臭いし、とても近寄れなかったと。その話と、渋谷のガード下で僕が昔見た原風景が繋がって、映画後半の地下道の描写になった。そこから、物語を逆算して作っていきましたね。
 
――――長年タッグを組んでこられた石川忠さんの音楽を本作でも起用されています。そのことで、より一層『野火』『斬、』と戦争三部作のつながりが感じられますね。
塚本:他の音楽家を探すという選択肢もあったのですが、いつの間にか、石川さんの奥さまから使用許可をいただき、ハードディスクにあった曲を探していました。もちろんすでに使用している曲もありますが、未使用の曲もありますので、この作品のテーマになるような曲を選び、そこから展開していきました。
 
――――最後に、タイトルの『ほかげ』について、教えてください。
塚本:『野火』も戦争の火だけでなく、生活の火のイメージがあるように、この作品も戦争の火とその陰に生きる人というイメージがあります。また、女の部屋の中にあったアルコールランプの火や復員兵が持ってきた小さな火の陰で生きる人というふたつの意味を考え、火とその陰に生きる人というイメージでつけています。
(江口由美)
 

 
<作品情報>
『ほかげ』(2023年 日本 95分) 
監督・脚本・撮影・編集:塚本晋也 
出演:趣里、森山未來、塚尾桜雅、河野宏紀、利重剛、大森立嗣他
2023年11月24日(金)~ユーロスペース、12月1日(金)〜シネ・リーブル梅田、シネ・リーブル神戸、京都シネマ、今冬豊岡劇場ほか全国順次公開
※第80回ヴェネチア国際映画祭オリゾンディ部門NETPAC賞受賞
公式サイト⇒ https://hokage-movie.com/
(C) 2023 SHINYA TSUKAMOTO / KAIJYU THEATER
 
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 モニカ・ベルッチ主演の『アレックス』(2002)やシャルロット・ゲンズブール、ベアトリス・ダルを起用した『ルクス・エテルナ 永遠の光』(2020)など、大胆な暴力や性描写で、賛否両論を巻き起こしてきたギャスパー・ノエ監督の最新作、『VORTEX ヴォルテックス』が、12月8日(金)よりシネ・リーブル梅田、ユナイテッド・シネマ橿原、12月15日(金)よりシネ・リーブル神戸、アップリンク京都ほか全国順次公開される。
 認知症を患った妻と、心臓に持病を持つ夫。80代の老夫婦が老老介護をしながら暮らす日々を、その命が尽きる日まで追い続けるヒューマンドラマ。夫婦それぞれの行動を2つの画面で同時に追い続けるという驚きの手法で、老いや妻に隠した秘密、それぞれの人生を紐解いていく。たまに訪れる息子との会話は、親の介護世代には他人事とは思えないリアルさ見事に映し出しているのだ。
11月16日(木)、シネ・リーブル梅田で行われた先行プレミア上映では、上映前にギャスパー・ノエ監督が登壇。最初のご挨拶が「儲かってまっか?」と、必死で覚えた関西弁を披露。東京へは映画(『エンター・ザ・ボイド』)を撮影するぐらい何度も足を運んでいたが、周りから関西を絶対に気にいると推され続けていたというノエ監督。念願の観客との交流に大きな笑みを見せた。
 
 
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■実体験をもとに、老人が登場するメロドラマを

2年前のロックダウン中に、1ロケーションで完結し、俳優2〜3人という制限の中で作れる企画をプロデューサーから打診されたノエ監督は、母が認知症で10年前に亡くなっていたこともあり、認知症や老いについての映画を構想していたという。そこから10ページぐらいの脚本を書き、ロケーションを探し、1ヶ月後には撮影に入るというハイスピードで進行したことを明かした。もう一つのコンセプトはメロドラマ。
「暴力やセックスなど刺激的なものではなく、もっと大人らしいテーマで撮りたかった。2020年は個人的にも体調が悪く、ずっと家に引きこもっていたが、溝口監督や木下監督の映画をたくさん観ていたんです。中でも『楢山節考』に大きな影響を受けたことが、この映画につながっています。登場人物が若い人より、老人が出演している方がさまざまな人に共感してもらえます。誰にでも家族に祖父や祖母がいるでしょうし、観終わってから自分の家族のことを思い出したという感想もいただきました」
 
 
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■2画面構成で表現する老夫婦の心の距離

 本作の特徴はなんといっても、夫婦それぞれの動きを2画面構成で見せる点だ。過去2作品ですでにこの手法を使っていたというノエ監督は、脚本を書いた後、どうやって撮ろうかと考えたときに、2画面構成を使うことが一番適しているのではないかと考えたという。「同じ屋根の下に住んでいる老夫婦がどんどん離れていくという表現に的確。また、映画をよく観る人ではなくても、どういう感情を伝えようとしているのかわかります。2台のカメラで撮影しましたが、撮影しやすい場面もあれば、しにくい場面もありました。中盤に、夫と息子、妻と孫の4人がテーブルを囲むシーンがありますが、妻を演じるフランソワーズ・ルブラが僕の指示はないところで突然泣き始めると、夫を演じるダリオ・アルジェントが手をすっと取る姿を2台のカメラで撮影したのです。分割されているので、微妙に手の位置がずれていて、そのシーンのことを褒められることもありますが、アクシデントで撮れたシーンでした」
 
また本作はドキュメンタリーっぽいという感想も多いそうで、ノエ監督は、自然光を使っていることや、シチュエーションを説明し、その中で俳優が即興でキャラクターを作るからこそ生まれる自然さもあったことを明かした。
「ダリオ・アルジェントは『サスペリア』や『インフェルノ』などで非常に有名な映画監督ですが、ぜんぶ即興で、セットの上でキャラクターを作り上げていくので、セリフを覚えられないなど気にしなくてもいいと、この役を演じてもらうように説得しました。老人が自分の飼ってる犬の世話をできなくなるダリオと僕が好きな映画『ウンベルト・D』(1952)や、黒澤監督の『生きる』などを引き合いに出し、俳優でなくても演技はできると。実際の演技は素晴らしかった」と絶賛。
 
 
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■現場はアドリブの競い合い!?

現場ではダリオ・アルジェント、フランソワーズ・ルブラン、そして息子役のアレックス・ルッツダリオの3人とも、自分の方のアドリブがよいとお互いに競争しながら作っていたという。コロナ中の撮影でうつらないようにという緊張感があったというノエ監督。
「ダリオは、自分が撮影するときも2〜3テイク以上は絶対に撮らない。僕がもっと撮りたくても、2〜3テイクで完璧だからと去ってしまい、それ以上は撮れなかったんです。彼は
実際に映画監督になる前は映画評論家でしたし、実際にフランスに住んでいたことがあるので、フランス語も堪能でうまく役を演じていました。加えて、フランソワーズは70年代に公開された主演作『ママと娼婦』の大ファンで、妻役をぜひとオファーしました」
 
 大阪では大好きな映画ポスターを買いに行きたいと語ったノエ監督。最後に「ぜひ泣いてくださいね。そして楽しんでください」と観客にメッセージを送り、上映後にもふれあいタイムを作ることを自ら公言。初大阪舞台挨拶を大いに楽しみ、語ってくださった。誰しもが通る老いと死を見つめたノエ監督のまさに新境地と言える作品は、親世代、子世代、孫世代とさまざまな世代に共感をよび、自分の人生と照らし合わせたくなることだろう。
(江口由美)
 

 
<作品情報>
『VORTEX ヴォルテックス』” VORTEX”
2021年 フランス 148分 
監督・脚本・編集:ギャスパー・ノエ
出演:ダリオ・アルジェント、フランソワーズ・ルブラン、アレックス・ルッツ
劇場:12月8日(金)よりシネ・リーブル梅田、ユナイテッド・シネマ橿原、12月15日(金)よりシネ・リーブル神戸、アップリンク京都ほか全国順次公開
© 2021 RECTANGLE PRODUCTIONS – GOODFELLAS – LES CINEMAS DE LA ZONE - KNM – ARTEMIS PRODUCTIONS – SRAB FILMS – LES FILMS VELVET – KALLOUCHE CINEMA
 
 

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大変お世話になっております。幸せな人生を選ぶ決意の手紙を20万人以上がシェア。フランスから発信された感動の世界的ベストセラーが映画化! 『ぼくは君たちを憎まないことにした』が公開中。


