「京都」と一致するもの

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 ロバート・ アルドリッチ 監督 の遺作 のリバイル 『カリフォルニア・ ドールズ 』の爆音上映 が 12 月 26 日(水)、27 日(木)に 神戸 アー トビレッジセンターにて 開催される。大音量・ 高音質 で楽しめる 「爆音上映 」で、 今後 おそらく 日本での 公開が 叶わないであろう 『カリフォルニア・ ドールズ 』の日本最終上映 をぜひ見届けてほしい。

また、あわせて 2012 年に急逝した トニー・ スコット 監督の 『アンストッパブル 』、ジャン= リュック ・ゴダール 監督 の『右側 に 気をつけろ 』の爆音上映 も開催 。まさに映画を体感できる爆音上映で、名作をしっかり胸に焼き付けてみて。


『カリフォルニア・ドールズ 』は 1982 年の初公開時、多く映画ファン心を掴んだが 、音楽著作権上の理由により未だDVD 発売されていない。しかも、今回の上映権は期間限定、2013 年以降に日本で鑑賞きるチャンスは現在のところなし。つまり今この時にスクリーンで観るしかないのだ!監督は、『攻撃』『何がジェーンに起ったか?』『ふるえて眠れ』『飛べ!フェニック ス』『特攻大作戦『』北国の帝王』『ロンゲト・ヤード』『合衆最後の日』など、数々名作で知られるロバート・アルドリッチ (1918 -1983)。その多くが男たち血と汗飛び散る戦い物語だった彼の遺作となったのが、女子プロレスラーたちの物語。女性ならではの美しさとタフな戦いがぶつかり合い、遺作というにはあまりに官能的でゴージャスなステージがそこに出現した。

12 /26 ・27 神戸アートビレッジセンタにて爆音上映 、1/19/19 より第七藝術劇場、 以降 は京都シネマにて公開
1981 年/ アメリカ映画/113 分/配給: boid/米国公開: 1981 年 10 月 16 日

神戸アートビレッジセンター上映紹介はコチラ



ouoku2-s550.jpg『大奥~永遠~[右衛門佐・綱吉篇]』合同記者会見

(2012年11月30日(金)大阪堂島ホテルにて)

ゲスト:堺雅人・菅野美穂

 

(2012年 日本 2時間04分)

原作:よしながふみ『大奥』

監督:金子文紀

出演:堺雅人、菅野美穂、尾野真千子、柄本佑、宮藤官九郎、西田敏行、要潤、三浦貴大、郭智博、満島真之介、永江祐貴、竜星涼

2012年12月22日(土)~丸の内ピカデリー、大阪ステーションシティシネマ、なんばパークスシネマ、MOVIX京都、神戸国際松竹 ほか全国ロードショー

★作品紹介⇒ こちら
★公式サイト⇒ http://ohoku.jp/top.html

© 2012男女逆転『大奥~永遠~[右衛門佐・綱吉篇]』製作委員会

 

~”「草食系”というより”植物”」と菅野美穂にいわれた堺雅人って!?

 

ouoku2-2.jpg 大ヒットした2010年の映画『大奥〈男女逆転〉』(二宮和也・柴咲コウ)。将軍吉宗を演じた柴咲コウの颯爽ぶりが記憶に新しいが、姉妹篇として、2012年秋のTVドラマ『大奥~誕生~[有功(ありこと)・家光篇]』(堺雅人・多部未華子)に続いて、映画『大奥~永遠~[右衛門佐(えもんのすけ)・綱吉篇]』(堺雅人・菅野美穂)が公開される。史実の男女を逆転させた〈よしながふみ〉原作のコミック『大奥』の映像化は、江戸時代の将軍家大奥を舞台に、世継ぎをめぐる陰謀渦巻く世界で、男女逆転しているとはいえ、信頼と忠誠、そして真心と愛情という普遍的な情景を、豪華絢爛な時代劇として現代に甦らせている。

 

【STORY】
ouoku2-1.jpg 江戸時代に男性にしか罹らない赤面疱瘡という奇病で男性の割合が激減し、世の中の要職には女が就き、男は子種をもたらす希少な存在となってしまった。まさしく男女逆転の時代に、一人の女将軍のため、その希少な男性3000人を集めた江戸城大奥では、日々将軍に子種をもたらそうと勢力争いを展開していた。将軍綱吉(菅野美穂)の生母父・桂昌院(西田敏行)をけん制するように御台所(宮藤官九郎)は京都から公家の右衛門佐(堺雅人)を呼び寄せる。容姿端麗で学問に精通し品格を持ち合わせた右衛門佐を、綱吉は一目で気に入るが、側室としてではなく、大奥総取締に大抜擢する。綱吉に忠誠を誓い、愛情を抱きながらも、家臣として仕える右衛門佐。世継ぎを授かろうとする綱吉の苦悩をただ見守るばかりだったが……。

2012年12月22日(土)の公開を前に、主演の堺雅人と菅野美穂が来阪し合同記者会見が行われた。


 

――― 公開を前に今のお気持は?

堺:TVドラマの続編になりますが、ドラマの方も佳境に入り、映画の『大奥~永遠~[右衛門佐・綱吉篇]』に向かって盛り上がっているところです。ようやくこの日が来たかと嬉しく思います。

菅野:撮っている間はどんな作品になるのか期待でいっぱいでした。今は映画の楽しみをかみしめています。

 

ouoku2-s1.jpg――― 男女逆転の魅力については? 日頃男女逆転だなと感じることは?

堺:男女逆転ということだけがフィクションの時代劇です。肉食系の女子と草食系の男子という構図は現代にも繋がっているので、まるで日本の歴史を見つめ直す大きな合わせ鏡のようなお話だと思います。その面白さを伝えることができればいいなと。既に、世の中は逆転していると思うので、別に違和感なく日々細々と暮らしております(笑)

菅野:最初は大胆な設定だなと思いましたが、男女逆転にしても最後に残るのは、愛や純粋さだということが分かって面白いと感じました。そのままでも変わらないものは変わらない。今年の夏ブータンへ行って来たのですが、ブータンは女系国家でして、それでも国民は幸せだと感じて暮らしています。それがとても興味深いなと感じました。また、そうありたいと思いました。

 

――― 本作でスケール感を感じたところは?

堺:私が参加した時点では既にプロジェクトは動き出していて、プロデューサーたちの話を聴いているだけでワクワクしました。今でも続いている原作そのものがスケールが大きくて壮大な物語ですので、身震いするようでした。

菅野:衣裳合わせや現場の空気感が、自分が思っているのとは違うなと感じました。京都撮影所での撮影でしたし、スティール撮影を見せて頂いた時に、光明寺の吊りの豪華さに驚きました。

堺:元禄時代のお話ですから衣装も豪華で、菅野さんはそれを着こなしておられ、下から見上げた時、とても素敵に似合っておられるなと感じました。

 

ouoku2-sk1.jpg――― 男女逆転とはいえ、それぞれの立場で演じ分けた点は?

堺:私が演じた右衛門佐は上昇志向の強い男らしい役で、TVドラマの有功は女性的な人物と、自分としてはなんとなくイメージを分けて演じていました。

菅野:表では男性的な振る舞いを、でもプライベートでは女性的な面を見せるという、ひとつの人物ですが演じ分けていました。原作では天真爛漫で支離滅裂という、ある意味危ういというか、いつも反対側の要素を残して演じるようにしていました。

 

ouoku2-ss2.jpg――― 役作りについて?

堺:原作が面白いのでそのまま伝えたいと。右衛門佐の家系は「水無瀬」という公家の出で、その水無瀬家ゆかりの宮司さんをしておられる方とお話をさせて頂き、役のイメージが固まりました。

菅野:女性で将軍の役をやれるのは一生に一度しかないだろうと思ったが、でもどうやって演じればと考えると、ムリ!……そこで、理解しようとせず、自分とは別ものだと割り切ることが大事だと考えました。女性としては、子供を失った悲しみや、自分が次第に崩れていくところなどを表現しようと思いました。堺さんをはじめ西田さんや小野さんなど、共演の皆様が本当に素晴らしい方々ばかりで、皆さんの目を見て演じました。

 

――― お二人は初共演ということですが、お互いの印象は?

