「京都」と一致するもの

新通提供

『ペンギン夫婦の作りかた』試写会プレゼント!

pengin-1.jpg・日時:2012年9月27日(木)18:30開場 19:00開映
・会場:ユナイテッド・シネマ岸和田
          大阪府岸和田市港緑町3-1
岸和田カンカン ベイサイドモールWEST3F
アクセス⇒ http://www.unitedcinemas.jp/kishiwada/about-theater.html

・募集人数: 5組 10名様
・締切:2012年9月22日(土)
・公式サイト⇒ http://www.penguinfufu.jp/


「ペンギン夫婦の作りかた」 
★第1回中之島ごはん映画祭(10/6~14) プレミア招待作品に決定!

pengin-2.jpgアナタの心を満腹にしてくれる〈とってもオリジナルな幸せ〉 流行語にもなった大ヒット商品「食べるラー油」の原点である“辺銀食堂の石垣島ラー油”誕生秘話の実話映画化。

フリーライターとして東京で働いていた歩美(小池栄子)は、中国で出会ったカメラマン(ワン・チュアンイー)と国際結婚。しかしその後、夫の会社が倒産し職を失ってしまう・・・。歩美は落ち込む夫を気晴らしに石垣島へ連れていく。そこで出会った大自然、温かい心、そして美味しい食材にすっかり二人は魅了され、移住することに!職のアテもない二人は共通の趣味である“食”を活かし、石垣島の食材で全く新しいラー油を作ろうと思い立つ!苦労しながらも気持ちを込めて作ったラー油。しかし一つも売れない。それでも前向きな二人に新たなチャンスが舞い込んだ!国際結婚、離島への移住、帰化申請。これは食べるラー油誕生の裏に隠されたとってもあったかい絆の物語。

pengin-3.jpg監督・脚本:平林克理 脚本:アサダアツシ
原案:辺銀愛理「ペンギン夫婦がつくった石垣島ラー油のはなし」(マガジンハウス刊)
出演:小池栄子、ワン・チュアンイー、深水元基、山城智二(FEC)
(C)2012「ペンギン夫婦の作りかた」製作委員会

10月20日(土)公開テアトル梅田、ユナイテッド・シネマ岸和田、MOVIX京都、ユナイテッド・シネマ大津ほか

tarukofu.jpgロシアを代表する映像作家、アンドレイ・タルコフスキー。自由を求めて辿りついたパリにて54歳で客死したタルコフスキーの全作品を一挙に上映する「タルコフスキー生誕80周年記念映画祭」が9/8(土)より梅田ガーデンシネマで、以降元町映画館、京都シネマで開催される。水、雨、光など自然を駆使した抒情的な作風により映像の詩人と呼ばれるタルコフスキーの世界を是非スクリーンで体感してほしい。

<上映作品>

『ローラーとバイオリン』(1960年/カラー)
1960年ニューヨーク国際学生映画コンクール第一位

『僕の村は戦場だった』デジタルリマスター版 (1962年/モノクロ)
1962年ヴィネツィア国際映画祭サン・マルコ金獅子賞
サンフランシスコ国際映画祭監督賞

『アンドレイ・ルブリョフ』(1967年/モノクロ&カラー)
1969年カンヌ国際映画祭批評家連盟賞

『惑星ソラリス』デジタルリマスター版(1972年/モノクロ&カラー)
1972年カンヌ国際映画祭審査員特別賞他

『鏡』(1975年/カラー)

『ストーカー』デジタルリマスター版(1979年/カラー)

『ノスタルジア』(1983年/カラー)
1983年カンヌ国際映画祭創造大賞、国際映画批評家連盟賞、エキュメニック賞

『サクリファイス』(1986年/カラー)
1986年カンヌ国際映画祭審査員特別大賞、国際映画批評家連盟賞、エキュメニック、芸術特別貢献賞


「タルコフスキー生誕80周年記念映画祭」公式サイトはコチラ

「タルコフスキー生誕80周年記念映画祭」梅田ガーデンシネマ上映スケジュールはコチラ

kagimeso-s500.jpg『鍵泥棒のメソッド』合同記者会見レポート(2012年7月24日(火)大阪市内)
ゲスト:堺雅人、広末涼子、内田けんじ監督

~堺雅人危うし!! 吊し上げ会見の行方は?~

kagimeso-1.jpg(2012年 日本 2時間08分)
監督・脚本:内田けんじ
出演:堺雅人、広末涼子、香川照之、荒川良々、森口瑤子
2012年9月15日(土)~大阪ステーションシティシネマ、なんばパークスシネマ、MOVIX京都、シネ・リーブル神戸 他全国ロードショー
公式サイト⇒ http://kagidoro.com/
© 2012「鍵泥棒のメソッド」製作委員会
★第15回上海国際映画祭にて最優秀脚本賞を受賞!

 3年かけて脚本を練りこんだ内田けんじ監督と、主役の堺雅人と広末涼子の3人がキャンペーンのため来阪。合同記者会見では終始和やかな雰囲気で、広末涼子の素直な言動に堺雅人がツッコミを入れ、監督がそれをフォローするような形で笑いを誘っていた。

 『運命じゃない人』(2005年)や『アフタースクール』(2008年)では、ごく普通の男があり得ないシチュエーションに巻き込まれ、それを複数人物の視点から、もしくは時間軸をズラしながら事件の核心に迫るという大変ユニークな手法でサスペンス・コメディに仕上げ、観る者を楽しませてくれた内田けんじ監督。ところが、最新作では今までの手法とは異なり、展開の鍵として登場人物のキャラクターを明確に性格付けて、引き寄せられるように絡み合う人間模様が豊かな情感を醸し出している。これまで以上に、軽妙なストーリーテリングの面白さと深みのある人間ドラマで魅了する。

kagimeso-2.jpg【STORY】 ルーズな生活の果てに自殺未遂の35歳の売れない役者・桜井武史(堺雅人)が、銭湯で転んで記憶を失った羽振りの良さそうな男・コンドウ(香川照之)のロッカーの鍵を盗んだことから、危険な歯車に巻き込まれていく。そこに、ある理由から突然結婚宣言をした雑誌編集長の水嶋香苗(広末涼子)が絡む。香苗はバイト募集条件も結婚相手の条件も同じ、「健康で努力を惜しまない人」。そんな香苗が、記憶を失ったコンドウと出会い、シンパシーを感じる。コンドウと入れ替わった桜井の命運は ?コンドウの記憶は? 香苗の婚活の行方は?


