「京都」と一致するもの

『東京喰種トーキョーグール』
カネキマスク(ぺーパークラフト)プレゼント!

  tokyoguuru-pre.jpg

 

■提供: 松竹

■プレゼント人数: 3名様

■締切日:2017年8月6(日)

公式サイト: http://tokyoghoul.jp/

 

 


2017年7月29日(土)~大阪ステーションシティシネマ、なんばパークスシネマ、MOVIX京都、神戸国際松竹 ほか全国ロードショー


tokyoguuru-logo.jpg

世界累計発行部数3000万部突破、世界的大ヒットコミックスがアニメ、舞台、ゲーム化を経て、衝撃の実写映画化!食物連鎖の頂点とされるヒトを狩るものたち、人はそれを喰種(グール)と呼ぶ。両者の衝突が激化する中、いま一人の青年が立ち上がる―。この夏必見の壮絶なバトルアクションエンタテインメントが誕生しました。
そしてこの度、カネキが着用するマスク型のペーパークラフトをご用意いたしました!これであなたも喰種(グール)になれる!?

 

tokyoguuru-500-1.jpg【STORY】
人の姿をしながらも人を喰らう怪人〈喰種(グール)〉。水とコーヒー以外で摂取できるのは「人体」のみという正体不明の怪物たちが、人間と同じように暮らしている街、東京。ごく普通のさえない大学生の金木研(カネキ/窪田正孝)は、ある日、事故に遭い重傷を負ってしまう。病院に運び込まれたカネキは、事故の時一緒にいた喰種の女性・リゼ(蒼井優)の臓器を移植されたことで、半喰種となってしまう。自分が喰種化したことで苦悩するカネキは、以前から通い詰めていた喫茶店あんていくで働き始め、そこでアルバイトをしている女子高生・霧嶋董香(トーカ/清水富美加)と出会う。あんていくは喰種が集まる店で、トーカもまた喰種なのだった。トーカはぶっきらぼうな態度を取りつつもカネキを助ける存在となっていく。喰種たちのことを深く知ることで、カネキは大切な仲間や友人とどう向き合うか葛藤する。そんな中、喰種を駆逐しようとする人間側の捜査官・CCGとの熾烈な戦いに巻き込まれていくのだった…。

 


映画『東京喰種 トーキョーグール』

tokyoguuru-240-2.jpg出演:窪田正孝 清水富美加 鈴木伸之 蒼井優 大泉洋
原作:石田スイ 「東京喰種 トーキョーグール」 集英社「週刊ヤングジャンプ」連載
監督:萩原健太郎  脚本:楠野一郎  配給:松竹
©2017「東京喰種」製作委員会 ©石田スイ/集英社
公式サイト⇒ http://tokyoghoul.jp/


2017年7月29日(土)~大阪ステーションシティシネマ、なんばパークスシネマ、MOVIX京都、神戸国際松竹、他全国ロードショー

kanojonojinsei-1.jpg『彼女の人生は間違いじゃない』廣木隆一監督インタビュー


kanojonojinsei-550.jpg■2017年 日本 1時間59分(R-15)
■原作:廣木隆一 「彼女の人生は間違いじゃない」(河出書房新社)
■監督:廣木隆一(『ヴァイブレータ』『さよなら歌舞伎町』)  脚本:加藤正人  撮影:鍋島淳裕
■出演:瀧内公美、光石 研、高良健吾、柄本時生、篠原篤、蓮佛美沙子
■公開情報:2017年7月15日(土)~ヒューマントラストシネマ渋谷、新宿武蔵野館、テアトル梅田、京都シネマ、シネ・リーブル神戸 他全国順次ロードショー
公式サイト: http://gaga.ne.jp/kanojo/
■コピーライト:(C) 2017『彼女の人生は間違いじゃない』製作委員会

■配給:ギャガ



「福島だけでなく今の日本が抱えている矛盾を描きたい」
~未来が見えず、満たされない想いに光を~

 

東日本大震災後、被災地を題材にした映画やTVドラマやドキュメンタリーが沢山作られてきた。そんな中、家族や仕事を失った喪失感や未来の見通しもつかない虚無感に苛まれながら、それでも日々の暮らしを慎ましく生きる人々の現状を、これほど濃密な映像で表現した作品はあっただろうか。物語の背後には原発事故後の福島の現状が数多く映しこまれている。それをも豊かな情景として、徐々に前進しようとする人々の精いっぱいの生き様を浮き彫りにしている。その静かだが力強い捉え方に惹き付けられる。


kanojonojinsei-2.jpg年に2~4本の新作が公開されている日本で一番忙しい映画監督、廣木隆一監督、63歳。今年だけでも『PとJK』『彼女の人生は間違いじゃない』『ナミヤ雑貨店の奇蹟』が公開、来年早々には『伊藤くん AtoE』の公開が控える。あらゆるジャンルの作品を手掛け、日本映画界になくてはならない存在である。そんな廣木監督が、東日本大震災後の原発事故により、復興の目途さえつかない福島に生きる人々を主人公にした小説を書き上げた。福島県出身の廣木監督にとって、「整理しきれない気持ち」を小説に書いて映画化したという。他の被災地より復興が長期に渡り、「再生」という一言では済まされないより一層の忍耐を強いられる現状。福島だけではなく誰にでも起こりうる普遍的試練がそこにはある。まさに廣木隆一監督の渾身作である。


仮設住宅で父親と二人暮らしのみゆき(瀧内公美)は、市役所に勤務しながら毎週日曜日になると高速バスで東京へ行きデリヘルの仕事をしている。母親は津波にさらわれ遺体も発見されず、父親(光石研)は酒が入ると母親とのなれ初めを語り、「助けてあげられなかった」と嘆く。放射能汚染で農業ができなくなり、その補償金でパチンコの日々。同じく市役所務めの新田(柄本時生)は、変なカルト教にはまり家庭放棄した祖母と母に代わり、小学生の弟の面倒をみている。スナックで知り合った女子大生に無神経な質問をされて、ひと言では語れない想いが沸き上がり言葉を詰まらせる。一方、大切な思い出の地を写真に収めたいというカメラマン・紗緒里(蓮佛美沙子)との出会いは、新田だけなく多くの人々に思わぬ光をもたらすことになる。


kanojonojinsei-500-1.jpg早朝のバスに乗って東京へ向かうみゆきの目に、福島原発からの巨大な送電線やスカイツリーが見えてくる。暗く停滞したままの福島から、明るく何事もないような東京の風景。みゆきを演じた瀧内公美の、風景に溶け込む福島での素朴な顔と、デリヘルの仕事をしている東京での顔の違いに、身の置き所を求めようとする心の隙間に悲哀を滲ませる。デリヘル嬢の送迎担当の三浦を演じた高良健吾の爽やかな眼差しが救いとなる。


それぞれの俳優は役作りのために取材したという。役になりきらなければ臨めないという緊張感のある現場を仕切った廣木監督。常連の役者が殆どだが、主演の瀧内公美は初参加とあって、その緊張たるや如何ばかりか。どんどん痩せていく彼女をスタッフが心配したほどだったとか。だが、その期待以上に実物大の“みゆき”を生きていたように思う。


廣木隆一監督に作品に込めた想いや現場での様子などについてお話を伺った。詳細は下記の通りです。



――年に2,3本は撮っておられるようなお忙しさですが?
新しい企画が出てきた時に僕が撮ったらどうなるか、と言ってくれるプロデューサーたちがいるので、この歳になってもオファー頂けるのはとてもありがたいことだと思っています。


――福島を扱った作品が多い中、物語の背後に映しこまれた情景の豊かさに驚きました。その濃密な映像について?
最初自分で小説を書いている時に、漠然とですが福島の情況について聞いていました。それらをうまく映像化して、2016年に撮った福島の風景を記録できればいいなと思いました。


――誰もいない桜並木や海上から捉えた福島第一原発のシーンだったり、さらには登場人物の背景に汚染土壌置場があったりと、かなり危険な状況の中で生きている現状がリアルに迫ってきましたが?
原発は絶対撮りたいと思っていたところ、禁漁区域になっている海域に漁船を出して下さる地元の人々の協力もあって、ある程度の近さで撮影することができました。それより危険な場所は、入場時間制限のある帰還禁止区域の町でした。桜並木もその町の一部で、住民の皆さんは未だに仮設住宅などで避難生活をされています。

美術監督の丸尾さんがいわき出身でその人脈にかなり助けられ撮影できてます。


kanojonojinsei-500-4.jpg――未来を見出せずにいる人々の情況が痛い程滲み出ていましたが、みゆきがデリヘルの仕事を選んだ理由が今一つよく理解できませんでした?
三浦との関係は恋愛でも何でもなく、ただ“いい人”という存在です。原作では説明しているのですが、映画では特に説明はしていません。ただ、彼女の“決意”が見えればいいかなと思いました。