堺:菅野さんの作品はいくつか拝見しておりまして、何を考えているのかわからない、怖いイメージ(笑)。大竹しのぶさんとは違う天真爛漫さで、いろんな役を見ても、素でやっているのでは?と思えるくらい役に憑依しているようでした(笑)。
私の役はある意味綱吉に一本の矢を深く深く突き刺すような役なのですが、いくら突き刺しても堪えない。でも、ラストシーンでは、ちゃんと受け止めてくれていたことが分かる演技をして下さり、改めてよく分からない人だなと思いました。

菅野:堺さんは、どんな役の時もご自身でテーマをもって臨んでおられ、それが役に滲み出ているように感じました。私には、草食系というより植物のような人だなと思えて(笑)。研究熱心なのは想像以上でした。今回も、江戸時代のことなのに鎌倉時代まで遡って研究して、堺さんにそんなこと訊かれて監督が困っておられたくらいです。穏やかな中にもキビキビとして、時代劇では衣裳をつけるので心情表現は難しいのですが、それを自然体で演じておられ、素晴らしいと思いました。

 

ouoku2-s2.jpg――― 観客へのアピールを。

堺:男女逆転という特殊な物語ですが、本格的な普通の時代劇になっていると思います。京都撮影所のスタッフが丹精込めて作り上げた作品です。多くの方に楽しんで頂けると思います。TVドラマを見ておられない方も、男女逆転ということだけを知ってご覧になると楽しめると思います。

菅野:元禄時代なので、男性の衣装が艶やかなのは男女逆転ならではです。世界遺産の京都で撮影した見応え十分の時代劇です。お気軽に映画を見て楽しんで頂ければ嬉しいです。

 


 天然といわれる菅野美穂だが、質問に対しては言葉を選び、思慮深さを感じさせた。一方、研究熱心といわれる堺雅人の方は、役に対する理解度と、作品に対する責任感の強さを感じさせた。また堺雅人は、映画からTVドラマと京都撮影所での撮影期間も長く、時代劇のコスチュームの着こなしはピカイチ! これほど品良く時代劇に映える俳優もそうはいないだろう。男女逆転劇の中にも、菅野美穂は女将軍の苦悩を、堺雅人は凜とした品格のある男らしさを見せていた。(河田 真喜子)

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★堺雅人・菅野美穂の合同記者会見⇒こちら

takabahashi.jpg 今年7月に帰らぬ人となった映像作家、高林陽一の軌跡をたどる『追悼特集魂のシネアスト高林陽一』が12月8日(土)よりシネ・ヌーヴォ、シネ・ヌーヴォXで開催される。

 50年代から撮り続けている自主制作映画をはじめ、滅びゆく蒸気機関車を見つめた初の35ミリ作品『素晴らしい蒸気機関車』、名探偵・金田一耕助の第1作として大ヒットした『本陣殺人事件』から、三島由紀夫原作二度目の映画化となった傑作『金閣寺』、日活ロマンポルノに挑戦した『赤いスキャンダル・情事』など異色の才能を感じずにはいられない作品を一挙公開。さらに、2000年代に入り16年ぶりの作品となった京都で活躍する劇団「二人だけの劇場セザンヌ」企画・制作作品『愛なくして』や、遺作となった『虚空の淵で』初上映など、“永遠の個人映画作家”高林陽一生涯全28作品に迫る貴重な機会だ。


『追悼特集魂のシネアスト高林陽一』@シネ・ヌーヴォ 詳細、スケジュールはコチラ

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来日キャストスペシャルイベント開催
映画版と舞台版の一夜限りのコラボレーション
2500人の観客から「民衆の歌」大合唱プレゼント!!

LM-1.jpgイベント実施日:11月28日(水)
場所:東京国際フォーラム ホールA(東京都千代田区)
登壇者:ヒュー・ジャックマン、アン・ハサウェイ、アマンダ・セイフライド、トム・フーパー監督、キャメロン・マッキントッシュ(プロデューサー)、日本版「レ・ミゼラブル」舞台キャスト

★作品紹介⇒ こちら

 ミュージカル界の金字塔とも評される「レ・ミゼラブル」が、12/21(金)の公開に先立ち、映画版と舞台版のコラボレーションという一夜限りのスペシャルイベントが実現。第一部は生オーケストラ演奏のもと舞台版キャストの歌唱パフォーマンスイベント、第二部に来日キャスト、スタッフ陣が登壇。当日朝到着したばかりの特別映像の上映や登壇ゲストのユーモア溢れるトークに会場は大いに沸きあがった。フィナーレは2500人による「民衆の歌」の大合唱が来日ゲストにプレゼントされた。その舞台挨拶と質疑応答の内容をご紹介したい。


◆舞台挨拶内容

LM-2.jpgMC:一言ずつご挨拶をお願いします。

トム・フーパー監督:みなさん、こんばんは。この場にいられて本当にうれしいです。実はこの映画の完成は先週の木曜日でした。最初にこの作品を携えて訪れた国が日本で大変うれしく思っております。

アン・ハサウェイ:日本のみなさんに温かい歓迎を受け、本当にうれしい気持ちでいっぱいです。大変素敵なパフォーマンスを見せてくれた日本版舞台キャストのみなさんも本当にありがとう!

ヒュー・ジャックマン:アリガトウ!コンバンハ!ワタシはニホンにこれてホントウにウレシイです(ここまで日本語)。日本は本当に大好きです! 何度も日本を訪れていますが、この映画を携えての来日は特別なものです。この映画を可能にしてくれたトム・フーパー監督、キャメロン・マッキントッシュ、そしてこの会場に足を運んでくれたみなさま、ありがとう!
日本舞台版キャストも素晴らしい!(日本語で)アリガトウゴザイマシタ!

アマンダ・セイフライド: (ヒューみたいに)日本語が話せません(笑)。人生でいちばんエキサイティングな瞬間を迎えています!素晴らしいキャスト・スタッフとともにこの傑作をお披露目、PRできるからです。夢を叶えてくれたここにいるメンバーにも感謝の気持ちでいっぱいです! クールな日本にも来られて本当にうれしいです。

キャメロン・マッキントッシュ:この中で一人だけ歳とっています(笑)。25年前の舞台初演から今まで長きに渡って、この作品が日本でこんなに受け入れてもらえるとは夢にも思っていませんでした!さらにこの映画をたずさえてこの場にたてるなんて、プロデューサー冥利に尽きます。

LM-3.jpgヒュー:文学的にも舞台としても優れている作品に参加することができて、監督、キャメロン、そしてヴィクトル・ユゴーなど、すべての方に感謝をしています。私は実際、撮影現場に現れるだけで、監督がすべてのキャストを生かしてくれました。今の映像は自分で観るには辛いものがあるのですが、撮影したあとにこのシーンを観た私の妻が、私だと気づいてくれないぐらいでした(笑)。私にとってジャン・バルジャンという役は本当にまれな役だと思っています。マッキントッシュが27年かけて映画化してくださったことに感謝しています。なぜなら、この作品が生まれたとき、私はまだ3歳だった…いや、サバ読みすぎましたね(笑)。実際は18歳ぐらいでした。

アン:最初の映像、ヒューの素晴らしさに目が行ってしまって…。今の映像では工場で働いている女性がたくさん出てきていましたがとても素晴らしく、ファンテーヌをいちばん追い出そうとしている女性はロンドンのウエストエンドで大変有名な舞台女優さんでいらっしゃいます。この中に参加できたことは、本当に信じがたい思いです!ファンテーヌは本当に辛い、惨めな目にあいます。ファンテーヌの痛みというのも娘コゼットのために強いられるものであってそこに演じる苦労はありました。楽しかったという言葉は演じていて合わないけれど、毎日ヒューという素晴らしい俳優と共演できて現場はとても楽しいものでした。