本作は、家族3人で幸せに暮らしていたアントワーヌが、テロ発生から2週間の出来事を綴った世界的ベストセラー『ぼくは君たちを憎まないことにした』の映画化である。最愛の人を予想もしないタイミングで失った時、その事実をどう受け入れ、次の行動に出るのか。


bokunikumanai-550.jpg誰とも悲しみを共有できない苦しみと、これから続く育児への不安をはねのけるように、アントワーヌは手紙を書き始めた。妻の命を奪ったテロリストへの手紙は、息子と二人でも「今まで通りの生活を続ける」との決意表明であり、亡き妻への誓いのメッセージ。一晩で20万人以上がシェアし、新聞の一面を飾ったアントワーヌの「憎しみを贈らない」詩的な宣言は、動揺するパリの人々をクールダウンさせ、テロに屈しない団結力を芽生えさせていく。


たった一人の言葉が世の中の声を変えていく。ヒーロー視しない演出が人間の弱さと強さを浮き彫りに

 パリ中心部にあるコンサートホールのバタクラン。アメリカのバンド、イーグルス・オブ・ザ・デスメタルのライブ中に3人の男たちが1500人の観客に銃を乱射し、立てこもった。少し前には、パリ郊外のスタジアムで行われていたフランス対ドイツのサッカー親善試合や周辺のレストランで過激派組織「ISIL」の戦闘員が自爆テロを起こしていた。バタクランには、アントワーヌの妻、エレーヌと友人がいた。安否確認すらままならないカオスの中で、2日後に判明したのは、友人は生き延び、エレーヌは犠牲となった受け入れがたい事実だった。


bokunikumanai-500-2.jpgパリ同時多発テロから8年。憎しみの連鎖を断ち切る1つの答えがここにある!

ロシアのウクライナ侵攻やTVではパレスチナ、イスラエルのニュースが連日放送され、世界中で起こっている止められない“憎しみの連鎖”を目の当たりにし、気持ちがどうしても沈んでしまう昨今。本作も130人が犠牲となったパリ同時多発テロで、最愛の人を失った父と子を描く中で、主人公がテロリストに「憎しみを贈らない」と決意表明し、幸せに生きていくことを誓う。この決意に至るまではもちろん苦しみや悲しみにもがき苦しむ主人公たちの姿が描かれる。それでもアントワーヌと息子のメルヴィルは、それらを抱えて幸せに生きていくことでテロに負けないと心に決める。まさに本作は、憎しみの連鎖が蔓延る世界に生きる我々が観るべき強いメッセージを伝えてくれる。


11月13日でパリ同時多発テロから8年が経つ。憎しみや怒りを乗り越えていかないと終わらない“憎しみの連鎖”を断ち切るヒントを今作は教えてくれる。
 



天才子役のかわいい場面カット9枚も一挙解禁!


本作で映画評論家の町山智弘が「とんでもない天才が現れた」と大絶賛したのが、母親を失ったメルヴィルを演じたゾーエ・イオリオ。劇中のメルヴィルは1歳の男の子だが、ゾーエは女の子で撮影当時は3歳。監督はフランス、ドイツ、ベルギー、スイスでオーディションを行い、ゾーエを見つけたそうで、「初めて見た瞬間から、この子だ! と誰もが確信したのを覚えている。」と初対面で特別な子だと分かったという。「ゾーエは他の子たちとは違って、大人の俳優のようにシーンを理解して感情を表現したんだ。とても器用で賢くて、自分の考えを表現できる特別な3歳児だった」と振り返る。3歳児がそもそも演技をできることが驚きだが、ゾーエは母親の不在、失った哀しみ、父と過ごす幸せな時間など様々なシーンで類まれなる演技を披露し、観る者の心を揺さぶる。


解禁された場面カットも当時ゾーエが3歳ということを考えると、「とんでもない才能が現れた」という賛辞も決して大袈裟ではないことがわかるだろう


<STORY>

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2015 年 11 月 13 日金曜日の朝。ジャーナリストのアントワーヌ・レリスは息子のメルヴィルと一緒に、仕事に急ぐ妻のエレーヌを送り 出した。息子のために健康的な朝食を手作りして体調管理に気を配り、おしゃれでユーモアのセンスもある。最高の母であり、最 愛の妻が、突然、天国へ行ってしまった。そんな時でも息子はお腹を空かせ、砂で遊び、絵本の読み聞かせをねだる。誰とも悲し みを共有できない苦しみと、これから続くワンオペ育児への不安をはねのけるように、アントワーヌは手紙を書き始めた。妻の命を 奪ったテロリストへの手紙は、息子と二人でも「今まで通りの生活を続ける」との決意表明であり、亡き妻への誓いのメッセージ。一 晩で 20 万人以上がシェアし、新聞の一面を飾ったアントワーヌの「憎しみを贈らない」詩的な宣言は、動揺するパリの人々をクー ルダウンさせ、テロに屈しない団結力を芽生えさせていく。


監督・脚本:キリアン・リートホーフ『陽だまりハウスでマラソンを』
原作:「ぼくは君たちを憎まないことにした」
2022年/ドイツ・フランス・ベルギー/フランス語/102分/シネスコ/5.1ch/
原題: Vous n‘aurez pas ma haine/英題:YOU WILL NOT HAVE MY HATE 
日本語字幕:横井和子/提供:ニューセレクト
配給:アルバトロス・フィルム
後援:在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ
©2022 Komplizen Film Haut et Court Frakas Productions TOBIS / Erfttal Film und Fernsehproduktion nikumanai.com

公式サイト:http://nikumanai.com

TOHOシネマズシャンテ、大阪ステーションシティシネマ、TOHOシネマズなんば、京都シネマ、TOHOシネマズ西宮OS、他全国公開中


(オフィシャル・リリースより)

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日時:2023年10月29日(日)18:30~(上映前)

場所:大阪ステーションシティシネマ(大阪市北区 3-1-3 ノースゲートビルディング 11F)

ゲスト:竹野内豊、山田孝之、桃果、武田玲奈、石橋義正監督



森の中で出会った妖艶な六人の女たち――森の精の化身なのか?

人間の欲望も狂気もすべてを覆い尽くす自然のチカラ

 

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神秘的な深い森に迷い込んだ二人の男が出会うもの言わぬ6人の女たち。二人の男の本性が露呈されるにつれ、女たちの使命もまた明るみになっていく……森に生かされている人間と自然の共生の重要性をテーマに、奈良・京都・大阪で撮影された映画『唄う六人の女』が10月27日(金)より全国公開された。『太平洋の奇跡-フォックスと呼ばれた男-』以来12ぶりの共演となる竹野内豊と山田孝之がW主演となる本作の公開を記念した舞台挨拶が大阪で開催され、W主演の二人のほか石橋義正監督と 6 人の女のうち、“見つめる女”役の桃果と“包み込む女”役の武田玲奈が登壇し、それぞれの作品にかける想いを語った。


山田孝之の異質な演技力を高く評価した竹野内豊は、固定観念を排除して“心の3D”で感じながら観てほしいと語り、近くにいるだけ和む存在の竹野内豊を遠目で見ていたという山田孝之は、よく喋る水川あさみの騒音にもめげず集中して頑張った自分の演技を見てほしいと語った。純粋無垢という役柄を受難を恐れるのではなく「なんでかな?」と不思議そうに思う演技で表現した桃果。竹野内豊が演じる萱島の恋人と森の中の“包み込む女”の二役を演じた武田玲奈は、細部までこだわった衣装や美術のチカラで切り替えができたと語った。そして、貴重な原生林の中で撮影できたことに感謝しつつ、多才な出演者たちの素晴らしいパフォーマンスにも感謝しているという石橋義正監督は、この映画を観て「自然と人間の共生」の重要性を未来に繋げられるような気運になることを期待していると、作品に懸ける想いを語った。


(舞台挨拶付き特別上映会のチケットは即完売となり、注目の高さが窺える。)


(詳細は以下の通りです。)

――最初のご挨拶。

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竹野内:本日はどうもありがとうございます。ようやく公開されました。石橋監督が数年掛かりで作った作品です。是非最後まで楽しん頂けたらと思います。

山田:宇和島役の山田孝之です。東京で2度舞台挨拶をしてから奈良へ移動して、今日奈良で舞台挨拶をして大阪にやってきました。全ての会場が満席となり多くの方に観て頂けて本当に嬉しいです。今日は機嫌がいいです!(笑)

桃果:見つめる女役を演じました桃果です。今日は沢山の方に来て頂いて本当に嬉しいです。本日はよろしくお願いします。

武田:包み込む女役の武田玲奈です。撮影をしました関西に戻って来れて嬉しいです。本日はよろしくお願いします。

石橋監督:この映画を監督しました石橋義正です。私は京都生まれで京都在住でして、関西でこの映画を撮れて、本日こうして沢山の関西の皆さんに観て頂けることを本当に嬉しく思っております。


――竹野内さんと山田さんは久しぶりの共演ですね?