――「内面に悩みを抱える女優を選びたかった」といって、瀧内公美さんを選んだ理由は?
瀧内さんはいろんな映画に出ていて、自分の年齢や役の大きさなど役者としての悩みを抱えていました。単純に芝居が巧いとかの理由ではなく、そういう内面性を持った女優がいいなと思ったのです。みゆきの気持ちを理解して役になりきってくれればいいなと。


――みゆきの日常を描くのにお料理するシーンが多かったようですが?
瀧内さん自身はそんなまめに料理するようなタイプではないかも知れませんが(笑)。でも、みゆきが食事をきちんと作るような娘だと思ってもらえるよう理解して演技してくれました。


kanojonojinsei-500-2.jpg――父親が補償金をパチンコにつぎ込んだり、霊感商法に騙されそうになったり、ネガティブな題材が多いように感じましたが?
すべて小説を書いている時に聞いた事柄です。


――それまでパチンコばかりしていた父親がトラクターで畑を耕しているシーンに込めた想いは?
補償金をパチンコにつぎ込んで一見愚かに見える父親ですが、彼にも前向きに生きようと思うまでの時間が必要だったということを理解して頂ければいいなと思います。


kanojonojinsei-500-3.jpg――新田がスナックで出会う女子大生とカメラマンの沙緒里との対比が面白いと思いました。他所から来た者の無神経さが示されていたようですが?
震災後のドキュメンタリーやニュースなどで「今のお気持ちは?」と被災者に普通に訊いて聞いているのを見て、「それはどうかな?」と疑問に感じていました。シナリオライターの加藤正人と相談しながら被災者と温度差の違いを描いていきました。


――東日本大震災の被災者の皆さんは地域によって復興の仕方が違いますね。特に、福島の場合、放射能汚染という問題を抱え、即復興に踏み切れない特別な事情があります。現実問題として本作を通じて特に見てほしい点は?
全部です。福島で静かに生活している人々の生活の中に、今の日本の様々な矛盾や問題を含む現状が表れていると思うのです。どこにいても起こりうる問題として読み取ってほしいです。


kanojonojinsei-3.jpg――福島県郡山出身の廣木監督はずっと福島の映画を撮りたいと思っておられたのですか?
そんなことはありません。津波や原発事故が起きなければ福島の映画を撮りたいとは思わなかったでしょう。自分の中で整理しきれない気持ちを小説に書き、映画化するに当たっては客観的な見方を取り入れるために脚本は他の人にお願いして、そして自分で監督したのです。


――福島を描き切った感はありますか?
僕自身、そんなに映画で描き切ったとは思っていません。映画監督をやる上で作品のひとつとして、メッセージ性の強いものを撮ってみたいなと思いました。映画を撮る限り、「生きていくこととは?」をテーマにした作品を創り続けたいと思っています。


――“廣木監督らしい”と言われることについて?
自分らしさを目指している訳ではなく、むしろそれを無くしたいと思っています。サンダンスに留学している時に「廣木が好きなものを撮っているのだから、廣木らしいと言われるのは当たり前でしょう」と言われたことがあり、普通に意識せずに撮っています。映画は、「自分らしさ」より「何を伝えたいか」が重要だと思いますので。


――キャストについて?
高良健吾とは久々だったのですが、役者としての存在感が出てきて凄いなと思いました。撮影中は緊張感を持ってやってもらわないといけないので、特に今回初めてだった瀧内公美は厳しく感じたのではないでしょうか。柄本時生は、彼が14歳の時から公私共に交流がありましたが、近年の成長は著しいですね。光石研さんとは、彼がデビューの頃から知っていますが、今までの人生を役に反映できるいい役者さんだなと思っています。


――役柄になりきらせるための工夫は?
現場で自分の考えが変化するかもしれないので、自分の考えを理解してくれる役者さんがいいと思いました。東京から新幹線に乗ってやって来てタイトな時間で演技するのではなく、なるべく現場で過ごして、役柄の意味を汲み取ってほしい。ですが、僕は打ち合わせや相談などはしません。現場で悩んでいても仕方ないので、取りあえずやってもらいます。台本読んでイメージ膨らませて演技するのがプロの役者さんなんですよ。


(河田 真喜子)

 

yoakeno-ru-550.jpg

 

~第二次世界大戦後のポーランド、悲劇を乗り越え、新しい命のため一つになる女性たちの絆~

 
『ココ・ヴァン・シャネル』『ボヴァリー夫人とパン屋』のアンヌ・フォンテーヌ監督が、第二次世界大戦後のポーランドで起こった修道院での悲劇と、修道女たちの窮地を救ったフランス人女医の実話を映画化した。若手女優ルー・ドゥ・ラージュを主演に迎えた『夜明けの祈り』は、ソ連軍の蛮行により集団妊娠してしまった修道女たちを救うため、宗教や言葉の壁を越えて手をとりあう女性たちの強さと、生まれてくる命の輝きを映し出す。雪深い修道院の神秘的な映像に修道女たちが歌う讃美歌が重なり、厳粛な気持ちになる一方、蛮行の記憶や妊娠に対する恐怖におびえる修道女たちの苦悩の深さが描かれる。彼女たちの光となる女医マチルドの奮闘ぶりは、命に国境はないことを教えてくれるのだ。
 

yoakenoinori-550.jpg

 
『夜明けの祈り』はフランス映画祭2017で、見事エールフランス観客賞を受賞。本作で、行動力のあるマチルドを熱演したルー・ドゥ・ラージュさんが映画祭ゲストとして来日し、インタビューに応えてくれた。

 


■ポーランドでは、悲しい歴史を引きずっている雰囲気を感じた。

DSCN5665.JPG

―――第二次世界大戦直後のポーランドを舞台に、実在の人物をモデルにした物語ですが、主人公マチルドを演じるにあたり、どんな準備をして臨んだのですか?
マチルド役に決まってから撮影に入るまでわずかな時間しかなかったので、マチルドは女医ですから、まずは医者という職業を身に付けなければなりませんでした。外科医や助産婦の方に帝王切開の仕方や、お腹の触診の仕方などを教えてもらいました。その後、ポーランドのロケ地に入りましたが、既にセットとなる修道院は出来上がっていましたし、ポーランド人女優のみなさんが修道女役として、そこにいてくださったのです。自然とその中に入ることができ、大変幸運でした。ただ、ポーランドに着いた時はなんとなく悲しい感じを覚えました。ポーランドは第二次世界大戦中に様々な国の侵略を受けましたし、その後も大変な時代を過ごしていますから、悲しい歴史を引きずっている雰囲気が感じられました。
 
―――修道院ではフランス語の分かる人がほとんどいない設定でしたが、実際のキャストはどうでしたか?
私はフランス語しか話しませんし、共演したポーランド人女優の皆さんはほとんどフランス語を話さない方ばかりだったので、そういう意味では私はマチルドと同じ立場になった気がします。マチルドは修道女のことを知りませんでしたが、修道院に入り、修道女たちの世界を知ることになります。マチルドの方がよほど大変で複雑だったとは思いますが、私もフランス語を話さない人たちの中に一人で入って行った訳で、少しはマチルドの感覚が捉えられたと思います。

 

■女性に対する暴力は戦時中も今も起こっている。その状況下で女性たちがどのように再生していくかが大事。

DSCN5666.JPG

―――本作は今まで知られなかった戦時下の女性にとって衝撃的な事実も明らかにしていますが、ルー・ドゥ・ラージュさんがそのことを知った時どんな感情を抱きましたか?
シナリオが非常に良く出来ていて、心動かされました。真実がグサリと刺さる感じで、女性に対する暴力は衝撃的ですが、それは戦時中も今も起こっています。そのような状況下で、女性たちがどのように再生していくかが大事だと思います。マチルドは医者としての科学的な信念を持っていましたし、修道女たちは信仰という信念を持っていました。その二者が連帯し、再生しようとすることが大事ではないでしょうか。今はあまりにも運命論者が多く、そういう傾向を描いた映画も多いです。でも、本作は暴力に暴力をぶつけていくのではないということを描いていますし、そこが良かったと思います。
 
―――マチルド役を演じるプレッシャーはありませんでしたか?
マチルドのモデルとなる実在の医者、マドレーヌ・ボーリアックに関しての資料はほとんどなかったのですが、彼女に書かれた手紙が残っていました。そこには「あなたは社会の影のヒロインだから、あなたのことがいつか日の当たる場所に出て、皆に知られるようになればいいのに」と書かれていたのですが、今回それが叶い、しかも私がマチルド役となって世界にこのような人がいたことを知らせることができました。大変光栄で、誇りに思っています。
 
 

■マチルド役の演出は、とにかくクールに。

「目の前の状況、戦争や修道院の悲惨な状況に飲み込まれてはいけない」

―――寒い冬の撮影や、特にセリフが少ない中マチルドの表情で語るというシーンが多かったのですが、撮影で苦労した点、工夫した点は?