アマンダ:この映像を観ながら、撮影がどんなに楽しかったか、その思い出ばかりが頭に浮かんできます。ここにいる監督、マッキントッシュに心より感謝しています。このミュージカルは11歳のときから大好きで大ファンで、自分が演じることは本当に夢でした。最初に撮影したのがアンと唯一いっしょに撮ったシーンで、そこで彼女が優しさを表現してくれてアン演じるファンテーヌから生まれた、私が演じるコゼットという女の子がどういう子なのかを示してくれたと思います。そういう意味で、本当にやりやすいスタートでした。

監督:キャメロンやキャストたちといっしょにここに座っていられることを本当にエキサイティングに思っています!私の旅は、本当に長い旅でした。先週の木曜日にやっとこの映画が完成しまして、みなさんにこうして観ていただくことができました。すべてライブで歌っているのですが、この「ライブで歌をやりたい!」という夢を叶えてくれたのが、今ここにいるキャストのみなさんです。舞台体験そのままに歌で演じることを、しかもクローズアップでできる素晴らしい才能を持ったキャストがいなければ実現しなかったことです。この高いレベルだからこそ、みなさんを素晴らしい旅に連れ出せるのだと信じています。

LM-4.jpgマッキントッシュ:25年前にブロードウェイ初演があり、その2ヶ月後に東京でも初上演いたしました。実はそのときに映画化のプランがありました。しかし、私が信じているのは「運命」というものが最高のプロデューサーだということです。当時は作ってはいけない時期だったんだと思います。というのも、25年前にはまだ生まれていなかったキャストもいますし、トム・フーパー監督もまだ中学生ぐらいでした。今が作られるべき時だったんですね。このパーフェクトなキャストが観られるのも今だからこそなんです!私、これがはじめての映画なので、「グリーンライト」という言葉を学びました。「ゴーサインが出る」という意味なんですが、25年前にこれが出ていても素晴らしいキャストが揃わなかったと思うんですね。40年間、ミュージカル界に身を置いておりますが、最高に誇れる映画ができました。ここにいるキャストも、他のアンサンブルもそうですが、ほとんどがミュージカルの経験があり、トムが描いたビジョンを反映し、すばらしい映画作品に作りあげてくれました。18ヶ月前、監督とNYでミーティングをしたとき、私は3分の1はセリフで3分の2は歌という構成の映画ができると思っていたんですが、監督はミュージカルの台本を持ち出してきてそれを一旦バラバラにして、そして再構築しましょうと言ってくれました。ほとんど歌のままの形に、彼の提案でなったわけです!これは奇跡のようなことで私は本当にこの映画を誇りに思っています。このように、トムというすばらしい人と出会えたことも私の人生の中でもっともハイライトなことになりました。ここにいるみなさんもそうですが、『レ・ミゼラブル』を支えてくださった世界中のファンがいてくださったからこそこの映画が出来ました。本当にありがとう!


◆質疑応答内容

LM-s2.jpgQ:生で歌を収録したことについて。

ヒュー:困難よりも良さのほうが上回っていました。生で歌えたことは、言ってみれば毎日生の舞台に立ってオープニングナイト(初日)を迎えているような気分でした。帰って就寝するときには、きっとこの歌を歌うことは二度とないんだろうという特別な思いで、いつも撮影に臨めました。オープニングナイトだけでなく千秋楽とも感じられ、よりよく自由に演じることができました。生で歌うことを可能にするためにリハーサルも2ヶ月以上十分にとってあり、素材を熟知することもできました。大変なこともありました。午前8時から夜8時まで歌い続けたり、マイナス2度の山の上で歌わないといけないときもありましたが、常に、この映画を実現してくださった監督に大変感謝しています。

Q:なぜそんなに歌が上手なんですか?秘密があったら教えてください。

アン:ありがとう!歌うというのは母に教わったものでもあります。とても美しい声を持っている母は実は『レ・ミゼラブル』アメリカの最初のナショナルツアーで、アンダースタディでファンテーヌを演じたこともあるんです。ですから、歌うことは自己表現のひとつとして思っていましたし、小さいころから大好きでした。ボイストレーニングは10年ほど続けていて、それだけに今回『レ・ミゼラブル』で歌う機会をいただけたことは自分は何年間も予習をしてきたんだなという思いがしました。こういう作品に出るときは朝起きて寝るまで歌のレッスンは必要ですし、同時にスタミナもつけないといけないですね。
アマンダ: アニー』のオーディションを受けるために歌の勉強をはじめまして、11歳?17歳まで歌のレッスンを続けてきました。俳優業が忙しくなったこともあり途中でやめてしまいましたが、『マンマ・ミーア!』でまた始めました。そのときはABBAの曲を楽しんで歌ったという記憶があります。本格的に歌のレッスンを再開したのは、この映画のオーディションのためですね。私にとって歌は一生の趣味であり、歌い続けていきたいです。
 ヒュー:20年前、もともと私は舞台俳優として仕事をはじめました。演劇学校を出たばかりだったんですが、『美女と野獣』のオーディションを受け、“STARS”を歌いました。そのときに「間違っても君はその舞台に出ることはないだろう」と言われました(笑)。そのあと歌のコーチをつけたほうがいいと言われ、マーティン・フロストという方を紹介されました。彼の歌があまりにも素晴らしかったので、彼の歌い方を5年ほど真似していました(笑)。今はアンと同じボイスレッスンを受けていて、長いこと歌の訓練は続けています。
マッキントッシュ:今のヒューの言葉に付け加えさせていただくと、『レ・ミゼラブル』シドニー公演の際に、ヒューは雇わなかったのですが、歌のコーチのマーティン・フロストは雇いました(笑)。

※アンが記者にマイクを渡すという、優しいハプニング!

LM-5.jpgQ:配役の決め手は?

監督:私のジャン・バルジャンの候補リストはとても短くて、一人しか名前が挙がっていませんでした。それはヒュー・ジャックマンでした。(会場より大拍手)もしヒューがいなかったら、今この時期にこの映画を作らなかったと思います。(さらに大拍手)映画スターで歌えて演技がきちんと出来る人、ジャン・バルジャンの思いやり、精神性を持っていて 人格者で…この人を置いてバルジャンは考えられないと思います。ヒューのオーディションをしたのが、去年の5月でNYでした。そのときは本当にエキサイティングでした。彼が自然にパワフルに歌っているのを聞いて、この映画の方向性を決めました。歌うことによって新しいヒュー・ジャックマン像を皆さんにご覧いただけると思っています。
アンもNYでオーディションをしました。ファンテーヌはありとあらゆる映画スターが欲していた役です。“I Dreamed a Dream”を歌ってくださったとき、吹っ飛びました! この役は彼女しかいないと思いました。彼女が見せてくれたのは、歌でファンテーヌを表現すること。物語を語れる女優さんです!コゼットには世界一美しい映画スターを探したいと思って、ここにお座りでございます(笑)。(ここでアンとヒューから「なんだって?(笑)」とツッコミ)いや、最も美しいブロンドの映画スターでした(苦笑)。真面目な話をすると、アマンダはコゼットに必要なものをすべて持っていました。明確な強さを秘め、強靭な知性を持っていて、加えて母性というものがこの役には必要でした。そして彼女は天使の声をお持ちです!

Q.役が決まったとき、どう思われましたか?

アマンダ:興奮しました。心待ちにしていたお返事がいただけたのはクリスマスの3日前でした。最高のクリスマスプレゼントでした!
ヒュー:スバラシイ!
アン:ここで監督のことを褒めちぎろうと思っていたんですが、さきほど最高に美しい映画スターをアマンダとおっしゃいましたので、もう私にとっては知らない人だわ(笑)。いつもは役をいただいたときは喜びでいっぱいで駆け回りたいぐらいなんですが、この役は違ったんです。自分の夢が叶ったという思いが強すぎて、そういう表現をすることもできなかったのです。人生において本当に重要なことが起こったとき、私は静かに心に触れる、心に染み込んでくるみたいです。時間が流れて今日になっても役が決まったときの喜びが続いています!本当に自分はなんて幸運なんだろう、人生は捨てたものではないという思いです。

※2500人の観客から来日ゲストに向けて「民衆の歌」の合唱プレゼント。

MC:それでは最後に日本の皆さんにメッセージをお願いします。

 ヒュー:アリガトウゴザイマス!スバラシイ!(日本語)ここにいる来日ゲストを代表して、日本のみなさんにお礼を申し上げます。
日本でとても愛されている『レ・ミゼラブル』という作品を、私たちが映画としてお届けするというのも意義があるものだと思っています。
みなさんと共有できることをうれしく思います。日本にまた来ることができてうれしいです。(日本語で)スバラシイ!

