「京都」と一致するもの

bardman-pos.jpg『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』
オリジナルクリアファイル プレゼント!


■ 20世紀フォックス 提供

■ 募集人員: 5 名様

■ 締切:2015年4月30日(木)

2015年4月10日(金)~TOHOシネマズ シャンテ、TOHOシネマズ(梅田、なんば、二条、西宮OS)、MOVIX京都、ほか全国ロードショー
 
★作品紹介⇒ こちら
★公式サイト⇒ http://www.foxmovies-jp.com/birdman

 


 
『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』


本年度アカデミー賞 作品賞・監督賞・脚本賞・撮影賞 最多4部門受賞!!
アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ監督・脚本・製作、マイケル・キートン主演の傑作コメディ映画『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』が
いよいよ公開!


bardman-550.jpgかつて世界的大ヒット作『バードマン』シリーズの主演ヒーロー役で一世を風靡したリーガン(マイケル・キートン)だったが、シリーズ4作目の出演を断ってから役者としても私生活でも低迷を続けていた。そこで役者としての再起をかけたブロードウェイ公演に挑戦! その大事な公演前のナーバスな状態の中、リーガンはいつしか自分に鋭く問いかける〈バードマン〉の幻影につきまとわれる。才能ある共演者の身勝手な振る舞いや、思うように集まらない製作費や離婚した妻と暮らす娘との関わりなど、追い詰められた彼の心情をバードマンが代弁しているのか、次第に幻覚か現実か区別がつかなくなる。

このリーガンを演じるのは、かつて『バットマン』シリーズで活躍したマイケル・キートン。彼自身と重なる部分も多く、ドラマの中のキャラクターなのかマイケル自身なのか、これまた区別がつかなくなる。さらに、ハリウッドスターたちの実名がポンポン飛び出すスキャンダラスな会話や業界内のマジックなど、舞台裏をリアルタイムで見ているような迫力で惹きつける。こんな危うい主人公を実体験に基づいて演じているのか、マイケル・キートンの一世一代の役者ぶりは必見だ。

息遣いや体温までも伝わってくるような求心力で人間を描出するアレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ監督の傑作が、またしても生まれた。


BiRDMAN OR (THE UNEXPECTED ViRTUE OF iGNORANCE) 
2014年 アメリカ 2時間

監督・脚本・製作:アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ 
撮影:エマニュエル・ルベツキ
音楽:ドラム・スコア:アントニオ・サンチェス
出演:
マイケル・キートン、ザック・ガリフィナーキス、エドワード・ノートン、アンドレア・ライズブロー、エイミー・ライアン、エマ・ストーン、ナオミ・ワッツ、リンゼイ・ダンカン他

2015年4月10日(金)~TOHOシネマズシャンテ、TOHOシネマズ(梅田、なんば、二条、西宮OS)、MOVIX京都、ほか全国ロードショー

 

 

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『地球交響曲(ガイアシンフォニー)第八番』龍村仁監督インタビュー
 

~「樹の聖霊」の声を聴く日本人のマイスターたちに迫る、深遠なドキュメンタリー~

人間の命は長い歴史の中でほんの一瞬だが、樹は何百年も、いやそれ以上に生きているものもある。「樹」の精霊の声に耳を傾けるという『地球交響曲(ガイアシンフォニー)第八番』のコンセプトは、今まで一度も『地球交響曲』シリーズを観たことがない私も躊躇することなく見たいと思わせる魅力があった。
 

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今までのシリーズでは外国人3人、日本人1人にフォーカスしてきたという構成だったそうだが、今回は樹の精霊の声に耳を傾ける日本人のマイスター3人を取り上げ、東日本大震災後、彼らが樹と共に復活の一歩を踏み出すまでが描かれる。まずは、600年間眠り続けてきた能面「阿古父尉(あこぶじょう)」を復活させる『樹の精霊に出会う』。能面打、見市泰男さんが、一刃一刃精霊と向き合いながら甦らせていく様や、奈良県吉野山中の天河神社で行われる様々な神事を通して、日本人は古来から目には見えない大事なものといかに対話を重ねてきたか実感する。

 

また、『樹の精霊の声を聴く』では、ストラディヴァリウスをまるで生き物のように扱いながら修復していく様子や、東日本大震災後、震災で倒れた樹からヴァイオリン製作者の中澤宗幸さんが「津波ヴァイオリン」を制作し、奉納演奏が行われるまでも密着。樹の精霊との対話から作り出されるヴァイオリンが、さらに奏でられる音を沁みこませ、さらなる名器へと進化を遂げていくのだ。

 
そして、『心に樹を植える』では早くから海の汚れの原因が森の荒廃にあると気づいた牡蠣養殖業者・畠山重篤さんの植林運動が、東日本大震災後の気仙沼を見事に復活させていく様子を綴る。一見関係のないように見える樹が生命の循環に大きな影響を与えていることに、改めて感謝の意を表したくなる。日本人が古来から持ち続けている精神に触れるドキュメンタリー。92年の第一番から、まさにライフワークとして『地球交響曲』を世に出し続け、東日本大震災後の作品として、「復活」につながる物語を提示した龍村仁監督に、『地球交響曲』誕生のきっかけや、初公開までのエピソード、そして、「樹」にスポットを当てようとした理由について、お話を伺った。
 

■前売り券3000枚を手売りして劇場公開にこぎ着けた、『地球交響曲』公開秘話

―――今やライフワークとなっておられる『地球交響曲』ができたきっかけは?
続けようと思って続けた訳ではありません。毎回「これで終わりだ」と思って作っているので、結果として続いているのは観てくださるお客様のおかげです。第一番を作った頃は、「こんな映画にお客さんが観に来るわけがない」と映画館は一切上映してくれませんでした。結局「3000枚の前売り券をさばいたら2週間上映してあげる」という映画館が出てきたのです。映画は観られてこそ映画です。作る人と観る人との一対一の双方向の関係の中で、映像を観ながら観客が自分の中のクリエイティブな部分を動かすことによって映画は「生まれた」と言えるのです。ですから、観られる場がなければ映画とは呼べません。
 
―――では、その3000枚を監督ご自身で売り歩いたのですか?
無理だと思うでしょうが、売ることも映画作りと頑張って売ってまわりました。初めて同窓会に顔を出して、過去を振り返るのが恥ずかしいと思う自分を克服していきました。なんとか3000枚を売りきって、はじめて映画館で上映してもらったのが92年です。1年間販売活動をしました。初日、2日目以降は一度観客が減ったのですが、次第に当日券を買う人が増えてきたのです。
 
―――口コミで作品の評判が広がっていったのでしょうか?
『地球交響曲』はどういう映画と聞かれたら、説明しにくい作品です。有名な女優もでていないし、物語もないし、トマトや象がでるぐらいです。でもなぜ売れたかというと、観た人が自分で伝えにくい感覚を、この映画を観たら分かってもらえるのではないかという思いがあるからです。「あなた(友人)が観てほしいと思っているのなら」と、チケットを買ってくれたようです。あとは感動してくれるかどうかですが、ここに描かれていることは、実は日本人として生まれ、自身の深い部分では知っていることが呼び覚まされているのです。
 

■80年代に作った3分間ドキュメンタリーシリーズで、世間のニーズを確信。自発的に映画というメディアで世に問う。

―――なるほど、まず映画館で上映され、映画として成立するまでにも一つのストーリーがあったのですね。では、自然のことを考える先駆けとなったドキュメンタリー映画を制作し始めたのはなぜですか?
高尚なことではなく、私が80年代に手がけた仕事の経験からきています。当時セゾングループが一番勢いのある頃で、女性をテーマにした単発のスペシャルドラマを1社提供していました。経営者だった堤清二さんは詩人でもありましたから、ドラマを妨げてしまうような商品CMはやりたくなかったのです。セゾングループのコンセプトだった「お手本は、自然界。」が感じられるようなものを作ってほしいというご依頼がありました。低予算でという注文だったので、ドキュメンタリーの手法で世界中の人たちを取材した3分映像を88年まで全部で52本作りました。このCMは当時非常に評判となりましたが、そこで僕が確信したのは、世間はこのような手法の映像を求めているにもかかわらず、それに値する映像がないということでした。
 
―――では、全く初めての試みではなく、ある程度観客の支持を得る自信はあったのですね。
その後、セゾングループの経営が傾いたため、CMの仕事は終わってしまいましたが、映像の仕事を続けていくなら、この延長線上で何かできないかと考えました。通常、テレビドラマや映画の仕事は、会社が企画し、こちらに発注されて作ります。映像の仕事は受け身の仕事だったのです。でもこういうドキュメンタリーの内容ですから、作り上げてから世に問うという形がとれる唯一のメディアが映画だったのです。
 
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■東日本大震災からの復活に、日本人の奥底にある樹の文化からにじみ出るものが大切。