竹野内:もう十数年前になりますが、戦争映画(『太平洋の奇跡-フォックスと呼ばれた男-』2011)で山田君と共演しまして、その時から異質な空気感が…

山田:スっと言うんですね、奈良とかでは凄く言葉を選ばれてたんですが…(笑)

竹野内:彼が内に秘めているものが他の同世代の俳優さんたちとは違うなと感じながら見てました。その時の役も今回もそうですが、あまりプライベートで仲良く話をする雰囲気の役でもないので、別に仲が悪い訳ではないのですが(笑)、素晴らし役者さんだなと思って見てました。

山田:(そう言われて)嬉しいですね。竹野内さんは多くを語られる方ではないので、雑談するという訳ではないのですが、異質なほど穏やかで大らかな方なので、近くに居るだけで、見ているだけで勝手に和むようで、いつも遠目で見ています(笑)。


――このお二人をキャスティングされた理由は?

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石橋監督:観て頂いたらお分かりだと思いますが、お二人とも萱島と宇和島という役柄にピッタシに演じて下さると信じていました。期待以上のパフォーマンスを見せて頂いて、今ではこのお二人以外考えられないですね。


――竹野内さんは石橋監督からオファーがあったらいいなと思っておられたとか?

竹野内:山田さんが主演された石橋監督の『ミロクローゼ』という作品を観て、とても独創的で面白かったんですよね。自分はこういう作品を作る監督とは縁が無いだろうなと思っていたら数年後にお声掛け頂いて、新たな自分が発見できるかもとワクワクして、とても光栄に思いました。お声掛け頂きどうもありがとうございました。(と石橋監督にお礼を)

石橋監督:こちらこそありがとうございます。今回の作品は『ミロクローゼ』のような歌やダンスやアクションはなかったので申し訳なかったですね。是非踊ったりしてもらいたかったです(笑)。

山田:石橋監督はすごくダンス上手いんですよ。あの作品では10㎝位のヒールのある靴で踊らなきゃいけなくてとても難しかったんですが、監督が「こうやるんだよ」とお手本見せて下さって、それがメチャクチャ上手くて…(監督の方を見て)すごく綺麗ですよね?

石橋監督:そうですね(笑)ダンスの経験は全くないのですが、踊るのは好きですね。


――このお二人を森の中で翻弄していく6人の女たちの内、今日はお二人に来て頂いてますが、役名が無いのですが、どういう役なんでしょう?

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桃果:「見つめる女」は、6人の女たちの中で一番純粋で無垢な少女や子供のような役なんです。山田さんが演じられる宇和島に何か悪いことをされそうになる時も、恐怖心よりもこの人は自分に関心があるのかなという無垢な気持ちで演じました。

――武田さんは二つの役を演じておられましたが、大変だったのでは?

武田:そうですねぇ、場所が全く違ったり、衣装も全く違う物でしたので…特に衣装は6人の女たちそれぞれに合わせて細部にまでこだわって作られてましたので、衣装のチカラに助けられて役の切り替えもスムーズにできました。


――この作品のテーマ性について?

石橋監督:今回の作品は「自然との共生」がテーマとなっています。人間が生きていく上での欲望や自分たちの都合を否定する訳ではなく、そうした人間らしさを持ちながらもどうやって自然と共生していけるのかをテーマにしています。この映画を観て一緒に考えて頂き、未来に繋げていけたらいいなという想いで作りました。


utau6-main-550.jpg――森の中のシーンについて?

石橋監督:森の中のシーンは主に京都府南丹市美山町にある「芦生(あしう)の森」で撮影しました。そこは京都大学が管理している原生林に限りなく近い森でして、貴重な動植物も多くて簡単に入れる所ではなかったんです。去年の夏頃、初めてガイドさんに連れて行ってもらった時、とても美しかったんです!

単に目で見て美しいだけではなく、体で感じて感動する美しさだったんです。今自分が感じているこの感動を何とか映像で表現できないかと…単純に綺麗な森を撮影するだけなら近くの人工林でスモーク焚いて幻想的に見せることはできるのですが、そこで撮影することに本当の意味があるのではないかと思ったんです。スタッフやキャストが実際そこへ行って、自分たちの役割で感じたことを体現してもらえることが大事なことだと考えました。

でも、それには厳しい条件がありましたが、何とか許可を頂けて本当にありがたく思っております。


utau6-sub1-takenouchi-500-1.jpg――この映画の注目ポイントについて?

竹野内:この映画には多くの俳優さんが出演してますが、それまでの固定概念は捨てて“心の3Dメガネ”でもって、映画の世界に集中して心で観て頂きたいです。

石橋監督:“心の3Dメガネ”、いい表現ですねぇ。映画を観るというよりも、心で観て頂きたい。特に、このような大きな劇場で、サウンドも細部まで鮮明に聴こえるように編集しておりますので、是非心で体感して頂けたらいいなと思います。

山田:6人の女が登場しますが、セリフがなくてそれぞれ意味のある役柄を表現しています。エンドロールまで見て頂ければ彼女らが表現している意味が判るのですが、セリフなしで表現するってとても難しいことなんです。でも、それより難しかったのは、今日は来ておりませんが、22年来の旧知でもある水川あさみ、これがよく喋る人で、今回は特にセリフ無しということで溜まっていたのか空き時間にうるさくて仕方ない状況の中で、僕が如何に集中して芝居をしたか!に注目して観て頂きたいです。よく頑張ったなと(笑)

武田:衣装、小道具も細部までこだわっていて、撮影中も興味深く観ておりました。

桃果:宇和島の悪い部分と萱島の優しさ、悪と善という人間が本来持っているものも映画の中で表現されていると思います。人それぞれ捉え方は違うと思いますので、観終わった後に色々語り合ってほしいですね。


――最後のご挨拶。

竹野内:感覚的で捉え方が難しい部分もあるかと思いますが、コロナ禍以降、人生について自分と向き合うことも多くなる中、石橋監督がこの映画に込めたメッセージはご覧になられる方の心の奥深くまで届くと思います。是非心で観て頂きたいです。

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山田:なぜ今このメンバーでこの映画が作れたのか、言葉ではうまく説明できないのですが、きっと意味があるものだと思っています。映像や音楽もとても美しく、単純に芸術作品としても楽しめると思います。それと、山田孝之は芝居が巧い!(笑)こんな人ではないのによくこんな役ができるな!しかも現場では水川あさみのあのうるさい中でよく集中できるな、凄いわ~!#山田孝之凄い!ということでもいいのかも知れません(笑)。それでは皆さん、その一部始終をお楽しみ下さい!

(大拍手が沸き起こる中、…)

石橋監督:まだ私の挨拶がありますんで…(笑)。皆さん色々語って頂きましたが、キャストの皆さんは素晴らしいパフォーマンスを発揮して下さいました。それもこれもこの作品に愛情を持って下さったお陰だと思います。本当にありがとうございました!先ずはそれをお楽しみ頂きたいです。

それから、撮影にご協力下さった「芦生の森」の理事長からメッセージを頂きまして、「自分たち自身もこの映画を観て気付いたことがある。(森のシーンは一切CG加工をしていない)毎日美しいと感じている森のありのままの姿が映し出されており、改めて森の力強さを感じた。これを未来に繋げていかなければならない!」という感想にとても感激いたしました。

私もこの映画ですぐに何とかなる訳でもないでしょうが、どうやって人間と自然が共生していけるのかどうか、みんなで考えていきたいです。そして、それを未来に繋げていきたいという気持ちでこの映画を作りましたので、皆様も心に引っ掛かるものがございましたら、是非一人でも多くの方に伝えて頂いて、議論のキッカケになればいいなと思っております。本日はどうもありがとうございました。
 


『唄う六人の女』

【STORY】

長年音信不通だった父親死亡の報せを受けた写真家の萱島森一郎(竹之内豊)は久しぶりに生まれ故郷に戻ってくる。そこで不動産屋の宇和島凌(山田孝之)と土地売買の手続きを行い、その帰り宇和島が運転する車で事故に遭う。気が付くと、宇和島と共に美しい妖艶な女たちの家に囚われの身となっていた。横柄で乱暴な宇和島と共に深い森を逃げ惑う中、次第に甦る子供の頃の記憶。そこには、父の姿と不思議な女の姿があった…この森から逃げ出すことはできるのか?