最後はサプライズとして、客席側の中通路を通ってファンサービスをしながら5人が退場!
2500人の観客と200にもおよぶマスコミが集まった会場の熱気は最高潮に達しました。

            


『レ・ミゼラブル』

■監督:トム・フーパー
■作:アラン・ブーブリル&クロード=ミッシェル・シェーンベルク
■原作:ヴィクトル・ユゴー
■脚本:ウィリアム・ニコルソン、アラン・ブーブリル&クロード=ミッシェル・シェーンベルク、ハーバート、クレッツマー
■作詞:ハーバート・クレッツマー
■作曲:クロード=ミッシェル・シェーンベルク
■製作: キャメロン・マッキントッシュ
■出演:ヒュー・ジャックマン/ラッセル・クロウ/アン・ハサウェイ/アマンダ・セイフライド/エディ・レッドメイン/サシャ・バロン・コーエン/ヘレナ・ボナム=カーター

 12月21日(金)~ 全国ロードショー 

★作品紹介⇒ こちら

★公式サイト⇒http://www.lesmiserables-movie.jp/  

配給:東宝東和

 

miroku-s1.jpg『ミロクローゼ』石橋義正監督インタビュー
(2010年 日本 1時間30分)
監督・脚本・美術・編集・音楽:石橋義正
出演:山田孝之、マイコ、石橋杏奈、原田美枝子、鈴木清順、佐藤めぐみ、岩佐真悠子、武藤敬司、奥田瑛二
2012年11月24日(土)~シネクイント、12月1日(土)~シネマート心斎橋、テアトル梅田、2013年2月元町映画館、京都シネマ他全国順次公開
公式サイト⇒http://www.milocrorze.jp/
© 2012 「ミロクローゼ」製作委員会

『ミロクローゼ』関西公開記念 トーク三本勝負&ベッソンカー展示はコチラ

 とにかく強烈、とってもアート、音楽がめちゃくちゃカッコいい!山田孝之がファンタジーな世界の住人、おかっぱ頭のオブレネリ ブレネリギャー、毒舌、ワイルド、クールなダンスに目が釘付けの恋愛相談員熊谷ベッソン、そして驚異的な立ち回りを披露し時空を越えて恋人を捜し続ける浪人タモンの一人三役を熱演するマジカルムービー、『ミロクローゼ』。香港国際映画祭をはじめとして世界で熱狂的に迎え入れられた『ミロクローゼ』がいよいよ日本で劇場公開される。エッジの効いたキャラクターが繰り広げるマジカルワールド、脚本から編集・音楽まで手がけた石橋義正監督に、キャラクター誕生エピソードやこだわりの立ち回りシーン、美術・音楽の見どころ、聴きどころについてお話を伺った。


━━━一度見たら忘れられない個性的なキャラクター(オブレネリ ブレネリギャー、熊谷ベッソン、タモン)ですが、どうやってこれらのキャラクターを作っていったのですか?
 miroku-3.jpg いつもの作品の作り方としては、まずビジュアルのイメージや断片的なキャラクターのアイデアを先にいくつか出していき、形になりそうなものを広げていく形です。その中で、オブレネリ ブレネリギャーに関しては、絵本のようなお話で、かつ本人は特に大したことをしていないけれど、ナレーションでヒーローのように語り継がれていくような設定が面白いのではないかと思いました。タモンに関しては、長回しによる立ち回りのシーンを作りたかったので、男らしい一途な人物を作っていきました。(熊谷ベッソンは)コミカルながら男臭さがかっこよかった日本の70年代のキャラクターです。他の2人は恋に一途ですが、一途な人ばかり登場するではなく、恋の悩みをコミカルに相談に乗っていくような話が面白いのではないかと、最終的にこの3つで組み立てていきました。

━━━最初から3つのキャラクターを一人で演じてもらうつもりだったのでしょうか?
 もともと5つぐらいのエピソードがあって、女性が登場する話もあったのですが、今回は3つに絞って、すべての役を一人の俳優に演じてもらう様に最終的にまとめました。人間の様々な側面を3つの話で別々に描きながら、観終った時に一人の人間を想像できる様な新しい映画の作り方に挑戦しようと、山田孝之さんにお願いしました。 

━━━その3役を一人に演じてもらうと決めた段階で山田孝之さんのキャスティングは視野に入っていたのでしょうか? 
 早い段階でそれが演じられる人を考えていました。演技しすぎて、観終ったときに役者のイメージだけが残ってしまうと映画として成立しないので、表現力があり、自然に演じられる人ですね。タモンの役が一番しっくりくると感じて山田さんにお願いし、あと二つ全然別のキャラクターを演じられるか相談しました。彼自身も一つの映画で3つの役を演じられる仕事はなかなかないので、自分自身のチャレンジとしてもやりたいと快諾して下さいました。コミカルなキャラクターはあまり演じたことがないとおっしゃっていたので、ベッソンをどういう笑いにしたいのか割と細かく伝えましたが、タモンは本当に山田さんご自身で組み立てていらっしゃいましたね。(オブレネリ ブレネリギャーは)本人が一番悩んでいました。

━━━女性が非常に美しく描かれていますが、女性を撮る際のこだわりはありますか?
 美しく撮りたいと常に思っています。力強い女性像を好んで撮る傾向があり、メイクや衣装を含めて女性の色気があってかつ強いという感じです。ミロクローゼ自体もやさしい役ですが、完全にオブレネリより上の立場です。そういうイメージは自分の中で女性というものがいつまでたっても分からない。おそらく分かり合えないものだと思っていて、だからこそ神秘的で追いかけていけるような気がします。女性への憧れがあって撮っているつもりです。

━━━原田美枝子さんの起用の理由は?
 原田さんのファンだったので、やってもらえるならと壷振り師お竜の役をお願いしました。原田さんは最近悪役がないし、殺陣をやりたいが機会がなかったと今回喜んで参加していただけた上に、撮影現場でも一番楽しんでいただけました。結構刀は重たいのですが、それをスッと抜いて、サッと戻したりする動作など練習してきて下さり、非常によかったです。唐突にどんどんキャラクターが出てくる突飛な話の場合、演じている方に存在感がないと軽いものになってしまいますが、その中で原田美枝子さんや奥田瑛二さん、鈴木清順さんなどその人の存在感が際立って、映像の中にも効いてきますね。

━━━ビジュアルのこだわりに並々ならぬものを感じる一方で、日本人が作っているのにボーダレスな雰囲気があったり、70年代の男が色気のあった時代を見せたりされていますが、本作においてビジュアル的なものでテーマを決めたりされていたのでしょうか?
 miroku-1.jpg 特にテーマは決めていませんが、最初に映画のアイデアを考えたり、シナリオハンティングをしていく中で、自分が影響を受けたものがここに入ってきていますし、やりたかったことや、今まで溜めていたことが反映されています。例えばねぷたのような行灯の前に立っている岩佐真悠子さんのシーンは、初期の頃からイメージがありました。シナリオハンティングで弘前に行ったときねぷたを見て、行灯の前に立っている女性のイメージがふっと湧いたので、それをシーンに入れ込んだ形です。立ち回りのシーンも、7月半ばに開催される土佐の絵金祭りに行ったときに、歌舞伎絵の絵師・絵金の描写に触発され、長回しの殺陣シーンを思いつきました。

 このように、「こういうシーンを作りたい」というビジュアルイメージの集約になってくるのですが、その中で一つ一つのデザイン面でも細かい部分も出てきます。例えばタモンの着ている着物柄は茨(いばら)ですが、「茨の道を進む」というストレートな意味もありつつ、身体にまとわりつくものです。また岩佐さんが着ている着物は、蔦が絡まってくるようなデザインになっており、着物のデザインも身体との関係を持たせました。前面に出すことではありませんが、きっかけとしていくつかこだわって作った部分はあります。