―――そうやって続いてきた『地球交響曲第八番』では、なぜ「樹」に焦点を当てようと思ったのですか?
生命体が地球という惑星に生まれて何億年も生き続けているのは、樹のおかげだということが科学的に証明されています。地球の大気圏を作っているのも植物ですし、大気中の21%が酸素であることを人口が増えてもなお保っているのは、樹を中心とした植物のおかげなのです。この『地球交響曲』シリーズは、まず人にフォーカスして、その方の生き方と、その方でなければしゃべれない言葉で綴っていきます。1本の中に外国人が3人、日本人が1人という割合でやってきたのですが、今回は東日本大震災が起こった事が非常に大きな影響を与えています。
 
―――第八番の本作では古くから「樹」の声を聴いてきた日本人のマイスターたちに密着しています。日本の「樹の声を聴く」文化を知る、貴重な体験ができました。
地球という惑星と生命体との間で一番大切なことを、日本の宮大工さんは樹に対する畏敬の念として、自分の経験の言葉でしゃべっています。もともと日本は樹の文化ですから、樹が単なる建築材料ではないという見方が強くあるわけです。樹に潜む精霊としか言いようがないのですが、それを感じ取っていろいろな文化の原点にしていく。それが日本文化の特徴です。
 
―――東日本大震災の影響を受けたとおっしゃいましたが、震災からの復活を感じさせる様々な試みが映し出されていますね。
震災後のあれだけ大きな津波は、誰かが制御できるものではありません。東日本大震災後、日本人はこんなにひどい目に遭っているのに恨むのではなく、いい方向に協力していくことができると支援をしてくれた海外の方から評価されました。本当は宇宙的スケールの中で我々が生かされているという体感が一番重要で、日本人はそれを樹との関係において、文化として持っているのです。震災以降の苦しみは、悪い奴はあいつだから、あいつをやっつければいいという浅はかな考え方では抜けられません。人知を遙かに超えた宇宙的タイムスケールで起こっていることに気付き、そういう悲劇を乗り越えるために、樹の文化の中から、何か滲み出てくるのではないかという思いがありました。
 

■制約こそクリエイションの母、少なくとも映画を作っていれば元気。

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―――樹と会話できるヴァイオリン製作者の中澤さんや、能面「阿古父尉」の復活までの様々な神事など、まさに樹に宿る神の声を、スクリーンを通して聞いているようでした。
コンセプトとしては、目に見えない、実在することは証明できないけれど木の精霊があり、それが日本の危機の時に復活し、一番大切なことに気づかせてくれる。そう思い、木にまつわる日本人の文化を表現できる人を探しました。気仙沼の漁師でありながら、樹を植える活動を続けてきた畠山さん。ヴァイオリンの名器、ストラディヴァリウスを修理するのに、樹の精霊の声をきちんと甦らせてあげようという文化的な考え方ができる中澤さん。そこから魂や音の蘇りが生まれてくることを、素直に受け止めることができる、日本人の精神的なバックグラウンド。最後にマルティン・ルターの「りんご」の言葉、「もしも明日世界が終わるなら、私は今日リンゴの木を植えるだろう」に到達できればいいなと思って、八番を作りました。一つのシーンがあるから、次のシーンが生まれる。だから編集がものすごく重要です。
 
―――編集はどれぐらいかかったのですか?
1年ぐらいですね。制約こそクリエイションの母である。それがないと、どんどん変化するだけで完成がない。なぜ『地球交響曲』を続けたのと聞かれますが、一つ終わる度に完成がないなと思うからです。もう75歳になりますが、少なくとも映画を作っていれば元気です。
(江口由美)
 

<作品情報>
『地球交響曲(ガイアシンフォニー)第八番』
(2015年 日本 1時間55分)
監督・脚本:龍村仁
出演:梅若玄祥、柿坂神酒之祐、見市泰男、中澤宗幸、中澤きみ子、畠山重篤、畠山信
2015年3月21日(土)~シネ・リーブル梅田、近日~元町映画館、京都みなみ会館他全国順次公開
公式サイト⇒http://gaiasymphony8.com/
(C) Jin Tatsumura Office Inc.

jinu-500.jpgコメディっぽくない!? 松田龍平主演のコメディ映画『ジヌよさらば~かむろば村へ~』舞台挨拶

2015年3月13日(金)18:00~大阪ステーションシティシネマにて
ゲスト:松尾スズキ(52歳)、松田龍平(31歳)
 

(2015年 日本 2時間01分)
・原作/いがらしみきお「かむろば村へ」(小学館ビッグコミックスペシャル刊)
・監督・脚本・出演:松尾スズキ
・出演:松田龍平、阿部サダヲ、松たか子、二階堂ふみ、片桐はいり、中村優子、村杉蝉之介、伊勢志摩、オクイシュージ、モロ師岡、荒川良々、皆川猿時、松尾スズキ、西田敏行
★作品紹介⇒ こちら
★公式サイト⇒ 
www.jinuyo-saraba.com  
・©2015 いがらしみきお・小学館/『ジヌよさらば~かむろば村へ~』製作委員会

2015年4月4日(土)~大阪ステーションシティシネマ、なんばパークスシネマ、MOVIX京都、神戸国際松竹 ほか全国ロードショー

 


 

~かむろば村へようこそ!金(ジヌ)捨ててこそ掴める運もある~

 

jinu-550.jpgのサムネイル画像「あまちゃん」が舞台を山村に移して再来か!? な~んて「あまちゃん」みたいなのどかでアットホームなドラマではない。監督・脚本を手掛けた松尾スズキを筆頭に、ムッツリ松田龍平を主演に、阿部サダヲ、松たか子、二階堂ふみ、西田敏行、片桐はいり、そして「あまちゃん」で人気が全国区となった劇団「大人計画」のメンバー等々、ひと癖もふた癖もあるような面々が勢ぞろい! 銀行員なのにお金アレルギーという変な恐怖症を抱えた主人公を取り巻く、東北にあるとある山村の、これまた不思議な人々の爆笑奇天烈物語である。
 

何せ予測不能の動きを見せる超個性派揃いなので、自称「神様」というじい様が現れても全く違和感がない。そこへ東京からお金を使わない自給自足の生活を求めて山村へやって来た高見武晴(松田龍平)のズレぶりが笑いを誘う。敢えて「コメディっぽくない松田龍平を起用する方がギャップがあって面白いかな」と思った監督。その計算は見事にアタリ!
 

jinu-3.jpg原作は、松尾スズキ監督が4コマ漫画家を目指していた若かりし頃、「残酷でシュール」な作風に憧れていたという〈いがらしみきお〉の「かむろば村へ」。〈赤べこ〉伝説のある奥会津の柳津(やないず)町をロケ地に選び、〈お金恐怖症〉の主人公が不思議な雰囲気の中、あれよあれよと村人の騒動に巻き込まれながら変化していく様子を活写している。役者の特徴を十二分に理解している松尾監督ならではの演出が功を奏したのだろう。


4月4日の公開を前に開催された特別上映会の舞台挨拶に、松尾スズキ監督と松田龍平が登壇。その異色コンビによる舞台挨拶も、どことなくファンタジーっぽい奇怪さで会場を沸かせていた。

以下は、舞台挨拶の詳細です。 (敬称略)


jinu-b-550-2.jpg   【最初のご挨拶】    
松田:沢山の方にお出で頂いて嬉しいです。ありがとうございます。
松尾:8年ぶりに豪華キャストで新作が撮れて幸せです。こうしたキャンペーンも頑張って行かなければと思っています。

――― 原作がコミックと言うことですが、いがらしさんのファンなんですか?
松尾:学生の頃4コマ漫画を描いていた頃からファンです。残酷だったりシュールだったりするアナーキーなところがカッコイイなと思ってました。

――― 映画化されることになってどんなお気持ちでしたか?
松尾:私が4コマ漫画家を目指していた時期に出版社をまわると、「いがらしみきおのようなマンガは要らないんだ」と言われ、挫折した思い出があります。それが巡り巡って私が映画化することになり、感慨深いものがありました。

jinu-b-di.jpg――― 主人公を松田龍平さんに決めた理由は?
松尾:いかにもコメディっぽい人を使うのは安っぽくなると思ったので、龍平君のようなコメディっぽくない人の方が落差があっておもしろいかなと。丁度その頃『舟を編む』で評価が高まっていた龍平君に出演して欲しいなと思い、コネを頼ってお願いしました。

――― 10年前の『恋の門』以来ですか?
松尾:そうです。まだその頃二十歳くらいでしたね。

――― 松田さんはどんな風に感じてこの役を演じたのですか?
松田:お金恐怖症という役は前例がなく、ファンタジーっぽい、お金が使えないなんて大変だろうなとか、後に引けないギリギリの状態を感じて演じました。

――― 松尾監督から具体的なオーダーはあったのですか?
松田:お金恐怖症という症状について測り知れないものがあったので、監督にご指導頂いて完成しました。
(それを聞いて、居心地悪そうな松尾監督)
――― 監督どうされたんですか?
松尾:今ちょっと差し歯が割れそうでした(笑)。
――― どんな指導をされたのですか?
松尾:二人で共有するイメージというものを実感として持つために、「自分の中でのイメージをこういう風にして」と言いました。

――― 大人計画のメンバーが沢山出演されていますが、最初から予定されていたのですか?
松尾:あまり若い人が出てこない映画なので、20年来のメンバーがTVや映画で活躍し丁度いい使い処になってきて、共通認識を持ってひとつの世界観を作るのに有効かなと思いました。

jinu-b-ryu.jpg――― 大人計画の皆さんとの共演は如何でしたか?
(またもや松尾監督が不測の動きをして松田龍平を笑わす)
松田:現場ですか?どうでしたっけ?
松尾:忘れないで下さい。
松田:笑いが絶えない温かい感じでした。個性的で面白く、「素」のような感じで、ホント面白い!