【最初のご挨拶】

kagimeso-s2.jpg監督:今日は大好きな役者さんと大阪に来られて嬉しいです。
堺:とても素敵なラブストーリーができたと思っています。よろしくお願いいたします。
広末:本当に楽しくて実力のある役者さんと、それに、しっかりとしたイメージのできている監督とお仕事ができてとてもいい経験になりました。沢山の方に見て頂きたいです。

━━━内田監督の作品は脚本の面白さがクローズアップされる事が多いが、現場での監督の様子や演出は?
堺:現場での監督の様子が語られないのは、あまりにもスムーズ過ぎて我々の記憶に残らないからではないかと。監督はイメージに沿って的確な指示を出されるので、それに従っていけば順当に進んでいく。特にこれというトラブルもなく、とてもスムーズな印象で、いつも楽しそうにされていました。
広末:監督には迷いがない。理性的で、形容詞など使わず具体的な比喩を用いて演出されることが多く、それが面白くて、さすが本を書かれる人だなあと思いました。初日に香川さんと焼き鳥を食べに行った時とても嬉しそうにしておられ、その理由は「お二人が喋ってくれてますねぇ。3年かけて練りに練った脚本を役者さんが喋ってくれると、こんなにも嬉しいものなんだ」と。監督するだけでなく脚本も手掛けると、作品に対する愛情も違ってくるようです。
堺:僕には何の比喩もなかったよ!
監督:若干ひいきしてました(笑)。

━━━3人の出演配分やキャラクターの吸引力については、最初から計算していた?
 監督:私自身がわくわくするかどうかが問題。キャラクターのデフォルメ感はかなり意識しました。具体的には、香川さんがお風呂場で転ぶシーンの、香川さんのお尻の位置の高さに全てのキャラクターのデフォルメを込めました(笑)。『少林サッカー』ほど高く上がってませんが、現実ではあり得ないほど高い位置にしました。

kagimeso-s3.jpg━━━前作に続いての出演だが?
堺: 『アフタースクール』の時は脚本を読んでも訳が分らなかったのですが、今回は1回読んだだけで意味が分かったという安心感がありました。3年かけた脚本は、技巧を凝らしながらもミステリーの部分を残し、ラブストーリーという筋が1本通っています。それは監督ご自身の変化だと思うし、前2作を見ておられる方もその変化を楽しんで頂ければいいなと思います。今回は何分にも香川照之さんとの共演ですから、演技合戦になるのも不利だと思い、肩の力を抜いて「あなたと張り合う気はありませんよ~」とアピールして現場に入りました(笑)。

kagimeso-s4.jpg━━━内田けんじ作品について?
広末:私も一気に読みました。楽しくてわくわくしながら現場に入りました。初めて堺さんと香川さんの3人で撮影があった日の会見で、「大人のシュールな笑いあり、監督の沢山の肉付けの末に最後はドンデン返しがある作品ですが、ピュアなラブストーリーですよね」と言ったら、お二人が「えっ!ラブストーリー?」と驚かれたのです。お二人は自分たちの性格が入れ替わる部分に大きなイメージを抱いていたようですが、監督に確認したら「これはラブストーリーですよ!」と仰って下さいました。読み方や視点によって大きく変わっていくようで、きっとご覧になる方も、内田監督らしいなとか、キャラクターの誰かと共感するとか、感情移入の仕方によって全然違って見えてくるのではないかと思います。
 堺:広末さんは最初から「素敵なラブストーリーができました!」と言ってました(笑)。
 監督:合同会見だとバレてくるね(笑)。 

━━━後半、堺雅人さんの絶妙な演技力が問われるシーンがあったが? 
 堺:あれは本気でやって、結果、下手になってしまった!
 広末:香川さんも驚いてましたよ。どうしたらあんな演技が出てくるんだと。
 監督:下手というか、浅はかなんだよね(笑)。自分に酔っている感じがあったね。
 堺:でも、あれは監督の口真似ですよ。
 監督:違う、違う!僕、あんな浅はかな演技しない!(笑)
 広末:見ていて恥ずかしくなるような演技をするシーンがあって、あの演技プランはどうなってるんだろうと?
 堺:え~っ!? これって、ある意味吊るし上げだよ!?(笑) 確かに刑事ドラマに憧れてたので、あれはちょっと考えたよ。そうした浅はかな役を本気でやらせるんだから……それにしても、見ていて恥ずかしくなるような演技とはね~(笑)

kagimeso-s5.jpg━━━香川さんの面白さは?
 広末:ワンテイクは少なくて、何回も撮り直すのを楽しんでおられました。「もう1回できるんだ~!」と。みんなで構築する芝居を楽しんでおられたようです。
 堺:「役者が現場でできることはそんなに無いんだよね~生き様が出て来るんだよね」と、常に全力投球されていました。記憶を失った部分で香川さんが着る服をわざと似合わないような服ばかり選んだのに、どんどん着こなしていって、ガッカリしました(笑)。何でも似合うんです!
 広末:Tシャツのロゴが面白かったですね。
 監督:そう!「WANDER NIGHT」(ワンダー ナイト)、それがタイトル候補にもなったよ。

━━━広末さんは今回笑わない役でしたが……?
広末:とにかく笑わないように、感情を出さないように、常にテンションを低くしていたので、怒っているように見えないかと、その辺のさじ加減が難しかったです。でも監督に「大丈夫!」と言われ、不思議と違和感なく、新しい経験をさせて頂きました。
 監督:撮影合間に見せる表情豊かな笑顔が素晴らしく、これを封印するんだと思うと申し訳なくて……こぼれおちる情感がそこにあったからこそ、美しく見えたと思います。
広末:周りの人にも今までの役の中でも一番好きだと言って頂けて、とても愛すべきキャラクターだと思いました。


kagimeso-s6.jpg 無計画でルーズな男を絶妙な力の抜き加減で特有の存在感を示した堺雅人、記憶を失い貧しくうだつの上がらない男と狡猾でシャープな男を繊細に演じ分けた香川照之、何事も計画的で几帳面な女性を可愛い笑顔を封印して好演した広末涼子。この3人のパワーバランスが、かつてないほどのスリルに満ちたコミカルで温もりのある“ラブストーリー”を奏でる。そして、前向きに努力する姿勢こそ幸せへの“鍵”であることを実感し、勇気付けられるに違いない。またしても“内田マジック”にはまってしまった! (河田 真喜子)

 

B&W1-s500.jpgB&W1-1.jpg「ハーバー・クライシス<湾岸危機>Black&White Episode1」ジャパンプレミア
(BLACK & WHITE EPISODE1:THE DAWN OF ASSAULT)

(2012年 台湾 2時間8分)
監督:ツァイ・ユエシュン
出演:マーク・チャオ、ファン・ボー、アンジェラ・ベイビー、DEAN FUJIOKA
2012年9月8日(土)~新宿バルト9、梅田ブルク7、なんばパークスシネマ、T・ジョイ京都、OSシネマズミント神戸 他全国ロードショー
提供:アミューズソフト 配給:東映
公式サイト⇒ http://www.bw-movie.jp/
(c) 2012 Hero Pictures Corporation Limited. ALL RIGHTS RESERVED.