━━━タモンの立ち回りシーンは観終わった後もジンと余韻が残るカッコ良さでしたが、どうやって撮影されたのですか?
  あのシーンを撮りたかったからこの映画を作ったというぐらい思い入れがあります。色々と段階を踏んで作っていきました。最初にイメージコラージュで写真を撮って、こういうレイアウトでやっていこうというイメージの絵巻物的なものを作り、次はどれぐらいの尺に収めるかという部分で写真を切り貼りしたムービーコンテを作りました。そこからアクション監督と話をしながら殺陣のアイデアを盛り込んでいき、完成したものをビデオに撮って、山田孝之さんに殺陣を習得してもらい、その上でリハーサルを繰り返して本番と、結構時間がかかりました。

 殺陣も大事ですが、この映像で一番こだわった部分は、いくつかのレイヤー(層)があり、手前だけではなく奥の方にも色々なドラマが起こっているようにしたかったのです。それぞれの層を別々に撮って、後で合成する方がコンポジションがうまくいきますが、それをやると臨場感がなくなり、前と後ろの人が絡み合わなくなってしまいます。役者さんには負担を強いましたが、何度か練習をしていいポジションでくるようにし、一発撮りしました。
とにかく奥の人が大事なので、手を抜かないようにと奥の人ばかり細かい指示をしていました。スローモーションですから、どの絵もいい絵になっていないといけないし、そうでなければ絵巻物は成立しません。どのコマも完璧にするには、常に全身に神経を行き渡らせなければいけないので、(山田さんは)かなり体力的に大変だろうと思いつつも、奥の人達の動きに指示を繰り返し出していました。

━━━立ち回りの音楽のカッコ良さがさらにシーンの迫力を増していましたが、音楽担当のmama!milkさんをはじめ、本作の音楽に対するこだわりをお聞かせください。
 miroku-2.jpg mama!milkは15年以上の付き合いで、バリエーションの多い音楽をお願いし、タイプの違う曲をたくさん作ってもらいました。ベッソンに使う音楽やタモンに使う音楽など、雰囲気を変えていきますから、そういう意味でかなり引き出しの多いミュージシャンだと思います。音楽のカッコ良さは、映像もそうだと思いますが、その人の持っている瞬間的に作り出すセンスやニュアンスにシビレる部分にあって、(mama!milkには)僕はグッとくる部分がたくさんあるんです。メロディーももちろんいいのですが、特に清水さんのベースの入り方とかカッコ良くて、普通じゃないです。

 立ち回りのシーンでベースがソロに入ってきて、タモンが手前にどんどん向かってくるところが一番カッコいいです。映像と音楽が何ともいえないぐらいマッチすると、頭に焼き付きますよね。映像と音楽を一緒に覚えて、思い出に残るのが映画の良さだと思います。
久保田修さんの曲もすごくいいですし、熊谷ベッソンのダンスミュージックは私が作曲しているのですが、すべて思い入れがあり、サウンドミックスもすごくこだわっています。5.1チャンネルサラウンドで体感してもらうとより一層ノリが良くなるので、DVDで観るよりも劇場で観てもらって音楽を楽しんでいただきたいです。エンドロールの主題歌がONE OK ROCKの書き下ろしですが、エンドまでノリ良く作っていますので、音楽と映像を同時に楽しんでもらえればと思います。

━━━香港映画祭から世界の映画祭を回られ、かなり熱狂的に受け入れられたそうですね。
 「好きだ」と言ってくれる人は、本当に気に入っていただいているみたいですね。例えばモントリオール国際映画祭のディレクターは「今年はとにかくこれがベストだ」と自分の作品のように大事にしてくれ、賞を取ると自分が取ったかのようにすぐに連絡をくれ、とにかく喜んでくれました。ありがたいです。
この映画は、観るというよりも体感するというか、「この映画に遊びに行こう」といった感じで劇場に来てほしいなと思っています。海外の方は元々そういう風に映画を楽しめる傾向があり、特に香港ではおおいに盛り上がりました。  

miroku-s2.jpg━━『ミロクローゼ』は今の日本映画に風穴を空けるような衝撃がある作品でしたが、石橋監督ご自身が今の日本映画に感じることは?  
 映画作りをされている方は、どの映画もすごい情熱を持ってやっていらっしゃいます。ただ全体的な流れとして、作りたいものがあるのになかなか作れないジレンマが、自分も含めて皆さんあるのではないかと思います。テレビドラマの映画化や原作マンガの映画化というような一つの流れができてしまっていることへの危機感や、それだからヒットするということに「それでいいのか」という気持ちがあります。その流れを変えていくには、時間がかかっても映画を作り、成立させていくことが大事だと思いますし、(『ミロクローゼ』が)一つのきっかけになってくれればと思います。見に来る人たちが少なくなっているので、それを変える方法を考えていきたいですね。 

━━━今まで影響を受けた監督や、お気に入りの作品を教えてください。 
 スタンリー・キューブリック監督はどの作品も好きなのですが、最近特に好きなのが遺作の『アイズ・ワイド・シャット』(99)です。キューブリック独特のエロシチズムや、色合いや、カメラワークがすごく出ていると思います。最近観た映画では『パフューム ある人殺しの物語』(06)がここ10年で一番です。匂いというテーマで映画を作っていて、観ているときに匂いがするわけではありませんが、匂いを感じさせようとする努力や手法、アイデアを使っています。非常に美しい映像で匂いを感じさせようとする試みが、新しい気がしますね。新しい試みをしている作品を観ると「やられた」と刺激になります。観るだけではなく、サウンドも大事ですし、五感を刺激するようなことは映像にはすごく大事だと思います。

━━━斬新な映像や個性的なキャラクターが繰り広げる物語は愛や恋に繋がっていきますが、直接異性に向き合うことが怖いという草食系男子が増えてきた今、あえて愛や恋を描いた意図は?
 恋をすることで、その先に大きな愛につながるのですが、きっかけは問わず、恋愛をすることはすごく大事だと思います。その話をこの間インドでもしたのですが、インドでも男の子たちが恋をしないでネットやゲームで満足してしまうそうで、全世界的にそういうことが起こっているようです。バーチャルなものだけでは、人との関係を薄くさせてしまう。やはり人のことが気になって、好きになって、はじめて大事に思ったり、それが大きな愛につながって、好きな人以外に対する優しさにも広がっていきます。しかも恋は楽しいし、とても自然なものですから。

━━━最後にこれからご覧になるみなさんにメッセージをお願いいたします。
 ストーリーを追いかけて観る映画ではなく、それぞれのシーンを楽しんでもらいたいです。このシーンが好きとか、このキャラクターが好きとか、アトラクション的な楽しみ方をしてもらえたらと思いますし、映像と合わせて音楽も楽しめる作品になっていますので、できるだけ多くの人に観ていただいて、日本映画の更なる可能性に繋げていけたらと思います。
(江口 由美)



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『カラスの親指』阿部寛合同インタビュー

 

(2012年 日本 2時間40分)
原作者:道尾秀介
監督:伊藤匡史
出演:阿部寛、村上ショージ、石原さとみ、能年玲奈、小柳友

2012年11月23日(金・祝)~大阪ステーションシティシネマ、TOHOシネマズなんば、なんばパークスシネマ、MOVIX京都、TOHOシネマズ西宮OS、ほか全国ロードショー

公式サイト⇒ http://crow-movie.com
(C)道尾秀介・講談社/2012「カラスの親指」フィルムパートーナーズ


 

 

~今度はサギ師に挑戦! 阿部寛の智略家ぶりに注目~

 

 今年だけでも主演作『麒麟の翼』や『テルマエロマエ』と大ヒットを連発している阿部寛。映画にTVドラマと超多忙の人気ぶりだ。男女の情愛には疎いが、冷静沈着で知的なクールさとコミカルさを併せ持つキャラクターで魅了する中、今回はサギ師に挑戦。しかも相棒は“いじられキャラ”の村上ショージという凸凹コンビ。そこに、不思議キャラ全開の石原さとみと期待の新人能年玲奈と小柳友が絡む。
 

 不幸な過去を持つ者同士が引寄せられる様に出会い、そして、真っ当な人生を歩むために最後の勝負に出るという。素人相手のサギからヤクザ相手の超ヤバいサギまで、そのダマシのテクニックの巧妙さと、各々が演じるキャラの変化が面白い。さらに、最後に映画全体に仕掛けられた大きなワナに気付くとき、きっと大きな愛に包まれていた幸福感で胸を熱くすることだろう。
 

【STORY】
karasu-1.jpg ベテランサギ師タケ(阿部寛)の元に、しがないおっさんテツ(村上ショージ)が弟子入りする。いろんな所でサギを働いては生計を立てるふたり。ある日、可愛い女の子がスリに失敗し捕まりそうになるところを助ける。それ以来、女の子とその姉と姉の恋人の3人がタケを頼ってやってくる。こうして始まった5人での共同生活は、忘れていた家族団らんのひと時を思い出させる。だが、タケが過去にしでかしたヤバい連中との因縁が、次第に彼らの平穏な生活を脅かしていく。そこで、5人のサギ(カラス)師は、過去を断ち切り未来へ進むために、一世一代の大勝負を仕掛ける!