――― 場所は?
松尾:ファンタジックな感じもリアルに思えるような場所は、奥会津の柳津(やないづ)町です。有名な「赤べこ」発祥の地です。赤いべこが何かを助けたという伝説があって…
松田:長くなりそうですか?「べこ」って何ですか?
松尾:牛だよ!有名な「赤べこ」だよ!伝説の「赤べこ」がいたとか、いなかったとか?

――― 町の皆さんはとても協力的だったのでは?
松尾:様々なお年寄りが分け隔てなく出てくる映画でして、お年寄りをいっぱい見られるのがポイントです。集めるのも大変なのですが、そもそもそこにいっぱい居るということがラッキーでした。

――― 大阪のイメージは?
松尾:大阪公演の際には大体京橋界隈に出掛けるのですが、朝から飲んでいるおじさんと、朝から飲んでいるおねえさんと、出勤する人々が行きかう風景を見ていて「いいな」と思いました。
――― 大阪の人はお金について細かいですからね。大阪の人にはぴったりの映画だと思いますが?
松尾:そうですね。でも、ラストには「何すんねん!」と言われそうですが!?

jinu-b-ryu-2.jpg――― 松田さんは如何ですか?
松田:大阪に来ると、無駄に緊張してしまいます。笑いに厳しいというイメージがあって、余計なことをすると「シーン」となるのでは?と。
(手拍子をする松尾監督)(笑)
――― なんですか、それ?
松尾: “ラッスンゴレライ”やってくんないかなと思って。
松田:やらないですよ!(笑) 今は楽しい雰囲気で映画を見て帰って頂けたらいいなと思います。

【最後のご挨拶】
松田:ギリギリの武晴と、個性的で面白い村人を、声を出して楽しく笑って帰って頂けたら嬉しいです。今日はどうもありがとうございました。
松尾:キャスト・スタッフの甚大な努力のお陰で、ステキな映画に仕上がったと自負しております。4月4日から公開されます。ご家族、ご親戚、卒業生、どんな卒業か分かりませんが(笑)、「面白かったよ!」と薦めて頂けたら有難いです。本日はどうもありがとうございました。

 


 う~ん、どことなく異次元にいるような松尾スズキ監督にノせられて、いつになくにこやかな松田龍平さん。大阪に来ても緊張することはないですよ。大阪の人は飾らない人を快く受け入れますよ。もっと大阪を楽しんでくださいね。     (河田 真喜子)

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~戦後70年の今、戦場にいるかのような衝撃を体感する塚本晋也監督入魂作~

 
第二次世界大戦末期、フィリピンのレイテ島での日本軍の惨劇を描いた大岡昇平の傑作戦争小説『野火』。59年に市川崑監督により映画化された『野火』が、戦後70年を迎えた今、塚本晋也監督により新たな体感型戦争映画としてよみがえる。
 
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長年同作の映画化構想を練っていた塚本監督が自主映画という形で完成にこぎ着けた、まさに入魂作だ。自ら監督・脚本・編集・撮影・製作を担当するだけでなく、日に日にやせ衰え、飢えと闘いながら原野を彷徨う主人公田村を全身全霊で演じている。また、リリー・フランキー、中村達也といったベテラン勢の中で、豹変していく青年兵、永松を演じる森優作の存在が光る。
 
オーディションで永松役を射止め、本作で本格映画デビューを果たした大阪出身の森優作さんに、塚本監督や塚本組の現場でのエピソード、『野火』撮影を通じて得たこと、同世代に伝えたいことについてお話を伺った。
 

―――森さんが、大阪出身とは知りませんでした。初インタビューをさせていただけて、うれしいです。
がっつり関西ですよ。もともと関西弁は強くないので、たまに地元に帰って友達と飯食べていると「(関東に)カブレてる」といじられます。シネ・ヌーヴォも九条もはじめてです。昔はよくアポロシネマに行っていました。定番の『ターミネーター』シリーズとか、当時は映画イコール洋画というイメージがあり、洋画ばかり観ていました。
 
―――どういう経緯でオーディションを受けたのですか?
22歳のときに古厩(智之)監督のワークショップに参加して映画『「また、必ず会おう」と誰もが言った。』(13)に出演したのが、映画と関わるきっかけになりました。事務所に所属せず、フリーで次にチャンレジする機会を探していた状態がしばらく続いたときに、ワークショップで知り合った友人が『野火』のオーディションを教えてくれたのです。それまで塚本監督の作品を観たことはありませんでしたが、実は僕と同じ古厩監督の作品で役者として出演されていたことを後から知りました。戦争という題材も興味があり、オーディションを受けることに決めた感じです。
 

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―――オーディションでの塚本監督の印象は?
緊張感をなくしてくれているのか、すごく柔らかいイメージの方でした。でもそのイメージの中に真逆の強い意志を持った目だけがありました。「この目、すげえ」と思って、とにかく監督の目だけを見て帰ろうと、ずっと目を見ていました。
 
―――オーディションを受かったときはどんな気持ちでしたか?
もちろん「やった!」という気持ちはありましたが、それ以上にオーディションの時に(森さん演じる)永松が自分に近いものがあるなとずっと思っていたので、自分が演じたいという気持ちがあり、この役をできるという喜びが大きかったですね。
 
―――永松のどういう部分が、森さんご自身に似ていると感じたのですか?
すごく孤独を抱えた人物ですし、永松の純粋さが逆に危うい部分を持っています。関わる人によっては、どんな道にも振られるし、無知な部分も多い。でも孤独だから誰かに頼りたいという思いがすごくある人物で、僕自身に似ていると思います。
 
―――オーディションに受かってから、クランクインまでに、塚本監督から役作りの準備で言われたことはありますか?
「痩せろ、日焼けしろ」と言われました。元々はすごく白いので、日焼けサロンに行ったりしました。あとは葉っぱをちぎって紙で巻くような昔の煙草の吸い方ですね。塚本監督からはレイテ島の闘いに関する資料が送られてきたので、それを読みましたが、自分から調べたりはしませんでした。まず自分が戦地に行ったらどうなるのかということをずっと頭に置いて、その上で永松の役を演じました。
 

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―――塚本監督をはじめ、共演者がリリー・フランキーさんと少人数の撮影ながら、ベテランぞろいで緊張はしなかったですか?
田村を演じているときはもちろんですが、現場にいてカメラを撮っているときの塚本監督も、日ごろとは全く違う感じでした。やはり、目が凄かったです。
リリー・フランキーさんは、とてもフラットな方ですね。リリーさんと話したことを思い出すと、クスッと笑えることが多いです。前半は埼玉の深谷で撮影したのですが、待ち時間にリリーさんと竹とんぼをしたときに、リリーさんはめちゃくちゃ上手なのに、僕はうまく飛ばせなくて「森君、めっちゃヘタクソだねー」と言われたのがすごく印象にあります。そこから1か月後の沖縄ロケまでに、僕はさらに役作りのため痩せなくてはいけなかったのですが、痩せてくると色々なことに敏感になって、すぐにイライラしたりしていると、リリーさんが「森君、めっちゃ疲れてるねー」と声をかけてくれたり。これも思い出すとクスッときますね。
 
―――塚本監督からはどんな演出をされましたか?
僕を理解した上で演出してくださったのだと思います。「それもいいですね。でも次はこっちをやってみましょうか」といった感じで、いきなりダメと言うのではなく、柔らかく演出してくれました。怒鳴られたりはしませんでした。
 
―――少人数で製作された自主映画ですが、現場では演じる以外にも何か手伝ったりしましたか?
空き時間に死体造詣を一緒に作りました。死体を黒く塗るのですが、スタッフさんに「森君、それ少し薄い」と言われながら、塗っていましたね。皆が試行錯誤で、手が空いている人は分からなくても自分で考えてやる現場でした。前の現場は小規模でしたが、周りに制作会社の方など、映画に関わるスタッフ以外の人も大勢現場にいました。『野火』はそうではありませんでしたが、作っているのは同じ映画ですし、前の現場よりは自分がみんなと一緒に作っているという感覚が強かったです。
 