ドラマ「ブラック&ホワイト」(09年)の監督を務めた台湾ドラマ界のヒットメーカ、ツァイ・ユエシュン監督が、同作で主演を果たしたマーク・チャオを再起用し、「ドラマの3年前」という設定で映画化した「ハーバー・クライシス<湾岸危機>Black&White Episode1」。公開前に先立って行われたジャパンプレミアに、マーク・チャオとツァイ監督、台湾で活動中の日本人俳優DEAN FUJIOKAが登場し、スペシャルゲストとして日本語吹き替えを担当した寺脇康文も登壇。男だらけの熱い舞台挨拶の模様をお届けします。


B&W1-s2.jpg(最初のご挨拶)

マーク・チャオ:皆さんコンニチハ、マーク・チャオです。 ヨロシクお願いいたします(日本語)。このような形で日本に帰ってこられて嬉しいです。ドラマをご覧になった方も、(今回の映画で)新たな回答を得られると思いますのでお楽しみ下さい。

DEAN FUJIOKA:リー捜査官を演じたディーン藤岡です。 はじめまして、…ですかね? 「ハーバークライシス〜」で戻ってこられて嬉しいです。映画を是非楽しんで下さい。

ツァイ・ユエシュン監督:皆さんコンニチハ(日本語)。 ここで皆さんにお会いできて幸せです。 映画を気に入っていただけると嬉しいです。

B&W1-4.jpg―――ドラマの映画化を知った時の気持ちはいかがでしたか?
マーク・チャオ:実は監督とは仲が良いのに「映画に出ますか?」と一度も話がなく成り行きで出演することになったんです(笑)。アクションシーンも「スタントマン入りますか?」とも言われず成り行きで全て自分でアクションシーンを行いました。毎日ケガしてどのシーンも大変でしたね。

――― 特に大変だったシーンは?
マーク・チャオ:(ビルの)3階建て位の橋から橋の下を通るトラックに飛び降りるシーンでは、19テイクも撮りました。なかなか監督からOKがでなく我慢できなくなって「まだやるんですか?」と聞いたら監督から「これぐらいで疲れたんですか?」と言われました(笑)

B&W1-s4.jpg――― 色んな国の俳優が出演したグローバルな映画の現場の雰囲気はいかがでしたか?
DEAN FUJIOKA:それぞれの国の違いを乗り越えてコミュニケーションを取って、色々な意見が飛び交って楽しかったです。日本語吹き替え版では自分の役を自分の演技を見ながら吹き替えたのが面白い経験でした。人名とか地名とか、中国語の発音を日本語にする時、発音がおかしくなってしまい吹き替えの監督に何度も直されました。声優の仕事は初めてでしたが、まさか自分を吹き替えることになるとは思いませんでしたね(笑)。

――― 映画にしようと思ったのはいつごろだったんでしょうか?
ツァイ・ユエシュン監督:最初から、ドラマを2シリーズ撮って、映画を撮って完成、という企画が有りました。ところが、ドラマの一作目にお金がかかり過ぎてしまい、ドラマの続編を作るのが厳しくなってしまったんです(笑)。幸い評判は良かったので、予定を前倒して映画を撮ることになりました。

B&W1-2.jpg――― 現場でのマークさんとFUJIOKAさんの様子はいかがでしたか?
ツァイ・ユエシュン監督:マークはインタビューでは愚痴ばっか言ってるけど、現場では、何かを頼むと、最初「えっ…」と言いつつも5秒後には文句を言わずにやってくれましたね。先程高い橋から飛び降りた話が出ましたが、あれはまだ高くない方なんです。7階建て位の高さからも、スタント無しで落ちてくれています。マークのおかげでリアルな映像を撮ることができました。 彼は、現場では「大人しい俳優でしたね」笑。DEAN FUJIOKAは、非常にプロフェッショナルです。どんなに難しい台詞も完璧にやろうとする姿勢が素晴らしい。インターナショナルの作品には共通の言語が必要ですが、彼は素晴らしかったです。

B&W1-s3.jpg――― (日本語吹き替え版を担当した)寺脇康文が登場してご挨拶
寺脇康文:ニホンの皆さんコンニチハ。 寺脇康文です。もう日本語ワカリマセーン。(外国人風な口調で)吹き替えのお話をいただき、てっきりマークさんの役かと思ったら違いました。年齢的に駄目だったようです(笑)。でも私が担当したファン・ボーさんは素晴らしい俳優です。役者からみると悔しいくらいです。「ハーバークライシス〜」は面白くてジェットコースターのような、全編クライマックスという感じの作品です。またアクションだけじゃなく人間味もあるのもいいんですよね。

マーク・チャオ:日本ドラマの『相棒』は、台湾でも放送されていて、誰もが知っています。そんな重鎮に、今回吹き替えを担当していただき、嬉しく思っています。 

B&W1-3.jpg――― 寺脇さんは吹き替えをやって、何か思い出はありましたか? 
寺脇康文:マークさんの役は落ち着いていて、うろたえる事なんて無いんですが、僕がやったダーフーは悲鳴が多いんです。「ウワァー! 」とか、車で飛んでいくところでも、「ウワァァーーーッ!」って悲鳴ばかりで大変でしたね。吹き替え版と比べて観ても面白いと思いますね。

――― 印象的なシーンは?
寺脇康文:個人的にはダーフーが登場するエレベーターのシーンに注目してほしいですね。映画の色、ダーフーというキャラクターの全てがわかると思います。一瞬のシーンなので、見逃さないで下さい。

B&W1-s1.jpg(最後の挨拶)
マーク・チャオ:今晩はこのような形で、皆さんと過ごせて嬉しいです。この映画をどうぞ好きになってください。これからも努力を続け、いつか日本のクルーと仕事ができれば長く日本に滞在できると思うので願っています。
ツァイ・ユエシュン監督:まずは、このような機会を作って下さったアミューズと東映に感謝いたします。そして、ここにいらして下さった皆さんもに感謝いたします。どうぞ良い晩をお過ごし下さい。


B&W1-pos.jpg次回作のため、口ひげを携えて登場したマーク・チャオ。ドラマ「ブラック&ホワイト」で俳優デビューを果たしたのち、ニウ・チェンサー監督やチェン・カイコー監督など、そうそうたる名監督に愛され、12年だけでも4本の映画に出演し着実に俳優の地位を確立している彼の輝かしいキャリアの裏には、妥協を許さない演技に対する姿勢があってこそだと、舞台挨拶での監督の言葉、劇中のあらゆるシーンで理解することができるだろう。「こんなこと本当にスタントなしでやっちゃうの!?」というくらいの迫力満点、かつ危険度満載のシーンは息つく暇もないくらい観客を魅了することに成功している。
マークを発掘した生みの親でもあるツァイ・ユエシュン監督と再タッグを組んで臨んだ今作は、劇中同様「男の友情」「信頼」から誕生した、今までにない新しい台湾映画の風を吹き込んでくれた一作、と言っても決して大げさではないだろう。 (木村 友美)

torasan-s500.jpgtorasan-1.jpg『山田洋次の軌跡』山田洋次トークショー

ゲスト:山田洋次監督、浜村淳
2012年8月18日(土)、京都・南座にて

名匠・山田洋次監督(80)のすべてが見られる「山田洋次の軌跡」が8月18日、京都・南座で始まった。山田監督の監督生活50周年企画で監督作品全80本をすべてフィルムで上映する貴重なレトロスペクティブ。開幕初日には浪速の名司会者・浜村淳さんとトークショーを行い、48本続いた寅さんシリーズの裏話などを山田監督が披露、詰め掛けた満員の観客は大喜びだった。