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――― 本作の脚本を読んだ最初の印象は?
テツさんの方をやりたいと思いました(笑)。すごく魅力的な人物像で面白そうだなと思いました。

karasu-s1.jpg――― 原作については?
脚本を先に読んだのですが、映像化不可能と言われていたものをやれる喜びはありました。それに、原作者の道尾秀介さんがこの映画をとても気に入って下さって、現場にも2~3回お見えになりました。自分が書いたものを客観的に見られたのが良かったと言って下さったのが嬉しかったですね。原作と脚本と、ここまで映像化してくれた監督に感謝しています。

――― サギ師について、何か役作りは?
監督が詐欺の手口本を何冊か持っておられて、それを読んだのですが専門的すぎて、今回はそこまでは必要ないかなと感じてあまり参考にはしませんでした。普通の人間とサギ師と二重に演じることは面白かったです。しかも違う手口で数回詐欺を働いたのですが、其々に気持ちを変えて演じることが楽しかったです。

――― 村上ショージとの共演は?
それなりにプレッシャーを感じておられたようです。「これにかける!」なんて仰って(笑)。関西弁を封印した役柄でしたので、いい意味での緊張感があったように思います。今までの村上さんの生き方がテツという人物に表れていたので、安心して共演できました。

――― 村上ショージとの共演で、他の人と違うなと思ったことは?
ショージさんが持っているエネルギーが違うなと。そこにいるだけでキャラクターが成立していました。意外にも少し引けを感じるような哀感のある人物像で、しかも、人の心に伝えることについてはプロなので、空気を埋める役割を担っておられたように感じます。

――― 共演者に対して気を遣う方ですか?
よくマイペースと言われます。本人は気を遣っているつもりなんですが、なぜかそう言われます(笑)。舞台だと毎日同じ時間帯で行動していますので、べったり一緒にいることが多いです。それが映像だと、個別の撮影が多くバラバラの時間帯になるので、時間を合わせるのが難しい。でも、基本的には共演者やスタッフの方に気を遣っている方だと思います。

――― 家族ドラマとしても楽しめたが、タケの立場は?
まわりが濃いキャラクターの人ばかりなので、共同生活に入ってからは受けの立場で演じました。テツさんも同じで、周りの人の気持ちを吸収する役柄にしたいと思いました。

――― 「阿部さんからいい意見をもらった」と監督がコメントしていたが…?
大抵の監督は役柄の気持ちなどを聴くと嫌がられますので、「こんな風にするのと別なやり方とはどっちがいいですか?」という聴き方をしていたので、おそらくそのことを言われたのではないかと思います。
 

karasu-s3.jpg――― 現場でのエピソードは?
後半はスタジオで一緒にいましたが、各々好きなことをして過ごし気を遣わずに済みました。ショージさんは「やばい、やばい!」と言いながら助監督相手にセリフの練習をしていたし、若い人達とは会話についていけなかったし(笑)、とてもナチュラルな現場でした。

――― まひろ役の能年玲奈について?
おっとりしてましたね…最初はわざとかな?と思うくらい。可愛いだけでなく、役に入る段階からその意味を理解していたし、頑張りやさんだなと思いました。女優として将来成功していくのではないかと思います。

――― ラストの清々しいシーンへの思い入れは?
ほぼ受け身でした。ここが見所だと思うから、それ以前のシーンとは全く別物として演じていました。各々傷付いた過去を持つ者が集まっている物語ですので、根底には優しさが流れていて、それで清々しく感じて頂けたのでしょう。

――― 他の見所は?
全体的に人物が浮き出てくるような奥行きのある映像で、自分のやった演技以上のものがありました。共同生活しているシーンとかに監督の仕組んだワナがいくつもあるので、その辺りのことを踏まえて、最後まで楽しんで頂ければいいなと思います。


【あとがき】
 10年ほど前、阿部寛主演『熱海殺人事件~モンテカルロイリュージョン~』という舞台をかぶりつきで観たことがある。今は亡きつかこうへい演出、バイセクシャルな部長刑事役を阿部寛が熱演し、それまでの単なる二枚目役から完全に脱却したと言われる記念すべき演劇の再演だった。阿部寛のツバや汗が飛んで来るような席だったが、一心不乱に演じた彼の残り香がとてもいい匂いだったことを覚えている。終演後、場内一斉にスタンディングオベーションとなり、熱狂的歓声と拍手に包まれて、彼が感極まって泣き出してしまった。既に映画やTVなどで人気を博していたが、観客の絶賛の波に洗われた阿部寛の素顔を見たような気がして、忘れられない舞台となった。(河田 真喜子)

大武生-pos.jpg 「歴史」をテーマにした世界でただひとつの“ジャンル映画祭”「第4回ヒストリカル映画祭」が12月1日から9日まで、京都文化博物館、京都シネマ、東映、松竹の両撮影所の4ヵ所で開かれる。男女逆転時代劇『大奥 ~ 永遠』、フランス、スペイン映画『マリー・アントワネットに別れを告げて』など話題の新作のほか、ロシア『1612』、韓国『神弓-KAMIYUMI-』など世界各国の最新“歴史映画”が楽しめる。

  1日には『マリー・アントワネット ~ 』のブノワ・ジャコー監督がゲストとして来日、トークショーを行う。

 

 

 

 


 ◆オープニング=京都文化博物館

【1日】
11時 ~『大奥 ~ 永遠「右衛門佐・綱吉篇」』(12年日本)。
終了後セレモニー『大奥』出演の永江祐貴。
15時 ~ 『マリー・アントワネットに別れを告げて』16時40分 ~ ブノワ・ジャコー監督トークショー
 

◆京都文化博物館

【2日】
12時~『雪之丞変化』(35年松竹)衣笠貞之助監督。 15時 ~ 『大武生』(11年中国・香港)※ミニトーク18時 ~ 『デラシネマ』(ヒストリカコラボ企画) 星野泰視(漫画家)トークショー

【4日】
15時~『隠し砦の三悪人』(58年東宝)黒澤明監督。
18時 ~ 『神弓―KAMIYUMI―』(11年韓国)※ミニトーク

【5日】
13時半~『七人の侍』(58年東宝)黒澤明監督。
18時 ~ 『アイアンクラッド』(11年英・米・独)
※ミニトーク

【6日】
15時~『柳生一族の陰謀』(78年東映)深作欣二監督。18時 ~ 『1612』(07年ロシア)※ミニトーク

羅生門-1.jpg【7日】
15時~『羅生門』(51日年大映)黒澤明監督。
18時 ~ 『ウモーン・パー・ムアン-羅生門』(11年タイ)
19時45分 ~ 『ウモーン ~ 』パンテワノップ・テークワン監督トークショー

 