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―――一番難しかったシーンは?
一番最初、リリー・フランキーさん演じる安田に煙草を売ってこいと言われ、塚本監督演じる田村に「煙草を買ってくれ」と迫るシーンがあるのですが、一番できなかったですね。塚本監督が求めるものと、自分が演じるものとの差が大きかったと思います。
 
―――逆に一番最後の恐ろしい形相のシーンは、順撮りなので魂が入った感じですか?
あのシーンは、特に「こうしてやろう」と考えてはいませんでしたが、田村演じる監督の目とばっちり合ってました。撮影が終わった後、ご飯を食べに行ったときに監督から「今日は疲れたね」と言われたことを覚えています。
 
―――出来上がった作品をご覧になっての感想は?
観るたびに悔しさが増していきますね。より見えてくるところがありますし、演じていたときにどんな気持ちなのか思い出して「もっとできたな」と思うことがすごくあります。
 
―――ベネチア国際映画祭でワールドプレミア上映されましたが、お客様の反応は?
「これは、戦争を描いているけれど、本当のリアルじゃないでしょ?」と海外の方がおっしゃっていたのが、印象的でした。色々な見方があると思いますが、この見方が世界のスタンダードなのかなと。僕も『野火』に出演したから戦争のことを考えるようになりましたが、そうでなければ、そのお客様と同じような印象を持つのではないかと感じました。
 
―――塚本監督に『KOTOKO』のインタビューをさせていただいた時から、『野火』の構想を少し話されていたのを覚えているのですが、ずっと温めてきてようやくという意気込みや、その意気込みをこえるぐらいの想いを現場で感じることはありましたか?
並々ならぬ想いをお持ちなのは重々承知していますが、それを周りに見せることは変にプレッシャーになることを分かっていらっしゃるので、あえてそれを前面に出さずに、周りの人に居心地の悪くならないように接していらっしゃいました。多分、塚本監督ご自身は、すごく疲れたのではないでしょうか。
 

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―――初めての本格的な映画出演が、塚本組での仕事だった森さんですが、仕事をしてみての感想は?
友達にもどうだったのかと聞かれるのですが、僕自身の中では言葉にしたくない、そっと取っておきたいという気持ちがあります。今の自分が言葉で表すのはすごく難しいのですが、絶対にかけがえのないものですし、映画というものへの関わり方や、芸術の一部である映画の本質的な部分を体験させていただいたので、幸せ者以外の何者でもないですね。
 
―――森さんから、同世代の皆さんにメッセージをお願いします。
戦争という題材は結構重たいイメージがあるので、観るのに勇気がいるかもしれません。僕も戦争を知らない世代ですが、この映画に関わらせていただき、戦争が起こったらどうなるかと考えたので、若い世代の皆さんも『野火』を観て、自由に捉えてもらいたいです。そして何でもいいので、観終わって心に残ったものを書き起こしたり、吐き出したりしてもらいたいです。映画のスタッフのほとんどは僕と同世代で、全く知らない戦争を試行錯誤しながら作りました。そういう部分も含めて、観ていただければと思います。
 
(江口由美)
 

<作品情報>
 
『野火』
(2014年 日本 1時間27分)
監督・脚本・編集・撮影・製作:塚本晋也
原作:大岡昇平『野火』新潮文庫
出演:塚本晋也、リリー・フランキー、中村達也、森優作
2015年7月25日(土)よりユーロスペース、今夏シネ・リーブル梅田、シネ・リーブル神戸、京都シネマ、豊岡劇場他全国順次公開。
※第71回ベネチア国際映画祭コンペティション部門入選作
※第15回東京フィルメックス特別招待作品
※第10回大阪アジアン映画祭特別招待作品
公式サイト⇒http://nobi-movie.com/
(c)Shinya Tsukamoto/KAIJYU THEATER
 
第10回大阪アジアン映画祭期間中は、3/8(日)21:10~※終了、3/11(水)21:10~ シネ・ヌーヴォにて上映。
 
第10回大阪アジアン映画祭 公式HP http://www.oaff.jp/2015/ja/index.html
 

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写真後列左から永田守プロデューサー、富森星元さん、近藤龍人キャメラマン、石井裕也監督、周防義和さん、大野裕之プロデューサー、原田佳則さん、浜村淳さん
写真前列左から呉美保監督、真飛聖さん、坂田利夫さん、池脇千鶴さん、綾野剛さん、菅田将暉さん、原田美枝子さん、野村周平さん、藤本泉さん
 
 
シネルフレ協賛の「おおさかシネマフェスティバル2015」が3月1日(日)、昨年までの大阪歴史博物館から場所を移し、大阪北区のホテル エルセラーン大阪、エルセラーンホールで満席の416人を集めて行われました。ハイライトの表彰式では主演男優賞・綾野剛さん、主演女優賞・池脇千鶴さんら豪華ゲストの顔ぶれの登場に歓声とため息、そして大爆笑が巻き起こり、まさに大盛況のうちに幕を閉じました。
 

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同フェスティバルは、今年から大阪アジアン映画祭から独立し、自主運営による開催となりましたが、サポーター制度導入など多くの観客の支援を受け、一般チケットも、発売から50分で完売する人気ぶりとなりました。午前の部は、高橋聰同委員長により新出発となった「おおさかシネマフェスティバル」の挨拶の後、午前10時10分から特別上映『劇場版 神戸在住』を上映。上映後には、神戸市灘区出身の白羽弥仁監督と藤本泉(新人女優賞)をゲストに迎えたトークショーが行われ、神戸を舞台にした同作の裏話が披露されました。


昼食休憩後、午後1時からの表彰式では、同映画祭の創立メンバーでもある大森一樹監督が「『おおさかシネマフェスティバル』は約30年前にぼくと高橋さんがはじめた映画祭。始めたときは20代。今、新作を撮影しているので、来年は受賞者で出席したい」と挨拶。総合司会の浜村淳が、スペシャルサポーターによる花束贈呈の際も、登壇する度に盛り上げ、ゲストも観客も笑いっぱなしの1時間半。手作り映画祭ならではの一体感で、満席の観客からも大きな拍手が送られました。様々な角度から受賞者に切り込む浜村トークで、受賞者の思わぬ素顔を垣間見ることができた表彰式の模様を、ハイライトでご紹介します!

  

<表彰式ハイライト>

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【主演男優賞】綾野剛『そこのみにて光輝く』『白雪姫殺人事件』

「台本の最初の3行だけで(これはという)匂いがした。池脇さんは何があっても大丈夫なので、安心して演じた。(『新宿スワン』で金髪スカウトマンを演じることについて聞かれ)やりたくない役を探す方が難しい」

 

 
 
 
 
 
 

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【主演女優賞】池脇千鶴『そこのみにて光輝く』

「(かなりハードなシーンが多かったのではという問いに)台本がすばらしかったので、このシーンがイヤとか、この描写イヤというのはいっさいなかった。呉監督と相談しながら、(千夏が着用する)下着の生地などを決めていった」
 
 
 
 
 
 
 
 

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【助演男優賞】坂田利夫『0.5ミリ』
 
「あ~りがとさん~吉本入ってから存在感を出さなければと思っていたら、相方がたまたま『おいアホ!』といったので、僕は怒らずに『アホや』と答えたら舞台でウケた。それで家を建てました。サクラちゃんはすばらしい演技者。台詞の練習をしようと言ってくれた。悲しい場面でも本当に泣いてくれと(安藤桃子監督が)言うので、人にだまされたことを思い出して(泣かずに)余計に怒ってしまった」
 
 
 
 
 

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【助演男優賞】菅田将暉『そこのみにて光輝く』『闇金ウシジマくん Part2』『海月姫』
 
「今の日本にはないようなちょっと場末に生きる人たちなので、まずは煙草を吸う練習をした。(呉監督は)すごく楽しくて、はじめて監督をミポリンと呼んだ。シリアスなシーンで明るくしてくれた。監督(ご結婚)おめでとう。」
 
 
 
 
 
 

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【助演女優賞】原田美枝子『ぼくたちの家族』『蜩ノ記』
 
「(演技について)昔は自分がほめられたいという気持ちが強かったけれど、今は役の人の気持ちをみんなに伝えてあげるねという気持ちで演じている」
 
 
 
 
 
 
 
 
 

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【新人女優賞】真飛聖『柘榴坂の仇討』
 
「宝塚歌劇時代に、侍役は演じたことはあったが、女性役で時代劇に出演するのははじめて。歩き方が侍っぽかったので、所作から監督に指導いただいた。人生半分以上を男役として生きたので、女役としては3年目、これから女子として生きたい」
 
 
 
 
 
 
 
 

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【新人女優賞】藤本泉『アオハライド』『小川町セレナーデ』
 