(2023年 日本 112分)
監督・脚本:石橋義正
出演:竹野内豊、山田孝之、水川あさみ、アオイヤマダ、服部樹咲、萩原みのり、桃果、武田玲奈、竹中直人
制作協力:and pictures
配給:ナカチカピクチャーズ/パルコ
(C) 2023「唄う六人の女」製作委員会
公式サイト:https://www.six-singing-women.jp/

2023年10月27日(金)~全国のTOHOシネマズ系、大阪ステーションシティシネマ、京都シネマ OSシネマズ神戸ハーバーランド 他全国公開中


(河田 真喜子)

 

 
 
 
 
 

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【日時】10月28日(土) 舞台挨拶/1154

【場所】新宿シネマカリテ(新宿区新宿3-37-12 新宿NOWAビルB1F)

【登壇者】倉悠貴、芋生悠、前田弘二監督 



変わり者のトワと、変わり者の園子。二人にしか分からない世界。

二人にしか分からなくていい関係を作り出すラブストーリー。


『まともじゃないのは君も一緒』の監督・前田弘二と脚本・高田亮が贈る〈おかしな二人の物語〉第二弾『こいびとのみつけかた』が、いよいよ全国公開いたしました。


koibitonomitukekata-pos.jpgコンビニで働く女の人・園子に片想いをしている植木屋でトワは、毎日植木屋で働きながら、彼女がどんな人か想像している。なんとか話したいと思った彼がついに思いついたのは、木の葉をコンビニの前から自分がいる場所まで並べて、彼女を誘うことだった。二人は言葉を交わすようになり、周囲にはよく理解できない会話で仲を深めていくのだが、園子にはトワにうまく言い出せないことがあり…。
 

世の中に馴染めない、ちょっぴりエキセントリックな2人が繰り広げる、〈可笑しくピュア〉なラブストーリー。


世の中の〈普通〉に馴染めない、おかしな二人のおかしな会話の応酬で繰り広げる『まともじゃないのは君も一緒』の監督・前⽥弘⼆×脚本・⾼⽥亮コンビの最新作。主演に『夏、至るころ』(20)、『OUT』(23)と主演作が続く倉悠貴、ヒロインに『ソワレ』(20)、『ひらいて』(21)の芋生悠を迎え、成田凌、宇野祥平らが脇を固める。また、川瀬陽太、奥野瑛太、高田里穂、松井愛莉らも名を連ねる。
 

 



映画『こいびとのみつけかた』の公開を記念して10月28日(土)、東京・新宿のシネマカリテにて舞台挨拶が行われ、出演者の倉悠貴と芋生悠、前田弘二監督が登壇した。

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“世になじめない、ちょっと変わった”男女の姿を描いた『まともじゃないのは君も一緒』に続く、前田監督と脚本家・高田亮のコンビによる本作だが、前田監督は「『まともじゃないのは――』が出来上がって、高田さんと初めて一緒に見た時、『次、どうしようか…?』という感じで、おかしな2人の話をもう1回、メロドラマというかラブストーリーみたいな形でやってみたいなと思いました。『まともじゃないのは――』が2人の掛け合いの映画だったので、もう少ししっとりした感じの話ができないかと」と本作の着想の経緯を明かす。


koibitonomitukekata-500-1.jpgその言葉通り、本作のオープニングではわざわざ「これはメロドラマである」という宣言(?)が映し出される。倉さんは「僕はメロドラマが何なのかよくわかんなかったけど(笑)、あそこまで定義されたので『あぁ、メロドラマなんだな…』と思いながら見ました。もちろん、恋愛話ではあるけど、僕としては人間の生き方を描いたヒューマンドラマなんじゃないかと思いました。僕のメロドラマデビューがこれなので、これがメロドラマなんだなと(笑)」と語り、芋生さんも「私もメロドラマがちょっとよくわかってなくて(笑)、これを見て『メロドラマってこれなんだ!』と思いました」と率直な思いを口にする。


前田監督はこのメロドラマ宣言が当初から台本に書かれていたことを明かしつつ、その真意について「(普通のメロドラマは)こういう2人ではないというか、あんまり変わった2人じゃない話が多いですが、ある種のギャグというか『これのどこがメロドラマだ?』と思わせておいて、最終的にメロドラマになっていく――どこかヘンテコだけど、そこに着地していくのが面白いなと思いました」と語る。ちなみに、タイトルを全てひらがなにした意図についても前田監督は「漢字を入れると洋画のロマンチックコメディの邦題みたいだなと思って、それはキライじゃないんですけど、ちょっとひねってみました」と説明。芋生さんは「わかります!」と納得した様子で深く頷いていた。


koibitonomitukekata-500-2.jpg劇中、倉さん演じるトワが、黄色く色づいた葉っぱを道に並べていくシーンが印象的だが、倉さんは「僕もあのシーンは好きです!」と明かしつつ「並べる時に、間違えたことがあって…。(まとめて葉っぱを並べるのではなく)いちいち丁寧に(1枚ずつしゃがんで)置くというやり方をしてしまって、しんどかったです。ハードな1日でした(苦笑)」と撮影での苦労を明かしたが、前田監督は「それが良かったです」と語り、芋生さんも「あの姿、あのほうが絶対に良いです!」と同意。このシーンは初日に撮影され、風で葉っぱが飛んでしまうことが心配されたが、前田監督は「奇跡的に無風だったんです。8日間の撮影でしたが、天候に恵まれました」とニッコリ。ちなみに、葉っぱは前田監督が自ら拾ってきたものだそうで「すぐに色が変わってしまうので、当日の採れたてじゃないとダメで、朝早く起きて、懐中電灯を持って近くの神社で集めました」と明かした。


園子を演じた芋生さんは、お気に入りのシーンとして、トワと園子が公園で餃子とケーキを食べるシーンを挙げ「2人の空気感が、誰も入れない感じがあって、無言でも全然いい! ただ食べているだけでいい! という感じが好きです。あの日は、すごく良い陽気で、公園が気持ちよくて、2人とも風を感じたり、日が暮れてきて『気持ちいいな。ポカポカするな」という感じでした」と心地よい撮影をふり返る。前田監督もこのシーンについて「『餃子とケーキ、どっちが好き?』と聞かれて、食べて、『おいしいね』、『おいしいね』という2人だけで成立しちゃう感じ――2人にしかわからなくて良い感じで、気の利いた言葉とかを全て排除しても成立しちゃう2人が良いなとグッときました」と倉さんと芋生さんが作り出した絶妙な空気感を称賛する。


koibitonomitukekata-500-3.jpgトワと園子が演奏と歌を披露するシーンは、実際に倉さんも芋生さんも楽器を演奏し、歌っているが、倉さんは「一発で撮ってOKになりました。リアルに人前で歌って、緊張して声が震えたり、周りのみんなの顔が温かいから、自然と笑顔になったりしました。『この瞬間は大切にしたいな』と思えるシーンでした」と充実した表情を見せる。これまで楽器の経験がなかったという芋生さんは「難易度が高かったです」と苦笑を浮かべつつ「あの曲、すごく好きなんです。途中でラップも入るし、感情が乗りました」と楽しそうに明かしてくれた。


本作のトワの人物像には、前田監督自身が投影されている部分が大きいようで、倉さんは監督とつながる部分を感じるか? という問いに「つながるどころか、(前田監督は)トワって感じです」と即答し「現場でもいつもニコニコしてて、こんなピュアな人いるのかと思った」と述懐。芋生さんも「(前田監督は)リアル・トワです」と即答し「私たちが歌っているところをモニタで見ながら揺れてました(笑)。かわいすぎません?」と愛らしそうに語る。前田監督は「みんな、トワ的なところってあると思います」と照れくさそうに笑みを浮かべていた。
 

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舞台挨拶の最後に前田監督は「つらい現実や厳しい日常があったり、世の中、おかしなことばかり起きたりして、そこへの不安もあると思います。そういうところからのガス抜きや疲れた日常の筆休みになればと思ってこの映画を作りました。映画を観て、ちょっとでも気持ちが楽になっていただけたらありがたいです」と語る。


芋生さんも「ひとりではどうしようもないくらい、しんどくなったり、つらくなったり、生きづらさを感じる瞬間があると思いますけど、そういう時にこの映画を観ると、自分だけで抱え込まないで、誰かともっと外の世界に飛び出してみようかなと思えたり、そういう人に対して周りも『逃げてる』じゃなく『生きようとしてるんだ』と捉えられて、周りももっと優しくなれたり、そういう優しい世界を望んでいる映画だなと思います。たくさんの人に観ていただき、多くの人を助けられたらいいなと思っています」と呼びかける。