 

アンヌ・フォンテーヌ監督からずっと言われてきたのは、「とにかくクールでいなさい。目の前の状況、戦争や修道院の悲惨な状況に飲み込まれるようなことがあってはならない」。医者としてのスタンスを守るために、修道女たちと距離を取るようにとも言われていましたし、硬い表情をしていました。マチルドは最初、科学的に全て解決しようとしますが、途中で彼女たちが負った心の傷は、薬を塗って治る類のものではないことに気付きます。医者として妊婦のお腹を触るのは当然のことなのに、(修道女たちが)触らせてくれないのはどういうことなのか分からなかった。でも修道女たちにとって体に触らせないことには意味がある。そのことにマチルドが気付くプロセスを見せるのは難しかったです。距離を置いた関係でありながら、少しずつ理解していくところを観客に見せる訳ですから。
 
 
yoakenoinori-500-1.jpg

 

■マチルドと修道女たちは違う世界にいるように見えても、「命を大事にする」という同じ目標に向かっていた。

―――観客もマチルドと同様に、なぜ妊婦の修道女たちが診察の必要な状況にも関わらず、体に触ることを拒絶するのか分かりません。マチルドと共に修道女たちの信念に気付くようになっていますね。
マチルドは無宗教だったので、修道女が持つ信仰への知識はありませんでした。一方でマチルドは行動の人ですから、妊娠したのなら子どもをきちんと出産させることだけを考えるような、医者としての立場を取っていました。ただ修道女はそうではなかったのです。私は修道女の方から実際にお話しを伺ったのですが、修道女になるということは長い間のためらいがありますし、修道院に入る時には「男性とも関わらず、母親にもならない」という決断をする訳です。長い迷いの末の決断はとても大きなもので、だからこそ全てを拒絶するという行動に出たのでしょう。修道女をレイプすることは、女性を犯すだけでなく、男性を拒否する誓願を立てた人を犯すという、二重のレイプです。
 
最初は二つの世界が全く違って見えました。一つは非常に実用的で医者としての信念を持って行動するマチルドがいる世界。もう一つの修道院は全く世間的なことを捨て去り、神の事のみを信じて生きる世界です。でも結局「命を大事にする」という同じ目標があり、その目標に向かって、やり方は違ったけれど同じ言葉をしゃべっていたのです。
 
―――言葉も違うポーランドでの撮影はかなり大変だったと思いますが、どのようにしてその撮影を乗り越えましたか?
私にとって仕事は、人生の中でカッコ付きの期間だと思っています。カッコ付きの期間で様々な人と出会い、様々な体験をするのですが、その次にはぐっと成長したと感じられます。今回のテーマは非常に深いものでしたから、それを通り抜けることで自分の中に成長した部分があると思います。シスター・マリア役のアガタ・ブゼクさんはフランス語を少し話せるので、よく撮影中に話をしたのですが、最後にはほとんど完璧に話せるようになっていました。こういう関係を構築して、全く言葉の通じない人と映画を撮ることができたのは、本当に素晴らしい経験でした。
 

yoakenoinori-500-2.jpg

 

■根っこの部分で命の大事さや愛という信念があれば、考え方が違っても相互理解できる。

―――日本の女性に、この作品のどんなところを感じてほしいですか?
この映画は宗教ではなく、信念を描いた映画だと思っています。マチルドも確固たる信念を持って行動していますが、無宗教のマチルドと修道女たちが出会い、相互理解ができたことがとても大事なのです。今の時代は考え方の違う人とは相入れない風潮にありますが、意見が違う人でも分かり合うことができる。根っこの部分で命の大事さや愛という信念があれば、それは可能であることをみなさんに分かっていただけたらと思います。
 
―――最後にルー・ドゥ・ラージュさんはお母様が画家だそうですが、幼い頃に親しんだアートや、母親から学んだことは?
母はずっとだまって絵を描いていました。そんな母から学んだことは、沈黙の意味です。もう一つは、絵を見る時は、頭で見るのではなく心で見るものだと教えてくれました。
(江口由美)
 

<作品情報>
『夜明けの祈り』“THE INNOCENTS”
監督:アンヌ・フォンテーヌ
出演:ルー・ドゥ・ラージュ、アガタ・ブゼク、アガタ・クレシャ、ヴァンサン・マケーニュ他
2017年8月5日(土)~ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館、シネ・リーブル梅田、シネ・リーブル神戸、8月26日(土)~京都シネマ他全国順次公開
公式サイト⇒http://yoake-inori.com/ 
(C) 2015 MANDARIN CINEMA AEROPLAN FILM MARS FILMS FRANCE 2 CINEMA SCOPE PICTURES
 

kekkon-bu-550-3.jpg

“だまされたいオトコNO.1!”ディーン・フジオカ主演映画『結婚』舞台挨拶

ゲスト:ディーン・フジオカ(36) 、西谷真一監督(57)
(2017年6月13日(火)なんばパークスシネマにて)


kekkon-pos-240.jpg
『結婚』
■2017年 日本 1時間58分
■原作:井上荒野「結婚」(角川文庫刊)
■監督:西谷真一 ■脚本:尾崎将也
■主題歌:DEAN FUJIOKA「Permanent Vacation」(A-Sketch)
■出演:ディーン・フジオカ、柊子、中村映里子、松本若菜、安藤玉恵、古舘寛治、萬田久子、貫地谷しほり
公式サイト: http://kekkon-movie.jp
■©2017「結婚」製作委員会

■2017年6月24日(土)~テアトル梅田、なんばパークスシネマ、MOVIX京都、109シネマズHAT神戸 他全国ロードショー
 



きらめく満面の笑顔で登場!
ディーン・フジオカの完璧な美しさこそ、罪だ。

 kekkon-Dean-240-2.jpg

すべてをトロけさせるよなディーン・フジオカの笑顔に、大阪の街はひときわ明るくきらめいた。NHK朝の連続小説「あさが来た」(2014年~2015年)で、ヒロインに大きな影響力をもたらす五代友厚役を演じ一躍“時の人”となったディーン・フジオカ。それまで台湾や香港などアジアを中心に活躍してきた逆輸入タイプのスターだ。今後、語学力や音楽など多方面の才能を活かして日本での活躍が期待されている。そんな完璧なビジュアルと才能を持つディーン・フジオカが結婚詐欺師役に挑戦!・・・「そりゃダマされるでしょう?いや、ダマされたい!」と思えるようなストレートなキャスティングだが、古海健児(うるみけんじ)という結婚詐欺師の悲哀をスタイリッシュな役作りで浮き彫りにしていく。


現代劇でありながら、どこか昭和の雰囲気のするメランコリックな感覚で表現したのは、「あさが来た」の演出を手掛けた西谷真一監督。ディーン・フジオカとは3回目のコラボ。結婚詐欺師とはいえ、女たちを最高に幸せな気分にさせて一律100万円をせしめるという手法。騙された女たちは、お金の問題より、古海健児を愛するあまりその真意知りたさに彼を追い駆ける。男も魅了されるというディーン・フジオカの色気が、女優陣がかすむほどの美しさでスクリーンを駆け抜ける。


kekkon-550.jpg6月24日(土)の公開を前に開催されたなんばパークスシネマの先行上映会では、主演のディーン・フジオカと西谷真一監督が舞台挨拶のため登壇。超満員の会場は割れんばかりの歓声に包まれ、すっかり「五代様」が板についたディーン・フジオカに、「おかえり~!」の声援が上がった。詳細は以下の通りです。(敬称略)


 

kekkon-bu-500-1.jpg

――ハードな撮影だったのでは?
監督:撮影期間は予備日なしの2週間でした。ディーンさんからもアイデアを頂きながら撮影を進めました。
ディーン:監督とは3回目のコラボとなりましたが、ディスカッションしながらアイデアを出していきました。

kekkon-Dean-240-4.jpg
――最初に結婚詐欺師という役を聞いてどう思いましたか?