「『劇場版 神戸在住』ヒロインの桂は、私の性格とは全然違う内気でナイーブな女の子なので、演じるのに苦労した。現場の撮影でも関西弁が飛び交い、関西トークがとても楽しかった」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

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【新人男優賞】野村周平『日々ロック』
 
「結構裸になるシーンも多かったが、歌うときはアホになってました」
 
 
 
 
 
【監督賞】呉美保監督『そこのみにて光輝く』
「呉さんには性の匂いがしないと言われ、私が撮ったらどれだけ男と女のエロスが撮れるのかと思っていたときにこの話をいただいた。(絡みのシーンの演出は)内心はドキドキだが、綾野さんと池脇さんがとても情熱を込めてくださったので、おまかせだった」
 
【脚本賞】石井裕也監督『ぼくたちの家族』
「いろいろなジャンルの映画を企画している。(次回作は満島ひかるを起用するか?との浜村の問いに照れ笑いをしながら)前向きに検討する」
 
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【撮影賞】近藤龍人『そこのみにて光輝く』『私の男』
「(司会の浜村から、男前なので俳優をしてみてはと聞かれ)レンズより前にはでられない。2作とも同じ北海道が舞台だが、内容的にもテーマ的にも違う。それぞれどうやったら、そこに出てくる人たちが、見ている人たちによく伝わるのか考えた」
 
【音楽賞】周防義和『舞妓はレディ』
「現代だが、京都のお茶屋の話。大阪弁や京都弁のアクセントを気にして作った。作詞で京都出身の種ともこさんに、アクセントのところで印をつけてもらった。こんな作曲は初めてだった」
 
【新人監督賞】杉野希妃監督『欲望』
欠席のため、実弟で『欲望』音楽担当の富森星元氏が登壇
杉野希妃監督のメッセージ:このたびは新人監督賞をいただきありがとうございます。3年前、新人女優賞をいただいた時のことを思い出します。そのときに第二の故郷のような大阪で貰えて嬉しいと申し上げましたが、今も同じような気持ちです。『欲動』は、日本、オランダ、タイ、インドネシアと様々な文化背景を持つスタッフ・キャストが集まり、私を支えてくださいました。この作品に関わった全ての方々に感謝の気持ちでいっぱいです。この度は授賞式に参加できず、残念でなりません。1月末にオランダで交通事故に遭い、現在は国内で入院しております。『欲動』の内容と同様に生と死に向き合う経験をし、今後の人生、映画づくりも少し変わっていきそうな予感がしています。
 
【特別賞】『太秦ライムライト』
脚本・プロデューサーの大野裕之氏が登壇。
「チャップリンのライムライトを日本に置き換えて作ってみたいと打診があり、(チャップリンの)娘さんに聞いてみたら、あなたが脚本をかくのならいいと言われた。演技経験もあるので、内側から取材をして脚本を書いた」
 
 
【日本映画作品賞】『そこのみにて光輝く』(永田守プロデューサー:TCエンタテイメント株式会社)
「この映画が最初のプロデュース作品。(日本アカデミー賞で8冠を受賞した)『永遠の0』は素晴らしいと思うが、多くの興行館を持ち、広く大人から子どもまで感動させるジャンルの年間50本ぐらいの中から選ばれた作品。『そこのみにて光輝く』は昨年日本で製作された600本の中の1位で、非常に光栄に思う」
 
【外国映画作品賞】『6才のボクが、大人になるまで。』(原田佳則氏:東宝東和支社関西営業所長)
リチャード・リンクレイター監督のメッセージ:おおさかシネマフェスティバル外国語映画部門で『6才のボクが、大人になるまで。』が作品賞に選ばれたと聞き、非常にうれしく思います。最高のキャストとスタッフに代わりまして、皆さまに感謝いたします。ありがとうございます。
 
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 「そして、ボランティアスタッフの皆さま、ご協力下さいまして誠にありがとうございました。」

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『みんなの学校』真鍋俊永監督インタビュー
 

~子どもも大人も共に学び、不登校ゼロを目指す公立小学校。

その日々が映し出す“可能性”~

 

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すべての子どもに居場所がある学校を作り上げてきた大阪市立大空小学校。「自分が作る学校」を掲げ、常に自分で考え行動することを子どもたちに問い、先生も子どもたちの目線に立って、彼らの声に耳を傾け、子どもに合わせた声かけや指導を行っている。徹底的に生徒と向き合う大空小学校の一年に密着したドキュメンタリー映画『みんなの学校』。そこには、真の教育とは何か。様々な個性を認め合い、共に学び生きるという姿勢で大人も子どもも全力でぶつかるイキイキとした学びの場の姿がある。

 
真鍋俊永監督に、本作の狙いや映画化した意図、大空小学校が公立小学校でありながら、このようなきめ細かな生徒に寄り添った教育ができる理由について、話を聞いた。
 

 
━━━テレビのドキュメンタリー番組から映画化にいたった経緯は?
最初に企画を考えたのは私の妻(関西テレビ)で、色々おつきあいのある障がい者団体の方から大空小学校の話を聞き、2010年暮れから2011年3月にかけて取材をさせていただいたものを、ニュース番組の中の特集として放映しました。そのときは10分という長さだったので、その後1年間取材をさせてほしいとお願いし、妻から引き継ぐ形で私が担当になりました。僕は大阪府の担当記者時代に、府立高校の退学者問題で高校の取材をしていたのですが、当時は担当の責任も重く、学校へもあまり行けずに、短期間の取材で終わってしまった苦い経験があります。今回は、1年間小学校の取材ができ、比較的自由に撮らせてもらえるということで、結局取材チームとしては138日取材をしました。
 
━━━最初から映画を想定していたのですか? 
最初は、1時間~1時間半ぐらいのドキュメンタリー番組という想定でした。1年間で撮った素材が500時間ぐらいあり、その長さでは正直きつかったのですが、時間がとれないということで、まずは47分番組を作りました。その番組が、同年の芸術祭に出品されることになり、90分枠で放映する75分番組を作り、芸術祭大賞をいただきました。僕はもともと映画にしたいと思っていたので、そこから現在の長さ(106分)のものを作っていった感じですね。親御さんや先生方とも相談しながら、どこまでだったら出せるのかという割とギリギリのところで作ったつもりです。 
 
━━━テレビ版と映画版とどこが違うのでしょうか? 
私自身の受け止め方が違っています。一つ一つ作品を作って放映するなかで、それらに対する感想をシャワーのように浴び、なおかつ色々な段階で色々な方とお話をさせていただき、シーンの解釈も自分の中で変わってきました。使っているシーンは同じでも、そこに対するメッセージの入れ方や、どう受け止めてほしいというのは、3回編集するうちに理解が変わってきました。
 

■最初の3ヶ月でものすごく手応え。学校がこんなに自由に撮れることはまずない。

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━━━具体的にはどのように小学校での取材を行ったのですか?
朝8時ぐらいに学校に着いて、子どもたちにおはようと声をかけながら、「今日はおっちゃんたちが来ている日やな」とみんなに周知してもらいます。一日学校の中をカメラがうろうろしている間、僕は職員室で先生たちと話をしていたり、6年生にカメラが入っていたら、4年生の様子を見に行ったり、他の学年の様子を見に行ったりという形で、1年間取材していました。 最初の3ヶ月でものすごく手応えがありました。学校がこんなに自由に撮れるなんてまずありません。もっと早い段階で映像を出すこともできましたが、それにより周りからの声で取材の位置づけが変わってしまうのもいやだったので、周りからのプレッシャーも、気にしないようにしていました。 
 
━━━大空小学校校長先生のインタビューや、先生や生徒への指導ぶりから、「大空小学校はみんなで作る」という強い信念が感じられます。
校長先生以下すばらしい方ばかりで、すごい信念の持ち主です。校長先生がおっしゃっていることでも、最初僕は意味が全然分かっていなかったところがあると思います。学力調査の話から、100メートル泳げる子と全く泳げない子の話が出てきますが、あれは取材の最初の日に聞いているインタビューです。表面上の言葉としては受け止めているけれど、その言葉の意味をちゃんと受け止められたのは、最後に編集した昨年の夏で、初めて聞いてから2年ぐらい経っています。自分自身も受け止め方が変化しているのでしょうね。
 
━━━今の大阪の公立小学校は、支援を必要とする子どもは特別教室に分けられているのでしょうか。
学校それぞれだと思います。ただ大空小学校のように完全に普通学級で一緒に学ぶことは珍しいようです。何かの行事だけ普通学級に参加させるところが最低ラインだとすれば、いくつかの授業だけ一緒に学ばせたり、最初の段階に学校に来ないように、やんわりと断っているとか、子どもが結果的に登校できなくなる場合もあります。校長の権限はもともと強力なものがありますから、あえて分けることで子どもが落ち着いて勉強できていいと考える親御さんもいらっしゃるかもしれません。ただ、僕は大空小学校の方が好きですし、この映画もそういう映画ですよね。
 