最後に倉さんは「この映画は、悪い人が出てこない温かい作品で、たぶん、僕自身も数十年後とかに観てホッとする気持ちになる映画だと思っています。もしそういう気持ちになれる人がいたら、僕もこの映画に携われてよかったなと思います。まだ公開がスタートしたばかりなので、たくさん広めていただければ幸いです」と語り、温かい拍手の中で舞台挨拶は幕を閉じた。
 


◆監督:前田弘二 脚本:高田亮  音楽:モリコネン
◆出演:悠貴 芋生悠 成田凌 宇野祥平 川瀬陽太 奥野瑛太 高田里穂 松井愛莉
◆2023年/日本/99分/5.1ch/スタンダード 
◆©JOKER FILMS INC. 
◆公式サイト:http://koimitsu.com
◆制作プロダクション:ジョーカーフィルムズ、ポトフ 
◆企画・製作・配給:ジョーカーフィルムズ

2023年10月27日(金)~新宿シネマカリテ、シネ・リーブル梅田、アップリンク京都、出町座、シネ・リーブル神戸 ほか全国公開中!


(オフィシャル・レポートより)

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これまで日常に潜むグレーゾーンに光を当ててきた森達也監督が自身初の劇映画を監督した作品『福田村事件』。

9月1日に日本公開をし、昨日までの観客動員数は15万人を超え15万1051名、興行収入は2億円(2億255万6千542円)を超えこれまで133劇場で上映をしている。


そして、10月4日に開幕した第28回釜山国際映画祭にて本作はコンペディション部門の一つである、ニューカレンツ部門に選出され、オープニングセレモニーでは主演の井浦新、田中麗奈と向里祐香、プロデューサーの井上淳一がレッドカーペットを歩いた。

そして、本日10月13日に行われた授賞式で、ニューカレンツ賞(ニューカレンツ部門 最優秀作品賞)を受賞いたしました!

 

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受賞式にて森監督は「21年前にこの事件を知ってから、何とか作品にしたいとテレビ局や映画会社に働きかけたけれど、結果的にはすべてダメでした。でも三年前に今のチームと出会い、多くの方からクラウドファンディングで資金協力をしてもらい、さらには素晴らしい俳優たちも参加してくれて、ようやく映画にすることができました。

この映画の重要なポイントは、当時の大日本帝国と、植民地化されていた朝鮮です。その二つの国で公開することができ、多くの人に観てもらっている。とても幸せです。ありがとうございます。」とこれまでを振り返り、喜びのスピーチを行った。
 



また、今回の受賞を受けて主演である井浦新、田中麗奈からも祝福のコメントが届きました!


fukudamura-pusan-iura-240-1.jpgのサムネイル画像◎井浦新 コメント

この作品が立ち上がった一番最初、俳優部は私ひとりだけでした。多様な考え方があるので、もしかしたらキャストが集まらないかもしれない、撮影まで辿り着けないかもしれない、不安はありましたが動き出したら猛者たちが集う素晴らしい組が出来上がりました。

しかし、やはり撮影は過酷で、各部魂を擦り減らし生きている実感を味わいながら皆んなで夢中になって、無事にとはいかないけれどなんとか撮り終えることができました。

今では全国のミニシアターで満席が続き、ご好評をいただけてるだけでも、それだけでも充分ありがたく光栄な事なのに、作品がこのような賞を受賞する事ができ、大変嬉しく思います。 この作品に関わって下さった方々、観て下さった方々、選んで下さった方々に、心から感謝を申し上げます。ありがとうございます。

 

 

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◎田中麗奈 コメント

 

最初にこの朗報を聞いた時、嬉しさと同時に驚きもありました。それは韓国の方にこの作品がどのように受け止めて頂けるのか、、。少し不安もあったからです。ですが、映画という芸術の世界できっと伝わるはずだという希望を抱き、淡い期待も持っていたのも本音です。

この作品は、大正時代、朝鮮の方々が日本に移り住み踏ん張って暮らしている中、関東大震災という未曾有の事態での混乱の後に起きた出来事。この事実を、韓国の方と共有出来たこと。どんな意見だとしても、私はそれがとても価値のある事だと思います。

一人の俳優として、この映画に参加できたことを誇りに思います。これからも、私たちは映画というフィールドを通して何かを起こせる。そう実感できた、大きな受賞だと思います。釜山からの素晴らしいお知らせをありがとうございました。

 



fukudamura-pusan10.13-240-1.jpg本作は同映画祭開幕前より、韓国内での関心度はとても高かったようで、会期中3度の上映を行い、いずれも大盛況で森監督が上映後Q&Aに参加した10/9、10/11はどちらも満席となり映画祭内でも大きな話題となった。Q&Aでは比較的若い観客の方々から手が上がり、映画製作過程についての質問を投げかけられると小林は「関東大虐殺100周年の2023年9月公開を目指して3~4年前から動いていたが本作に賛同し援助をしてくれる会社と出会うことは困難だったとし「クラウドファンディングを通じて資金を集め2400人以上の方が支援をしてくださり、3千500万円以上集まった。これは歴代映画関連クラウドファンディングで最も多い募金額で、この支援者の方々がいてくれたからその後本作に支援をしてくださる会社が増え、今を迎えられた」と応えた。
 

また、森監督は「人は失敗と挫折を繰り返しながら成長します。それを忘れたり、忘れたふりをして自分の成功だけを覚え続ける人がいたら、その人がどうなるか想像してみてください。 いまの日本は失敗と挫折は完全に忘れて、成功した経験だけを覚えています。本来であれば教育やメディア、そして映画も。どんな失敗と挫折をしたのか、加害行為を犯したのか、負の歴史をしっかりと見てもらえればと思っています。」と不幸だった歴史に直面するというのは韓国にも、日本にも重要なことだとして、今後の韓国での劇場上映がかなえば、と強い期待の言葉を残した。
 


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<作品情報>

『福田村事件』

(2023 日本 136分)
監督:森達也
出演:井浦新、田中麗奈、永山瑛太、東出昌大、コムアイ、松浦祐也、向里祐香、杉田雷麟、カトウシンスケ、木竜麻生、ピエール瀧、水道橋博士、豊原功補、柄本明他
2023年9 月1日(金)よりシネ・リーブル梅田、第七藝術劇場、MOVIX堺、京都シネマ、京都みなみ会館、9月8 日(金)よりシネ・リーブル神戸、元町映画館、シネ・ピピア、以降出町座で順次公開
公式サイト→https://www.fukudamura1923.jp/
(C) 「福田村事件」プロジェクト2023  

 


(オフィシャル・レポートより) 

 

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◆実施日時:10月12日(木)17:25〜17:55

◆会  場:MOVIX京都 シアター12(京都市中京区桜之町400 新京極商店街内

◆登壇者:くるり 岸田繁、佐藤征史、森信行 ※MC:野村雅夫


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くるり初のドキュメンタリー映画『くるりのえいが』が、いよいよ明日10月13日(金)より、なんばパークスシネマ、MOVIX京都 他全国劇場3週間限定公開&デジタル配信を開始いたします。1996年に結成して、多彩な活動を通じて日本のロック・シーンで異彩を放ってきたくるり。今回新作アルバム制作のために岸田繁と佐藤征史が声をかけたのは、オリジナルメンバーの森信行だった。結成当時のプロモーション映像、ライヴ映像を交えながら、なぜ今、またこの3人による曲作りを選択し、どのように曲が生み出されていったのか、くるりの創作の秘密に迫るドキュメンタリー映画が誕生しました。本作の監督を務めるのは細野晴臣のドキュメンタリー映画『NO SMOKING』、『SAYONARA AMERIKA』を手掛けた佐渡岳利監督。バンドのひたむきな創作の情熱から、音楽を奏でることの面白さを再発見できる必見の作品です!