ディーン:犯罪者か…? でもやりましょう。どんな作品でも監督が選んで下さるのならやりたい。

監督:原作の主人公・古海健児は40代半ばの背の低い男なんですが、それをディーンさんがされたら、古海健児というキャラクターが引き立つのではと思いました。


――撮影終わってどんな気持ちでしたか?
ディーン:不思議な感じでした。2週間「古海健児」として生きて、とても密度の濃い日々でした。今回主題歌も担当させて頂いたので、すべてがひとつの作品に仕上がったときには、感無量でした。


――ディーンさんのアイデアも色々取り入れられたとか?
ディーン:シャインマスカットは僕の好物なんで、提案しました。シャインマスカットの美し過ぎる色や形、まるで人工物みたいに甘くて美味しい、食べ終わった後の茎のシュールさもいいなと思ったんです。


kekkon-500-4.jpg――ピアノを弾くシーンではとてもエレガントに弾いておられましたね?
ディーン:ただピアノを演奏するだけなら練習すればある程度はできると思います。今回は、ピアノを弾きながらセリフを言い、さらに相手の松本さんのセリフに呼応するという、とても難易度の高いシーンでした。普通は予め音を録っておいて、それを聴きながら演技をするケースが多いのですが、まるでミュージカルの舞台をやっているようでした。


kekkon-Di-240-1.jpg――ディーンさんがNHK朝の連ドラ「あさが来た」(2014~2015)に出演されていた頃に比べて凄いなと思われた点は?
監督:元々凄い人だなと思ってましたが、さらに大きくなっていかれる方だと感じています。


――監督から見たディーンさんの魅力は?
監督:僕が言うのもなんですが、「色気」ですね。男でもコロッといくような色気は、他の俳優さんには無いものです。

――どのシーンでそう感じましたか?
監督:全部です。観る方によって感じ方も違うと思うので、全部のシーンが凄いです。


――撮影中“びっくりぽん!”のような出来事はありましたか?
kekkon-Dean-240-5.jpgディーン:アイデアを出したりディスカッションする中で予定外のシーンを踏み込んで撮影したり、その場でいろんなことを試して、すごくライブ感のある撮影現場でした。

――今回の役は多くを語らず目線や動きで表現していますが?
ディーン:そうですね、ジェスチャー表現は多かったですね。ひとつひとつの動作に意味を持たせることに監督と相談しながら演じました。例えば、手で髪の毛を触るにしても繰り返していると法則性ができ、そこに情緒が生まれます。ポケットに手を入れる立ち方にしても、グラスの持ち方やコスチューム・小道具など、シンボルとなるものにこだわりました。


――この映画を通じて、結婚っていいものだなと感じることは?
ディーン:普段一緒に住んでいないので、家族が居る所が僕の帰る場所だと実感できたことでしょうか。

kekkon-Dean-240-3.jpg


――主題歌について?
ディーン:最初から主題歌を担当させて頂くことは聞いておりました。リフを刻むことが古海健児のうごめいている心情を表現できるように、歌詞も彼の日常をもとにテーマを込め、言葉を突き抜けていく音みたいで手応えを感じました。NHK連ドラ「あさが来た」から始めようと思い、言葉遊びになるように「あさが来てからスタート」というスタンスで作りました。当時の連ドラの関係者の方にも聴いて頂きたいとメッセージを込めました。監督さんからも映画を〆るような歌になるようにとのオファーを受けておりましたので、作品の内容をちゃんと受け止めてもらえるように、物語を引っ張っていけるような曲を作りました。


――ディーンさんの今後に期待することは?
監督:できれば続編を作りたい。あるいは、「やすらぎの郷」ではありませんが、高齢の女性とのラブストーリーも作りたい。

kekkon-Dean-240-1.jpg
――大阪はどこがお気に入りですか?

ディーン:北浜の証券取引所の前を車で通るだけでも、「五代友厚」と心の中で対話をしてしまいます。大阪に着く度に思うのですが、風水を考えて作った街というのはエネルギーを感じて元気になれます。歩いているだけでも気持ちいいです。


――お好きな関西弁は?
ディーン:お気に入り・・・?(「そやな~」「すきやで~」「ほんまやで」等々と会場から声がかかる)

監督:大阪は独特です。大阪は東京と違って情がアツイ。住めるもんなら住みたい!


(最後のご挨拶)
監督:1回目はストレートに観て頂いて、2回目は古海健児の気持ちで、3回目は女優陣の気持ちで観て頂きたいです。できれば3回観て頂きたいと思っております。どうぞよろしくお願い致します。

ディーン:3回と言わず、何回でも観て頂ければ嬉しいです。古海健児がこの後どうなっていくのか?主題歌が流れる最後までじっくりと観て頂きたいです。本日は本当にありがとうございました。



kekkon-Dean-240-6.jpgこれほど笑顔を絶やさないゲストは初めて。会場のお客様の声援にも笑顔で応え、司会者の質問にも言葉を選びながら慎重に答え、西谷監督への敬意を欠かさず、取材する側もこんなに気持ちのいい取材は珍しい。周囲の人々すべてをハッピーにするディーン・フジオカに、改めて魅了されてしまった。

(河田 真喜子)

『こどもつかい』オリジナル 「ウェストポーチ」プレゼント!

   kodomotukai-pre.jpg

 

■提供: 松竹

■プレゼント人数: 3名様

■締切日:2017年6月30(金)

公式サイト: http://kodomo-tsukai.jp/

 

 


2017年6月17日(土)~大阪ステーションシティシネマ、なんばパークスシネマ、MOVIX京都、神戸国際松竹 ほか全国ロードショー


 
kodomotukai-logo.jpg

 『呪怨』シリーズをはじめ数々のヒット作を生み出した清水崇監督が、完全オリジナルストーリーで贈る最新作。“こどもつかい”役には、本作が映画初主演となる滝沢秀明。“こどもの霊”を操り、こどもに怨まれたオトナの命を奪うミステリアスなキャラクターを怪演。特殊メイクにも挑戦し新境地を開く!

共演には、連続不審死事件の謎に迫る記者・駿也役に有岡大貴(Hey! Say! JUMP)、駿也の恋人で、ふとしたことからこどもに怨まれてしまう尚美役に門脇麦とフレッシュなキャストが揃い、体当たりの演技で“こどもつかい“と“こどもの霊“に立ち向かい、恐怖の限界へ挑戦!


【STORY】
kodomotukai-500-1.jpg新人記者の駿也は、郊外で起こった連続不審死事件を追ううちに奇妙な偶然に辿りつく。小さなこどもが失踪した3日後に、その周りの大人が死んでいるのだ。死んだ大人たちはこどもに怨まれていたという。街の人々の間に広がる、“こどもの呪い”の噂。これは、事件なのか?呪いなのか?そして、駿也の恋人・尚美がふとしたことでこどもに怨まれ、“こどもの呪い”が現実に迫りくる。尚美を守るため呪いの核心に近づこうとする駿也だが、2人の前に現れたのは、謎の男“こどもつかい”。男の笛の音と共に、物影から、廊下の奥から、そして背後から、次々に“こどもの霊”が現れ、襲い掛かる・・・!“こどもつかい”とは何者なのか?果たして2人は、この“呪い” と“怨み”から逃れることができるのか―。 



・出演:滝沢秀明 有岡大貴 門脇麦 尾上寛之 河井青葉 田辺桃子 中野遥斗 玄理 山中崇 吉澤健 西田尚美
・監督:清水崇   ・脚本:ブラジリィー・アン・山田 清水崇  ・音楽:羽深由理  
・製作:「こどもつかい」製作委員会  
・企画・配給:松竹  製作プロダクション:松竹撮影所  ©2017「こどもつかい」製作委員会 

 2017年6月17日(土)~大阪ステーションシティシネマ、なんばパークスシネマ、MOVIX京都、神戸国際松竹、他全国ロードショー

hikari-bu-550.jpg「すべての人々へのラブレター」『光』舞台挨拶

登壇者:永瀬正敏(50歳)、河瀬直美監督(47歳)
(2017年6月3日(土)梅田ブルク7にて)


『光』
■(2017年 日本 1時間42分)

■監督・脚本:河瀨直美
■出演:永瀬正敏、水崎綾女、神野三鈴、小市慢太郎、早織、大塚千弘、大西信満、堀内雅美、藤竜也他
■作品紹介⇒ こちら
■公式サイト⇒ http://hikari-movie.com/
(C) 2017 “RADIANCE” FILM PARTNERS / KINOSHITA、COMME DES CINEMAS、KUMIE

■2017年5月27日(土)~新宿バルト9、梅田ブルク7、なんばパークスシネマ、神戸国際松竹、MOVIX京都他全国ロードショー


hikari-550.jpg 
第70回カンヌ国際映画祭 エキュメニカル審査員賞受賞

 