■子どもは一人一人に向き合って見ていかないと、どういう成長をしているか分からない。

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━━━大阪市は学力調査の点数を学校ごとに開示していますが、本作でも学力調査のシーンが登場します。その狙いは?
学ぶことは学力調査の点数に出てくることだけではありません。そんなことは人生におけるほんの数分の一でしかないはずなのですが、それが測りやすいから指標としているわけです。でも子どもは一人一人に向き合って見ていかないと、その子がどういう成長をしているかどうか分からない。そのように受け止めてほしいというのが最大の願いですね。
 
━━━色々な児童のケースが取り上げられているので、観る側も様々な受け止め方ができますね。
校長先生は「ややこしい子が来ると、周りが伸びるからいいよね」とおっしゃいます。3年生に転校生が来るとき、「噂の彼が転校してきます」とおっしゃったあと、「でもいいやん。今3年生でややこしい子はいないから、ちょうどいいわ」。僕達から見れば、結構大変そうな子もいるように見えるのですが、「ちょうどいい。あんたら、もうちょっとがんばり」。そういう他校では問題児扱いされているような子が入ってくることで、他の児童たちも先生も成長する。それが人を育てていくことだという哲学ですよね。
 

■子どもが通学できるようになったのは、周りの見る目が変わったから。

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━━━校長先生の指導の下、その哲学が大空小学校では全員がその考えを実行しているからこそ、不登校児ゼロに繋がっているのでしょうか。
きちんと授業を成立して、終わらせるということを目指しているのなら、問題のある児童がいると、邪魔でしかないかもしれませんが、本当に学校で身に着けるべきことは何かを突き詰めると、その児童たちは絶対に邪魔にならない。途中で挿入される校長先生のインタビューは、2回目の75分バージョンを作るときに撮りに行ったインタビューです。他の学校では通えなかった二人がなぜ通えるようになったか分からなかったので、彼らが学校に再び通えるようになった理由を校長先生にお聞きすると、開校のときの話が始まった訳です。校長先生自身も開校時には「ややこしい子が来ると、周りが伸びるからいい」と思えていなかった部分もあるし、子どもが来られるようになるのは、周りの見る目が変わったからだといいます。だから一人一人がきちんと自分のものとして考える力をつけることを目指している学校なんでしょうね。全ての子どもに学習する機会を保証する学校をつくるというのがこの学校の理念で、当り前のことなのですが、その当たり前のことができていない学校がいっぱいあるのは事実です。
 
━━━チラシの裏には、監督の想いが書かれています。
皆が仲良くニコニコ暮らせることが人類の目的なのだとすれば、それを目指すには何をしていけばいいのかと考えると、色々なことがもっとシンプルに決まっていくような気がするんですよ。「目的と手段を間違ったらあかんよ」とすごく言われたのですが、成績を上げること自身にも目的があるはずですから。
 
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■今この子達のために何がいいかを先生も生徒も考える。マニュアル化は不可能。

━━━「目的と手段を間違ったらあかんよ」という言葉は、子どもたちと対峙するとき、常に意識して指導しておられるのでしょうね。
子どもにとって一番いいのは何かを考えると、おのずと対応は決まるとも校長先生はおっしゃいます。その時その時の状況を踏まえた上で、真っ直ぐに見つめて今何がいいか、今自分がいいと思うことをやっていくので、マニュアル化は不可能ですよね。また校長先生は「今までのことは古い。ルールは今から変わりました」と言い、毎度毎度がらりと変わったりします。社会でもそういうことはありますよね。いつか決まったような決まりを守るのではなく、今この子達のために何がいいかを先生は考え、子どもたちにもそれを求めているんですよね。何があったのかをとにかく問い直すのが「やりなおしの部屋」で、けんかの原因を解き明かしはするけれど、大人はジャッジをしない。とにかく考えさせるのです。
 
━━━テレビ放送後に、他の学校からかなりの反響があったそうですね。
テレビで放送したので、全国の学校関係者が見学に来るそうですが、皆「(大空小学校のようには)できない」と言うそうです。できない理由を探したら絶対にできないから、やりたいと思うのならできる方法を探していかなければ。少しずつ前に進んでいこうと思えると、何かが変わっていくと思います。
 

■映画を観て、どんどん「使ってほしい」

━━━学校関係者だけではなく、様々な問題を抱えるお子さんやその親御さんにも希望が持てる作品だと思います。
映画にしておくということはずっと残るし、上映会など映画館の公開が終わっても観ていただけます。関西テレビの番組としてだけでなく、アクセスしたい人がアクセスしやすい形にしたかった。また、大空小学校はあくまでもただの公立小学校ですから、「うちの子は学校に行きたいから、こういう学校にしてほしい」という権利を親はこの映画を証拠に他の学校に対しても行使できると思います。
また、マニュアル化はできないけれど、大空小学校のような学校を作るヒントはあるので、映画を観て、使ってほしいんですよね。もちろん最初は色々と感じてほしいと思いますが、それはどんどん使っていってもらえるようなものだと信じています。
(江口由美)
 

<作品情報>
『みんなの学校』
(2014年 日本 1時間46分)
監督:真鍋俊永 
出演:大空小学校のみなさん
2015年3月7日(土)~第七藝術劇場、4月18日(土)~神戸アートビレッジセンター、今春京都シネマ他全国順次公開。
※3月7日(土)12:10の回終了後トークショー「『みんなの学校』ができるまで」
ゲスト:真鍋俊永監督、大窪秋弘さん(撮影) 司会:関純子さん(アナウンサー)
 
※3月7日(土)14:30の回終了後トークショー「保坂展人さんと観る『みんなの学校』」
スカイプ出演:保坂展人さん(世田谷区長) ゲスト:真鍋俊永監督、大窪秋弘さん(撮影) 司会:関純子さん(アナウンサー)
公式サイト⇒http://minna-movie.com/
(C) 関西テレビ放送
 
 

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「時間は取り戻せないから、一日一日全力で生きて」中村獅童、小西真奈美、竹永典弘監督が登壇『振り子』舞台挨拶@TOHOシネマズなんば(2015.2.23)
登壇者:中村獅童、小西真奈美、竹永典弘監督
 

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 お笑い芸人から、今やパラパラ漫画家として精力的な活動を続けている鉄拳が2012年に発表した「振り子」。再生回数300万回を記録し、大きな話題を呼んだ4分半の動画から、昭和・平成と移り変わる世の中を映し出しながら、そこで生きる波瀾万丈な夫婦の姿を振り子時計に重ねて綴った感動作が誕生した。
 
 
 本作で真っ直ぐで不器用な夫・大介を演じた中村獅童、献身的で常に笑顔を絶やさない妻・サキを演じた小西真奈美、そして脚本も担当、本作が長編デビュー作となる竹永典弘監督がTOHOシネマズなんばで行われた『振り子』舞台挨拶に登壇。満席の客席から大きな拍手で迎え入れられた。
 
 

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 初めて鉄拳の原作を見たときの感想を聞かれ、「とても感動して泣いた。母が亡くなった後すぐにいただいたお話なので、過ぎ去った時を取り戻す思い出深い時間だった。小西さんは本当にサキではないかと思うぐらいいつもニコニコしていた」(中村)、「原作のパラパラ漫画も知っていたが、本当に脚本が素晴らしかった。よくサキは尽くす女性と言われるが、ただただ大さん(大介)のことが好きなのだと思う」(小西)と作品づくりについての話にも及ぶと、竹永監督は「この夫婦は底抜けに明るく生きている。中村さんと小西さんの二人が(セットの)居間にポンと入ると、昭和の居間が出来上がっていた。二人の演技をモニターから見ながら、何度も涙を流してカットを切れない時があった」と主演二人の演技を絶賛した。
 
 

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 パラパラ漫画を映画にするときに難しかった点を聞かれた竹永監督は「4分半しかないパラパラ漫画に男の後悔のライフストーリーが入っている。セリフのない空間にどんどんセリフが浮かび、家族の人生を描いた」と意欲的に取り組めたことを明かした。
 
 また自身が演じた大介について、中村獅童は「奥さんに甘えているけど、いいところは自分に真っ直ぐに生きている部分。不器用なところもどこか共感できる。時間は取り戻せないから一日一日全力で生きなければ」と実感を込めて語った。
 
 一方、大介のようなダメ男を結婚するときに選ぶかと聞かれた小西真奈美は「そんなに(大介は)ダメじゃない。感情の起伏がワシャーっとくるけれど、その後の獅童さんの表情に『やっちゃったなー』みたいな後悔の念が浮かんで、ダメっぽいけど愛らしい。大さんみたいな人は素敵だと思う」とまさにサキが乗り移ったかのようなコメントを披露すると、竹永監督から「小西さんの手相を見たら、頭脳線が足りなかった。生命線は黒柳徹子さん並に長いのに」との思わぬ応酬に会場も爆笑。大介のキャラクター話で盛り上がったところで、中村獅童が「女性のお客さんは後半にかけて本当にイラッとくると思う。感情移入して観てほしい」と作品をアピールした。
 