浜村:伝統ある南座での全作上映は意義深いですね。
山田洋次監督: (南座は)海外で言えばオペラ座やスカラ座に匹敵するようなところ。こんな場所で僕の映画をやることがうれしい。観客として来たことはあるし、秋には新派の舞台で『麦秋』を上演するので最近はよく来ている。京都は映画、とりわけ時代劇発祥の地。伝統は絶やしたくない。
 
浜村:南座の舞台上に懐かしい寅さんの「くるまや」のセットが作られてますね。
山田洋次監督:寅さんシリーズは28年間、48本やったが、第1作で“くるまや”のセットを作って、バラして次に使う、毎年大事に使っているうちに愛着がわきましたね。みんなそんな思いでやってきた。衣裳も同じ。セットも年季が入っている。自然とそうなっちゃったのがこのシリーズです。

torasan-s1.jpg浜村:今回は全作フィルム上映だが、これが最後になるかもしれない。
山田洋次監督:映画はサイレントからトーキーになり、カラーになり、今はCG全盛時代。デジタル化は表現の幅を広げたというよりも主に経済的な理由が大きい。110年間、続いてきたフィルムが消えるのは大事件で、大変な変化の時期を迎えている。これから何が起こるか…。デジタルは50年間、ちゃんと保存出来るかどうか。フィルムなら大丈夫なんですがね。デジタルで撮っても保存はフィルムということになるでしょう。今のシネコンはデジタル上映で、映写機は要らなくなっている。フィルムの陰影を映すのが映画。劣化はするが、デジタルと違ってフィルムを通した映像は微妙な味わいが違う。音もスクリーンを通して出す。今回はそのために専門の業者に頼んで音響も満足出来るものになっています。何よりも大きな空間、高い天井、巨大スクリーンで見るのが本来の映画。この上映が最後のチャンスになるかも知れない。

浜村:映画館で見ることが大事ですね。
山田洋次監督:今はハリウッド大作がいっぱいあるが、お客さんは客席でシーンとして見ている。僕はお客さんがざわざわして、くすくす笑ってくれるのが理想的。お客さんが「オレもああいうところがあるかな」と親近感を感じてもらえたら、と思う。

浜村:山田監督作品もそうですが、かつては1 ~ 2分見たら監督が分かる、そんな監督さんがいました。
山田洋次監督:そうですね。黒澤(明)、小津、溝口(健二)監督たちは夜中のテレビで見ても、1 ~ 2分で誰の映画か、分かります。僕もそうなりたい、と思ってますが。

浜村:監督になって50年、最初から監督志望だったのか?
山田洋次監督:松竹に入ったころ、映画は最高の娯楽だった。ほかに遊び道具もなかった。映画館に行くだけでウキウキした。映画界に入るのは手続きが大変だし、コネもなかった。あちこち受けたがたまたま通ったのが松竹だった。最初は野村(芳太郎監督)さんの助監督をやったが、自分では監督は無理だろうから脚本家になりたかった。

torasan-s2.jpg浜村:野村芳太郎監督はあまり教えない人だそうだが、監督から学んだことは?
山田洋次監督:人間を客観的に見る、ということでしょうか。それは小津(安二郎監督)さんはじめ、松竹の伝統かも知れませんね。客観的に見たら人間はこっけいで面白いもんです。ただ、(野村さんは)作る作品ごとストライドを変える人なので“教えない”という評判になったんでしょう。

浜村:撮影現場では声を荒らげることもあった?
山田洋次監督:長い間やってるうちには大声を上げることもあったが、僕の理想は、静かだけど和やかな撮影現場。和気あいあいで楽しい雰囲気が大事ですね。渥美(清)さんの演技でみんな笑い転げてなかなか本番にいけないことがたびたびあって“いいかげんにしてくれよ”ということも何度かありましたけどねえ。『おとうと』では(笑福亭)鶴瓶さんが点滴に酒まぜるシーンがあって、僕が吹き出すこともあった。監督が吹き出すのは大事なこと。

浜村: 『男はつらいよ』はよく48本も続いた。それも失敗作などは1本もない。どうしてあんなに続けられたのか?
山田洋次監督:ある程度続き始めると、普段の生活、映画や小説などみるものすべてが(寅さんに)結びついていく。2 ~ 3本、もう出来ない、大変なことになった、と思ったこともあるが、どちらかと言えば楽しんで作ったという気持ちが強い。ラクに作れる方が楽しいものができますね。

浜村:寅さんではいしだあゆみマドンナの「 ~ あじさいの恋」が忘れられません。いしださんの演技も最高だった。いしださんに「頑張りましたね」と聞いたら、「私は監督のおっしゃる通りにやっただけです」と言ってましたが。
山田洋次監督:女優さんは皆さん、それなりの人生を歩んで来ていてその魅力が第一です。“そのままでいい”というのが第一歩。小津さんの映画でも、あれほど存在感があった笠(智衆)さんが「私は小津さんの映画では演技をした記憶がない。ただ人形のようにいわれる通り演技した」と言っておられました。

浜村:監督は「愛とは」「家族とは」、そして「幸せとは」というテーマをずっと貫いてきた。そこに落語的なテイストを感じさせた。
山田洋次監督:そうですね。噺家の立ち位置で話しかける、私の映画はそうありたいと思います。ユーモアは作って出来るものじゃない。武田鉄矢に渥美さんが「青年」と呼ぶだけでお客さんはドッと笑う。『男はつらいよ』で森川信さんが「バカだねえ」というとドッと笑いが来る。森川さんに「磨き抜かれた芸ですね」と言ったら「天賦の才ですよ」と言って笑ってましたが。


torasan-pos.jpg★『山田洋次の軌跡』全作上映は前半が9月23日まで。後半は10月6日から同24日まで3か月のロングランイベント(月曜休館、月曜祝日の時は翌火曜休館)。
日替わり上映は1作品500円。午前11時から「男はつらいよ」シリーズ、午後4時からは他作品上映。特別編2作品上映もある。
ほかに南座内ミニシアターで特別編集映像「京都から見た日本映画の歴史」と「男はつらいよ南座特別編集版」も上映される(300円)。「くるまや」セット体験コーナー(500円)など。(安永 五郎)