5月29日(日本時間)に閉幕した第70回カンヌ国際映画祭から帰国したばかりの河瀨直美監督と主演の永瀬正敏さん。カンヌの常連でもある河瀨監督は、人間の内面を豊かに描いた作品に与えられる《エキュメニカル審査員賞》を日本人女性監督として初受賞。視力を失ったカメラマンとボランティア女性との心の触れ合いを通して、不安や悲しみ、絶望の先に生きる光を見出していく感動作『光』は、日本でも5月27日に公開されたばかり。河瀨監督と永瀬正敏さんのお二人は初日の舞台挨拶には間に合わなかったものの、作品に込められた思いやカンヌでの興奮と感動の日々について、各地の劇場をまわって伝えようとしています。

この日開催された大阪の梅田ブルク7では、カンヌ国際映画祭エキュメニカル賞受賞のお祝いに観客から花束が贈呈されました。詳細は以下の通りです。(敬称略)



hikari-bu-di-240-1.jpg(最初のご挨拶)
河瀨監督(以降、「監督」と表記):観て頂いたばかりで雅哉と美佐子の想いを噛みしめて頂いていると思いますが、私達もカンヌから帰って来たばかりです。ただいま!(会場から拍手)

永瀬正敏(以降、「永瀬」と表記):こんにちは、永瀬です。本当は私達の方が皆様に花束を差し上げたいくらいです。本日は誠にありがとうございます。

――カンヌ国際映画祭での上映後の反応は如何でしたか?
監督:最高でした!エンドクレジットが流れると共に2300人が心からの拍手をしてくれました。永瀬さんも私も言葉が発せられず涙が止まりませんでした。カンヌ滞在中、どこへ行っても声を掛けられ、一人一人の心の中に沁み込むものがあったことを実感しました。お陰で35か国での上映が決まりました。

永瀬:街中でも国籍が違う方々が立ち止まって、手をグッと握り締めて熱く語って下さいました。今回のカンヌは今までとは違いました。「伝わっている!」と実感できました。

hikari-bu-na-240-1.jpg――永瀬さんは上映後立ち上がれなかったとか?
永瀬:すみません。もっとカッコ良く立ち上がりたかったのですが…。
監督:そんな永瀬さんを拍手で励ましてくれて、
こんなにも映画が人々を熱くさせるとは・・・映画のチカラを再認識しました。

――エキュメニカル賞を受賞されましたが、最初にこの報せを聞いたのは永瀬さんだったとか?
永瀬:はい。監督とは連絡がつかないので、私に電話を回してきたんです。もうびっくりしましたよ~。映画祭では最初に発表される賞で、4時間後には授賞式に出なければならなくて、慌てました。

――監督はどこへ行っておられたんですか?
監督:グラースという香水で有名な所へ観光に行ってました。審査員全員一致で決まったということで、何とか間に合うように帰りました。この賞は、キリスト教文化の根強いヨーロッパの作品が受賞することが多いのですが、宗教の壁を乗り越えて、人間として深いところに届く作品として評価して頂いたようです。

hikari-bu-na-240-2.jpg――永瀬さんもカメラマンとしてご活躍ですが、主人公の雅哉とリンクすることが多かったのでは?
永瀬:祖父もカメラマンをしていたのですが、戦後の混乱の中、途中で辞めざるを得なくなり、その胸中を思いやることはありました。

監督:雅哉が使っていたカメラにはこだわりました。上からのぞくタイプで、被写体が緊張せずにすむ、人と人が向き合う時の柔らかな表情を捉えられるポートレートに適しているとカメラです。

――様々な表情を捉えられていますが、撮影時意識したことは?
永瀬:意識せずに雅哉として完全になりきらないと監督に叱られますので(笑)。

監督:雅哉の内面に触れていたいと美佐子に思わせる必要があったので、表情の細かな変化も捉えていきました。

――現在、小豆島で永瀬さんの写真展が開催されているとか?
監督:永瀬さんの未発表の作品を雅哉の部屋に飾っていたので、それが完全に復元されているようです。8月まで開催されています。

――心と心が出会う瞬間の人間関係について?
監督:この映画のキッカケは、前作『あん』に音声ガイドを付けることから始まりました。セリフの少ない私の作品に音声ガイドを付ける上で特に大事なことは繊細さです。それを見事に表現されていて、映画への愛を感じました。今度はそんな人を主人公に据えて、人と人が繋がり合えることをテーマにしようと思いました。さらに、カメラマンが視力を奪われる過程で、見ることへの執着心を放棄した時に、新しい光を見出せる。混沌とした時代だからこそ、生きるための光輝くものを見せたいと思ったのです。

(最後のご挨拶)
永瀬:カンヌであるスペインの方に、「この映画は特定の人にだけでなく、すべての人々に対するラブレターだ」と言われた言葉に感動しました。是非このラブレターをリレーにして頂いて、沢山の方に劇場に来て頂ければ嬉しいです。どうぞよろしくお願いいたします。

hikari-bu-240.jpg監督:そんな“ラブレター”を作って良かった!カンヌのクロージングでジュリエット・ビノシュが、「映画は光、映画は愛」と言ってくれたのが、もうパルムドールに値するほど嬉しかったです。愛とか光とか輝ける方向へ自分たちの心を向けていくことが次の原動力になると思うので、この映画を皆さんと共有していきたいです。

また河瀨監督は、「奈良市を中心に京都・大阪でロケした作品なので、関西の方にもっと沢山観てほしい」と締めくくった。

 


 (河田 真喜子)

 

 

itsukimi-bu-550.jpg

「自分の映画でそんなに泣く?」試写で泣きっぱなしだった尾野真千子に向井理がツッコミ。『いつまた、君と ~何日君再来~』大阪舞台挨拶(17.5.27 TOHOシネマズ 梅田)
登壇者:尾野真千子、向井理 
 
向井理が自費出版した祖母の手記から、戦中戦後の混乱期に生きた家族の姿を描く物語の映画化を自ら企画し、深川栄洋監督がメガホンをとった『いつまた、君と ~何日君再来~』が6月24日(土)から全国ロードショーされる。
 
 
itsukimi-550.jpg
 
個人史を丁寧に描くことから、戦後、何度も裸一貫になりながら、必死で家族を守り生きてきた人々の気持ちや暮らしぶりが浮かび上がる。余計な音を排して、ゆったりとした時間が流れる当時を体感できる作品は、往年の名画のように家での食事シーンや、子どもたちが遊ぶ様子がリアルに描かれており、実写版『この世界の片隅に』の趣きがある。
 
itsukimi-500-1.jpg
 
主人公となる祖母朋子の昭和パートを演じるのは実力派女優の尾野真千子。どんな辛い時でも笑顔を絶やさず、3人の子どもの世話をはじめ、家族のために辛抱強く頑張る昭和の女のたくましさを体現している。また、祖父吾郎を演じる向井理は、運に度々見放されてしまう男の悲喜劇を哀愁も込めながら演じ、吾郎が亡くなるまで常に寄り添い生きてきた夫婦愛にも心打たれる作品だ。
 

itsukimi-bu-ono-240.jpg

一般公開を前に5月27日(土)TOHOシネマズ梅田にて行われた大阪先行上映会では、上映後に大きな拍手が沸き起こり、主演の尾野真千子と向井理が舞台挨拶で登壇。戦前戦後の混乱期に夫や子どもたちを支え続けた祖母朋子を演じた尾野は、「すごい人生。結構大変な戦中戦後の時代のことを朋子役から学ばせてもらいました。向井君にお礼を言いたい」と、朋子役を演じたことが自信にとって大きな意味を持ったことを語り、撮影の合間に向井から朋子さんのエピソードを教えてもらっていたことを披露。一方、向井は「(戦前戦後の)この時代の家族の話。この時代の苦労を忘れてはいけないという気持ちで作りました。戦後の昭和っぽい映画は凄く好きで、黒澤監督といい、小津監督といい、何でもない家族の話だけで映画になります。深川監督ならそんな映画を撮れると思いました」と、より普遍的な家族の話として映画作りに励んだことを強調した。そんな作品を尾野は「恥ずかしながら…」と前置きして、試写ではじめから泣きながら見ていたと告白すると、向井は「そんなに泣く?自分の作品で?」と思わずツッコミを入れる一幕も。会場も素早いツッコミに思わず笑いが溢れた。
 
 
itsukimi-500-5.jpg
 
 
若き日の朋子と吾郎の思い出の曲で、上海滞在当時大ヒットしていた『何日君再来』を、エンディングでは高畑充希が歌っているが、向井は「共演した朝ドラの撮影中に高畑さんは、今とは歌い方も違い、歌うのがすごく難しいと話していました。余韻に浸れる以上に、ラストの登場人物のような世界観が出ています」とその歌唱を絶賛。向井自身も祖母から若き日の『何日君再来』にまつわるエピソードを聞き、実際に曲を聞きたいと調べていたことを思い出したと懐かしそうに語った。
 