この度、公開に先駆け10月12日(木)に『くるりのえいが』先行上映会 in 京都を実施いたしました。

くるり・オリジナルメンバーの3人が、彼らのホームである“京都”にて本作の撮影秘話をたっぷりと語りました。
 


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東京に続き、公演前2回目の舞台挨拶となったのは、くるりの地元である京都。この日行われた2回の先行上映会では、150席がそれぞれ完売ということで、人気を伺わせた。10月4日(水)に発売された14枚目のアルバム「感覚は道標」に収録されている「California coconuts」をBGMに、岸田繁、佐藤征史、森信行の3人が登場すると、会場は大きな拍手に包まれる。まず岸田が「こんにちは」と挨拶。舞台挨拶はなかなか慣れていないと断りつつ、「見た目以上に緊張してます」と笑わせると、改めて「ご覧いただきありがとうございました」と会場に感謝を伝えた。


kururi-bu-240-satou.jpg佐藤もまずは感謝のコメント。そしてこの会場に来るのはトム・ハンクス主演の『クラウド アトラス』をメンバーと一緒に観に来て以来10年ぶりくらいと明かすと、岸田が「『クラウド アトラス』越えやね」とツッコミ。佐藤は、「その次(にここへ来たの)が『くるりのえいが』を見てくれた人の前っていうのが、なんか感慨深い感じです」と笑顔を見せた。


森はまず「オリジナルメンバーの森信行です」と挨拶。「僕がいた頃のくるりを知ってる人は?」と会場に問いかけると、8割ほどの観客が挙手する様子に「あ〜、うれしい!」と笑顔を見せつつ、「知らない方もいらっしゃると思うので、それも含めて楽しんでいただければ」と話した。


司会から撮影を通して印象的だったエピソードを聞かれた岸田は、作中に出てきたエビフライに言及。「大きいのが1人3尾ついてたんですわ。その他にもあの日はエビフライと湯豆腐、メインが2つ出てくるんです。それですかね」ときっぱり。岸田は「食べることが大好き」と話すと、ライブやレコーディングの現場でもお弁当などが置いてあるが、「あんなに食事も充実しているレコーディングはしたことがないですよ、ホンマに」と、これまでのバンド歴の中でもかなり印象深かったことを告白。佐藤も、レコーディング中は朝ごはんの味噌汁が何かが一番の楽しみだったと話し、「今日取れたメカブやワカメがごちそうになる伊豆、最高でした」と伊豆レコーディングを振り返った。


kururi-bu-240-kishida.jpgそのレコーディングが合宿形式で行われたことについては、岸田が「同じ釜の飯を食うという言葉があるけど、久しぶりに集まって同じご飯を食べて、同じところに寝て、おはようってレコーディングする、それが音に反映した」とあまり日常的でない感覚が作品に影響を与えたことを示唆。森も合宿だったことは大きかったと振り返ると、「くさい言い方になるかもしれないけど」と断りを入れつつ、「感動を共有するみたいな、リフレッシュで伊豆の海に行って風が気持ちいいな、海がきれいだな、今日は暑いな、ご飯がおいしいな、そういう感覚を共有できるのがチームワークにつながるような気がしていて、それが映画の中に入ってる気がします」と話した。


「コロナ禍ではリモートで音楽制作をしていたこともある」と岸田。3人でセッションしたことについては「3人で集まって、貴重というか、懐かしくもあるんやけど、人と集まって音楽作るのが楽しいなっていう気持ちでした」と改めてバンドで音を出すということのよさを実感した様子。森も3人いっしょにモノを作ることについて「インスピレーションの仕掛けあいも、こう来たらこう出てみたいなやりとりがすごい楽しかったですね」と振り返った。そして「久しぶりに制作して(昔と)いっしょやなというところもあるし、すごく成熟している新しい形も見られて、それは新鮮な体験でした」と心境を吐露。オリジナルメンバーである森に関して佐藤は「瞬発力のすごい人やな」と評すると「4小節だけのギターリフのイントロが流れただけで、自分のなかの道筋を作って、疑いなくこれ正解ですというのが出てくる、だから曲が進んでいく」とベタ褒め。そして以前は話したことのなかったという、ドラムに対してどういう気持で臨んでいるのか、といった話もしたと明かした。レコーディングについては、曲が生まれた瞬間からレコーディングまでがむちゃくちゃ短かったと話し、「曲の良さをみんなが忘れてないうちに、じゃあ録ってみようってできたっていうのが一番良かったのかなと思います」と、やはり3人が顔を合わせてのスピード感、ライブ感が今回のレコーディングで大きなウエイトを占めていたことを話した。


kururi-bu-500-3.jpgニューアルバムの「感覚は道標」の反響について岸田は、SNSなどでいろんな声を見聞きして、「ありがとうございますというのがいっぱいある」と明かすと「曲は少しずつ育っていくものだと思うので、最初にすごく祝福していただいた感覚」と笑顔。作中でも登場する拾得でのライブについて話題が及ぶと、そのライブに行っていたという観客が多数挙手するひと幕も。岸田が「いっぱいいっぱいではあったんですけど、楽しんで演奏したと記憶しています」と話すと、佐藤も「最近のライブの平均よりBPM20くらい上がってたんちゃうかな」とうなずいていた。


kururi-bu-240-mori.JPG森は今後について「映画のなかでできたものはオギャーと生まれた瞬間の感じ、その瞬間が映画に映っているのでそれをまず楽しんでいただいて、アルバムに入っているのは実はちょっとそこから青年くらいに成長してる、次はツアーで大人になった曲が見られるかもしれない」と、曲が生き物であることを伝えると、岸田が「グレんようにしないと」と合いの手。森も「ぜひツアーに足を運んでいただいて」とアピールした。佐藤は「森さんといい付き合い方をしていけたらと思ってる」と笑わせ、過去に森と共にした「チミの名は。」というツアーを挙げると、それ以上に楽しんでいければと期待を込めた。


ここで森からツアー名が発表されることに。しかし森は「えっとなんやったっけ……」と一旦ボケてからハードにキマる!つやなし無造作ハッピージェル》というツアー名を明かすと、岸田から「どういう意味なんですか、それは?」とツッコミが。その岸田は、今後についてたまに考えると話すと、「ケセラセラでございます」。さらに「さっきもっくん(森)も言うてはりましたけど、オギャーから成長の過程で、作者である自分たちが得ていくものもあると思うんで、見守りながら育てながら、ケセラセラ、ですかね」とさらり。最後に改めて会場に感謝を伝えると「この映画は音楽作品でもあるので、繰り返し見ていただくといろんな発見があるんちゃうんかな、長く付き合ってください」と締めくくった。
 


『くるりのえいが』

出演:くるり 岸田繁 佐藤征史 森信行
音楽:くるり 主題歌:くるり「In Your Life」 オリジナルスコア:岸田繁
監督:佐渡岳利 
プロデューサー:飯田雅裕 
配給:KADOKAWA 
公式サイト:vb-eigaeigyo@ml.kadokawa.jp 

2023年10月13日(金)より全国劇場3週間限定公開&デジタル配信開始


(オフィシャル・レポートより)

 
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 20世紀を代表する建築家で、母国フィンランドのみならず、世界中に「アアルト建築」と呼ばれる建築を作り上げてきたアルヴァ・アアルトと、彼と共に建築、内装、家具の分野で多大な貢献をしてきたアイノ・アアルトの人生やその仕事を描くドキュメンタリー映画『アアルト』が、10月13日(金)よりシネ・リーブル梅田、シネ・リーブル神戸、アップリンク京都にて公開される。
 アルヴァとアイノが手がけてきた建築や家具たちも続々と登場。ドイツのバウハウスなど、建築に新しい風が吹いていた時代、万国博覧会のフィンランド館を手がけたことから時代の寵児となり、アメリカでも人気を博していく様子や、戦争による復興需要により、新しいまちづくりに取り組んでいく姿は、建築家が果たす役割の大きさを実感させられる。人たらしで、パトロンを得て外での仕事を楽しむアルヴァと、家具の会社の経営から子育て、そして自身のクリエイティブワークまで黙々とこなしていたアイノ。50代でアイノが病死し、アトリエで勤めていたエリッサと再婚してから、人生の最晩年までアルヴァの老いもしっかりと見つめた稀有なドキュメンタリーだ。
 本作のヴィルピ・スータリ監督にお話を伺った。
 

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■小学校時代に通ったアアルト設計の図書館は「特別だった」

――――スータリ監督は小学校時代からアアルトがデザインした図書館が好きで訪れていたそうですが、その当時その場所でどんな気持ちを抱いたのでしょうか。
スータリ監督:幼いからこそ世界が新鮮に見えるし、幼い時の記憶ほど長く自分のなかに残るものです。子どものころ、アアルトがデザインした図書館は日常の生活に何気なくあるものでしたが、なぜわたしがそんなに特別だと思ったのかを追求したいという気持ちが、この映画を作るきっかけになったと思います。当時、わたしの故郷の冬はマイナス30度ぐらいまで気温が下がり、とても寒かったのですが、とても特殊な形をした図書館の取っ手を引いて中に入ると、素晴らしい空間が広がっていたのです。ここはまさにわたしのリビングルームだと感じました。アアルト&アイノの作品は触らずにはいられなくなるような感覚に訴えてくる美しさを備えており、レンガの壁を触ってみたり、革張りの椅子に座ってみたり、真鍮のランプが照らす中読書をしたりと、リビングのように過ごしました。
 