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 最後に「沖縄国際映画祭など、映画祭以来はじめて観ていただけるのでうれしい」(小西)、
「主演二人の演技と、70年代から元気のある80年代、ミレニアムを迎える90年代まで描かれている時代にも注目して、100分間楽しんでいただければ」(竹永監督)、
「私たちの愛情がたっぷりと詰まった作品。仕掛けもアクションもない地味な映画だが、昭和の時代にあった人との出会いやぬくもり、日本特有の義理人情がこの映画に生きている。昭和をよくご存じの方もご存じない方も何かを感じ取ってくれればうれしい。もしかしたらこんな夫婦いるのかもしれないし、いないのかもしれない。観終わった後に、童話を読んだ後のように優しい気持ちになってくれたら」(中村)と万感の思いを込めた挨拶で締めくくった舞台挨拶。
 
 男の弱さや脆さを全て受け止めるサキと、その包容力に甘え過ぎてしまう大介の夫婦が、振り子時計の振り子のようにお互いの辛い時を支えた後に起こる奇跡に涙する感動作だ。
 
(江口由美)
 
 
 

<作品情報>
『振り子』(2014年 日本 1時間40分)
監督・脚本:竹永典弘  
出演:中村獅童、小西真奈美、石田卓也、清水富美加、板尾創路、苗木優子、松井珠理奈(SKE48╱AKB48)、鈴木良平、中尾明慶、研ナオコ、小松政夫、山本耕史(友情出演)、武田鉄矢(特別出演)
公式サイト⇒http://furiko.jp/
2015年2月28日(土)より角川シネマ新宿、池袋シネマ・ロサ、TOHOシネマズなんば、T・ジョイ京都ほか全国ロードショー
(C) 2014『振り子』製作委員会
 

 

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<ストーリー>
1976年、不良に絡まれていたところを大介に助けられたサキは、大介に一目惚れして猛アタック。相思相愛になった二人は反対するサキの親をなんとか説得し、19歳で結婚する。おしどり夫婦のような仲睦まじさで、娘・心晴も誕生し幸せに満ちた日々だったが、大介が詐欺に遭い、二人でコツコツ頑張ってきたバイク屋をたたんでから、夫婦の歯車が狂い始める。大介は転職先で女をつくり、朝帰りを繰り返すようになるが、サキは辛い目に遭いながらも常に笑顔を絶やさなかった。99年リストラされた大介は就活もうまくいかず、飲み屋で酔いつぶれて家に帰ると、サキが脳梗塞で倒れていた…。
 

hanatoalice-di-1.jpg亡き篠田昇キャメラマンに捧げる『花とアリス殺人事件』岩井俊二監督舞台挨拶

2015年2月21日(土)梅田ブルク7にて

・(2015年 日本 1時間40分)
・原作・脚本・音楽・監督:岩井俊二
・声の出演:蒼井優/鈴木杏/勝地涼/黒木華/木村多江/平泉成/相田翔子/鈴木蘭々/郭智博/キムラ緑子
・制作:ロックウェルアイズ/スティーブンスティーブン
・(C)花とアリス殺人事件製作委員会 
・特別協賛:ネスレ日本 配給:ティ・ジョイ  
・公式サイト⇒ http://hana-alice.jp/

2015年2月20日(金)~梅田ブルク7、T・ジョイ京都、109シネマズHAT神戸、ほか全国ロードショー


  

~花とアリスが主人公だと、物語は止めどなく生まれてくる~

 

hanatoalice-1.jpg11年前の『花とアリス』以来、プロデュース作品はあったがあまり監督作品を生み出してこなかった岩井俊二監督が、『花とアリス』の前日譚となる二人の出逢いの物語を、初の長編アニメーションで映画化した。『Love Letter』『スワロウテイル』『リリィ・シュシュのすべて』と思春期の繊細な心情の変化を瑞々しい映像で捉えた作品は、“岩井俊二ワールド”と称され、撮影はすべて篠田昇キャメラマンによるものだった。その篠田キャメラマンが『花とアリス』が公開された2004年に亡くなられ、その後実写映画はカナダ製作の『ヴァンパイア』だけとなっている。


hanatoalice-di-2.jpg世界でも評価の高い岩井俊二監督は、日本のみならず世界中のファンが彼の新作を待ち望んでいた。2004年当時闘病中の篠田キャメラマンに読んでもらおうと徹夜で執筆していたが、書き上げたその朝、篠田キャメラマンは帰らぬ人となった。届かなかったシナリオだったが、作品の中には彼を思わせる病気の老人が登場する。アリスと他愛ない会話をしながら過ごすひと時が、黒澤明監督の『生きる』の一場面と重なり、切ない想いが胸に迫る。
 

長い時を経て、今回自ら脚本・監督・音楽を務めて作り上げた『花とアリス殺人事件』。舞台挨拶に登壇した岩井俊二監督には、「完成してやっと篠田キャメラマンに捧げることができました」とその胸の内を明かした。


また、実写版で主演を務めた花(鈴木杏)とアリス(蒼井優)も本作をきっかけに女優として大躍進を遂げているが、さすがに11年経って前日譚となる中学生を演じるには無理がある。主演の二人をはじめ、当時同じ役の俳優たちが今回のアニメーションでは声優を務めているのも大きな魅力。懐かしい声から11年前のあの感動が甦るようだ。「続編を作ってほしい」という蒼井優の言葉に応えるように岩井監督は、「花とアリスが主人公だと、物語は止めどなく生まれてくる」と語る。
 



公開2日目の梅田ブルク7、この日集まった観客の殆どが実写版『花とアリス』を見ているという。新作を待ちかねたファンを前に登壇した岩井俊二監督は、下記のように語った。

hanatoalice-2.jpg――― 初の長編アニメーションは如何でしたか?
初めての体験で試行錯誤することばかりでしたが、実写とは違う感覚でとても新鮮でした。細かいところでいろんな問題が発生するのがアニメの恐ろしい処で、なかなか苦しめられました。毎日一コマずついじり倒しているような状況でして、後で全体を見て「こんな話だったんだ~」と久しぶりに物語に触れた気がしました。実写だとそんな細かくチェックすることはないので、今回のように一コマずつ作り上げていく作業は、作り手としては快感でしたね。

――― 11年前、実写版『花とアリス』が公開された時には今回の脚本は作られていたんですね?
はい、完成後にプランはあって書いていたんですが、製作に至るまでいろいろあって時間がかかりました。

――― ずっと岩井監督作の撮影監督だった篠田昇さんが亡くなられて、そのシナリオを篠田さんに捧げられたというエピソードがありますが?
この本を書いている時に篠田さんは闘病中だったんです。何とか篠田さんに届けたいと思って徹夜で書いていたんですが、やっと書き上げた朝に「篠田さんが亡くなられた」と連絡がありました。本作の中に渡辺という老人が登場しますが、篠田さんのつもりで書きました。彼に捧げるというより、闘病している篠田さんを書いている自分に、作家の業(ごう)を感じました。10年経ってこのような形で完成したので、結果的には彼に捧げられたかなと思っています。

――― 出演された蒼井優さんも同じようなことを仰ってましたが?
二人に久しぶりに会ったのも篠田さんのお葬式の時でして、二人は号泣していました。篠田さんは撮影中はムードメーカーのような“いいおじさん”だったので、二人ともとても懐いていましたので、残念で仕方なかったですね。

hanatoalice-3.jpg――― 実写版と同じメンバーが声優を務めていますが、収録の様子は?
皆さんとは久しぶりにお会いしたのですが、そんな長い時間ではなく1週間ぶりの再会のようなとても近しい感覚でしたね。これが現場の不思議なところだなと。意外と懐かしい感じではなかったですね。皆さんさっとその役に入るという感じでした。平泉成さんは、アリスの父親役ですが、アリスのファザコンのシンボルみたいな存在なので、渡辺老人の声も平泉さんでなくてはと思ったんです。それで、後日「実はもう一つ役をお願いしたいのですが」と。これはアニメだからできることです。

――― シナリオを書く時に、どうやって14歳の心情になれるのですか?
当時を思い出したりもしますが、あの年齢ぐらいになる大人とあまり変わらなくなるので、敢えて大人がやっていることを子供たちにやらせると、行動と結果がまた違ったものになったり、ちぐはぐにズレてしまったりするところを楽しみながら書きました。

――― 男性より女性キャラクターにした方がやりやすいですか?
そうですね、自分の中で距離を置けるので書きやすいです。男性を主人公にすると自分と直結してしまい、業のようなものが出て、大体変質者か殺人者になることが多いですね(笑)。