この日は公式Twitterでファンから寄せられた質問に応える趣向も。「劇中の朋子や吾郎のように最近二人がふんばったことは?」との質問に、しばらく考えてから「東京から実家に車で帰ったこと。早く帰りたかったので、眠気もガマン。頬をパンパン叩いて頑張りました」(尾野)、「役作りで下半身強化のため近所の100メートルの急坂をダッシュしています」(向井)。
 
 
itsukimi-500-4.jpg
 
また、2度目の共演(5年前)となる二人に以前と変わった点を聞かれ、「見た目は変わらないけど、お芝居をしていてセリフに重みを感じました。後ろ姿だけでも気持ちが伝わった」(尾野)、「役のせいかもしれませんが、以前よりトゲがなくなりました。3人の子どもがいるお母ちゃん役で、お母ちゃんやなと」(向井)と、お互いにさらに成長した相手を称え合う一幕も。
 

itsukimi-bu-mukai-240.jpg

最後に「この映画に出演することにより、向井理の記憶にちょっと残る人になれたかなと思いますので、皆さんもそんな気持ちでまた見に来てください。ありがとうございました」(尾野)
「僕の家族だけでなく、皆さんの親の世代の方たちは懸命に生き抜いたのだなと強く感じる作品になりました。僕も親元を離れて時間が経ちますが、どこか家族の関係が希薄になる中で、こういう作品をきっかけに親世代、祖父母世代にはどんなことがあったのかを聞いてみるきっかけになればいいなと思います。遺さなければいけないものを大事にしたいという想いで、この映画を作りました。少しでも多くの人にそういう想いや年長者へ敬意を感じる気持ちになっていただければ。そして、皆さんのファミリーヒストリーの一部になればうれしいです。今日はありがとうございました」(向井)
と挨拶し、会場は再び温かい拍手に包まれた。
 
 
itsukimi-500-2.jpg
母娘断絶の裏にある真実など、実話を基にしたからこそ描ける苦い家族の記憶にも触れ、貧しく生きるのに必死な時代の生き様も感じられる、辛くも温かい作品。改めてファミリーヒストリーを語り継ぐことの大事さに気付かせてくれることだろう。
(江口由美)
 

<作品情報>
『いつまた、君と ~何日君再来~』
(2017年 日本 1時間54分)
監督:深川栄洋
原作:芦村朋子「何日君再来」
出演:尾野真千子、向井理、岸本加世子、駿河太郎、イッセー尾形、成田偉心/野際陽子 
2017年6月24日(土)~TOHOシネマズ 梅田、TOHOシネマズ なんば、TOHOシネマズ 二条、T・ジョイ京都、OSシネマズミント神戸、109シネマズHAT神戸他全国ロードショー
公式サイト⇒ http://itsukimi.jp/
(C) 2017「いつまた、君と ~何日君再来~」製作委員会
 

parks1.jpg

橋本愛、だらしなさを求められる役に「なんて楽なんだろう!」
『PARKS パークス』大阪舞台挨拶(17.5.6 シネ・リーブル梅田)
登壇者:瀬田なつき監督、橋本愛 
 
今年で100周年を迎える吉祥寺・井の頭公園を舞台に、橋本愛を主演に迎えた瀬田なつき監督最新作『PARKS パークス』が、5月6日シネ・リーブル梅田で公開初日を迎えた。
『PARKS パークス』瀬田なつき監督インタビューはコチラ
 
parks-500-1.jpg
橋本愛が演じるのは、彼氏と別れ、大学も留年の危機を迎えた純。亡き父の学生時代の恋人、佐知子の消息を探す高校生のハルを永野芽郁が、佐知子の孫、トキオを染谷将太が演じ、純、ハル、トキオの3人が、佐知子の遺品から見つけたオープンリールのテープに録音された歌を完成させようと動き出す様子を、公園の過去や現在を浮かび上がらせながら描いていく。瀬田監督らしい軽やかさと風が吹いたような爽やかさ、そしてトクマルシューゴを音楽監修に迎え、地元のミュージシャンたちが出演して作り上げた様々な音楽の豊かさがを堪能できる作品だ。
 
 

parks2.jpg

シネ・リーブル梅田で上映後に行われた舞台挨拶では、瀬田なつき監督と主演の橋本愛が登壇。脚本も担当した瀬田監督は、「ちょうど井の頭公園の池が100年を前にして水を全て抜く作業をしていたのを見て、ここから何か出てきたら面白いのではないかと発想。池に物を落とすのはやめてと公園の人に言われたので、池ではなく(佐和子の遺品から)テープを見つけることにしました」と、過去から現在、未来へと繋ぐ物語のアイデアにまつわる話を披露。一方、吉祥寺の印象を聞かれた熊本県出身の橋本は、「少し歩くとマニアックな音楽や映画がすごく充実している街。今と昔が共存していて、ここで生まれたらここで一生を終われるんだろうな」と、感慨深げに語った。また、本作の舞台となった井の頭公園については「普通の公園とは違う楽園感があって、フワフワした浮遊感や、100年も存在し続けることの神様感があります」としながら、「井の頭公園を見ているのと同じように体感できます。暮らしの中に公園があるように映ればいいな」と本作の見どころを語った。
 
 
parks-500-2.jpg
 
瀬田監督の演出について聞かれた橋本は、「大まかなリクエストとしては『軽く』で、それが一貫していれば、後は何をしても許される現場でした」。橋本が演じる純役については「だらしなさが求められる役ですが、私自身はちゃんとだらしない人なので、役でそれを求められ、『なんて楽なんだろう』と思いました」と素の自分が役に投影されていることを明かした。染谷将太や永野芽郁との共演については、「(映画ではワイワイしているが)、慣れ合っていた訳ではありません。染谷さんは大人だし、芽郁ちゃんもすごくしっかりしていて、普段の会話をしなくても現場に入ればできるんです」と橋本が語ると、瀬田監督は「撮りながら、(三人の掛け合いが)すげぇ!と思っていました」と笑顔でコメント。メリハリの効いた撮影現場であることが伺えた。
 
 

parks4.jpg

橋本自身もギターの弾き語りを披露するなど、音楽映画としても要チェックの本作。一番後世に残したい音楽はとの問いに、橋本はズバリ「この映画のサントラを聞いてほしい!」。「映画の中に入っていないシーンの音楽もありますし、シーンの続きを連想できるものもあります。映画を観る前にサントラを聴いて、観てからもう一度聴くのをオススメしています」と、友達にも先にサントラを聴くように勧めていることを明かした。そんな橋本の歌っているシーンは瀬田監督のお気に入りのシーンでもあるそうで、「染谷さんや永野さんと一緒にセッションのようにふわっと部屋で演奏するシーンは、ちゃんとだらしない橋本さんの魅力が出ています。どれも見せたい!と思いながら編集をしていました」。
 
 

parks3.jpg

最後に、
「大阪でも公園100周年があれば、是非撮りたい。色々な見方ができる映画ですし、橋本さんと一緒に初日を迎えられて、うれしいです」(瀬田監督)
 
「個人的にすごく好きな映画。皆さんもそういう気持ちになってもらえたらうれしいです。本当は映画を観た後、井の頭公園に行ってもらいたいのですが、それができなくても皆さんの思い出の公園や近所の公園、生活の染みついている場所で、この映画のことを反芻して、それぞれの感動として持ち帰っていただけたらと思います」(橋本)
 
と笑顔で挨拶し、映画のように爽やかな舞台挨拶を終了した。
 
ポップな音楽からヒップホップまで様々なジャンルの音楽に彩られた『PARKS パークス』。映像や編集にもこだわりがたっぷりの瀬田マジックを、一度だけではなく、是非何度も味わってほしい。
(江口由美)

<作品情報>
『PARKS パークス』(2017年 日本 1時間58分)
監督・脚本・編集:瀬田なつき
出演:橋本愛、永野芽郁、染谷将太/石橋静河、森岡龍/佐野史郎他
2017年4月22日(土)~テアトル新宿、5月6日(土)~シネ・リーブル梅田、5月13日(土)~神戸国際松竹、初夏~京都シネマ他全国順次公開
公式サイト⇒http://parks100.jp/  
(C) 2017本田プロモーションBAUS
 

Dancer-ivent-550.jpg

 バレエ界の優雅な野獣 セルゲイ・ポルーニン、東京藝大に降臨
圧巻のパフォーマンスに鳴り止まない拍手と歓声!