――――それは特別な体験ですね。
スータリ監督:でも当時のわたしには、何が特別なのかを理解することができなかった。映画を撮るということは、当時毎日触れているものが、なぜそんなに特別だったのかを解き明かすという試みでもあったのです。アルバート・アアルトは、わたしの父母世代は建築家として敬愛していました。
 
 
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■アアルト夫婦の間で取り交わされた書簡をみつけ、映画化を確信

――――なるほど。他にも本作を作る動機になったことはありますか?
スータリ監督:当時、わたしの故郷は戦争によって完全に焼け落ちてしまい、本当に醜い状態でした。そこで復興を急ぐため、アアルトら建築家が招聘され、都市計画を立てて、新しい建築物を作り、焼け出されてしまった人たちの尊厳を取り戻したのです。そんないろいろなことがわたしの頭の中にあり、この作品を作ろうと思ったのです。それまでにドキュメンタリー作家として30年のキャリアを積んでいたので、わたしは建築家ではありませんが、建築家アアルトの作品になぜ感銘を受けたのかを語っていこうと思いました。実際に、彼がどんな人物であったかを具体的に知らなかったのですが、取材を通じて妻、アイノ・アアルトという非常に興味ふかい人物を見出しましたし、ふたりの間で取り交わされた書簡をみつけたことで、映画が作れると確信したのです。
 
――――まずは調査が必要ですが、まずはどんなことから始めたのですか?
スータリ監督:4年間製作に携わり、2年間はフルタイムでかかりっきりとなって、大量の資料を形にするわけですから思い出すのも大変なぐらい(笑)。調査を進める中で、100名以上の人間が関わってくる、一種の前世紀の文化研究に近いリサーチが必要だったのです。ロックフェラー財団所有の資料や、国連が持っている資料など世界中の資料保存場所にアクセスしましたし、家族が保管している手紙や写真も一番大事でした。そこで重要だったのは、人と人との研究者同士のネットワークを、網の目のように広げ、背景についてインタビューしたことで、それも大きな仕事でした。様々な人の解釈を組み上げていくのは大変でしたが、ゆっくりと時間をかけて取り組むというアプローチをとり、アアルトの家族からの信頼も時間をかけて築き上げていきました。ちなみに編集のユッシ・ラウタニエミさんは、フィンランド版アカデミー賞の編集賞を受賞したので、苦労が報われたと思いますよ。
 
 
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■記録映画ではないシネマ性を出すことを意識して

――――それは、おめでとうございます。ちなみに編集では特にどんな点に苦労したのでしょうか?
スータリ監督:建物はそもそも動かないし、家具も動かない。登場人物も亡くなっている方ばかりで、生きて動いているものが一つもない状態で撮影するのは、非常に難しかったです。フィルムの中で物語の流れを感じさせ、有機的かつイキイキとした感じを出すのが大変で、編集も大変でした。記録映画ではないシネマ性をきちんと出すことを意識しましたね。専門家や関係者のインタビューを出すのではなく、たくさんの人の話を取り入れながら、ひとりのナレーターが話をする形にしました。そういう考えのもと、アルヴァやアイノをいきいきと描くことに心を砕いたのです。
 
 
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■フィンランド人でも知らなかった建築家、アイノ・アアルトに光を当てる

――――アルヴァ・アアルトを調べるうちに、アイノ・アアルトという興味深い人物に出会ったとおっしゃいましたが、スータリ監督はアアルトをどんな人物と捉えたのですか?
スータリ監督:アイノに、今スポットライトを当てるべきだと思ったのです。フィンランド人でさえ、彼女のことを知りませんでしたから。ただアイノはアルヴァと若い時に知り合い、いろんなことを一緒に発見するなど対等な立場にいましたし、ドイツのバウハウス運動にも関わり、有機的なモダニズムを一緒に生み出していました。アアルトの世界観の土台はふたりで作り上げたもので、その上にアルヴァが建築していったのです。実際、アルヴァの建築の内装は、ほとんどアイノが手がけており、バウハウス運動のように建物も含めた全体性としてのアートを成し遂げる上で、非常に重要な役割を果たしていました。ですから、映画の中でも、まずアイノが建築家であることを盛り込みたいと考えていたのです。
 
――――日本でも展覧会「アイノとアルヴァ 二人のアアルト フィンランド-建築・デザインの神話 AINO and ALVAR AALTO: Shared Visions」でアイノのことを知った人も多かったと思います。
スータリ監督:アイノは並々ならぬ審美眼を持っており、アルヴァは自分が何かを作る際はまずアイノに見せて、意見を求めていたそうで、そういう点でも全幅の信頼を置かれていました。ただアイノは寡黙で、いつも周りの観察しているような人だったのに対し、アルヴァはとても外交的で誰とも友達になれる魅力的な人物でした。ふたりは愛し合っていたので良いと思うのですが、わたしがアルヴァを夫にすることは、あり得ないですね。アイノの死後に再婚した若いエリッサに対し、自分の好きな髪型や服に変えさせるような束縛的なことをしていたこともありましたから。ただ、アルヴァの魅力にわたし自身が恋をした部分もあるのです。でもそれ以上に100年前の女性でありながら、現在にも通じるようなアイノの建築家や大工としてのスキルを持ち、家具会社の運営をし、ふたりの子どもを育て、何よりも扱いが複雑な夫アルヴァの世話をする、とても先進的かつエネルギッシュな女性でしたから、大きなインスピレーションを得ることができました。ちなみにアルヴァの声を演じたのはわたしの夫ですが、彼はアルヴァのような「ありえない」夫ではないことを付け加えたいです(笑)
 
 
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――――晩年はお酒で身を滅ぼすような部分もあったアルヴァですが、いずれにせ、アルヴァのあらゆる部分を描き出していましたね。
スータリ監督:アルヴァが人として抱えていた問題を、しっかりと映しだそうと思っていました。彼は晩年になると若い世代とコミュニケーションが取れなくなり、恐竜の生き残りのように扱われました。昔は先鋭的な建築家だったのに、最後は自分の殻の中に閉じこもり、余計にアルコールのせいで悪循環を招いてしまったのです。ドキュメンタリーで人物を描くにあたり、フォーカスする人物を聖人君主化はしません。人としてのアアルトを出していくわけです。最後に、アルヴァは、「人は悲劇と喜劇との組み合わせである」と語っていたのですが、まさにそれを映画に反映させたかったのです。
(江口由美)
 

<作品情報>
『アアルト』”AALTO”(2020年 フィンランド 103分) 
監督・脚本:ヴィルピ・スータリ 
出演:アルヴァ・アアルト、アイノ・アアルト他
2023年10月13日(金)よりシネ・リーブル梅田、シネ・リーブル神戸、アップリンク京都にて公開 
配給:ドマ
公式サイト https://aaltofilm.com/
(C) FI 2020 - Euphoria Film
 
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 『ミロクローゼ』で山田孝之とタッグを組み、独自の世界観を強烈に印象付けた石橋義正監督の12年ぶりとなる最新作『唄う六人の女』が、2023年10月27日(金)より大阪ステーションシティシネマ、京都シネマ、OSシネマズ神戸ハーバーランド他全国ロードショーされる。
 父親の訃報を受け、山奥の生家に帰った萱島(竹野内豊)は、幼少期に両親が離婚して以来疎遠だった父親が、毎日山で何かを探していたことを近所の人から聞く。父から相続した山を買うために訪れた東京の開発業者、宇和島(山田孝之)との契約を済ませ、宇和島に最寄り駅まで送ってもらう途中、事故に遭ってしまう。ふたりが目覚めると、森の奥で六人のミステリアスな女性たちに監禁されてしまい…。
ふたりの男を森の中で監禁する六人の女性たちを演じるのは、水川あさみ、アオイヤマダ、服部樹咲、萩原みのり、桃果、武田玲奈。それぞれの魅力を活かし、艶っぽさやスリリングさを感じさせると同時に、身体表現の美しさにも心を奪われる。女性たちの正体は?そしてその狙いは何なのか。京都府南丹市の原生林をはじめ、豊かな自然の森の中で繰り広げられる壮大なミステリーだ。
濡れる女を演じたアオイヤマダさん、見つめる女を演じた桃果さんにお話を伺った。
 