『監督生活50周年 The Work of Yoji Yamada 山田洋次の軌跡 ~フィルムよ、さらば~』公演情報はコチラ

rurou-s500.jpg『るろうに剣心』舞台挨拶(12.8.14 大阪御堂会館) 登壇者:大友啓史監督、佐藤健、武井咲、青木崇高

rurou-1.jpg(2012年 日本 2時間14分)
監督:大友啓史
出演:佐藤健、武井咲、江口洋介、蒼井優、青木崇高、吉川晃司、香川照之
2012年8月25日(土)~ヒューマントラストシネマ有楽町、梅田ブルク7、大阪ステーションシティシネマ、なんばパークスシネマ、神戸国際松竹、T・ジョイ京都他全国公開 ※8月22日(水)~24日(金)舞台挨拶付特別先行上映決定   公式サイトはコチラ
(C)和月伸宏/集英社 (C)2012「るろうに剣心」製作委員会

rurou-2.jpg和月伸宏の大人気コミック『るろうに剣心-明治剣客浪漫譚-』を、『ハゲタカ』の大友啓史監督が実写化。主人公剣心役には『仮面ライダー電王』でデビュー以来人気、実力共に若手筆頭株の佐藤健を迎え、幕末から明治維新に渡る激動の時代、一時は暗殺人として生きた男が人斬りを封印し、愛する人を守る真の闘いに挑む姿を描くアクション巨編だ。
本作の公開に先駆け、名古屋、大阪、東京、福岡の4大都市でキャンペーンが展開され、2日目となった大阪では、大友啓史監督、佐藤健をはじめ、神谷薫役の武井咲、相楽左之助役の青木崇高が登壇し、満席の観客の大声援に笑顔で応えた。大阪ならではの観客からの掛け声が飛び交い、熱気に溢れた舞台挨拶の模様をご紹介したい。


rurou-s2.jpg(最初のご挨拶)
佐藤:みなさんこんばんは。本当にこんなにたくさんの方に集まっていただいて、とてもうれしいです。今日は楽しんでいってください!
武井:こんばんは。大阪なのか、派手ですね(笑)今日は短い時間ですが、よろしくお願いします。
青木:どうもこんばんは。たくさんお客様が来てくださって本当にうれしいです。自分の名前が佐藤健じゃなくてよかったなと思いました(笑)
監督:お越しいただいてありがとうございます。ご期待に沿うような映画ができたと思いますので、今日はお楽しみください。

━━━多くのファンを持つ作品の映画化で、マンガから実写にするには大変なことがいろいろあったと思いますが。
監督:まず剣心は”神速”ですからね。やっぱり乗り越えなければいけないのは、その辺をどうやって作っていくか、勝算がないといけないですよね。キャラクターもエッジが効いているし、そういう意味ではまず剣心は彼以外できないという健くんが決まり(会場大拍手)、ヒロインとして武井さんが決まり、青木さんとか凄い俳優が集まってきたので、俳優がこれぐらい集まれば勝負できるなといった感じでした。

rurou-s5.jpg━━━結構自由に動いてみたいな部分もあったそうですが、そうすることで得られるものはありましたか。
監督:俳優たちが自分でやらなければいけないと自覚してきますから。特に健くんは小さい時から剣心の大ファンだから、最初想定しているレベルが高いんです。普通、ここまで引き上げるのが演出家の仕事なのですが、最初からモチベーションが高いので、逆に自由に泳がしておいた方がいいんですよ。泳げる環境やセット、メイク、コスチュームをちゃんと作りこめば、このチームはやってくれました。

━━━アクションが大変だったそうですが、やりがいや大変な部分はどんな点でしたか。
佐藤: 『るろうに剣心』の実写化を自分でやるようになった時点で、今までと同じではいけない。とにかくハードルが高かったです。剣心をやるんだったら原作ファンの人や自分が納得できるものでないと意味がないと思ったので、特別な作品になるだろうなという思いはありました。実際、大友監督と現場で作っていって、これは間違いなく代表作になるだろうな、今までの作品と全然違う特別な作品なんだという実感が沸いてきて、今日みなさんにそれを観ていただけるのがすごくうれしいです。

rurou-s4.jpg━━━青木さんも、アクションが大変だったそうですね。
青木:闘う相手が元格闘家なので、相当気合いも入りましたし、やっている中でアドレナリンが出るんですよね。
佐藤:昨年の夏の京都では多分異常なぐらい、現場自体がアドレナリンみたいな。
青木:あー出てる出てる!みたいな。ちょうどガムシロップみたいに、ネチョネチョみたいな(笑)。
佐藤:ドロッとした感じで、全員そうだったですね(笑)。
司会:ということは、武井咲ちゃんも、もちろんドロッとしたものが・・・?(会場大爆笑)

rurou-s3.jpg━━━出来上がった作品を観て、いかがでしたか。
武井:カッコよかったですね。実際現場のモニターで見たときも、本当に同じ人間なのかなというぐらいすごいアクションをされていて、私が見ていないアクションシーンもたくさんあったので、映画を見たときは「こりゃ、大変だっただろうに」と。
佐藤:女性でも楽しめましたか?男はとにかくああいうのが大好きだから、女性でも楽しめるのかなと思って。
武井:大丈夫ですよね!

━━━武井さんも、役に入り込む瞬間などはありましたか。
武井:息を止める芝居があったのですが、蒼井さんにも「あのシーンどうするの?」って言われて、「いや、わかんないんですよね」と話をしてたんです。いくら台本を読んでも分からないけれど、監督からも「あのシーン、がんばってね」と言われ、これは試されてるなと思って。実際に息を止めてみたのですが、そのとき涙が出て、その後鼻水が出て、よだれが出て・・・。

rurou-s1.jpg(最後のご挨拶)
青木:この映画は本当に突き抜けてます。これからご覧になる前のみなさんの顔を僕はじっくり見ておきます。観終わった後の顔をみたいのですが、ちょっと無理そうなので、みなさんそれぞれのガムシロップを出していただければと思います。今日はありがとうございました。
武井:とにかくカッコいい作品になっております。こんなにいい雰囲気の中、がんばって撮影しました。皆さんに観てもらえるのを待っていたので、是非とも楽しんでみてもらって、それをいろんな人に伝えて、何十回でも何百回でも観てください。お願いします。
佐藤:みなさん、今日は本当に来ていただいてうれしいです。ありがとうございます。言葉は要らないと思っていて、観ていただけたら分かると思うので映画については言うことはないのですが、公開日までに先に見ていただけるということで、もしよろしければ皆さんの力をお貸しいただければと思います。
 rurou-3.jpg監督:多分ここにいる武井さん、青木くんにとってもある種の代表作というか、ターニングポイントになっていく作品だと思います。本当にスタッフが今の時代に必要だと思える、愛される新しいヒーローと思って、昨年の夏京都の地獄のような暑さの中4ヶ月かけて作りました。そういう意味では、僕はスタッフも代表して来ているので、スタッフの熱意も含めて今日はみなさんに受け取ってもらいたいと思います。本日は本当にありがとうございました。楽しんでください。


rurou-s6.jpg剣心の役柄同様、精悍な顔つきで本作への想いを語る佐藤健。「言葉は要らない、観ていただければ分かる。」と自他ともに認める代表作となることを確信している姿はとても頼もしかった。紅一点となった武井咲にも会場から大きな歓声が飛び、思わぬ撮影秘話で爆笑を誘うシーンもあった。ムードメーカーの青木崇高がトークやフォトセッションを盛り上げ、大友監督流「泳がせて」撮るスタイルを経験した者ならではのチームワークの良さが感じられた舞台挨拶だった。
人間ドラマにアクションにと見どころ十分の『るろうに剣心』で、コミック原作ならではの豪華キャストによるキャラクター競演、そして、実写版剣心に心躍らせてほしい。(江口 由美)

sensei-s2.jpg (2011年 日本 1時間2分)
監督:内藤瑛亮  
出演:宮田亜紀、小林香織、大沼百合子、高良弥夢他
2012年8月25日(土)~第七藝術劇場、9月8日(土)~京都みなみ会館、9月22日(土)~神戸アートビレッジセンター他全国順次公開
公式サイトはコチラ
(C)2011 内藤組