「アーティストは世の中を導ける存在だ」

 
7月15日(土)よりBunkamuraル・シネマ、新宿武蔵野館ほかで公開の『ダンサー、セルゲイ・ポルーニン世界一優雅な野獣』。公開に先駆け芸術の総本山である東京藝大学のコンサートホール、奏楽堂にてライブプレミアイベントを開催。上映後には、YouTubeで1900万回以上も再生された『Take Me To Church』のダンスパフォーマンスとトークイベントを行いました。 


映画『ダンサー、セルゲイ・ポルーニン世界一優雅な野獣』
ライブプレミアイベントwithセルゲイ・ポルーニン

【日時】:2017年4月27日(木)18:30開場/19:00開映
【会場】:東京藝術大学奏楽堂(台東区上野公園12-8)
【出演】:セルゲイ・ポルーニン
【プレゼンテーター】:箭内道彦



Dancer-550.jpg映画『ダンサー、セルゲイ・ポルーニン世界一優雅な野獣』の日本公開を記念したライブプレミアイベントが27日、東京藝術大学・奏楽堂にて行なわれ、2011年の公演以来、6年ぶりの来日を果たしたセルゲイ・ポルーニンが出席。本編上映後のステージでは、YouTubeで1,900万回以上も再生された独創的なパフォーマンス『Take Me To Church』を生披露し、続くトークコーナーでは、プレゼンターを務めたクリエイティブディレクター・箭内道彦氏と共にアートへの思いを熱く語った。本作は、誰よりも美しく舞い、誰よりも高く跳ぶ、孤高の天才ダンサー・ポルーニンの知られざる素顔に迫るドキュメンタリー。19歳で名門・英国ロイヤル・バレエ団の史上最年少プリンシパルに選ばれるが、その2年後、人気絶頂期に電撃退団。果たしてその真意とは?全身にタトゥーを纏い、決して型にはまらないバレエ界きっての異端児ポルーニンの生き様を、本人や家族、友人、関係者らのインタビューを交えながらひも解いていく。


Dancer-ivent-240-2.jpg上映会が終了し、暗闇の中から瞑想するように登場したポルーニン。アイルランド出身の世界的ミュージシャン、ホージアの楽曲『Take Me To Church』に乗せて、劇中にも登場したあの伝説のパフォーマンスを生披露。正面にパイプオルガンが鎮座する特設ステージをフルに使ったダイナミックなターン&ジャンプ、優雅でセクシーな身のこなし…鍛え抜かれた肉体の躍動に、観客は息をのむばかり。圧巻のパフォーマンスが終了すると、堰を切ったように客席から「ブラボー!」の歓声が飛び交い、万雷の拍手が沸き起こった。

 

 

箭内氏がMCを務めたトークコーナーでは、アートに対する熱い思いを真摯に語ったポルーニン。「アートというものをどう捉えているか?」というストレートな質問に対しては、「私にとってアートは、優雅で美しいものを生み出すこと。それが人々の心に届き、日々の暮らしに足りないものを補うのだと思います。もしこの世の中がパーフェクトだったらアートはいらない。ところが悲しいことに、世界は戦争やテロなど悪事に溢れている。だからこそアートは存在するのではないかと思います」

Dancer-ivent-500-1.jpg
Dancer-ivent-240-1.jpgこれに同調した箭内氏は、「ここ数百年の中で、最もアートが必要とされている時かもしれない」と投げ掛けると、ポルーニンも「アーティストは世の中を導ける存在だと思っています。火星に行くロケットも、建築物も、洋服も、何もかも、それをつくるアーティストがいなければ存在しない。何かを生み出すところに全てアートが存在する。どんな仕事でも、クリエイティブであれば、それはアートだと私は思います。だから国を動かす政治家も、もっとクリエイティブなヴィジョンや創作といったものにもっと目を向けるべき」と話した。最後に、これからアートの世界へ入っていく若者たちに向けてポルーニンは、「失敗を怖れず勇気を持って挑んでほしい。例えば、飛行機が高度を上げ過ぎると不安定になり、安定する位置まで高度を下げようとしますが、私の場合、高いところに留まって、必死に維持しようと努力する自分をイメージします。そしてもう一つ大切にしてほしいのは、孤独であることを怖れず、ありのままの自分でいること」と言葉を噛みしめる。「その場所が自分にとって心地良すぎると感じたら、そこから立ち去る」というポルーニン。

常に苦難の道に挑み続けるからこそ、その佇まいは優雅で美しく、そして誰も手出しできない野獣の威厳に満ちているのかもしれない。
 



【映画『ダンサー、セルゲイ・ポルーニン世界一優雅な野獣』について】 

Dancer-500-1.jpg<ヌレエフの再来>と謳われる類まれなる才能と、それを持て余しさまよう心―― 19歳で英ロイヤル・バレエ団の史上最年少プリンシパルとなるも、人気のピークで電撃退団。バレエ界きっての異端児の知られざる素顔に迫ったドキュメンタリー。途方もない才能に恵まれ、スターになるべく生まれたセルゲイ・ポルーニン。しかし彼はその運命を受け入れなかった。バレエ界のしきたり、天才ゆえの重圧、家族の関係。スターダムから自滅の淵へ――様々な噂が飛び交う中、彼が再び注目を集めたのは、グラミー賞にもノミネートされたホージアのヒット曲『Take Me To Church』のMVだった。写真家のデヴィッド・ラシャペルが監督し、ポルーニンが踊ったこのビデオはYouTubeで1800万回以上再生され、ポルーニンを知らなかった人々をも熱狂の渦に巻き込んだ。<ヌレエフの再来>と謳われる類い稀なる才能と、それを持て余しさまよう心。本人や家族、関係者のインタビューから見えてくる彼の本当の姿とは…?


監督:スティーヴン・カンター/『Take me to church』
演出・撮影:デヴィッド・ラシャペル/
出演:セルゲイ・ポルーニン、イーゴリ・ゼレンスキー、モニカ・メイソン他
配給:アップリンク、パルコ
(2016年/イギリス、アメリカ/85分/カラー/16:9/DCP/原題:DANCER)
(C)British Broadcasting Corporation and Polunin Ltd. / 2016
公式サイト⇒ http://www.uplink.co.jp/dancer/

2017年7月15日(土)~Bunkamuraル・シネマ、新宿武蔵野館、近日公開~シネ・リーブル梅田、京都シネマ、シネ・リーブル神戸 ほか全国順次公開


(オフィシャルレポートより)

seta.jpg

 

~吉祥寺・井の頭公園を舞台にした青春音楽映画がつなぐ過去、現在、そして未来~

 
橋本愛がギターの弾き語りをし、染谷将太が等身大の若者の言葉をラップにのせて歌いあげ、永野芽郁が公園中の音を拾い集める。トクマルシューゴをはじめ、高円寺、西荻窪、吉祥寺など中央線沿線で活動するミュージシャンたちが、そこここに現れ、ライブでその音色や歌声を響かせる。公園愛、そして音楽愛に溢れた瑞々しい青春映画が誕生した。
 
今年で100周年を迎える吉祥寺・井の頭公園を舞台に、瀬田なつき監督が脚本・編集も手がけたオリジナル長編映画『PARKS パークス』。彼氏と別れ、大学も留年の危機を迎えた純(橋本愛)、亡き父の学生時代の恋人、佐知子の消息を探す高校生のハル(永野芽郁)、佐知子の孫、トキオ(染谷将太)の3人が、佐知子の遺品から見つけたオープンリールのテープに録音された歌を完成させようと動き出す。過去と現在をつなぎ、さらに未来へと遺す物語は、瀬田監督らしい軽やかさと風が吹いたような爽やかさを運んでくれる。何者にもなれず、もがいてしまう青春時代のモヤッツとした気持ち、それを吹っ切り走り出す瞬間が役者たちの豊かな表情から感じ取れることだろう。第12回大阪アジアン映画祭のクロージング作品としてワールドプレミア上映された本作の瀬田監督に、物語の成り立ちや橋本愛をはじめとするキャストたち、様々なミュージシャンと作り上げた音楽についてお話を伺った。
 

parks-500-1.jpg

■「(井の頭)公園が映っていれば、好きにやっていい」

  100周年を迎える井の頭公園を映画に遺すプロジェクトで、オリジナル作品を撮る。

―――井の頭公園を舞台にした映画を撮ることになったいきさつは?
瀬田:吉祥寺にはバウスシアターという映画館があり、そこに行けば邦画、洋画問わずいい映画を観ることができたり、特集上映をしてくれる場所だったのですが、2014年5月に閉館してしまいました。バウスシアターのオーナーだった本田拓夫さんは生まれも育ちも吉祥寺で、100周年を迎える井の頭公園の映画を遺したいと企画を立ち上げ、色々なつながりから私に監督のお声がかかったのです。是非やってみたいと快諾し、脚本も自分で書いたオリジナル作品を撮ることができました。
 