――― 少女を主人公にすると、ピュアなものになれるんですね?
そうです。

――― 蒼井優さんが、是非続編もやりたいと仰ってましたが?
「花とアリス」は腐れ縁の悪友みたいな話なので、ストーリーは止めどなく出てきてしまいます。続編を作る機会があれば楽しいだろうなと思いますけどね。

――― 最後に。
長い時間が掛かった新作ですが、製作だけで1年半かかり死ぬような思いをしました。とても可愛らしい映画なので、皆さんの中でいい思い出になって、お友達にも勧めて頂ければいいなと思います。どうかよろしくお願いいたします。

(河田 真喜子)

LF-b-550.jpg橋本愛、大阪初の舞台挨拶に緊張!? 『リトル・フォレスト 冬・春』舞台挨拶

ゲスト:橋本愛、森淳一監督
2015年2月21日(土) 大阪ステーションシティシネマにて


  
『リトル・フォレスト 冬・春』

LF-pos.jpg  (2014年 日本 2時間)
・原作:五十嵐大介「リトル・フォレスト」(講談社「アフタヌーン」所載)
・監督・脚本:森淳一 
・フードディレクション:eatrip、 
・音楽:宮内優里、主題歌:FLOWER FLOWER「冬」「春」(gr8!Records)
・出演:橋本愛、三浦貴大、松岡茉優、温水洋一、桐島かれん
・公式サイト⇒ http://littleforest-movie.jp/
・コピーライト: ©「リトル・フォレスト」製作委員会

2015年2月14日(土)~大阪ステーションシティシネマ、なんばパークスシネマ、MOVIX京都、神戸国際会館、ほか全国ロードショー

 


  

~大阪初お目見え橋本愛の華麗なる転身!
素朴な農業ガールから美しさ際立つ大人の女性へ~

 

LF-s1.jpg東北の山奥で農業しながら女性としても成長していく「いち子」の姿を通して、日本の四季の美しさや大地の恵みの豊かさを再認識させてくれた『リトル・フォレスト』。昨年夏に公開された『リトル・フォレスト夏・秋』に続いて『リトル・フォレスト 冬・春』が先程公開された。最初、「あのツンデレ愛ちゃんが田んぼで草取りしてるよ~!?」と、地道な農作業や山奥での暮らしぶりに素朴な瑞々しさを見せた橋本愛の意外な表情に、驚きと感動を覚えた。汗水流して農作物を育て、収穫した農作物や山の恵みを様々な形で調理して、そして感謝の気持ちを持って美味しくいただく。岩手県奥州市の山奥で約1年かけて撮影された本作は、美しい日本の四季を捉えたしっとりとした映像もさることながら、意外な魅力を発揮した橋本愛の吸引力はかなり大きい。彼女の独白のようなナレーションがまたいい!
 

その橋本愛と森淳一監督が大阪の劇場での舞台挨拶に登壇した。大阪での舞台挨拶は初めてという橋本愛は、藍染め模様のワンピースに長い艶髪を垂らして、ハッとするほど美しく成長した姿を見せた。彼女のナイーブさは演技を見てもわかることだが、こうした舞台挨拶でも質問に対して真摯に答えている様子が伺えた。劇中登場した数々の料理のことや撮影秘話など、さらには2月10日ベルリン映画祭での上映イベントの秘話など、森淳一監督と共に楽しく語ってくれた。
 


  (敬称略)  

――― ようこそ大阪へ! 大阪での舞台挨拶は?
LF-b-di1.jpg森:僕は舞台挨拶には何度か来ています。
橋本:私は初めてです。大阪へはプライベートでも来たことがありません。

――― 大阪で何か味わられたものはありますか?
森:去年の年末にドラマの撮影で1か月半くらい滞在しまして、その時よく食べたおでんです。先ず昼間からよくおでんを食べているのに驚きました。お店もあちこちにあって、それぞれ味も違うしタネも違って、とても美味しかったです。今回愛ちゃんを連れて行こうと思ったのですが、予約がとれなくて残念。

――― 粉もん以外の食べ物を気に入って頂けて嬉しいですね。この映画は美味しそうなお料理が沢山出てきますが、特に印象に残っているものは?
橋本:どれも美味しかったのですが、特に「ひっつみ汁」が美味しかったです。私の出身地熊本にも似たような料理があって、なんだか懐かしくて美味しく頂きました。
:撮影が終わると出された料理をみんなで食べるのですが、いつも奪い合いになってしまって(笑)。監督だからって優先的に食べられる訳ではなく、ちゃんと順番に並んでいました。僕は2色のケーキが美味しかったですね。和と洋の混じり具合が良かったです。

LF-b-i-1.jpg――― キャベツのケーキは本当に美味しかったのですか?
橋本:私は基本的にお砂糖が入っていれば何でも美味しく思っちゃうのですが、三浦さんは「僕はちょっとムリだな」と仰ってました。
森:ソースを掛けて食べると美味しかったですよ。

――― 料理をする橋本さんの指先が、品があってとても綺麗だなと思ったのですが?
橋本:そう言って頂けて嬉しいです。ありがとうございます。

――― パンをこねるなんて難しそうですが、とても手慣れた感じだったのですが、普段から作っておられるのですか?
橋本:いえそんなことはないです。初めてだったのでこねるのはとても難しかったです。
森:フードコーディネーターの人に、「男っぽい」と言われていましたよ(笑)。繊細なんだけど思い切りがいいってね。

LF-b-i-3.jpg――― シーン毎に違う「いただきます」と言うのがとても印象的でしたが、何か監督からの指示があってそうされたのですか?
森:いえ僕は何も指示していません。
橋本:はい、監督からの指示は何もなかったです。あれは「こだわらない」という「こだわり」があって、それぞれのシーンでのいち子の心情や体調とかが色としてほのかに滲み出ればいいなと思ってしましたので、そう感じて下さって嬉しいです。

――― あれほど長いナレーションは初めてですか?
橋本:ホントきつかったです。何時間もスタジオにこもってひとりで喋るというのは大変でした。

――― 映画を導いていく大切な役割ですものね。
橋本:はい、原作はコミックなので、台本だけだとどの視点で喋っているのかよく分からなくて、とても難しかったです。
森:説明のためのセリフと心情面のセリフとは違うので、使い分けるのが難しかったと思いますが、一生懸命やっていましたね。

――― 特に言いにくかったものはありますか?
橋本:しょっちゅう嚙んだりイントネーションを間違えたりしていました。今でも言えないのが「かばねやみ」、「なまけもの」という意味なんですが難しいですね。
森:特に方言は難しいですよね。なかなか覚えられずに苦労していました。

LF-sp2.jpg――― 岩手の地元の方々が沢山出演されていましたが、オーディションとかされたのですか?
森:セリフのある人はオーディションしました。仙台などロケ地から近い所でやりました。特に方言の強い方は地元の方です。

――― 1年に渡るオールロケでしたが、一番辛かった季節は?
橋本:真冬とか真夏はそれなりに覚悟していたのでそんなに大変ではなかったのですが、冬になる前のまだ覚悟ができてない秋とかの寒さは堪えましたね。まだ薄着なのに急に寒くなってしまって。真冬になってしまえば、雪の中でも楽しめました。

――― ベルリン国際映画祭では?
森:去年の夏にはスペインへ行って、この間はベルリンへ行ったのですが、日本の食材や料理にとても興味を持って頂きました。それから、日本にこんなにもはっきりとした四季があることにも驚かれていました。親子関係など人間関係にも自分のことに置き換えて感想を言って下さり、とても好評をいただきました。

LF-sp1.jpg――― 日本の方とは違った見方をされるので、新しい発見もあったでしょうねえ?
森:直接感想を言いに来てくださるので、それが楽しかったですね。
橋本:ベルリンは真冬で曇りの日が多かったせいか、夏と冬の強いコントラストを面白がって見て頂いたようです。

――― 二つ星クラスの有名シェフに特別なお料理を作って頂いたとか?
森:ベルリンでは夏篇と冬編を上映したのですが、それにインスパイアされて作ったという料理をご馳走になりました。微妙な味でした。
橋本:繊細な日本料理に対しダイナミックなドイツのお料理でした。例えば、メインでは瑞々しいおナスにカレー粉に味噌が混ぜられた大胆なソースがかけてあったり、前菜ではウスターソースがベースにあったりと、口の中が面白い感じになっていました。これが食の国際交流か!? って思いました(笑)。

LF-b-i-2.jpg――― 最後にメッセージを。
森: 「リトル・フォレスト」の場を広げて頂いたら嬉しく思います。本日はお出で下さいまして誠にありがとうございました。
橋本:この作品は長い間お付き合いさせて頂いた作品ですので、これからは皆さんに末永く見守って頂きたいと思えるような映画になりました。届くべき人に届いて欲しい、ご覧になった皆さんの心の中で豊かな時間となれば光栄に思います。今日は本当にありがとうございました。
 

(河田 真喜子)

 

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