センセーショナルなタイトルを聞いただけで胸がざわめく衝撃作『先生を流産させる会』がいよいよ関西で公開される。脚本も手掛けた内藤瑛亮監督が、実在の衝撃的な事件をモチーフに、性に嫌悪感を抱く思春期女子や、毅然とした態度で生徒と闘う先生の姿をエッジを効かせた構成で鮮やかに描いている。キャンペーンで来阪した内藤瑛亮監督に、映画化のきっかけや作品を通じて描きたかったこと、撮影秘話についてお話を伺った。


━━━本作の元となる事件を知った経緯をお聞かせください。
2009年3月ぐらいに報道されたのですが、最初はネットで見て、この言葉にギョッとしたんです。ネットの反響も実名を挙げろとか、死刑にすればいいという過激な処罰を求めていました。最近はインターネットやツイッターで意見を言えるようになり、それはいいのですが、意見の出され方が善意や常識、正義を後ろ盾にして間違った者をボコボコに叩きまくる傾向にあって、バッシング祭りをむしろ楽しんでいる。それは社会として不健康だと思いながら、まだ映画としては考えていませんでした。 

sensei-1.jpg━━━実際に映画化しようと思ったきっかけは何ですか。 
自主映画の短編『牛乳王子』(2008)を撮りました。自主映画は映画祭やコンペに応募して通ればようやく人に見てもらえる訳ですが、『牛乳王子』はあまり評判が良くなかったんです。そこでほめられている映画というのは夢を追いかける若者の青春映画や恋愛映画で、自分の作品は未熟なところがたくさんあるけれど、こんな映画に負けるつもりはないと思う反面、そういう作品が評価されて、観る人がたくさんいるという現実は受け止め、そういう人たちにも届く映画を作らなければいけない。俺はホラー映画が好きだという趣味の部分で作っても、観てもらえなければ意味ないなと思っていたんです。社会的事件を題材にすれば、そういう人たちにも観てもらえるし、自分も興味が持て、実際にホラー映画は実在の事件を取り上げることを伝統的にやってきているので、図書館に行って新聞記事を調べはじめました。そのとき流産をさせる会事件に再会したんです。ぱっと冒頭の田園のシーンで女の子が歩いているのが思い浮かんで、「俺が求めているのはこれだ!」って思いました。そこから映画にしていった形ですね。

━━━この事件を脚本に仕上げていく際に変更した点や膨らませた点はどんな部分でしょうか。
一番衝撃を受けたのは「先生を流産させる会」という名称でした。劇中でも描いていますが、胎児は人ではないから流産させる行為は殺人罪にはなりません。でも、「先生を殺す会」より「先生を流産させる会」の方がはるかにまがまがしい。映画美学校の先生である井土紀州さんが、「物語は常に逆説的であるべきだ。」と語られていて、これだけこの言葉に拒絶感を感じる、この拒絶感って何なんだろうと考えていけば、逆に我々が大切にしたいものが見えてくる気がしました。

そのときに、男子生徒を主役にしてしまうと、この言葉の怖さに近づけないと思ったんです。妊娠していることにもっと嫌悪感を感じるキャラクターでないと、この言葉に対する違和感に近づけない。女の子は妊娠できる体に徐々に変化していて、否応なしに受け入れなければならない。当然イヤな人もいるはずだ。そうしたら、この言葉のおぞましさに近づいていけるなと思いました。

━━━主人公を男子生徒から女子生徒に変えたのは、一番大きなポイントですね。
男性の監督がこういうことを描くことに「えっ」と思われることが多いですが、女性だから女性のことを描けるとか、男性だから男性を描けるということは決してなくて、むしろ異性だから距離感を保てている部分もあるんです。男性として、あれは何だろうと10代の頃から抱えていた疑問というのをこうやって描けた感じです。

事実を変える部分に関しても問題はないと思っています。描きたいテーマに対して、最も伝わりやすい方法を選ぶべきで、事実を事実のまま描いたら真実に近づけるかといえばそうではないのです。真実を描くためには、もっと自分なりに工夫しなければいけない。犯罪実話ものを見ても、事実はこうだろうけど、結局何が言いたいのかよく分からないと感じることがあります。事実と違ってもテーマが描けていれば、そちらのほうが正しいと思います。

sensei-2.jpg━━━モンスターペアレンツやそれに対応する先生、悪いことと知りながら群れて突き進む生徒たちと、学校現場の生々しい様子が描かれていましが、リサーチをされたのでしょうか。
学校で働いている先生に取材したり、教育関係の文献も色々読みました。女の先生の描写に関していえば、最初から怒っているような先生なのですが、担任が発表されて先生に会う第一印象で子どもたちは先生をなめてもいいかどうかを決めてしまうそうです。最初厳しくいくことが大切で、この女の先生はある程度学校で経験してきているから、ああいう厳しい表情になってしまう。だから完璧な先生としては描いていなくて、ちょっといきすぎたところはあるけれど、そういう形でしか向き合うことができない現状だと描きたかったです。

保護者の描写に関しては、一時期モンスターペアレンツが流行っていて、テレビでもある種面白おかしく報道されていましたが、モンスターという名前で片付けてしまうと、その親に向き合おうとしなくて済むところがあって、それでは良くないんじゃないかという思いがありました。謝らない親が存在しているこの世界で、どうやって向き合っていくのか。親としてもその立場で自分の正義をもって、自分の正しさを求めて行動していると思うんです。それは先生の立場もそうだし、生徒の立場もそうで、流産させようとしているその子どもたちも自分たちの正義にそって闘っているし、先生も自分の先生という仕事にプライドをもって闘っている。それぞれの正義がぶつかり合う場所を物語という世界である程度整理して、お客さんに考えてもらうことが必要かなと思いました。

━━━生徒たちのざわっとした会話の中で、「キモイよね」という言葉だけが効果的に浮かび上がっていましたね。
90年代からナチュラルな芝居がすごく流行って、しゃべり言葉のように物語に奉仕しない会話があって、映画もどんどん長くなっていくし、セリフも多い。僕はそれがすごく嫌で、まわり道しないで話の中心に行くつもりで、どんどん削っていきましたし、できるだけセリフは書かないで必要なものだけにしました。62分という長さも、もう少し長くするつもりでしたが、どんどん削ったほうがやりたいテーマがとがった形で見えるなと思いました。