■セリフがない役にワクワク、ドキドキ(桃果)

  大好きな石橋義正ワールドで、自ら挑みたい役を直訴

(アオイヤマダ)

――――ホラーの要素が強いのかと思いきや、観終わると実写版ジブリではと思わせる壮大なテーマを感じました。おふたりのオファーをいただいたときのことや脚本を読んで、どのように解釈したかを教えてください。
桃果:最初からセリフがない役だと伺い、ずっとどういうことなのか考えていたので、脚本を読み、六人の女たちが皆セリフをしゃべらないことに、むしろワクワクする感覚がありました。現場に入る前は、セリフがない分、表情や仕草で伝えなければとドキドキしましたね。
 
アオイヤマダ:普段ダンサーとして活動しており、日常的に体を動かして表現しているので、言葉がないことにはあまり抵抗はなかったです。わたしは石橋義正ワールドが大好きで、オファーをいただいたときは、やらせてくださいと即答したのですが、一方で何か壁にぶち当たりたい気持ちがありました。どんな役があるのかを監督に聞くと、水で泳ぐ役があることを知り、「どうしてもやらせてください。水に潜らせてください」と自分からお願いしました。水に慣れた人にオファーする方が、演出側もリスクは少ないと思うのですが、石橋監督に特訓をさせてほしいとお願いし、大阪のプールで指導の先生をつけてもらい、通って水中での練習を重ね、本番に挑みました。
 
――――アオイヤマダさんが石橋ワールドを好きになったきっかけは?
アオイヤマダ:『バミリオン・プレジャー・ナイト』をYoutubeで拝見したとき、そこに『唄う六人の女』があり、わたしはその世界観が大好きでした。ちょっと毒があり、今の世の中でNGすれすれの表現を恐れずにやる反骨精神や、人間が本来持っている欲のようなものを常に映している作品で、音楽もいい。だから、『唄う六人の女』が長編映画化されるとは、一体どういうことになるのかと驚き、期待を胸に今回演じさせていただきました。実際に完成した映画は、観終わると素直に自然と向き合える作品になっていると感じました。わたしが好きだと思う石橋義正ワールドとは違うけれど、おっしゃったように実写版ジブリとも言える、自然と人との関係について考える壮大な世界観になっていますね。
 
 
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■特殊なキャラクターを演じる上で、インスピレーションを得たものは?

――――唄う六人の女のひとりとして、どのように役作りを行ったのですか?
桃果:セリフがない特殊なキャラクターという設定だったので、どれぐらい感情を持てばいいのか悩みながら撮影に挑んだのですが、山田孝之さんが演じる宇和島とのシーンで、宇和島が何か話すと、どうしても表情で反応してしまうんです。石橋監督からは、とにかく相手をひたすら見つめ、瞬きもこらえて表情には出さないようにとの演出がありました。宇和島に対して興味は持っているけれど、細かな感情は持たないように心がけました。
 
アオイヤマダ:濡れる女という特殊なキャラクターなので、その気持ちがわかるのだろうかと撮影前はいろいろ考えていたのですが、撮影で山田孝之さんと初対面だったのでご挨拶し、ちょっと緊張した雰囲気が流れた瞬間、わたしの手にバッタが止まったんです。人間はいきなり距離を詰められると拒絶してしまうけれど、虫は人間に対して距離感がなく、勝手に体にまとわりつくことだってある。いきなり距離感ゼロの感じが、竹野内豊さんとの初めて一緒に演じるシーンで役立ちました。だから、撮影中はバッタだけでなく、実際に森にいた生き物たちからインスピレーションをいただいていましたね。普通に生活していたらタブーとされることを一度取り払い、どのようにアクションを起こすかを集中して考え、役に反映させていきました。
 
――――アオイヤマダさんの場合、日頃ダンサーとして活動する中で、いろいろなものからインスピレーションを得ることが習慣づいているのでは?
アオイヤマダ:わたしが踊っているときに好きなのは、地位や権威、肩書きが全て外れる瞬間です。踊ることでその空気、空間だけが移動している。そこに魅力を感じているので、バッタからインスピレーションを得たのも、日頃の習慣と言えるかもしれません。
 
――――濡れる女が水中で美しい動きを見せるシーンは、本作の大きな見どころです。
アオイヤマダ:水中では重力がないのでなんでもできるけれど、物理的に呼吸ができない。陸の上で踊るときは呼吸を意識しないと体が堅くなってしまうのですが、水中で呼吸を止めながら伸び伸び動くことは、実際難しいんです。それに加えて、「死ぬかも」と常に思いながら動いていることが、逆に「生きたい」につながるのです。生と死の間で踊るというのも、わたしにとっては貴重な経験でした。
 
――――桃果さんが演じる「見つめる女」は、山田孝之さんが演じる宇和島とのハードなシーンもありましたね。
桃果:わたしはお芝居をする上で、ハードなシーンでも手加減はあまりされたくないし、むしろ「来るなら来い!」ぐらいのタイプなんです。実際、そのシーンでちょっと擦り傷ができたとき、その傷を山田さんが見たら少し気にしてしまうかなと思い、こっそり傷口を洗っていたのですが、結局山田さんに気づかれ、絆創膏をいただきました。(笑)。それぐらい山田さんも本気で向かってきてくださったので、わたしもすごく演じがいがありましたし、いい経験になりました。
 
 
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■森での撮影で感じた自然の力

――――京都府南丹市の森の中での撮影でしたが、撮影を通して、どんなインスピレーションを得たのでしょうか?
桃果:通常、撮影ではキツいと思うことも多いのですが、森の中で撮影している間、すごく楽しかったんです。ストレスもなく、むしろ癒される感じで、自然があるから、自分たち人間も生きられると思いますね。あと、わたしは虫が大嫌いだったのですが、見つめる女を演じながら、森の生き物や虫と向き合うようにしていたんです。おかげで、虫に対する苦手意識が減りました。
 
アオイヤマダ:わたしは長野県生まれで、幼少期は家の近くには川があり、虫とも遊ぶような自然の中で育ちました。でも15歳で上京してから、自分のことに一生懸命で自然のことは他人事になっていたんです。今回、森の中の撮影で、わたし自身が元気になり、やる気もでて、何かに取り組もうと前向きな気持ちになりました。それはやはり自然の力なんです。自然というと漠然としてしまいますが、周りの環境に目を向けられるようになると、周りの人にも目を向けることができ、優しい気持ちになれる。これからもそういうことは大事にしていきたいですね。
 
――――石橋監督にもふたりの森での撮影の感想をぜひお伝えしたいですね。
アオイヤマダ:石橋監督の作る世界観を掴む上で、監督自身のことを理解したいという思いがあり、でもどこかずっと腑に落ちていない部分があったんです。昔から女性を艶っぽく描くのが特徴だと思っていたのですが、打ち上げのとき、いつから女性へ関心を持ったのかをお聞きすると「3歳です」と即答されて(笑)。でもこの答えを聞いて、わたしの中で、全ての点が繋がりました。3歳から女性像を俯瞰してみることができておられたのかと。
 

 

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■六人の女、それぞれの美に衝撃(桃果)

 思いやりのある世界観を描く(アオイヤマダ)

――――ありがとうございました。最後に、唄う六人の女というのはどんな存在と言えるでしょうか。
桃果:現場でご一緒する機会はあまりなかったのですが、完成した作品を観ると、みなさんそれぞれのエロスや女性らしさがあり、それぞれの美を描いていて、わたしは衝撃を受けました。
アオイヤマダ:わたしは思いやりを持つことだと思うんです。自然対人間という二者択一にするのではなく、思いやりがあれば、自然や人間とコミュニケーションを取り続けられるのではないでしょうか。石橋監督ご自身が思いやりがある方なので、そういう世界観を描けるのだと思います。
(江口由美)
 

 
<作品情報>
『唄う六人の女』(2023年 日本 113分)
監督・脚本:石橋義正
出演:竹野内豊、山田孝之、水川あさみ、アオイヤマダ、服部樹咲、萩原みのり、桃果、武田玲奈 
2023年10月27日(金)より大阪ステーションシティシネマ、京都シネマ、OSシネマズ神戸ハーバーランド他全国ロードショー
配給:ナカチカピクチャーズ/パルコ
© 2023「唄う六⼈の⼥」製作委員会
 
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