◆京都シネマ

【1日】
15時 ~ 『ビッケと神々の秘宝』(11年独)
【2日】
15時 ~ 『トム・ソーヤー』(11年独)
【3日】
18時20分 ~ 『肉体の森』(10年仏・独)
20時05分~『肉体の森』作品解説(大寺眞輔)
【4日】
18時20分 ~ 『トスカ』(01年仏・独・伊・英)
※ミニトークあり
【5日】
18時20分 ~ 『イザベル・アジャーニの惑い』(02年仏)※ミニトークあり
【6日】
18時20分 ~ 『発禁本-SADE』(00年仏)※ミニトークあり
【7日】
18時20分 ~ 『肉体の森』(10年仏・独)
 

 

mainmain.jpg◆東映京都撮影所

【8日】
13時半 ~『るろうに剣心』(12年日本)
16時~大友啓史監督、谷垣健治アクション監督トークショー
【9日】
11時~『大武生』(11年中国・香港)
14時 ~『アイアンクラッド』(11年英・米・独) 16時 ~『アイアンクラッド』ジョナサン・イングリッシュ監督、樋口真嗣監督トークショー

 

 ◆松竹撮影所

1612-1.jpg【8日】
11時~『トム・ソーヤー』(11年独)
14時~『ビッケと神々の秘宝』(11年独)
【9日】
10時半~『1612』(07年ロシア)
14時 ~『ウモーン・パー・ムアン―羅生門―』(11年タイ)
16時半~『神弓―KAMIYUMI―』
 

 

※問い合わせは同映画祭実行委員会事務局(075 862 5014)まで  (安永 五郎)


京都ヒストリカ映画祭公式サイトはコチラ

山田孝之主演の『ミロクローゼ』( 12 月 1日より関西公開)を 記念して 石橋義正監督のトークイベントをド~ンと 3本開催! また、特別展示も 期間限定で開催される。ハイテンションな『ミロクローゼ』の世界をさらに楽しむ絶好のチャンスをお見逃しなく!

1.【タワーレコード梅田 NU 茶屋町店 「ヌーチャヤバーグ 第 1弾」】

miroku-3.jpg◆日時: 11 月 18 日(日) 17:00 ~
◆会場:タワーレコード梅田 NU 茶屋町店イベントス ペース(大阪市北区茶屋町 10 -12NU chayamachi 6F)
◆ゲスト: 石橋義正(監督) など
◆料金:無料
◆内容: タワーレコード梅田 NU 茶屋町店が行う映画イベントの記念すべき第 1弾。 『オー!マイキー』など石橋義正監督作品の短編特別上映も絡めながら、『ミロクローゼ』の魅力に迫ります。先着入場者には本作の特製ポスター( 5部)かプレスシート( 10 部/非売品)をプレゼント 。さらにイベント途中で、『ミロクローゼ』をお得に鑑賞できる割引券を抽選プレゼント。
◆問い合わせ先:タワーレコード梅田 NU 茶屋町店( 06 -6373 -2951 )

 

2.【テアトル梅田/シネマー心斎橋 「初日舞台挨拶」】

◆日時: 12 月 1日(土) ※時間未定
◆会場:テアトル梅田 (大阪市北区茶屋町 16 -7)、シネマート心斎橋 (大阪市中央区西心斎橋 1丁目 6-14 ビッグステップ 4F)
◆ゲスト:石橋義正(監督) など
◆料 金:各劇場の入場料金
◆内容:テアトル梅田、シネマート心斎橋での公開を記念して石橋義正監督が初日舞台挨拶行います。
◆問い合わせ先:テアトル梅田( 06 -6359 -1080 )、シネマート心斎橋( 06 -6282 -0815 )

 


3.【ワイルドバンチ 「ミルクマン斉藤の日曜には鼠を殺せ ~魁 !! 映画塾~」 】

miroku-2.jpg◆日時: 12 月 2日(日) 15:00 ~19:00
◆会場: ブックカフェ・ ワイルドバンチ (大阪市北区長柄中 1-4-7ロイヤルグレース 1F )
◆ゲスト: 石橋義正(監督) など
◆料金:予約 1500 円/当日 1800 円
◆内容:映画評論家・ミルクマン斉藤さんによる月イチトークイベント。第 1部は「新作言いた放題!」、そして第 2部の「ミ ロクローゼで狂わせたいの! 石橋義正の奇妙な世界」にゲストとして登場。石橋 監督の 自選映像、マル秘映像を交えつつ送るロング・トークライヴを実施 。「怒涛 の傑作 」と絶賛するミルクマン斉藤さんの濃密な話が展開します。
◆予約受付など問い合わせ先:ワイルドバンチ (06 -4800 -4900)

 

関連イベント 「ベッソンカー展示」

miroku-1.jpg『ミロクローゼ』で山田孝之が演じるハイテンショな恋愛相談員・熊谷ベッソンが乗るド派手な乗用車「ベッソンカー」を期間限定 で展示いたします。 11 月 23 日(金)~ 25 日(日)はシネマート心斎橋が入ったファッョンビル「 BIG  STEP」の前にて、 12 月 1日(土)にはテアトル梅田が入った「LOFT」の 前にて展示。しかも、スペシャルゲスト(?)が『ミロクローゼ』PR のた めに やって来る予定です 。
◆日程・ 場所  11 月 23 日(金)~ 25 日(日):BIG STEP前(大阪府市 中央区西心斎橋 1丁目 6-14 )・12 月 1日(土): LOFT 前(大阪市北区茶屋町 16 -7)
◆内容:劇中に登場する「ベッソンカー」を期間限定で特別展示。スペシャルゲストの来場有り !?


『ミロクローゼ』
神々しい美女“偉大なるミロクローゼ”に一瞬にして胸をトキめかす少年のような不思議な男性オブレネリ・ブレネリギャー。狙った女は必ず落とす最高にダンディ、かつ奇抜なヘアスタイルで異彩を放つ青春相談員・熊谷ベッソン。時空を超えてあらゆる危険な場所で愛する女性ユリを探し求めるタモン。果たして男たちは自分だけの「ミロクローゼ(=太陽)」をその手につかむことができるのか?
2011年香港映画祭を皮切りに、約30の国際映画祭で上映されて大絶賛。アメリカのニューヨークアジア映画祭では、主演・山田孝之が日本人初のライジング・スター・アワードを受賞。次元を超えた究極の『ミロクローゼ』がいよいよ日本で公開!映画『狂わせたいの』、そして『バミリオン・プレジャーナイト』『オー!マイキー』などのテレビ番組でその独特の世界と映像美が評価されている石橋義正監督により、3つの話が交錯する新感覚映画が誕生。愛に突き動かされる3人の男を山田孝之が一人で演じわける一人三役に挑戦!

監督:石橋義正/出演:山田孝之、マイコ、石橋杏奈ほか/主題歌:ONE OK ROCK
2011/日本/ディーライツ、カズモ/90分 http://www.milocrorze.jp/
(C)2012 「ミロクーゼ 」製作委員会
12 月 1日よりテアトル梅田、シネ マ ート心斎橋、以降は京都シネマ、元町映画館他全国順次公開

odayakana-s550.jpg『おだやかな日常』杉野希妃記者会見、インタビュー
odayakana-1.jpg(2012年 日本=アメリカ 1時間42分)
監督:内田伸輝
出演:杉野希妃、篠原友希子、山本剛史、渡辺真起子、山田真歩、西山真来、寺島進
2012年12月22日(土)~渋谷ユーロスペース、シネ・ヌーヴォ、元町映画館、京都みなみ会館にて公開
公式サイトはコチラ  
作品レビューは
コチラ
『おだやかな日常』第17回釜山国際映画祭新着レポートはコチラ

(C)odayaka film partners
※第17回釜山国際映画祭 A Window on Asian Cinema部門
※第13回東京フィルメックス コンペティション部門

 『ふゆの獣』で男女4人の生々しい恋愛模様を描き出した内田伸輝監督最新作は、プロデューサー、主演に杉野希妃を迎え、震災を被災地ではなく東京に住む女性たちを主人公に見えない敵への孤独な闘いとその行方をリアルに描く震災ヒューマンドラマだ。
第17回釜山国際映画祭 A Window on Asian Cinema部門でワールドプレミア上映され、今月開催される第13回東京フィルメックスコンペティション部門でジャパンプレミア上映となる注目作品は、12月22日(土)より東京、大阪、神戸、京都で一斉公開される。
 本作のキャンペーンで来阪したプロデューサー兼主演、杉野希妃さんの記者会見およびインタビューの模様をご紹介したい。