━━━逆に、数少ないサワコ先生とみづきとの会話に純粋さからくる憎悪の感情が見えました。
サワコ先生とみづきが向き合ったシーンで先生が「なんで流産させたいの。」「気持ち悪いから。」「気持ち悪いの。」「知らん。」というセリフは、エスキロールという精神医学者が、義理の母をすごく憎んでいて殺したいという殺人衝動にとりつかれ七歳半の女の子を診察したときの会話を元にしています。本人も分かっていないけど感覚的に嫌だというのが10代にある、その会話のそっけない感じは参考にしました。

sensei-s1.jpg━━━みずきに対して最後まで先生としての立場を全うする描き方をしたのはなぜですか。
この物語をどう着地させるのか、すごく悩みました。サワコ先生がみずきを殴り殺すという展開も一度書きましたが、結局そういう子どもをこの社会が拒絶する話になってしまうんですよね。暗い衝動を抱える子どももこの世の中にはいるし、生きていかなきゃいけないのに、拒絶する話でいいのか、絶対殺してはいけないということで共同脚本の2人(松久育紀、渡辺あい)と再考し、流産は描くとして、その上で大人がどう対応していくのか見せることにしました。

学校の先生に取材で、生徒にいくら厳しいことを言っても伝わらないとき、どう考えて対応しているかお聞きしたとき、「確かにいくら努力しても伝わらないときもあるし、変わらないときもある。でも我々は教師なのだから、最後まで態度を貫くことが大事なんだ。教育はすぐ伝わることもあるし、何年かしてようやく伝わることもあって、そういう種を蒔き続けなければいけないし、拒否したり、逃げ腰になってはいけない。逃げたことを子どもは学んでしまう。」とおっしゃったんです。サワコ先生の行動も、物語としては先生として貫いた姿を見せることに意義があると思っています。

あと、自主映画を撮っていたので、どうしても10代や20代のモラトリアムの姿勢で描かれることが多くて、それに対する苛立ちもありました。自分ももうすぐ20代が終わることもありますが、大人として向き合わなきゃいけない物語を描かなければと思った部分はありますね。

━━━サワコ先生を演じた宮田さんに、演技やキャラクターについてどんな指示をされましたか。
キャラクターについて話し込むというより、リハーサルをしてシーンごとに「こういう強さのトーンでいってほしい。」とか、この子達に対してこう闘うとか、ここでは負けてしまうとか、子どもとどういう姿勢で向き合うかということを説明していきました。最後にみずきを守るシーンで、一度脚本に書いたものの削除したことがあり、その脚本を宮田さんに渡すと、「何であそこを削除しちゃったの。あそこを演じたいんだけど、ここは大切だと思う。」といわれて復活させたんです。そこがある種“越える”部分でしたね。

━━━初演技となる子どもたちに、事件を起こした生徒役の演技をどうやって指導したのですか。
演技力というよりは生々しさが必要なので、事務所の子ではない人が必要でしたが、こういう題材だし、なかなか演じてくれる人が見つからなかったです。ワークショップ式のゲームに参加してもらいながら進めていったので、本人たちは、役とか役柄とかは全然考えてないし、こちらもそんなに深く説明しなくて、感覚的なことを伝えました。現場では「あの人むかつくからずっと睨んでて。」とか「じっと見てて。」といったぐらいの演出で、あまり縛らないようにしようと思いました。本人たちも全然緊張してなくて、本当に遊びまわっている感じで、その素の部分も残しておこうと思いました。カットをかけた後の顔だとか、撮影とは関係ないところの顔を撮ったり、集中力が続かず飽ききった集中力ゼロの顔も面白くて、空洞っぽい怖さがあるなと思いました。

━━━最後に監督からのメッセージをお願いします。
映画作りに関して、今はできるだけ最大公約数を狙うようなところがあると思います。でも「僕がこう考えている」と鋭く出したほうが伝わると思うし、怒る人がいることは悪いことではなくて、それだけその人の主張がピシッと出ている訳で、作品として僕はこの問題をこう捉えた、あなたはどう思いますかと問いかける。作品を通じてコミュニケーションを取ることはむしろ健全だと思います。どういう風に感じるのか、自分は10代のときにどうたったのかを考えてもらえれば、作り手として目指しているところだし、うれしいなと思います。


教育現場と生徒、親との力関係をさらけ出しながら、生徒である少女のギョッとするような残虐さを62分という短い時間でストレートに描写した潔さや、映画的表現力のセンスの良さに驚かされた本作。タイトルを見てざわめいた感覚を突き詰めると、命とは、教育とはといった永遠の命題にたどりつく。そして、そこには、自主映画の世界から一歩踏み出して、作品を通じて社会と健全なコミュニケーションをとりたいという内藤監督の映画作りに対する姿勢が映し出されているのだ。将来頼もしい若き才能が放つとんでもない青春映画に、ホラー的要素を絡めながら真摯に問題に向き合う、未だかつてないエンターテイメントの姿を見た。(江口由美)

hazimarinokioku-s2.jpg『はじまりの記憶 杉本博司』杉本博司×中村佑子監督トークイベント(2012.8.5シアターセブン)
(2011年 日本 1時間21分)
監督:中村佑子
出演:杉本博司、野村萬斎、李禹煥、野村萬斎他 
ナレーション:寺島しのぶ
2012年8月4日(土)~第七藝術劇場、京都シネマ他全国順次公開
公式サイトはコチラ

世界で活躍する現代美術家杉本博司に初めて迫ったドキュメンタリー『はじまりの記憶 杉本博司』。写真家としてキャリアをスタートさせてから、アートを「人間に残された最後のインスタレーション」と表現し、時には世界創造神話にまで想いを馳せ、時にはどこにも存在しない世界や、見えなかったものを可視化する唯一無比の表現を続けている杉本や彼の作品の魅力に迫った上質な作品だ。本作の公開に合わせて、大阪十三シアターセブンにて杉本博司×中村佑子監督トークイベントが開催され、満席の観客の前で時には笑いも巻き起こる濃厚トークが繰り広げられた。その模様をご紹介したい。


杉本:はじめまして、杉本博司です。今日は1時間ぐらい前に着いたので、この辺りを見学したのですが、非常に濃いところですね。活気があって、僕が子供の頃の東京はこういう感じだったんです。懐かしい感じで、僕はキレイになってしまった東京よりも、こういう所の方が性に合うなと、非常に懐かしい思いをしました。今日はありがとうございます。

監督:本日は暑い中、日曜の昼間に集まっていただき、ありがとうございます。
写真家として活動されて、ファインダーを覗くということをやってらっしゃった方なので、こういう形で切り取られて、いかがでしたか。