―――音楽が重要な要素となる映画ですが、最初から音楽をメインにしようと考えていたのですか?
瀬田:公園が映っていれば好きにやっていいとのことだったので、公園の中で何かを完成させるようなものにしようと考えていました。最初は何かを探すお話にしようと、小説だとか色々考えていたのですが、音楽を作り上げる話を思いついたのです。ゼネラルプロデューサーの樋口泰人さんから、音楽の部分を最初から誰かに頼んで、シナリオを書く段階から参加してもらい、同時に作っていけばいいのではないかとの提案があり、トクマルシューゴさんに最初から参加してもらうことになりました。歌詞も一緒に考えましたし、色々なイメージが膨らんでいきました。
 
―――音楽監修をされたトクマルシューゴさんについて、教えてください。
瀬田:トクマルさんも、井の頭公園は小さい頃から遊びに行っていた思い出深い公園だそうです。一人での活動だけでなく、様々なアーティストさんとコラボをしたり、一緒にライブもされてもいるので、トクマルさんのお知り合いで、吉祥寺を中心として中央線沿線の西荻窪や高円寺などのミュージシャンの方も巻き込んでいただきました。トクマルさんには劇中で演奏する曲を何曲か作ってもらい、たくさんのミュージシャンも参加し、面白い形の音楽映画が作れたと思います。

 

■過去や現在、その先の事も見える映画に。ビートルズが上陸する前の音楽を再現。

―――ファンタスティックな部分を併せ持つ作品ですが、物語はどのように作り上げたのですか?
瀬田:結構不思議な世界になっていますね(笑)。「100年」というのがキーワードになっているので、過去や現在、その先のことも見える映画にしたいなと思い、それらがサッとつながる見せ方になりました。過去は1964年という設定ですが、忠実に再現するのではなく、イメージの60年代という世界で面白いものを美術や衣装などで表現してもらいました。音楽も60年代のメロディーのコードなどを調べて下さり、ビートルズが上陸する前の音楽で、その時代の楽器の編成も再現しつつ作ってもらいました。
 
―――60年代の物語ではオープンリールテープが使われていますね。録音するのも一苦労だった当時の様子が伝わってきます。
瀬田:操作を覚えると結構楽しいのですが、撮影中でもたまにテープが切れることがあり、セロファンテープでくっつけたりしました。テープが劣化して続きが聴けなくなるというところから、過去の曲を現代で完成させ、次の時代につなげると面白くなるのではないかと。公園も色々な人の過去の記憶があるけれど、それを今の人が更新していく。そうやってつながっていくといいなと思いました。
 

parks-500-2.jpg

■主演、橋本愛の力の抜けたその表情も取り入れ、重さと軽さの両面を映画で見せる。

―――主演、純役の橋本愛さんもギターの弾き語りを披露していましたが、結構練習されたのですか?
瀬田:ご自分でギターを持っていらして、弾いたりされてたようですし、音楽が好きで色々な歌手の歌を歌っていたそうです。こちらが提示した曲も家で練習してくださり、「音楽がちょっと好きだけど、プロフェッショナルほどではない」という丁度いい塩梅で、純役に合っていました。
 
―――いつもヒロインの女の子がとても瑞々しく描かれていますが、今回の橋本愛さんも、ナチュラルな彼女の魅力が引き出されていました。初めて一緒に仕事をしたそうですが、キャスティングの経緯は?
瀬田:前からずっと一緒にお仕事をしたいという気持ちがありました。橋本さんは、普段は割と陰があったり、気の強い役が多いと感じていたのですが、何かの映画のメイキングを観た時に、力の抜けた素の表情を見せていて、日頃見るような凛とした表情とギャップがありました。その両面を映画で見せることができれば、モヤッとしている重さと軽さをうまく演じてくれるのではないかと思い、オファーさせていただきました。橋本さんは自称「風を操れる人」で、彼女がベランダに出ると風がふわっと吹いて、カーテンが揺れたりするんですよ。話してみると、とてもチャーミングな方でしたね。
 
―――瀬田監督の作品で「軽さ」はキーワードのように感じますね。
瀬田:この作品は特に軽やかに撮りたいという部分がありました。永野芽郁さんが演じたハルも普通だと悩みそうな役ですが、過去に行っても、現在でも溶け込んでいて柔軟な表現力がありました。現実なのか、幻想なのかという部分を、永野さんだからふわっと演じてくれました。
 
 
parks-500-3.jpg
 

■大人でも子どもでもないキャラクター、トキオ役を自分で作り、共演者を巻き込んでくれた染谷将太の存在。

―――瀬田監督は、染谷将太さんをよく起用されていますが、染谷さんの魅力はどんなところですか
瀬田:染谷さんは本当にプロフェッショナルな役者さんで、トキオ役を自分でふくらませて作ってくださり、橋本さんや永野さんをうまい具合に巻き込んでくれ、信頼できる人だなと思っています。私からは軽やかにと伝えただけですが、大人でも子どもでもないキャラクターでちょっとテンション高めの男の子になりましたね。
 
―――染谷さんはラップを披露していましたね。即興っぽいラップもありましたが。
瀬田:染谷さんは、園子温監督の『TOKYO TRIBE』でラップをされていたので、トクマルさんと染谷さんに何をやってもらおうかと考えていた時、「きっと染谷さんならラップできるよ」と、フリースタイルで勝手に言葉を選んで歌ってもらおうと考えていたんです。でも、染谷さんから「いや、できないですよ」と言われて(笑)。最後に歌うものは、ceroの高城さんにリリッックを書いて頂いたのですが、そこまでのラップは「池にはカモ」とか、「空には雲」と素人の私が勉強しながら書いて、染谷さんに添削してもらって、トクマルさんも巻き込みながら一緒に考えていく作業でしたね。シナリオ段階は結構不安でしたけれど、染谷さんの技術で歌いこなしてくれました。韻の踏み方も上手でしたね。
 
―――瀬田監督の映画で外せないといえば自転車のシーンですが、今回も冒頭からヒロインの純が桜満開の井の頭公園を疾走していきます。
瀬田:走っているよりもすっと映る疾走感やスピード感があるので、自転車のシーンは好きですね。自転車を撮っているだけで、背景も変わっていくので、一気に街や公園も見せられます。公園は自動車で走れないので、撮影の時もカメラマンの方が電動自転車の後ろにつけたリアカーにカメラを載せて撮影する撮り方を考えてくれました。橋本さんもいい距離感で自転車を漕いでくれましたね。桜のシーンから始めたいというのは、企画の本田さんの希望で、それだけは外せないと。
 

parks-500-4.jpg

 

■編集は表情を重視。鈴木清順監督のような、予想を裏切る展開を心がけて。

―――瀬田監督は脚本だけでなく、編集もご自身でされていますが、心がけている点は?
瀬田:役者の方の表情や動きが1回限りしかできないような形に切り取りたい。その瞬間しか出ないところを残し、魅力的に見せたいという点を重視しています。表情を重視していますね。あとは、驚きのある、予想を少し裏切れるような繋ぎ方を心がけています。鈴木清順監督も大好きで、こういう風にしてもいいんだと勉強になります。
 
―――鈴木清順監督の名前が挙がりましたが、他に影響を受けた監督は?
瀬田:ヌーヴェルヴァーグの監督、初期のゴダールや、フランソワ・トリュフォーやエリック・ロメールは、少ない人数で街に出て、さっと撮っているスタイルや、自然光で撮るなどが参考になっています。街に出てカメラを回せば物語ができる。今回はまさしく公園が撮り放題でしたから。
 
―――クライマックスは、公園を舞台に軽やかなミュージカル風のシーンが用意され、最後まで楽しめました。ミュージカル映画への布石にもなりそうですね。
瀬田:トクマルさんが作ってくれた曲が壮大で盛り上がる曲だったので、エキストラの人にも踊ってもらおうと少しずつ豪華になって、ビデオコンテを作って、公園に人が少ない時間を狙って3日ぐらいに分けて撮りました。音楽がいつの間にか始まり、人が台詞ではなく、音楽で動き始めるようなミュージカル映画も好きですし、日本ではなかなか難しいのですが、街で想像外のことが起こるミュージカル、いわば『ラ・ラ・ランド』のようにもっと音楽の要素を入れた作品にも挑戦してみたいです。
(江口由美)
 

<作品情報>
『PARKS パークス』(2017年 日本 1時間58分)
監督・脚本・編集:瀬田なつき
出演:橋本愛、永野芽郁、染谷将太/石橋静河、森岡龍/佐野史郎他
2017年4月22日(土)~テアトル新宿、5月6日(土)~シネ・リーブル梅田、5月13日(土)~神戸国際松竹、初夏~京都シネマ他全国順次公開
公式サイト⇒http://parks100.jp/  
(C) 2017本田プロモーションBAUS
 
  1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71