~記者会見~

odayakana-s1.jpg━━━内田監督の前作『ふゆの獣』は脚本は特になく、設定だけ決めておいて、出演者がその状況下アドリブで、どういう台詞を言うか、役者の自由に任せた撮り方をしていましたが、今回はどういう撮り方をしたのですか。
 今回は脚本が100ページぐらい完璧にありました。撮影に入る前も、細かい話を事前に完璧に作り上げてから、現場でそれをいかに破壊していくかということが監督の一つの挑戦だったようです。現場に入る前に監督に言われたのは、「本当に感じたことだけを役者として台詞でしゃべってほしい」。撮影の直前に監督から「この台詞とこのあたりはしゃべらなければいけない。この流れはひとまずFIXでいくんだけど、あとはアドリブ入れたり、言い回しは変えてもいいよ」と言われたので、基本的には流れと言わなければいけないことは入れながらも、役者の自由にさせていただいたという感じでした。『ふゆの獣』とはまた違う撮り方ですね。

━━━第17回釜山映画祭、ワールドプレミアでの反響はどうでしたか?
 こういうテーマに韓国の方や世界の映画人が関心を持ってくれ、反響がありました。韓国でも公開したいという声がたくさん上がったのはありがたかったです。個人的には、海外では賛否両論がある作品じゃないかと思っていたのですが、こういうテーマに挑戦したこと自体に勇気があると、9割ぐらいは好意的に見て下さったという印象です。
韓国のお客さんは7割方が若い学生なのですが、質疑応答ではカット割から含めて聞いてきたり、男性が情けなく描かれていたのは何故かとご質問がありました。女優3人で登壇したときには、役者として実際にこの問題について思うことと照らしあわせて、演じるときに違いがあったのかという質問が印象的でした。

odayakana-3.jpg━━━園子温監督の『希望の国』と比べると、『おだやかな日常』は希望に満ちた終わり方をしていますが、エンディングを作るに当たってどのようなディスカッションをされたのでしょうか?
 最後の二人の選択ですが、作り手としては善とも悪とも言っていません。これが正しいとか間違っているとか言うつもりはなく作っているので、観る人によって希望だと思えば、韓国である観客の方は「逃げだ」と捉えていらっしゃり、それは色々な捉え方があっていいと思っています。ただ、一人一人が選択をしていかければならない。その選択はその人にとって未来につながるものであればいいと私は思っているのですが、意外と(他人と)違う選択をする人に対して許さない社会、寛容的な心を持たない社会になってきているのではないかというところに悲しさを覚えています。彼女たちがとった選択に、色々な価値観や、色々な意見で、それを寛容に受け入れる世の中になってほしいと思ってこの映画を作ったつもりです。だから最後は希望や希望じゃないというよりは、未来を作っていくための作品になってほしいと個人的に思っています。

━━━『歓待』の深田監督と本作の内田監督は若手で期待されているお二人ですが、お二人の作品に出演されている杉野さんから見て、どう違うのか教えてもらえますか。
 演出家としての共通点として、自分のイメージに役者を引き寄せるというよりは、役者の個性に合わせてその良さを引き出すのが、お二人の良さだと思います。描き方は本当に両極端ですね。内田さんは役者の演技の火花、感情の火花を見せたい。生っぽさを見せたいタイプで、深田さんは「そういうの(火花のような感情)は、人間押し隠して生きてるだろ?」ということをベースに、感情の見えない機微を描いていらっしゃるので、映像も全然違っていました。内田さんはあおるような感じで、こちらが演技終わると、息を切らして一緒になってハアハア言ったりする感じですが、深田さんはもっと俯瞰的に見ている感じがします。


~インタビュー~

━━━『ふゆの獣』の内田監督と、震災後の東京に着眼した企画にした意図や、プロデューサーとして杉野さんが参加される中で、特に盛り込みたかった点を教えてください。
 初めに内田監督からこういうことをしたいという紙一枚のプロットをいただき、既にそのときに『おだやかな日常』という題名が付いていたと思います。内田監督は海外にも通用する作品を作りたいと私に相談いただいたのですが、そのときはユカコとタツヤの夫婦の話しかありませんでした。もし私がプロデューサーとして参加させていただくなら、(役者としても)やりたいとお伝えし、どういう役がいいのかと話し合っていくうちに、子どもに対しての立ち位置が違うユカコとサエコというキャラクターを作リ出し、隣通しに住む二人の生活が交差していくという話の方がより広い視点で描けていけるのではないかと。私が関わってから、サエコと清美というキャラクターが生まれて話が進んでいきました。

odayakana-2.jpg━━━杉野さん演じるサエコが娘を守る孤独な闘いを見て、愛する人を守るのが本当に難しい世の中になってしまったことを実感しましたが、どうやって役作りをされたのでしょうか。
 私は子どもを産んだことも育てたこともないので、母性がないなと思っていたところに、内田監督が「杉野さんに」ということで作り出したのが単身で娘を守るサエコというキャラクターでした。実際に5歳児のお子さんを持つお母さん何名かにインタビューをさせていただいたり、お子さんと一緒にいさせていただいたりして役作りをしていきました。幼稚園のシーン(職員室での怒鳴り合いや、下校後の園庭など)のリアルさを作り出せたのは、内田監督のおかげだと思います。

━━━杉野さんが今まで演じてきた役の中でも、感情を激しく露呈し、女優としても一皮剥けたのではと思いますが、演じていて難しかったことは?
 自分が今まで演じてきた役が、感情や自分の素性を隠しているというのが多かったので、キャラクターということで考えると、もしかして一番自分にしっくりくる役だったかもしれません。サエコは私の性格やキャラクターとも全く違って、私だったらあんな行動はとらないと思うのですが、演じていて精神的にはすごく辛かったです。後半はずっと怒るか泣くかで、キャラクターとして感情を吐き出すことで、すごく自分が救われているような、吐き出し口があるんだという点で救われているような部分も残りました。

odayakana-4.jpg━━━今回初共演となったユカコ役の篠原友希子さんの追いつめられていく心理を体現した演技も印象的でした。杉野さんと一緒になるシーンは少なかったですが、共演されていかがでしたか?
 後半まで全く一緒になるシーンはありませんでしたが、マンションで撮っていたので大体同じ時間に集合してきて、待ち時間には一緒にお昼を食べたり、「じゃあ私行ってくるね」「いってらっしゃい」みたいな感じで篠原さんはタツヤとのシーンを、私は清美とのシーンをやる感じでした(笑)。篠原さん自体がものすごく人間的に優しくて大きい方だったので、本当にたすかりました。義母のもとに娘を返してもらいにいくシーンでも、車の中で一緒に待機していたんですけれど、演技論や「こういうときはどういう風に準備するか」を二人で話し合ったり、役者としての普段どういうことをしているとか話できたので、同志といった感じがします。

━━━『おだやかな日常』というタイトルを、杉野さんはどう感じていらっしゃいますか?
 私はすごく好きなタイトルです。途中でタイトル自体にもう少しインパクトがあるものにしたらいいのではという意見もあったのですが、『おだやかな日常』という中にいろいろな意味が込められていますし、「おだやか」ということに対して観た人がどう思うか、どのシーンを想像して、どう自分と照らし合わせて、題名を思い返すことができるのか。映画のタイトルはそこがすごく重要だと思います。そういった意味ではこのタイトルはちょっとシニカルというか皮肉も入っていて、バッチリ合っているのではないでしょうか。 

━━━これからご覧になるみなさんにメッセージをお願いします。 
 本当にいろんな立ち位置の、東京ならではの方々が出てきて、これは今起こっている放射能問題だけではなくて、色んな問題に置き換えることができると思います。どの国でも、どの場所でも、どのシチュエーションでもこういう事態は起こり得ることですし、どのキャラクターかには感情移入して観ることのできる作品です。未来を一緒に築いていくための映画ではないかと思っていますので、一人でも多くの方に観ていただいて、激論を交わしていただけるとうれしいです。
(江口 由美)

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