杉本:なんとなく居心地が悪いというか、本当にそうなのかなと。映画をご覧になって、杉本像がねつ造された訳です。一回「自分で編集させてもらえないか。」と聞いたことがありますよね。絶対イヤだと言われましたから、僕は作品になるための材料として扱われている訳です。長編ドキュメンタリーはアメリカとイギリスで一本ずつ作っているのですが、お国柄やディレクターで全然違います。向こうのドキュメンタリーは本人の発言だけで編集するのが基本です。これは情緒的な日本文化で、寺島さんがいい声で包み込むように語りかけると、なんとなく「この人はこういう人なのかな」と思わせる力はありますよね。

hazimarinokioku-1.jpg 監督:そこに関しては、すごく言いたいことがありまして。テレビ番組が元になっているので、劇場化が決まったときに、ノーナレーションで映像に物を言わせたものを作ろうと思ったときも実はあったんです。私はテレビドキュメンタリーを普段作っている者なので、テレビで培った映像と音楽とナレーションとを緻密に編み上げて言いたいことをいうテレビ的方法論を突き詰めた方がいいのではと。杉本さんのようなコンセプショナルアートの方で、あまりそれまで説明してこず、ポンと投げて感じろと言ってこられた方に対して、ナレーションを書くことは逆にものすごく勇気がいるんですよ。自分としての挑戦をすべきだろうと思って、あえてナレーションをつけ、編み上げました。

杉本博司ファンはある程度好きな訳だから、日本人でこれだけ活躍している杉本さんのことを知らない人にとって、どれだけ深くまで切り込めるかという点です。(テレビは)震災後色々言われて差別される向きがあって、私自身もそういう時もたくさんありますけれど、実は日本的な構成の妙、本当に緻密に編み上げる力、全く知らない人に伝える力はものすごく持っていると改めて思いましたね。

杉本:でも伝える方向や意味付けはかなり自由裁量でね。例えば太平洋戦争で日本が全員で突き進んで行くときに、逆にメディアの方が先に突っ走って、行政機関がそれを追認せざるをえなくなった。大規模な国民的付和雷同みたいなものを形作るメディアの力はものすごく大きいし、怖いと思う。特に戦争に至る経緯は、アメリカに居ながらアメリカ人にどう説明しようかと。非常に良くないですね。

hazimarinokioku-2.jpg監督:今杉本さんは、太平洋戦争にまつわるものすごいコレクションを持たれていますが、今集められていることをどういう形で発表していくのでしょうか。

杉本:物証として色々あります。開戦の12月8日の各新聞トップの見出しとか、終戦の新聞など。その間毎日と朝日が販売部数競争をしているんです。過激な現場報告をすればするほど売れるという状態で、戦争のおかげで発行部数が倍々ゲームになったんですよ。何が目的なのか、事実の報道が目的か、他社との競争かということになり、結局大衆の扇動要素になったのです。世論がどうやって作られるかは日本的な独特の形があるんですよ。

監督:杉本さんが(集められたものを)パッと手にとって、そこからどういうビジョンを描いているのか知りたかったということもありました。

杉本:こういうことが起こったときにどういう風に動くかと、震災のときもそうですが、日本人独特の精神性というかメンタリティー、共同で動く心の原理は、日本人以外の人たちと非常に違うのではないかと外国に住んでいると特に思います。仏教を6世紀半ばに受け入れたときどう思ったかとか、日本人が古来の神々にどう折り合いをつけたのかとか、縄文時代から絶対変わらない心の持ち方があるんです。

hazimarinokioku-s1.jpg監督:皆さん感じていらっしゃると思いますが、杉本さんはしゃべり始めると本当に大学教授のように止まらないのです。映画の中の姿そのものですが、どれだけ私がかなり分かりやすく編集したか分かっていただけるかと思います(笑)。

杉本:一般化していて、濃いところの問題発言はかなりカットされていますから。

監督:杉本さんの問題発言は、本当にすごいレベルなので、それはまたいずれパート2で。

杉本:裏バージョンを作ってもらいたい(笑)。

監督:アメリカで活動され、そして日本にエネルギーを逆に返してくださる杉本さんは日本の希望の星で、ここで一旦杉本さんの終わりなき活動を止めて見せたということで、この先ずっと私を裏切り続けていただきたいです。

杉本:写真はもうだいぶ終わりに近づいてきています。フィルムもなくなるし、紙もなくなるし。今はパフォーマーの方に入ろうとしています。自分でやらないとつまらないというか、脚本を書くのもそうですが、来年はニューヨークのローリー・アンダーソンとの共演で『滝の白糸』という無声映画の弁士をやります。彼女が「私も弁士をやる」と、溝口健二の映画をローリー・アンダーソン流にブチブチに切ってランダムに見せながら、彼女が英語で僕が日本語で弁士をするのです。

あと杉本文楽が橋本政権下で問題になっていますが(会場爆笑)、パリに招かれて10月に行きます。多分その凱旋公演として大阪公演はやろうと思っています(会場拍手)。どこでやるかはまだ決まっていませんが、来年中にはやることになると思います。ご期待ください。

(最後の一言)
監督:今日はお越しいただいてありがとうございました。気に入っていただけたらうれしいです。
杉本:これは杉本のほんの一面だけだと思ってください。『月見座頭』という狂言が私は好きなのですが、人間はいい時も悪い時もあるという狂言なんです。この映画はいい人の面しかなくて、悪い面もいっぱいあるのですが、そこは次の機会に。


異国にいるからこそ感じる日本人の精神性について、史実の出来事や芸術を例に挙げながら解説する杉本氏と、とにかくスケールの大きい類まれな芸術家の魅力を分かりやすく届ける挑戦に挑んだ中村佑子監督とのトークに、満員の観客からも大きな拍手が起こった。本作で杉本博司とその作品の崇高さに触れる至福の時間を、ぜひ体験してほしい。(江口 由美)

kaurimasuki.jpg

アキ・カウリマスキ監督最新作『ル・アーブルの靴みがき』が8月18日(土)から公開されることを記念して、東京に引き続き、京都みなみ会館で全20作を一挙上映する特別上映『おかえり!カウリマスキ』が開催される。

長篇デビュー作の『罪と罰』や、敗者三部作『浮き雲』、『過去のない男』、『街のあかり』をはじめ、貴重な短篇にいたるまで、アキ・カウリマスキ監督の軌跡をじっくりと堪能したいスペシャル企画だ。


『ル・アーヴルの靴みがき』8/18(土)~公開記念!【特集上映:おかえり!カウリスマキ】詳細はコチラ 

映画ニューストップへ

『きっと ここが帰る場所』缶バッジトプレゼント!kittokoko-pre.jpg

 提供

・募集人数: 3名様
・締切 :2012年 8月 15日(水)

・作品紹介⇒コチラ 
・公式サイト⇒ http://www.kittokoko.com/
 

(2011年 イタリア・フランス・アイルランド合作 1時間59分)

監督:パオロ・ソレンティーノ

出演:ショーン・ペン、フランシス・マクドーマンド、イヴ・ヒューソン、ハリー・ディーン・スタントンほか

©2011 Indigo Film,Lucky Red,Medusa Film,ARP,France 2 Cinema,Element Pictures,All Rights reserved.

2012年6月30日(土)~ヒューマントラストシネマ有楽町、シネマライズ、7月7日(土)~シネ・リーブル梅田、シネマート心斎橋、7月14日(土)~シネ・リーブル神戸、7月21日(土)~京都シネマほか、全国順次ロードショー

 


 

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